Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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月からの刺客の前触れ


二十八話 宇宙からの侵略の篝火

夏休みを終え、登校日の今日。将矢は久々に教室へと戻ってきた。だが、内面では心を許せる相手がほとんどいない。

 

束とクロエとの生活によって良い方向に持って行けても、完治するのが難しいのが心なのだ。

 

束の住んでいる場所でも訓練と勉強をしていたが、束本人から今は休養を取ることが大切だと言われて勉強と訓練を止められてしまっていた。それでも、宿題や復習などは簡単にしていたのは忘れていない。

 

「おはようございます。将矢さん」

 

「あ、おはよう。それと久しぶりセシリア」

 

「はい、お久しぶりです」

 

セシリアはあれから、自分が得意としている射撃を妨害されてしまう場合を想定した訓練を母国で行っていた。

 

代表候補生の訓練という名目を使い、軍事訓練と同等に近いレベルでのガン・カタの訓練を自ら志願したのだ。

 

銃器による格闘術。本来ブルー・ティアーズにはナイフ型の武装であるインターセプターが装備されているが、実戦で使うとなると展開に時間がかかってしまう。

 

それならば初めから、展開が早いライフルを鈍器として使う方が早いと己で気付く事ができたのだ。

 

しかし、そう簡単にガン・カタを一か月から二ヶ月という短い期間で身に着けられるものではない。

 

今も尚、彼女は訓練メニューを作成してもらい、それを行っている。学園に戻ってきたとなれば実戦に近い訓練を行うことができるはずと期待もあった。

 

「将矢さん、機会があれば手合わせをお願いできますか?」

 

「もちろんだよ」

 

「ありがとうございます」

 

セシリアと言葉を交わしている中もう一人、遠目に雰囲気が変わった者がいた。篠ノ之箒である。

 

今までの彼女は何処か独善的で、一夏の事だけしか眼中になく、束の妹という立場を利用したり、気に入らないことがあれば竹刀で人を殴る事もする人間であった。

 

だが、今の彼女は正に日本特有の凛々しさと穏やかさをもった女性の雰囲気に変わっていたのだ。

 

この劇的な変化に最も驚いているのは一夏だろう。今まで暴力的な一面と強引な部分しか見せていなかった彼女が夏休みの間に変わったのだから。

 

「よ、よう?箒」

 

「久しいな。ちゃんと千冬さんに課された訓練をして勉学も怠らなかったか?一夏」

 

「あ、ああ・・・一応、だけど」

 

「そうか、そろそろ予鈴が鳴るから席に戻ったほうがいいぞ」

 

彼女の変化に一夏は戸惑った。以前ならば慌てた様子を見せていたのに今の彼女は冷静に対応しているのだから。

 

 

予鈴が鳴り響き、教師二人が教室に入ってくる。全員が一瞬で静かになって教卓へと体を向けた。

 

「諸君、おはよう。夏休みはキチンとしていたか?これからは一年の後半に入る気を引き締めてかかれ」

 

「はい!」

 

千冬の挨拶が終わり、真耶が挨拶に入る。変わらない挨拶をした後に生徒へと言葉を紡ぐ。

 

「皆さん、一年生の後半からは訓練も厳しくなってきます。勉強も怠らないよう精進してくださいね?」

 

「はーい!」

 

優しさの中にある厳しい言葉だが、これこそが真耶の指導なのだ。厳しさだけでも優しさだけでも良くない、両方を使えて初めて成長させる事ができるのだから。

 

 

 

 

 

休み時間となり、将矢に話しかけてきた人物がいた。VT事件以来、会話をする事のなかったラウラだ。

 

「土谷将矢」

 

「ん?なんだ?確か・・・ラウラ、だっけ?」

 

会話をしていない相手ではあるが、必要最低限はしないといけない考え故に将矢はラウラと話をする。

 

「ああ、それでいい。貴様に頼みたい事があるのだが」

 

「頼みたいこと?」

 

「私と模擬戦をして欲しい。済まないがスラフティンのデータを集めて来いと本国に言われてしまっているのでな?無論、ISとしてのデータだけしか取らん」

 

「うーん、わかった。じゃあ今日の放課後でいいかな?」

 

「頼む、出来れば・・・私を助けてくれた時のパーツを使って欲しいのだが」

 

「構わないよ。じゃあ放課後に」

 

「うむ」

 

約束だけを取り付けると、ラウラは薄く笑みを見せて自分の席へと戻っていった。

 

将矢自身も鍛錬をしたいという欲求に駆られている。所謂、男の野生としての部分が出てきているのだ。

 

どんなに優しくても男の中にある原始的な戦いの欲求を押さえ込むのが難しい。

 

故にどんな形であれ、戦いを求めてしまっているのだ。

 

 

 

 

職員室では将矢が学園に戻ってきた事を驚きと同時に、機体を奪えないかという思考をする者が相変わらずいる。

 

だが、厳重命令によってスラフティンを奪えば懲戒免職になってしまうのだ。

 

それでも狙おうとする輩は後を絶たない。機体の希少性、研究の度合いなど価値は多様にある。

 

「・・・厳命さえなければ」

 

そんな事を考える一人の女性がいた。彼女の思考には女尊男卑による支配と己が望む富しか頭にないのである。

 

それを地球から遥か先にあるとある場所から見定めをされているとも気づかずに。

 

 

 

 

 

放課後、セシリアの他にラウラとシャルロットが集まっていた。シャルロットが来たのはデータ目的ではなく、純粋な訓練であった。ラウラの誘いに乗り、彼と訓練出来るとのことで着いてきたのである。

 

「では、ラウラさん。将矢さんとの模擬戦の審判をわたくしが務めさせていただきますわ」

 

「頼む」

 

「じゃあ、行くよ?スラフティン、転送!モード・クワガタ、ヘッドシザーズ、アクティブ!!」

 

「来い!レーゲン!」

 

一番最初の相棒、ヘッドシザーズことロクショウのパーツを装着したスラフティンと、新たなデータ収集のためにドイツ軍で修理・復元されたシュヴァルツェア・レーゲンが並び立つ。

 

「あの時は戦えなかったが、私自身の力と意志でお前に挑む!行くぞ!!」

 

「お手柔らかにね」

 

「では、始め!」

 

セシリアの掛け声と共にラウラは砲撃、将矢は突撃を仕掛ける。ただ、闇雲に突撃するのではなくステップなどの歩法を取り入れた独自のリズムを刻む突撃だ。

 

「!私の狙い方を知られているのか?」

 

「当然だよ。夏休みでも代表候補生のデータ見ていたからね。対策を考えないと俺はあっという間に負けるもの。今回は模擬戦、しかもラウラの頼みで純パーツ構成だけど、本番は組み替えるよ」

 

「言い訳にはしてないようだな、まさに脱帽だ。だが負けん!」

 

射撃からワイヤーブレード戦術に切り替える。AICを使わないのは知られている事もあるが、なによりもこの戦いを長く続けていたいというラウラの気持ちだ。

 

すぐに決着をつけてしまうのは勿体無い。どのような戦いを、どんな戦術を、何を考え、何を思って期待を使っているのか?その全てをラウラは知りたいと感じていた。

 

「そこだぁ!」

 

「悪いけど、手数の多い戦略は慣れてる!」

 

ワイヤーブレードの攻撃地点を先読みしているかのように回避し、チャンバラソードによる斬撃を繰り出し、それを回避するも僅かに当たり、エネルギーを削られてしまう。

 

彼もまたロクショウとの特訓で瞑想をさせられていたのだ。それによって心眼が開花した!という訳ではなく、落下地点へ向かってくる角度を冷静に予測できるようになっただけである。

 

それだけでも大した事なのだが、軽い訓練と銘打って予測できるまでロクショウに鍛え上げられた。

 

予測なので完全に回避できるわけではなく、エネルギーも削られ走行の一部に傷がつけられている。

 

「この攻撃を最小限のダメージに抑えるとは!」

 

「完全に回避だなんて贅沢は言えないからね。だけど!」

 

「しまっ!」

 

がむしゃらに突撃してきたスラフティンの行動に一瞬だけ油断してしまい、ピコペコハンマーの一撃を腹部に受けてしまい、ラウラに凄まじいほどの衝撃が与えられた。

 

「ぐああああ!?ぐっ・・・なんという重い一撃」

 

『あれを耐えるとはな・・・流石に軍所属は伊達ではないという事か』

 

「俺以上に厳しい訓練を乗り越えてきてるはずだし、タフなのは当たり前だよ」

 

「ふふ、もう小細工はせん!これで勝負をつける!」

 

手刀のブレードで接近戦を仕掛け、連続攻撃を加えてくるラウラにチャンバラソードで切り返す将矢。

 

軍人であるラウラに対抗できているだけでも、賞賛に値するだろう。だが。

 

「そこまで!時間切れですわ」

 

「む、時間切れか」

 

「判定は?」

 

「ラウラさんの勝利ですわ。僅かにシールド値が上回っています」

 

セシリアの判定は優遇するということはしない、シールドエネルギーの数値を見て第三者の視点から判定を下したのだ。

 

「負けたか、悔しいな」

 

「判定勝ちでは勝ったとは言えない。次こそ機能停止に追い込んでみせる」

 

「こちらもね」

 

互いの健闘を称え、握手した後にシャルロットも会話に入ってくる。

 

「すごかったよ!僕もうかうかしていられない」

 

「今度は射撃戦で模擬をしようか?シャルロット」

 

「うん、でも今日はセシリアとだから」

 

「わかってるよ」

 

今度はラウラが審判を努め、セシリアとシャルロットの戦いを将矢は見学するためにピットへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

その頃、地球から離れた衛星である月において蠢くものがあった。

 

「レアメダル・・・オマエタチヲ」

 

巨大な機械の体に、赤く光る目を持ったメダロットのような何かは月の内部で標的を定めていた。

 

「リヨウデキル、ニンゲンガヒツヨウ」

 

解析を進めながら、月に潜む者はある人物に目を付ける。ノイズがあり顔を伺うことはできない。

 

「チジョウニウツッタ・・・ウラギリモノノドウホウモロトモ、ホロボシテクレル」

 

そして、月から一つの物体が射出され、地球へと落下していった。この物体こそが将矢とメダロット達が最大の戦いへ導くことになるのを未だ誰も知らない。

 

 




ようやく出せた。ラスボス

ラスボスは月にいます。後々侵攻してきます。
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