Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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復活の準備と世間と学園への発表


三十四話 利権と本性

ブラックデビルの襲来から二日経ち、IS学園では貴重な男性操縦者を死亡させたとして、IS委員会からの警告と制裁を受けてしまった。

 

残った唯一の男性操縦者である織斑一夏を守り抜く事を条件に制裁を温床してもらえたが、教員の表情は暗い。

 

更にはスラフティンの引渡しもIS委員会から要求されたが、篠ノ之束が回収してしまったと報告し、収拾させた。

 

この事には流石に教師全員と学園長である十蔵もため息を吐かざるを得ない。あの激闘で委員会の部隊は援護をしてくれたが、事実IS学園の生徒が解決したといっていい。

 

自分達の利益と金利だけを求めているのを垣間見てしまった故に、疲れきってしまったのだ。

 

「はぁ・・・由々しき自体ですね」

 

「全くだ」

 

真耶と千冬の二人も流石に疲れと胃腸に対するストレスのダメージが強い。男性操縦者を死なせたというダメージが大きく、資金を断ち切られかねないといった状況でもあり、事後処理にも対応しなくてはならず、二人は今現在、27時までの残業漬けである。

 

「先輩・・・終わったら飲みましょう?」

 

「そうだな・・・迷惑も考えて宅飲みでな」

 

 

二人はユニゾンのように同時に溜息を吐いた。

 

 

 

 

その頃、束は残り三日と迫ったスーパームーンによる将矢達の復活の準備とそれに対する発表をする為、世界中の情報端末とテレビをハッキングするためにコンピューターのキーを叩いていた。

 

「特権は使うためにあるもの、ふふん!でも、あと少し準備が必要だからね」

 

束の研究所では将矢が発掘したレアメダルとBメダルが保管されており、彼の肉体も安置されている。

 

溶液が入ったカプセルによって保存されており、今は魂の入っていない抜け殻ではあるが戻す場所を確保してある。

 

「オカルトだろうがなんだろうが、利用させてもらうだけ・・・さて、準備完了。放送開始」

 

エンターキーを押し、全世界の映像をハッキングし、自分そっくりのヴァーチャルアバターに代弁させる。

 

無論、音声だけは自分の生放送である。

 

「はろはろー、みんなのアイドル束さんだよー!今回は重大な発表があるから世界中の映像端末を借りてるよー!イェイ!!」

 

いつものお調子者づいた会話で皆の注目を集める。こうする事で興味のない者も惹きつけることが出来る。

 

「その重大発表というのは、世界中のみんなの為に命を投げ出したもう一人の男性操縦者である土谷将矢!彼が生きているという情報だよ!」

 

二人いた男性操縦者の一人、土谷将矢。彼が生きている、IS開発者である束からの発表に世界中が驚きを隠せない。

 

無理もないだろう。正式に死んだとされる人間が生きていると発表されたのだから。

 

「この束さんが直々に調べたんだけど、彼は仮死状態に近い状態である事が解ったよー!だから、束さんが蘇生させてみるから結果を待っててねー!」

 

仮死状態というのは半分真実で、半分が嘘である。事実、彼は本当に死んでいる、それをナノマシンの活性化と特殊溶液にによって肉体を生かしているだけだ。

 

「勝負は三日後、つーくんだけじゃない。ロクショウもメタビーも、ブラックの二人も、ビーストマスター、ゴッドエンペラーだって戻してみせるから!!」

 

束の決意は固い。彼女は手の中にある宝石を失いたくはないと考えているからだ。努力という名の可能性、追いかけるという足掻き、醜くとも先に進む意志を見せてくれた相手を。

 

 

 

 

 

 

束からの放送によってIS委員会を始めとした機関は大混乱に陥っていた。死んだと思われていた相手が生きていた。それだけでも重大であり、対応に追われることになったからだ。

 

一方、IS学園では歓喜の声が上がっていた。教員の中には彼に非礼を詫び用と考えている者、取りなそうとする者、態度を変えない者など多種多様だ。

 

「彼、生きていたんですね!!」

 

「だな、嬉しいが束のは結果次第だからヌカ喜びは出来んぞ?」

 

「あ、確かに・・・」

 

「だが、希望が出てきたという事だ。私達も信じよう、アイツが帰ってくる事を」

 

「そうですね。出迎えてあげないと」

 

真耶は表情が明るくなり、千冬は口元が緩んでいた。やはり、死んだと思っていた生徒が生きていたのは嬉しいのだろう。その日の二人は笑顔で仕事が出来た事に喜んでいた。

 

 

 

 

 

 

同時刻、生徒寮では代表候補生達が食堂に集まり、会話をしていた。話題は束の発表の内容である。

 

「将矢さんが・・・生きているとおっしゃっていましたわ!!」

 

「束博士の発表でしょ?私も見たわよ!」

 

「でも、仮死状態だって・・・」

 

「仮死ならば生きているという事だ。希望はまだある」

 

「そうだな、今の私達が出来るのはアイツが戻ってきた時、出迎えてやらないとな」

 

箒の言葉に全員が目を丸くする。それほどまでに意外な言葉だったのか、箒は首を傾げている。

 

「箒さん、変わりましたわね?」

 

「本当ね、今まで自分勝手な発言が多かったのに」

 

「それに関しては自覚しているんだ。あまり言わないでくれ・・・」

 

セシリアと鈴の言葉に少し顔を赤らめ、俯いてしまった。自分が未熟だった時の過去は、黒歴史にしたいものなのだろう。

 

「二人共、からかわないであげようよ」

 

「だが、箒の言う事には私も賛成だ。アイツが土谷将矢が戻ってきた時に暖かく迎えてやらねばな」

 

シャルロットが注意しつつ、ラウラは箒の意見に賛成であった。彼はひょっとした人間不信のまま戻ってくるかも知れない、そう考えると不安がある。

 

「わかっていますわ」

 

「だけど、アイツを一発殴らないと気が済まないわ。心配かけたんだから」

 

「全くだな」

 

セシリアを除いた四人は将矢に対して、特別な感情を持ち合わせてはいない。ISバトルによるライバルとして。戦って実力を上げているのか知りたいなどの思いがある。

 

彼が戻ってくる事で自分の弱点、対策される事を分析した意見がもらえる。それが目的なのであった。

 

 

 

 

 

 

代表候補生達が話している中、一人アリーナに居た一夏も束の発表を聞いていた。訓練用の木刀での素振りを終わらせたと同時に発表され、歯を強く噛み締めた。

 

「っ生きていたのか・・・アイツ」

 

一夏は利き手の手で強く、握り拳を作っていた。彼の中にもどうして死んだままじゃなかったんだという女性利権団体が抱きそうな感情はあったのだろう。

 

だが、それは逆に考えれば一夏は将矢に対し、嫉妬と羨望を持っている事に他ならない。

 

自分が得ようと望んだ力、成し遂げようとした皆を守るという実績、誰にも負けない自分、それらは全て普通の人間ならば欲して当たり前である。

 

今の彼は、将矢がその全てを持っているように見えて仕方が無かった。しかし、彼が一夏と戦ったのはスラフティンがサムライのパーツを展開していた時が初であり、一夏や上級生と戦ったのはブラックスタッグやビートル、ビーストマスター、ゴッドエンペラー自身であった。

 

今の彼はそれを信じようとしないだろう。己の目に映るもの全てと女性を傷つけてはならない、男は戦うものであるという考えが強まっているのだ。

 

「戻ってきたら、今度は俺が・・・!」

 

世界最強の称号を得た姉を持つ自分が、その名に泥を塗ってしまった。その名誉の挽回のために将矢を倒そうとしている。

 

今、彼の視野は極端に狭まっている。同じ単一仕様能力が扱えるからこそ、自分は姉と同じである。この考えこそが彼の視野を狭め、成長を阻害している一因だ。

 

彼自身の戦闘センスは元々高く、操縦時間が少なくとも戦えたのはセンスによるものが大きい。ポテンシャルとしては将矢以上のものを持っているはずである。

 

だが、力を得た事で『名誉を守る』から『自分が守ると思ったもの全てを守る』という目的に変わってしまった。

 

「・・・今度こそ、俺が皆を守れるって証明する!」

 

彼の守るものが、姉と自身の名誉であったのなら、実力を磨くための目標にも変わったかもしれない。

 

しかし、彼は箒や鈴、自分と関わってきた人間全てを一人で守ろうとしてしまった。

 

これは持ちきれない荷物を誰の手も借りずに、一人で運び続けようとしているようなものである。

 

そんな事が可能なのか?答えは否である。そんな事をすれば自分の体力が追いつかず、疲れ果てるか。諦めて荷物を放置し、逃げ出してしまうことだろう。

 

それを臨海学校時などで、代表候補生のセシリアや将矢の人格である覇王が指摘していたのだ。

 

だが、頑なにそれを否定し続けた。自分は全てを守れると、それを抑止しているのがビーストマスターとゴッドエンペラーの二機だ。

 

この二機は元々兵器型として開発され、圧倒的な力を持っているのは明白であった。彼らも望んで兵器型になった訳ではない。その火力によって人によっては忌み嫌い、化物と呼ぶだろう。

 

しかし皮肉な事ではあるが、この二機が居るからこそ、一夏の成長に繋がっている。

 

圧倒的な力を持つ、この二機を倒した時こそ自分が姉と同じ境地に入れるはずという、目標が出来てしまっているのだ。

 

だからこそ、彼は白式を進化させる事が出来たのだ。いびつな目標ではあるが成長の要因であることには変わりはない。

 

一夏自身、それに気づいてはいない。女性の告白すらも別方向に解釈する鈍感さによって自分が良いと思っている言葉に変換してしまう悪癖が出来てしまっているのが、彼の最大の弱点であろう。

 

 

 

 

 

 

女性利権団体では将矢の復活と、IS学園にあるスラフティンのデータを強奪しようと策を講じていた。

 

「あの男が生きて意識を取り戻した瞬間、どれだけの被害になるかわからない。見つけ次第、始末しろ」

 

「はい」

 

「それと同時にあの男性操縦者が使っていた機体のデータを全て奪取してくるように、あれさえあれば私達は一生安泰になる」

 

「了解しました」

 

刷り込みと洗脳教育によって忠実な兵士となっている直属の兵達が、次々とIS萼片へと向かっていった。

 

「女性のための、女性による、女性の社会。それこそが我が団体の理念!男など取るに足りない口ばかりの存在よ!」

 

団体の代表は女尊男卑主義者であるらしく、将矢の始末と学園への強襲を微塵も悪いことだとは思っていない様子だ。

 

ISを生み出した日本。今現在は女性が圧倒的に優遇され、男性というだけで仕事を失くしたり、産み落とされた男児の赤ん坊が捨てられていたり、なんの罪もない男性に対し冤罪をかけたりなどやりたい放題の社会となっているのが現状だ。

 

男性達もただ黙って動かずにいるだけではない。彼らは転覆を淡々と狙っており、女尊男卑の世界を壊そうとしている。

 

大半は報復が目的であろう。締められすぎた人間というのは極限まで張り詰めた糸のようなもので、それが切れたろうなるか?

 

最悪、亡くなるか、報復の道を選ぶであろう。自分達のやってきた仕打ちがそのまま返されるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

「間違った・・・でも、私はどうすれば」

 

そう、つぶやいたのはビーストマスターを止めたあの白いワンピースの女の子であった。彼女は黄昏を見つめたま、動こうとしない。それどころか泣きそうになってしまっている。

 

「私は・・・私は戦いが欲しいんじゃない!自由が欲しいだけ、青空を飛べる自由が欲しい」

 

この黄昏は彼女自身の心の風景であり、一夏の精神状態でもある。黄昏という事は一夏は善にも悪にもなれない、中途半端な状態であるということ。

 

「誰か・・・私に空を飛べる自由を下さい、助けてください・・・」

 

彼女の悲痛の叫びは自分自身と、風景の一つである黄昏の海へと消えていった。




はい、利権団体が大慌てです。

コアの医師も悲痛な叫び。

求めたって良いじゃないか、それすら自由だもの。

次回は女尊男卑利権団体がIS学園へと襲いかかる。

圧倒的な物量で押し込もうとする中、彼が復活する。



お前ら、絶対に許さないからな!
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