Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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後手に回った生徒会

夏休み前の試験勉強

メダルが割られ、将矢自身が自分の意志で怒る


二十三話 試験対策と不手際

夏休み前の授業、将矢は登校はしてきてはいるが周りと会話しようとはしていなかった。

 

今まで自分達のストレスの捌け口としての扱いから一転して擦り寄るような態度で話しかけてくるのに嫌気がさしてきたのだ。

 

「ね、ねえ?土谷君・・・・?」

 

「授業中の私語は織斑先生に注意されるよ。それと、はい。落ちてた消しゴム」

 

拾って机の上に置くと、誰もいなかったのかのような態度に変わってしまう。これによってクラスメート達は自分達で作ってしまった溝が深いものだと自覚せざるを得なくなってしまったのだ。

 

期末テストも近いが彼は勉強を怠らない。いくら束と勉強したとはいえど、復習も兼ねて勉強しなければどんなに優秀でも赤点を取ってしまう。

 

放課後、IS学園の図書館にて代表候補生である鈴、セシリアが集まり、将矢も誘って勉強会を開くことになった。そこには本音、清香など初日から接してくれた面子もいる。

 

「将矢さん、この日本語なんですが」

 

「ん?ああ・・・これは主語の部分だね」

 

「ありがとうございます」

 

「じゃあ、セシリア・・・・この英文なんだけど」

 

実は将矢自身、あまり英語が得意ではなかった。所謂、話すことは出来ても読み書きが得意ではないというパターンである。それでもなんとか読み書きが出来るが苦手なのは変わらなかったのだ。

 

「難しく考えなくて大丈夫ですわ。英語は日本語よりも複雑ではありません」

 

「そうはいっても苦手でね・・・」

 

「アハハ、ツッチーは英語が苦手なんだ~」

 

「意外ね、勉強できるタイプだと思ってたけど」

 

「本当だぜ」

 

「うふふ」

 

「う・・・うるさいぞ」

 

こうして接する事が出来るのは集まったメンバーが主だ。それ以外の人間は草木に喋りかけるかのような態度しか取らない。

 

それだけ、彼の中の人間に対する不信感が強まってしまったということだろう。誰でも抱えてしまうことであり否定はできない。しかし、学園という小さな社会とはいえ自分一人だけが標的にされてしまえば、誰も信用できなくなってしまうだろう。

 

将矢はまさにその状態だ、今の彼には危うさしか無く全てを八つ当たりで壊しかねないほど仮面を被り続けている。

 

「失礼します」

 

「誰だ?」

 

「あ・・・」

 

勉強中のメンバーの前に一人の生徒が近づいてくる。リボンの色からして上級生だろう、将矢はより警戒を強めた。

 

「お姉ちゃん」

 

真っ先に反応したのは本音であった。しかもお姉ちゃんと言ったところを鑑みれば姉妹なのだろう。

 

「土谷将矢さん、ですね?私と一緒に来てくれますか?」

 

「いきなり初対面の人について行くのは嫌だな。名前も知らないし」

 

「申し遅れました、私は布仏虚。先に言われてしまいましたが本音の姉です」

 

「・・・」

 

自己紹介はしたが、いきなり現れて、一緒に来てくれというのは誰もが警戒するだろう。だが、そこへ助け舟が出された。

 

「大丈夫だよ~私のお姉ちゃんだから~、私も一緒に行くからね~?」

 

「・・・わかったよ。ごめん、少し外すね」

 

「分かりましたわ」

 

セシリアの返事に鈴達も頷き、将矢は本音と共に虚についていった。それでも警戒は解いておらず、自分に何をするつもりなのかという被害者意識まで出てきている。

 

到着した場所は生徒会室、扉が開くと生徒会長が腰掛けるべき席で一人の女性が座っていた。

 

「初めまして、土谷将矢くん。私がこのIS学園の生徒会長の更識楯無よ」

 

「初めまして、それで?俺を呼んだ理由はなんです?」

 

挨拶を済ませると同時に将矢は睨むような目つきに変わる。生徒会長と言われていても初対面の人間であり、信用するに値するのかと考えがよぎる。

 

「最初に生徒会長として対処が後手に回ってしまった事を謝罪するわ。ごめんなさい」

 

盾無は席から離れて、将矢の目の前で深々と頭を下げた。自分のしている事が後手に回り将矢を守れなかった事に対するケジメだろう、だが。

 

「頭を下げればそれで謝罪になると?ふざけないでくださいよ・・・謝った後に行動で示さなきゃ俺は許しませんよ」

 

「分かっているわ。それで、話を聞いてもらえるかしら?」

 

「ええ」

 

盾無のペースに飲まれてはいるが、話を聞かない事には先には進まない為に席に着く。それに合わせて、本音と虚も席に腰掛けた。

 

「私からは生徒会に入って欲しい事なんだけど・・・」

 

「何故です?唯の勧誘ならお断りですよ」

 

「最後まで聞いて、これはね・・・後手に回ってしまったけど、君と君の機体を守るためなの。君の事は調べさせてもらったわ」

 

「悪趣味ですね・・・」

 

「当然のことだと思うけど?」

 

盾無が口元を隠す為に開いた扇子には「用意周到」と書かれている。

 

「目的は何です?大方、スラフティンでしょうけど・・・よこせと言われたら全力で守りますよ」

 

「そんなつもりは毛頭無いわ。さっきも言ったけど君には生徒会に入って欲しいの」

 

「たまに顔を出すだけでいいですか?その理由だと、織斑の奴も入る事になりそうなので」

 

その言葉に盾無はわずかに眉を吊り上げた。将矢はほぼ確定的に織斑一夏を嫌っている。臨海学校が始まる前に全校生徒からの要望書に目を通したが、将矢に対する印象はあまり良いとは言えず、逆に織斑一夏の印象は好感的であった。

 

だが、今となっては印象は両者とも評価は同格となっている。報告によれば将矢は自分の意志で機体を暴走させた訳ではなく、己の感情を制御できず、虐めからの防衛本能による別人格を生み出した。それを抑えたのが代表候補生の一人であったという。

 

逆に織斑一夏は王子様ともいえるルックスと優しさから生徒達に人気があった。姉はブリュンヒルデである織斑千冬、更にはあの篠ノ之束博士とも知り合いであるという二重の後ろ盾が控えている。

 

その彼が何故、人気を落とす事になったのか?きっかけは臨海学校を終えた以降だ。報告によれば彼は自分一人で解決しようとし、その結果、自分の手に負えなくなると同時に無自覚で逃げ出すようになったそうだ。

 

更には自分が戦えばいいと宣言し、逆に戦闘を邪魔しようとしたらしく味方に抑えられてしまったとも。

 

それによって二人の評価はほぼ同等にまでなっているのだ。しかし、盾無が最も懸念している対象はスラフティンが起こした二つの現象である。

 

一つは脱皮の機能、そしてもう一つは成層圏を突き抜けるのではと言われてもおかしくない光を発した時、一撃で相手を機能停止まで追い込んだ力だ。

 

二つの未知が起こっている中、全てが後手に回ってしまっている為に何も出来ていないのが現状。だからこそ、将矢を近くに置いて監視したいのだ。

 

「構わないわ。ただし、私からも条件が一つだけあるわ」

 

「なんですか?」

 

「一週間に一度は必ず顔を出して、私と模擬戦をすること」

 

「わかりました」

 

「それと、遠慮なく私に相談しなさい。出来る範囲で協力してあげるから」

 

「ええ」

 

将矢が出て行くと同時に盾無は軽く息を吐いた。虚はそれを見て全員分の紅茶を淹れ始める。

 

「まさか、あそこまで他人を信用していないなんて」

 

「つっちーはIS学園の上級生や同級生の一部から目の敵にされて、スラフティンも強奪されかけたから・・・」

 

「生徒達も巧妙ね・・・対象が逆らえば自分達は被害者、相手が何も言わなければずっと虐めを影で続ける」

 

「教員の方は織斑先生や学園長がなんとか押さえていますが・・・徐々に」

 

「あーもう、これだから風潮に染まった人間は厄介だわ!」

 

盾無の愚痴は生徒会室の中で消え、本音自身も真剣な顔つきで注がれた紅茶の中に映る自分自身を見つめているままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、皆との自習を終えて一人、アリーナで自主鍛錬していると後を付けられていたのか上級生達が数人現れた。風貌を見るとあまり素行が良くないようだ。

 

「あんたのロッカーを見つけて漁ったたら、こんなものがあったわ」

 

上級生が弄んでいるそれは、将矢が発掘した女性の意思が宿るクイーンメダルであった。無論、セカンドメダルではあるがメダルには変わらない。

 

「!!返してください!」

 

「良いわよ、返してあげる」

 

「ただし!」

 

全員がISを纏い、放り投げたクイーンメダルをハンマーのような物で殴りつけ、思いっきり砕いたのだ。

 

「!!アンタら・・・メダルを!」

 

「こんなもん、価値なんてないでしょ?どうせゴミだし」

 

「アンタが持ってるISを寄越したら考えたかもしれないけどね~」

 

この上級生達は己の行動に罪の意識などなかった。メタビーを始め、ロクショウ、ビーストマスター、ゴッドエンペラー、ブラックシリーズ、全員が人間のように感情があった。

 

メダルとは彼らにとって命であり、魂だ。もしも、人であれば彼女達は自分の快楽のために殺人を犯した事と同義。将矢は理不尽に殺されたメダルを見て、目の前の景色が怒りに塗りつぶされた。

 

「さぁ、よこしなよ」

 

「アンタのような男が此処にいる事自体」

 

「ってろ・・・・」

 

「ん?」

 

黙ってろよ!!クソアマ共がァああああああああ!!

 

それは、将矢が初めて表に出した激しい憤怒の感情であった。自分の不手際でクイーンメダルを殺されてしまった事を悔やむ深い悔恨とそれを実行した上級生達への激しい憤怒。

 

ここから導き出される感情はただ一つ、怨恨である。将矢は初めてここで他人に対する深い怨恨という感情を爆発させてしまったのだ。

 

織斑一夏に対しては逆に何もなかった。怒りも恨みも何もなかった。ただあったのは甘い考えに浸っている男という印象としつこい人間であるということだけ。

 

この考えは束から特訓や勉学を教わった故の考えだ。敵と定めたのならば容赦なく殺すか倒せと、卑怯と言われる手段を使おうと戦略として考えろと骨の髄まで叩き込まれた。

 

それ故に彼の中では戦いの真実に到達しようとしている。戦いとは力の見せ合いではない、力と力をぶつけ合い喰い合う事。それに気づくと同時にクイーンメダルと過ごした日々が頭の中で蘇る。

 

 

 

 

 

 

 

『アンタ、バカでしょ?パフォーマンスなんて考えるんじゃないよ』

 

「ええー」

 

『今度、機会があればオーロラクイーンのパーツを作ってよね?』

 

「束姉さんに頼んでみるよ」

 

『なんで、ここに私を置くのよ!?』

 

「ごめん、体育だからさ・・・待っててよ」

 

 

これが最後の会話、悔恨が溢れると同時に待機状態のスラフティンを掲げた。そこで将矢は気になる言葉を発した。

 

「スラフティン、転送!モード・カブト、アークビートルダッシュ!ティレルビートル!!アクティブ!!メダユナイト!!マスタービートル!」

 

オオクワガタの顎を模した角を頭部左右へラクレスオオカブトの角を頭部に装備し、左右の腕にはライフルとビームソードを切り替える事が可能な武装、脚部は機動性を重視した細身の脚部を装備した姿。

 

これだけの強力な機体だけに暴走の危険性が高い。ゴッドエンペラーと同等、それ以上に危険性が高いのだ。

 

「お前ら、全員・・・ぶっ壊してやるあああああああああ!!」

 

上級生達もISを展開し、散開する。IS乗りの経験では圧倒的に上であり、行動が単純すぎたのだ。その好きを狙い、拡張領域からライフルを取り出す。

 

「倒れろ!!」

 

「イケメンでもないただの男が!!」

 

「死ね死ねえ!!」

 

だが、攻撃状態は攻め側にとって有利な状態、故に油断しやすい。相手がそれを上回る防御力を持っているとすればどうなるか。

 

「何か来る!!」

 

「え?」

 

「つーかまえーた!」

 

上級生の一人をティレルビートルの頭部パーツと同じ角部分で捕獲したのだ。その力強さに身動きは取れない。

 

「は、離せ!離しなさいよ!!」

 

「さぁ・・・バンジージャンプと行こうか?ただし、紐無しだけどさぁ!!」

 

「え?」

 

将矢は捕獲したまま上昇すると同時に、一定の高さまで上昇するとそのまま反転し地面を目指して突撃した。

 

捕獲された上級生はその意図に気づき離れようと、もがくが角に掴まれたままで身動きが取れない。

 

「きゃあああああああ!がはっ!」

 

そのまま地面に叩きつけたが絶体防御でも相殺出来ない衝撃を受け、そのダメージを受けた上級生は泡を吹いてしまった。だが、この程度で将矢の怨恨が消えることはない。

 

「アンタ達の勝手な都合で殺されたメダルの恨み・・・その身を持って思い知れえええ!!」

 

将矢自身、自分の感情を無意識下で理解できていた。ああ、これは敵対する相手が出てきた嬉しさと今まで虐げられ続けてきた事による八つ当たりだ。

 

クイーンメダルが破壊された事を言い訳にして、己の鬱憤を上級生にぶつけているに過ぎないと。

 

正義も何もない、ただ一人の人間の感情を初めて剥き出しにしているだけ。

 

怒りに任せ、全員を打つのめそうとした瞬間、教員の一人が大声を上げた。

 

「そこにいる生徒達!何をしている!?」

 

「!助かったわ!」

 

「逃げるわよ!!」

 

「ま、待って!」

 

「どこいったあああああああああ!?」

 

三人の上級生は好機と見て、全員が逃げ出してしまった。やり場のない怒りを爆発させている将矢の目には逃走した事すら目に入っていない。

 

「うがああああああああああああああああああああああああ!!」

 

叫び声を上げ、マスタービートルが自動解除される。その姿はビーストマスターやゴッドエンペラーが咆哮を上げる姿と重なる。その姿はまるで、自分の妻を殺された狼王ロボを彷彿とさせる。

 

狼王の怒り、憎しみ、復讐を願う心、それは一体どれほどのものだったであろうか?狼の王は捕獲されようと誇りを選び、最後には餓死したという。

 

冷静さを失った将矢は手当たり次第、壁を殴っていたが注意喚起をしてきた教師に止められた。

 

「!血が出てるわよ!止めなさい!!」

 

「離せえええええええ!!」

 

「きゃ!?」

 

いくら大人とはいえ相手は十代の男子、更にはISに乗るための基礎訓練を怠っていないために、なまじ腕力が強い。教員はすぐに千冬を呼び出し、なんとか取り押さえ話を聞くことにした。

 

 

 

 

 

アリーナの中心で千冬は興奮の冷めた将矢い声をかけた。できるだけ刺激を与えないように。

 

「土谷、一体何があったのだ?」

 

「織斑先生になら、お話します・・・これを見てください」

 

将矢は千冬をクイーンメダルが砕かれた位置に案内した。そこには未だ砕かれたままのクイーンメダルが放置されている。

 

「これは・・・まさか、お前の」

 

「そうです。俺の不注意で殺された仲間の一人です」

 

「殺された?どういう意味だ!?」

 

砕かれたメダルは本来なら壊されたと表現するのが正しい、しかし将矢は殺されたと口にした。それは彼がメダルに対して人と同じように接しているという事だ。

 

「俺にとってこのメダルは、ISのコアみたいな物です・・・このメダルにはそれぞれ意思があるんです」

 

「・・・・」

 

「それを上級生のやつらは!!」

 

「落ち着け、スラフティンのカメラ映像を提出してくれ・・・それで馬鹿共の詳細が分かる」

 

「分かりました」

 

「すまない、いつも後手に回ってしまって」

 

将矢は千冬を責める事はしなかった。むしろ謝罪されてしまった事が彼にとって、自分の行動を反省するものとなったのだ。

 

「もう、耐えるな。己の身は己自身で守ってもいい」

 

「・・・・」

 

千冬の一言を聞いた後、一礼すると将矢はアリーナを出ていった。千冬は頭痛の種が増えていることに頭を悩ませていた。

 

「まだまだ、アイツを落とそうとする馬鹿がいたとはな・・・しかも上級生とは」

 

千冬は溜息を吐くと砕かれたメダルを回収し、職員室へと戻っていった。




今回は試験対策と未だに女尊男卑に染まっている上級生からの奇襲です。

その結果、自分の不手際でクイーンメダルを砕かれました。このクイーンメダルはメタビー達を発掘した後に再び遺跡で発掘したものです。その事に関しては後ほど。

マスタービートルになりましたが、完全に制御は出来ていません。

次回は一夏サイドです。
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