Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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団体を撃退




三十六話 正義の衣を纏った悪

「おのれ・・・たかが男の分際で、死人は死人らしく死んでいろおおお!!」

 

VTシステムを発動させた状態で、自我を保っていられるのは部隊長としての実力か、それとも教示なのかはわからないが、蘇った将矢へ向かっていき刃を振り下ろした。

 

「そうだな、確かに・・・死んでいた人間が復活するなんて道理に反していると自分でも思っているよ」

 

その刃を真剣白刃取りで受け止める。本来の雪片や一夏の使っている雪片弐型とは違い、VTシステムでコピーされただけの雪片は零落白夜を発動させることは出来ない。

 

「な・・・に?」

 

「でも、俺はこの星とは異なる存在に告げた。生きたいと!生きてロクショウ達や皆と生きたいと強く思った!」

 

少しずつ刃が横へと逸らされていく。スラフティンの補助と将矢自身の筋力が刃を力ずくで押し返している。

 

「だからこそ、今俺はアンタ達を倒す!一方的な要求と己の欲望しか考えない人間と!」

 

刃を逸らすと蹴りを打ち込み、間合いを離す。ロクショウ、正式名称ヘッドシザースの純正なパーツ一式なはずなのに、パワーが桁違いに上がっていることを代表候補生達は気づいていた。

 

これはメダルの成長が関係しており、メダルには成長と格付の概念がある。例えばクワガタメダルであるのなら初期値の状態は幼虫であり、能力もパーツの相性による基本値しかない。

 

だが、将矢が手にしているレアメダル達はランクA-0となっていた。これはランクが最高値になっている事を意味している。

 

ブラックデビルとの戦いによって文字通り、一度命を失い地上の遺跡にある地底湖の天然の力と敵側であった月の輝きの力によって復活した影響だろう。

 

だが、ランクはあくまでも数値上でしかない。彼の力の源はメダル達とそれを繋ぐスラフティン、己が積み上げてきた努力、何よりも誰もが持つ生きたいという願望だ。

 

確かに一度死んだ。死んだからこそ生きる意味を知った、生きていれば辛い事も苦しい事もたくさんあって、死にたくなる時もある。

 

死は権利であり、安易に死ぬなとは彼自身、言わない。己が納得して生を終えられる、それこそが至上なのではないかと。

 

「おのれ!男がああああ!」

 

「ISは権力の象徴じゃない!ISは開発した人の夢なんだ!それを勝手に象徴に変えただけだろう!その考えを焼き尽くす!スラフティン!パーツ換装、ヘルフェニックス!」

 

掛け声を掛けると同時にスラフティンのパーツが変更される。炎のような輝きに包まれ、中から姿を現す。

 

頭部ブラストガン 右腕ファイアガン 左腕フレイムガン 脚部レッドテイル。

 

飛行型のメダロットの一つ、ヘルフェニックスの姿となったスラフティンは炎のように燃え上がる光を見せている。

 

「な・・・なんだその姿は!?」

 

「ヘルフェニックス・・・名前は格好いい方だけど攻撃力は低いし、強いとは言えない。だが、コイツには特殊な攻撃方法がある」

 

砲口のような部分から火炎を放つ。一見、射撃武器のように見えるが、実際は射撃ではなく格闘なのである。

 

「ぐうう!火炎放射だと!だが、この程度の威力など!」

 

「低威力じゃ、絶対防御の影響でVTシステム相手に意味はないよ!」

 

「低威力・・・火炎放射・・・はっ!?」

 

シャルロットが戦術を間違えていると声を上げるが、セシリアは何か気づいたようにハッとした。将矢から学んだ弱い攻撃には必ず意味があるという言葉を思い出したのだ。

 

「将矢さん、継続ダメージを狙っていますわね。確かにVTシステムで織斑先生と同じ動きになっているのなら・・・隙があっても重い一撃は当てることが難しい、でも・・継続ダメージなら!」

 

一度は当たったファイヤー攻撃も次第に見切られ始めており、部隊長は反撃に打って出ている。だが、その動きは時間が経ては立つほど鈍くなり始めていた。

 

「な、何故だ!?攻撃は躱している・・・動きが鈍くなって」

 

「シールドエネルギーを確認してみたらどうかな?俺が何故、火炎放射なんていう武器を使ったのか理解できるから」

 

「何?こ、これは!」

 

部隊長がエネルギー値を確認すると、一の位の数字が減っていくのが確認できた。継続ダメージが続いている証拠だ。

 

「継続ダメージ、スラフティンが火炎放射、硫酸などを使った攻撃に発生するものさ。時間が経てば解除されるけど俺がさせるとは思わないで欲しいね」

 

ヘルフェニックスの頭部、両腕は全てが火炎放射器になっている。フェニックスの名を冠してはいるが、将矢が口にしたとおり強さは低い部類に入る。

 

それを補うのが使用者の力なのだが、効果的な戦略はブラックビートルやロクショウから受けている。

 

「うぐああああ!おのれえええ!!」

 

威力の低い火炎放射は絶対防御によって操縦者は完璧に守られるが、機体のエネルギーは減り続け、機体自身は焦げ付きが目立ち始めた。

 

「気づいてないのか・・・VTシステム?それを使った時点で貴女の持ち味は潰されてるんだよ」

 

VTシステムのメリットは世界最強の人物の動きを再現出来る事にある。だが、その弊害として戦闘がオートモードとなり、その人物が得意とする戦術しか使えなくなってしまうのだ。

 

部隊長がVTシステムで再現したのは全盛期の織斑千冬だ。だが、将矢を含めたメダルの意思達はその動きを知り尽くしている。言い換えれば世界中の誰もが研究、対策などを立てているという事になる。

 

実力の低い人間や接近戦を主に使用する選手ならば、ある程度まで戦略と一致して使えるだろう。しかし、遠距離を得意とする人間や射撃と格闘の両者を鍛えた事で効果的な戦略を立てられる人間が使えばどうなるか。

 

結果は弱体化となってしまう。遠距離武装を使おうとしても己自身では動かせず、機械によって制御され続けているために動きが取れないのだから。

 

「ぐうう、貴様!」

 

「VTシステムを使わなかったら俺が負けてた。パーツ換装!サイカチス!」

 

頭部バリスター 右腕ヒューザー 左腕ブラスター 脚部エンプレイス。

 

メタルビートルよりも装甲がスマートになっており、変形機構が組み込まれていることが伺える。本来、変形機構は地上用だが、スラフティンは空中戦用として改修されている。

 

『行くぜ!』

 

メタビーが得意とする両腕からの同時射撃。継続ダメージを与えられていた状態ではこの攻撃を回避するのは難しく、弾丸の雨を浴びてしまう。

 

「これで!バリスター発射!!」

 

カブトムシの角を模した砲口から発射されたホーミングミサイルが部隊長へと命中し、VTシステムが解除され通常の機体状態へと戻ってしまう。

 

無論、撃墜したが命までは奪っておらずシステムの影響と爆発による衝撃で気を失っているのを将矢は落下から救い、地上へと降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上へ降りると同時にスラフティンが解除される。男にしては少し髪が伸びており、身体つきもほんの少し筋肉質になっていた。少し風が出てきて髪を靡かせている。

 

「将矢さ・・・ん」

 

「本当に」

 

「生きていたんだ・・・・」

 

「・・・・」

 

「なんと言えばいいか・・・」

 

代表候補生達はなんと声をかければいいか分からなかった。仮死状態だと発表されていたが、自分達は実際に死んでいたのを確認したのだから。

 

将矢が一歩一歩、近づいてくる。全員がすぐ近くで声をかけられる範囲まで来ると口を開いた。

 

「・・・・ただいま」

 

その一言が将矢を知っている全員を駆け寄らせるには十分であった。駆け寄るだけで抱きついたりはしておらず、将矢も少し話すと教員二人の近くへ向かう。

 

「織斑先生、土谷将矢・・・帰還しました」

 

「うむ、よく戻った」

 

「よかった・・・本当によかったです!」

 

真耶は大泣きしており、千冬も顔に笑みが出ている。それで終わると思った矢先。

 

「こんの、心配かけてー!!」

 

「ぐはっ!?」

 

鈴の渾身の体当たりである。それほどまでに悲しんでいた事の反動だろう。これでまた彼と切磋琢磨が出来るのが嬉しくて仕方がないのだから。

 

「俺・・・病み上がりならぬ死に上がりなんだけどなぁ・・・」

 

「あれだけ戦闘をこなしていて、どの口が言うのだ」

 

「その言葉に同意する」

 

ラウラと箒は同じ事を考えていたらしく、言葉が辛辣だが嬉しさが顔に出ているのに気づいていない。

 

「ようやく、借りが返せるかな」

 

シャルロットも笑みを見せているが、彼女は彼女なりの借りが将矢にあるためにそれを返せると喜んでいる。

 

そんな中でセシリアが涙を流したまま、将矢を見つめている。声をかけることなくその場で立ったままで。

 

それに気づいた将矢はセシリアの近くへと歩いていき、声をかけた。

 

「セシリア・・・ただいま」

 

「・・・はい、お帰りなさい。将矢さん!」

 

笑顔で迎えようとしているのに涙が止まらず、泣き笑いのような顔になってしまっている。

 

だが、セシリアはどうしても聞きたい事が一つだけあった。

 

「将矢さん、どうしてあの戦いで向かっていったのですか?以前の貴方なら戦わなかったと思いますわ」

 

「止めたかったから」

 

「止めたかった?」

 

「そう、ロクショウややメタビー達と出会ったこの星を滅ぼされるのをさ。俺は全てを守る為に命をかけたんじゃない、自分が立ち向かう事で守れるなら立ち向かおうと思っただけなんだ」

 

「・・・」

 

将矢の言葉に嘘はない。彼は自分に出来る範囲でやれる事を最大限にやっただけだ。しかし、その結果が一度自分の命を失う事になってしまったのは、計算外だったのだろう。

 

彼はどこかで自己犠牲的な考えがあったのかもしれない。だが、これだけ自分を心配してくれる人間がいるのを自覚した事で、自己犠牲は無謀と同じだという事を認知した。

 

「もう、命を粗末に扱わないでください。また、同じ悲しみを味わいたくはありませんわ」

 

「うん、わかったよ」

 

二人の雰囲気に他の代表候補生達が、ヒソヒソと女子高生特有の噂話を始める。

 

「もしかしてセシリアって・・・」

 

「うん、そのまさか・・・かも」

 

「?どういう事だ?」

 

「知らないのなら知らなくてもいい事があるという事だ。ラウラ」

 

ラウラ以外の三人はセシリアの気持ちを察しているようで、ラウラだけは頭上にハテナマークが浮かんでいるのが見えるのではないかというくらいに首を横に傾けている。

 

「学園へ戻りましょう。これから新しく学園生活を」

 

「ああ!」

 

 

撃墜された女性利権団体の私設団体はIS委員会に報告され、女性利権団体はその対応に追われる事になった。

 

さらにはIS委員会内部も徹底調査が行われ、利権団体と内通していた職員を全員逮捕、失脚となり委員会も変わった。

 

 

 

 

 

学園襲撃後、ブラックデビルとの激戦があった東京スカイツリー付近に黄金色のISが降り立った。

 

「うふふ・・・あったわ。これがあの怪物の核・・・」

 

回収したのは銀色のメダルの欠片であった。半分に割れているが、それだけでも十分な様子だ。

 

「今一度、力を貸してもらうわよ」

 

黄金色のISを纏った女性は銀のメダルの欠片に軽く、くちづけすると再び空へと飛んでいった。

 

メダルの中心にある宝玉がわずかに輝いたのを知らないまま。




帰ってきました。ゾンビ?幽霊?生きてますよ!

次回は束とセシリアによる女のバトル。

どちらも譲りません。
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