Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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一夏サイド






※以前、マッハマッシヴとマッハマッシヴRを一話限定で封印すると言いましたが、封印を開放します。ですが、この回では開放しません。


二十四話 理想と現実

時を同じくして一夏は山田先生に特別講義をしてもらっていた。姉である千冬から、このままではお前の夏休みは全て補習になるぞと警告された。

 

それだけはどうしても避けようと勉強を始め、箒が私が教えようと来たのだが訓練での事を思い出し、断った。

 

廊下を歩いていると山田先生を見つけ、強くお願いして講義をしてもらえる事になったのだ。

 

「・・・ダメだ、すごい難しい」

 

しかたない事とはいえ一夏は講義の内容に苦戦していた。IS学園は言い換えればエリート校、小中高と時間をかけてISに関する学問、一般教養などを身に付ける。一夏は一般中学校からエリートの学園へ特別条件で編入したのと同義だ。

 

講義の内容は高等学校の一年生の内容で、内容の濃さが一般とは違っているのだが、山田先生の解説は普段から予習復習をしていれば理解出来るくらいにわかりやすいものである。

 

「織斑君、復習などをサボっているからですよ。この機会にしっかり学んでくださいね?」

 

「はい」

 

真耶は基本、一人一人比べるような事はしない。生徒に寄り添いすぎるのが玉に瑕だが、生徒にしたわれやすい要因でもある。

 

講義は二時間ほどで終了し、一夏は山田先生にお礼を言って廊下を歩いていた。自分の中に浮かぶのは、臨海学校で告げられたセシリアからの現実的な言葉。

 

『これ以上、貴方から守るという言葉を聞きたくはありませんわ!己に足りない物を見つめ直しなさい!』

 

「・・・・」

 

何度もその言葉が頭の中で蘇る。ISを起動し、世界最強の姉と同じ力を持ち、自分と関わった全ての人を守るという目標を立てた。

 

だが、今に至るまで何一つ出来なかった。逆に周りから、特に実力が高い上級生や同学年であり、各国の代表候補生達からは出しゃばるなと、言われたにも等しい言葉を告げられた。

 

「何でだ・・・?俺はただ、みんなを守りたかっただけなのに。ヒーローなんかじゃなく、ただ・・・」

 

思い返せば返すほど、代表候補生達や将矢の内部人格である覇王にも言われた事が現実を帯びてくる。

 

戦いは男がするもの、女性も男が守るべきもの、その考えは間違っていないと信じて行動してきた。だが、自分の目の前に叩きつけられた現実は自分の力では何一つ守ることが出来ないという事であった。

 

将矢の事を思い返す、彼も自分と似たような境遇で友達になれると思った。しかし、彼とはほとんど会話を交わさなくなってしまった。クラス代表を決める戦いにおいて彼の戦い方が許せなかった。

 

罠を使い、相手の武器を破壊し、甚振るように相手を倒すことが許せず詰め寄った。

 

自分が叩き直そうとしたが、結果は返り討ち。相手が自分と同じ初心者で暴走してしまったのだから、倒せると考えた。

 

だが、彼の機体から出てきた凶暴なナニカに抵抗を試みたが逆に倒されてしまった周りの同級生達は慰めてくれたが心は晴れない。

 

クラス代表戦では無人機が乱入し、今度こそ自分が倒そうとした。そんな中で箒が狙われてしまい殺されたと思って自分は守れなかったと打ちのめされた。

 

結果をいえば守ったのは将矢で無人機を倒したのも将矢だ、でも、機体を暴走させやすくなっていたのか?とも考えた。

 

タッグマッチトーナメントでの出来事、あれは最も自分の手で解決したかった事だ。ラウラが姉のコピーとなって襲いかかってきたのだから。

 

許せなくて飛び出し、最強の力である零落白夜で倒そうとしたが逆に反撃され一撃で倒された。

 

自分が倒すべき相手を将矢に取られかけ、別の専用機があれば自分が戦えると思って将矢の専用機を貸してくれるよう言葉にした。

 

帰ってきた返答は断りだった。自分が倒さなきゃいけないのにと憤怒したが冷静な意見を口にしていたようだが聞く耳を持てなかった。

 

「・・・」

 

一度、将矢を倒そうとして挑んだことがあった。だが、将矢は徹底的に相手の弱点を突き、正々堂々からかけ離れた戦闘を仕掛けてきた。格闘には射撃を用意し、素早く移動可能で高火力の武装。

 

戦略に対して卑怯だと言いたかった、でも言えない。それを口にしたら他のISの戦略を全て否定する事になるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも俺は正々堂々、この言葉が好きだ。誰もが認め合い競い合って行く考えだからだ。それを伝えたいだけなのに耳を傾けてくれるのはクラスメートたちだけだった。

 

セシリアや鈴達は余計なお世話だといった、それなら俺はこのクラスメート達を守ってみせると。

 

真っ先によぎるのが守られたくないという言葉だった。思い出すだけで歯ぎしりしてしまう。

 

「・・・・っ!」

 

何がいけないんだ?男が女を守るのは当然の事じゃないのか?俺は自分が格上だなんて思った事はない。ただ、大切だから守りたいだけなんだ。

 

「俺に足りない物って・・・一体?」

 

考えてみるが答えが出ない。理不尽、不幸、一方的な権利、それが許せない。それは当然の事ではないなのだろうか?

 

本人は気づいていないが一夏は一つの快感を求めているのだ。確かに正義を執行するのは誰しも美しく、正しいと思えるだろう。

 

だが、その裏には正義に塗り固められた中にどうしても止められない愉悦がある。それが「弱者へと愛を施す」という事だ。極端に言えばこれは強者の傲慢だ。

 

彼自身は本当にそんなつもりはないのだろう。偶然とはいえ、力を授けられたからこそ自分は強くなったのだから守りたいという感情が溢れたのだ。

 

強者に向かっていく姿勢、大切だと思えるものを壊したくないという思考。誰であれ一度は思う事だろう。

 

だが、その行動が行き過ぎれば聖者を目指すようになってしまう。愛と優しさによって自分を慕ってくる人間よりも格上になっているという快感から逃れられなくなる。

 

無意識下で一夏はそれを求めているのだ。自分はヒーローではなく、正しい行いをしている人間なのだから守らなければならないと。

 

しかし、彼の理想は現実という壁によって阻まれてきていた。彼の中で自分は強者の位置にいると無意識に置いている。

 

だが、実際は代表候補生どころか、真面目に訓練してきた一般生徒よりも実力が低いのだ。勉学も同じくギリギリでついて行けるレベルである。

 

確かに長年、ISについて学んだり訓練している者との差は開いているのは仕方ないと言えるだろう。

 

問題は追いつく姿勢を見せるか、見せないかだけなのだ。彼は後者に位置している。IS学園は基本、高等学校に相当する一般教養に加えてISの学問を教えている機関だ。

 

確かに高校生というものはある種の自由が約束されている。勉学、部活動、アルバイト、稽古事など多種多様だ。

 

授業だけで疲れてしまえば、やる気が出ないなどは多いだろう。いや、むしろその方が自然だ。

 

 

 

 

 

 

 

「訓練しないとな・・・」

 

一夏はアリーナに赴くと仮想敵を自分のイメージで作り上げ、刀を振るう。倒した瞬間に知るが、これはあくまで自分の理想でしかない。

 

これで勝てても意味はない、どこかで理解しているのだが勝利したという過程はどうやっても抜け出すのは難しい。

 

「違う・・・俺が最も倒すべきなのは」

 

イメージをより強めて現実的な思考で仮想敵を作り上げていく。現れたのはビーストマスターとゴッドエンペラーが二体同時に対峙している状態だ。

 

「うう・・・」

 

一夏の脳内にはビーストマスターの咆哮、ゴッドエンペラーの威圧感が嫌という程、記憶されている。

 

それらを明確に思い出しつつ、刀を振るう。だが、デスブラスト、デスレーザーを撃たれるイメージをしてしまい、それに飲み込まれてしまった。

 

「はぁ・・はぁ・・・くそぉ!」

 

どんなにイメージやシュミレートをしても勝利できるイメージが浮かばない。しかも、この二体は将矢自身ではなく、暴走状態での場合のみでしか想定できない。

 

「アイツがもし、制御して俺の前に現れたら・・・・」

 

ビーストマスターとゴッドエンペラーを倒し、己の中にある恐怖を取り除きたいと願っている。だが、それは叶わないのが現状である。

 

 

「いや、来たのなら負けられない・・・」

 

再び俺は2機のイメージを作り上げて戦う。どんなにやっても勝てるイメージが浮かばないのは何でだ?零落白夜を切りつける瞬間だけに使うようにしても弾幕を展開され、爆煙の中で必殺されてしまう。

 

「ダメだ・・・イメージだけじゃ意味がない」

 

どうすればいいんだ、箒との訓練は剣道ばかりで意味がない。セシリア達と訓練した時は接近戦と射撃戦の間合いの違いを思い知らされただけだ。

 

将矢と戦った時はそれ以上の大火力・・・アークビートルに敗北した。問題はそれだけじゃない。

 

スラフティンから溢れる光と共に放たれる一撃、名前は分からないがあれが最強の一撃だ。それが何なのかが分からない。

 

「将矢にあって俺に無いもの・・・」

 

アイツは戦う時は必ず相手を調べる。なぜ調べるんだ?一度だけ理由を聞いたら。

 

『相手を調べて対策を立てるのは戦いの基本中の基本、何も知らないまま戦うなんて無謀だよ』

 

そんな答えが返ってきて、最初の時はそれが卑怯だと思っていた。でも、冷静になって考えてみたら当然の事を当然だと言われただけに過ぎなかった。

 

スポーツ、特に団体競技であるのなら相手の特性を調べて対策するのは当然だ。俺はそれを卑怯だと罵ってしまうところだった。

 

「俺とアイツに変わりはないはず、なのになんで俺は負ける?勝てない訳がないのに・・・」

 

俺に足りないのは力なのか?訓練なのか?強さが欲しい、みんな守れる力を。

 

『貴方に守られたくはありませんわ!!』

 

『自分の弱さを自覚しなさいよ!』

 

『君はいつも後回し思考だね?』

 

『弱者が出しゃばるな』

 

『現実を聞かされても耳に入れないガキが!』

 

自分の幼馴染、新しく出会った者、幼い時にお世話になった相手から言われた事を思い返す。現実を知れという言葉、代表候補生のみんなは俺が弱いんだという事を言ってきてるのだ。

 

「違う、俺は弱くない!俺は千冬姉の力を持って!」

 

『貴様は借り受けた力を、己自身の力と勘違いしている愚か者に過ぎん』

 

別人格になった将矢から突きつけられた一番聞きたくない言葉を思い出す。お前の力はただ借りているだけで俺の実力ではないと。

 

「俺は・・・俺は弱くない!」

 

どんなに叫んでも現実はのしかかる。どんなに考えても俺は自分で編み出したものが何一つない。零落白夜を斬りつける時に発動するという手段は千冬姉から教わり、訓練の方法も千冬姉に考えてもらったものだ。

 

「く・・」

 

結局、俺は千冬姉に甘えている。千冬姉の名前があって、千冬姉が築き上げた実績があって、千冬姉が磨き上げた力を貰った。

 

それが現実なのだと改めて自覚させられる。結局、自分は織斑千冬という存在から逃げられないのだと。

 

「ちくしょう!俺は・・!そうだ・・スラフティンだ、あれさえ・・・アレさえなんとか」

 

彼の中からスラフティンに対する負の感情が芽を出してしまった。目の前に現れるのなら破壊すると。

 

 




葛藤なのか、認めたくないのか、はたまた両方なのか。

現実って辛いですよね、死にたくなるくらいに。

目を背けて逃げてもいずれは巡り巡って自分に帰ってくる、まさに因果応報。

それが現実なんだと思います。己の立場を理解してしまった人間は立ち上がろうとも、人間関係、金銭や生活といった環境状態、信心などで諦めてしまうのでしょうね。
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