Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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束とセシリア、女としての話し合い


三十七話 天才と淑女

将矢が学園に戻ってから数日、その一方で別の場所で爪を噛みそうになるのをこらえている人物がいた。

 

「最近、つーくんにベタベタしすぎじゃないのかな・・・セシリアちゃん?」

 

そう、篠ノ之束である。彼女自身、今まで自覚していなかったのだが彼女自身、恋愛感情が芽生えていたのだ。

 

相手は将矢ではあるが、彼女が自覚し始めたのは身体を戻すために特訓を行った日まで遡る。

 

 

 

 

 

 

復活までの期間、束の特別カプセルによって生かされてはいたが、将矢の身体の筋肉は萎縮しきっており、立ち上がることすら難しくなっていた。

 

これは今まで身体を動かすという動作をしなかった影響である。重傷を負った人間が一週間以上も同じ体勢のままでいると、筋肉が使えない為に動きに必要な筋肉まで萎縮してしまい、立ち上がったり物を握ったりする事すら困難になる。

 

彼は肉体の感覚を取り戻すために立ち上がる訓練から始めている。今まで鍛えた筋力も落ちてしまっているが、それを取り戻す覚悟を決めて。

 

「っ・・・うわ!」

 

「つーくん!やっぱり無理だよ!!」

 

「平気です。続けさせてください」

 

身体を震わせながらも懸命に立ち上がろうとし、足を引きずりながらも歩こうとするが一歩踏み出すだけで転倒してしまう程に将矢の身体は弱り切っている。

 

それを僅かな期間で取り戻そうとしているのだ。リハビリという期間だけでも最低、一週間は必要であるのにも関わらず。

 

「ぐ・・・ううう!」

 

再び立ち上がろうとするが、腕の筋肉も萎縮しきっているが故に身体を支えるのも難しくなっていた。

 

「つーくん・・・」

 

束は将矢から補助して欲しいと頼んだ時以外は、手助けしないで欲しいと頼まれている。

 

彼女もその理由は解る。自分の力で立ち上がらなければ、これから先、補助が無いと動けなくなってしまうからだ。

 

己を奮い立たせて何度も挑んでいく姿に、彼女の中で支えてあげたいといった感情が芽生え始めていた。

 

「なんだろう・・・つーくんを見てると胸が熱くなって・・・離れる事を考えると苦しくなっちゃうよ」

 

「こ・・のおおお!っ・・・限界か」

 

立ち上がるリハビリだけでも二時間をかけて行っており、弱りきった身体では負荷が大きく座り込んでしまう。

 

「つーくん、今日はここまでにしてご飯を食べよう?」

 

「はい・・・」

 

食事のメニューは卵おじやなどを始めとする消化が良く、栄養の高いものが中心になっている。

 

束自身、料理に興味はなかったが、一つくらいは作れるようになっておきたいと考え、おじやとお粥など簡単に出来る物を練習し作れるようになっていた。

 

「つーくんは今、食事すらも上手く出来ないでしょ?束さんが食べさせてあげるね」

 

「気恥ずかしいですけど・・・お願いします」

 

「うんうん、素直でよろしい!ふー、ふー・・・はい、あーん」

 

「あーん・・・」

 

将矢にとっては姉代わりであり、初めて異性を意識した相手でもある束に介抱してもらっているというのは恥ずかしくもあり、嬉しくもあった。

 

食事を続けながら将矢は束と初めて出会った時を思い返していた。

 

 

 

 

 

 

「いせきもすごいけど、うちゅうって・・・わくせいってすっげー!」

 

将矢は幼い頃、遺跡や宇宙といったものに興味を持っていた。幼いが故の好奇心ではあるが、特に彼は偶然、両親の両親、つまり彼にとって祖父祖母に当たる人物が持っていた書物からあらゆる事を吸収し、その中でもメダロットの項目にカッコ良さを見つけ夢中になっていた。

 

「君、宇宙が好きなのかな?」

 

「?おねーさん、だれ?」

 

「私は篠ノ之束っていうんだ。よろしくね?」

 

「しのののたばね?へんな、なまえ」

 

「あはは、よく言われるよ。それでその本は宇宙の本かな?」

 

「んーん、ちがうよ。これはうちゅうだけど、いせきのほん」

 

「遺跡?宇宙なのに遺跡って珍しいね。ところで君の名前は?」

 

「ぼく?ぼくは、つちたにまさやだよ」

 

「つちたにまさや、か・・・じゃあ君はつーくんだね」

 

ここからが始まり、彼が束を異性として意識し始めたのは中学生になる、ほんの少し前であった。

 

「へえ・・・こんなのがあるんだ」

 

「つーくん!」

 

「おわ!?た、束姉さん!?」

 

「あはは、ドッキリ成功だねー!」

 

「もう、イタズラで驚かすのやめてくれよ・・・毎回、心臓に悪いからさ」

 

「あーもう、本当に可愛いぞー!つーくん!!」

 

束は将矢を抱きしめたが、将矢は顔を赤くして固まってしまっている。女性特有の優しい香りとふくよかな胸元に埋められているのだから当然だろう。

 

「あれ、もしかしてつーくん?束さんを意識しちゃってるのかな~?」

 

「そそそ、そんな訳無いだろ!」

 

「顔真っ赤だし、怪しいなぁ・・・っと、からかうのはここまでにして、これ見て!」

 

束が見せたのは設計図のようなものであった。これが後のISの基礎フレームになるものである。

 

「これって・・・SF映画とかに出てくるパワードスーツみたいなもの?」

 

「そうだよ、まだ設計段階だけどね。いつか束さんは宇宙へ行きたいんだ!」

 

「宇宙かぁ・・・もしも、他の星に遺跡があれば見てみたいな」

 

 

 

 

 

 

「つーくん、どうしたの?」

 

「いや、初めて束姉さんと出会ったのを思い出してたんだ」

 

「そっか、特別に束さんが膝枕してあげるから寝ちゃいなよ」

 

「ん・・・束姉さんの膝枕・・・小学校・・いら・・」

 

束の膝枕で眠ってしまった将矢は穏やかな表情を浮かべている。それを眺めている束は満面の笑みだ。

 

「つーくんはどっちを選んでくれるのかな?」

 

 

 

 

 

 

時間が戻って学園ではセシリアが将矢を引っ張り回している様子だ。周りは驚きを隠せないでいると同時に二人の仲の良さを疑う噂まで出始めている。

 

「セ、セシリア・・・少し休ませてくれ」

 

「そうですわね。ずっと校舎を回っていたのですもの休憩しませんと」

 

今までの寂しさを埋めるかのようにセシリアは燥いでいる。気づいていないのか、彼女は将矢の手を握っているのを分かっていない様子だ。

 

「・・・セシリアもセシリアで良い女性なんだよな・・・でも、俺は束姉さんも不幸にはしたくない」

 

このように引っ張り回されて気づかないほど、彼は鈍感ではなかった。セシリアと束からの好意に気づいてはいるが、答えを出せないでいる。

 

一方だけを選べば一方は不幸になる。かといって、両方を選ばないという考えは彼の中にない。それ故に彼は答えを出せないのだ。

 

「・・・」

 

一方でセシリアは彼の迷いに気づいていた。自分と束博士を不幸にしたくはないという我が儘も同然な答えに。

 

「わたくしと束博士はお互いに譲りませんのよ。もしも、一夫多妻の制度が出来ればそのような心配もなくなるのですが」

 

心中、セシリアは束には叶わないものが多過ぎると思っている。幼い頃から姉に等しく、彼自身の憧れの女性というだけで束に一歩先に行かれている。

 

それでも彼と一緒に居たい気持ちだけは負けないつもりでいる。それだけが彼女の支えであった。

 

「さ、授業になりますわ。久々の実践演習・・・負けませんわよ」

 

「俺もだ!」

 

 

 

 

 

放課後の深夜、セシリアは学園の屋上に束から呼び出しを受けた。それに応じ今は二人だけが屋上に居る。

 

「来てくれたね」

 

「どうしても、将矢さんを諦めてはくれないのですね」

 

「当然だよ、この束さんが初めて恋を自覚した男性だもの」

 

「それでしたら、わたくしも諦める訳にはいきませんわ!」

 

「そうだよね、だから提案があるんだ」

 

「?」

 

束が話を始めたのは自分が結婚の宣言をし、更には権限を使って国籍の自由化と一夫多妻を世界に認めさせることであった。

 

それにはセシリアも驚いたが、束はセシリアとの結婚が問題点だと指摘する。彼女は曲がりなりにもイギリスの貴族、つまり海外の大金持ちの令嬢という事になる。

 

女性利権団体が生きていた時期に結婚に関する法案が改定され、結婚は女性の方の国籍へ強制変更する事になってしまっているのだ。

 

これが足を引っ張って将矢はセシリアと結婚した場合、イギリス国籍を持てるよう申請せねばならない。だが、彼が出身国である日本からイギリスへ永住するのかと考えれば、断るだろう。

 

「つまり、通常の結婚制度に戻しつつ、将矢さんの一夫多妻を世界に認めさせる・・・と」

 

「そうしないと意味がないからさ。私は君を少しだけ認めてるし、幸せになりたいなら全員が良いからね」

 

「確かに将矢さんはきっと一方だけを認めませんもの」

 

二人は納得いくまで話し合いを続け、二人の将矢を手に入れるための作戦が纏まったのであった。だが、束は認めていると言いながら、あえて厳しい言葉を投げつけた。

 

「敢えて言うけど、君はつーくんに甘えたいだけじゃないよね?」

 

「それは・・・!」

 

「甘えたいだけなら私は君を認める発言を撤回しなきゃならない」

 

「・・・以前のわたくしなら甘えたいだけでした。でも、覇王と戦った時から変わったのです。わたくしはこの方を支えてあげたいと!」

 

「それは本心から?」

 

「当然ですわ!」

 

束は表情や目線、仕草などから嘘をついていない事を把握した。将矢の人格である覇王と戦う為にパーティクルを使いこなしたセシリアは成長し続けているのだろう。

 

何より、自分の想い人と戦った経験が彼女から甘えるだけの存在が欲しいという考えを断ち切らせたのだろう。

 

「わかったよ。二人で支えよう」

 

「はい」

 

「それじゃ、腕を出してね」

 

「?」

 

言われた通りに腕を出すと束は、自分とセシリアの腕に機械的な圧縮注射を行った。ほんの僅かに熱さが肌に出るが直ぐに収まった。

 

「い、今のは!?」

 

「ナノマシンの注射だよ。つーくんを裏切ったり、私達二人の約束を破ったりしたら心臓に穴を開ける為のね」

 

「!なるほど・・・すごく効果的ですわね」

 

「これくらい本気だって事だよ。遅くに呼び出して悪かったね」

 

「いえ」

 

「それじゃ、帰るね。告白は三人が揃った時にしよう」

 

「はい」

 

そういうと束の姿が消えた。彼女の身体能力をもってすれば簡単な事だがセシリアにとっては驚きしかない。

 

「・・・戻りましょう」

 

セシリアは部屋に戻るとナノマシンを注射された部分を見ていた。これは約束の証であり裏切れば処刑される代物、だがセシリアは不思議とそれを受け入れていた。

 

「覚悟が決まりましたわ。でも、今は恋愛以外の自分の未来を決め付けるような事はしないようにしましょう」

 

自分の決意を口にするとセシリアはベッドに入って再び眠りへと落ちていった。




はい、ナノマシンによる刻印です。

裏切ったら許さない、これは二人共対等な条件です。

次回は心が折れた一夏の話。

彼に残っているのはゴッドエンペラーに対する感情のみ、一体何をするのか?
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