Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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将矢、救うための鬼となる。

またもや、行動を咎められる男。


四十二話 優しさだけでは何も救えない

大会開催まで残り日数、48日。

 

 

学園での生活も落ち着きを取り戻しつつ、将矢は束の住んでいる島からこっそりと学園に通い、授業を終えすぐさま男性操縦者の二人はアリーナへと向かう。

 

一人は好意を向けてくれている人を救うため、もう一人は肉親を取り戻すため。

 

考えは違えども、救いたいのが人間であるという点は変わらなかった。

 

そして、楯無の提案で将矢と一夏が模擬戦をする事になった。楯無からすれば大会に出場できるかのテストなのだろう。

 

「土谷君、遠慮なくね」

 

「はい」

 

「将矢、今度こそお前に勝ってやる!!」

 

「勘違いしているんじゃない。俺とってこの勝負は、自分の今の状態を知るチャンスだ。勝ち負けに興味はない」

 

「そんな事言って、負けるのが怖いんじゃないか?」

 

一夏の言葉に普段は冷静で正論な答えを返すはずの将矢が、この時だけは違っていた。楯無や簪、ある程度の実力がある操縦者達の目には、彼の背に鬼のような影が見えた。

 

「・・・・お前は相手との実力っていうのを自分自身の身に刻むくらい、本気で叩き潰されなくちゃ理解しないようだな・・・」

 

「なんだと?」

 

「ロクショウ・・・今回はオーバードライブを最初から使う。カウントダウンと体調管理を頼んだ。戦闘補助は無しでいい」

 

『・・・本気で鬼になる覚悟を決めたようだな。うむ、解った』

 

「スラフティン、転送・・・。モード、クワガタ・・・。マッハマッシヴR、アクティブ!パーツ変更、マッハハンマー、マッハハンマR!」

 

斬ることではなく、殴ることに特化したパーツに変更にした将矢。どうやら本人は、一夏を本気で殴らなければ気が済まないようだ。

 

「お前が刀を使うって言うなら、俺は拳を使う」

 

「へっ、負けても文句言うなよ!」

 

「こっちのセリフだ」

 

試合開始のブザーが鳴り、同時に一夏は突撃するという、変わらない戦法を取るかに思えたが、荷電粒子砲を撃ち放って来た。

 

「!?なるほどな・・・射撃戦でなんとかしようって事か」

 

将矢は弾丸を次々に回避し、様子を伺いながらマッハアンテナRを限界まで使い続ける。一夏はお構いなしに撃ってくるが、急に止めた。

 

「やっぱり、射撃は苦手だ。剣で戦う!」

 

「・・・オーバードライブ、起動!」

 

将矢が狙っていた隙は、これだった。一夏が射撃戦から格闘戦に切り替えてくるその瞬間は自分の間合いとなる。その隙を突くために。

 

紅いモノアイが強く輝き、刃を振り下ろした瞬間、観客になっていた代表候補生達の目の前に驚くべき光景が現れた。

 

「!」

 

「な、何!?」

 

将矢のスラフティンは全身が輝き、雪片の刃を真剣白刃取りしている。押し込もうとしても、出力が違いすぎて刃が進まない。

 

「し、真剣白刃取りって・・・」

 

「初めて見る・・・なんという見切りだ」

 

この光景は実力があるものにとっては、強さのレベルが測れるものである。中途半端な実力でも、上の相手だという事を印象づけてしまう。

 

 

「く・・・くそ!押し込めない!」

 

「・・・いいか、一瞬たりとも目を離すな・・・離した瞬間に模擬戦は終わる」

 

「何!?っと」

 

白刃取りで押し返し、スラフティンの姿が見えなくなる。一夏はそれを見逃してしまい、周りをキョロキョロと探し始めた。

 

「き、消えた!?」

 

「言ったはずだ、目を離すなとな」

 

「げふううう!?」

 

絶対防御に肉体は守られているが、その衝撃を直撃で受けてしまい一夏はその場でうずくまりかけた。だが、容赦なく、音速の世界からの拳を打ち込んでいく。

 

「うらあああああァーー!!」

 

「ぐあああ!このお!また、消えた!?卑怯だぞ!出てきやがれ!!」

 

「どこが、卑怯なんだ?俺は自分の機体の使える機能を最大限に使っているだけだ」

 

音速の世界から帰還し、将矢は一夏と対峙する。オーバードライブ状態は解除されておらず、輝いたままだ。

 

「嘘でしょ・・・もう、三分経過しているのにオーバードライブを解除してない」

 

「いつまでも、同じではないって事だな」

 

最初にオーバードライブの強さを体感している鈴、冷静に成長を感じているラウラ。将矢の強さがひしひしと分かってしまう二人は汗をかいている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ・・・く」

 

「・・・・まだやるか?」

 

僅か五分の間に決着がつきかけていた。負けを認めるまでは負けていはいない、その考えだけで一夏は何度でも立ち上がり、挑んでいるのだ。

 

「当たり前だ!うおおおお!」

 

「・・・・」

 

『将矢、残り時間は二分だ』

 

オーバードライブ状態のままだが、ロクショウが限界である事を伝える。今までは酸素を貪っていたが、束との特訓で、顔に出さないポーカーフェイスを身につけていた。

 

「!!」

 

刃が将矢の肩に、一夏の腹部にはマッハハンマRが命中していた。一撃の威力は両者同じではあるが、急所の位置は将矢が捉えていた。うずくまっている一夏の髪を将矢は掴むと、自分の目を見ろと言わんばかりに、頭を向けさせる。

 

「ぐ・・・くううう!」

 

「女だからとか、子供だからとか、弱いからとか、関係ない。お前に足りないのは勝負に対する非情さだ」

 

「な・・・に?」

 

「何度でも言ってやる。俺はセシリアを助けるためなら誰であろうと潰す・・・・!それが例え、仲間だろうとも!」

 

「そんな・・・事!」

 

「させない・・か?姉である織斑先生をお前は助けようとしながら、負けて欲しいと情に訴えられたら、お前は負けてやるのか?」

 

「う・・・・」

 

将矢の顔は人間ではありえない程、鬼に近かった。一夏は初めて見る覚悟を持った人間の目に怯んでしまった。

 

髪を掴んでいた手を離し、一夏はその勢いで倒れつつも起き上がる。

 

「仲間であろうと倒せないのなら参加するなよ・・・!自分の中にある正義感に酔いながら勇者ごっこでもしていろ、温室育ち」

 

「お前・・・・!っう!?」

 

将矢が背を向けた瞬間、切りかかろうとしたが出来なかった。その背中からは再び、鬼の後ろ姿が浮かび上がったのかのように見えたのだ。

 

「お前の覚悟はその程度って事だよ・・・・優しいだけじゃ誰も救えない」

 

と安易に言われているような気がしてならなかった。覇王としての人格ではなく、本来の将矢として決めた覚悟の表れが鬼の幻影として現れているだけ。

 

「気に食わなきゃ不意打ちか?構わない、ここで止まっててやる・・・切ってみろ」

 

オーバードライブが解除され、背を向けたまま微動だにしない将矢、それを見て雪片を構えた一夏であったが、全身が震えている。

 

「動けよ、俺の身体!なんで・・・なんで動かないんだよ!?」

 

「・・・・・どうしたんだよ?切ってみろ、出来ないならムカつく言葉をもう一回、言ってやる。覚悟のない温室育ちが」

 

「!!てめえええええ!!」

 

挑発に乗って斬りかかった一夏、そのまま切られて大怪我するのだと誰もが思っていた。だが。

 

「・・・・・っ」

 

刃は振り下ろされる寸前で止まっていた。将矢は一切動いた様子はない、ならば、どうして刃が止まってしまったのか?

 

それは一夏自身の問題であった。学園が襲撃された時でも彼は極力、殺さないようにして相手と戦っていた。無論、技量ではなく絶対防御を前提としている戦闘でだ。

 

切られる瞬間、将矢は絶対防御の機能を停止させたのだ。ISのデータには表示されるように。

 

それが、刃を止める要因になった。相手を怪我させてしまうかもしれない、自分が相手を殺してしまうかもしれないという心理が刃を止めたのだ。

 

「うう・・・・待てよ、将矢!」

 

「顔馴染みに刃を向けても、結局は相手を斬れないか・・・みっともない!」

 

正面を向いた将矢は、目に殺気が渦巻き、鬼とも修羅とも取れる顔つきになっている。まるで周りの炎が燃え上がっているかのように息苦しくなりそうな空気だ。だが、すぐに背を向けてアリーナの出入り口へと歩を進める。

 

「将矢、お前!」

 

「俺の邪魔をするのなら・・・一夏、お前でも潰す」

 

首だけを振り返らせた将矢の目は、冷たく冷酷さを表すような輝きを見せていた。将矢にとって究極とも言える、スラフティンという名のアーマーを身に纏ったまま、去っていった。

 

その後ろ姿は、まるで力という正義に偏ってしまった青き閃光の異名を持つ、優しさを持った未来の戦士と酷似していた。

 

それを見届けた一夏は地面を殴った。それは自分の悔しさと怒りを見せるかのように。

 

「ちくしょう、ちくしょう!アイツの目にビビって・・・何もできなかった!俺を温室育ちだと・・・!俺は違う!俺は温室育ちなんかじゃない!!」

 

それを見ていたのは代表候補生達であったが、誰も声をかける事はなかった。




「俺の邪魔をするのなら・・・君でも殺すよ」

今の将矢はこの状態の青き閃光の戦士の心境になっています。彼は束さんから心を冷徹にする訓練も施されました。

本来の彼は本当に優しいんです。優しすぎて眩しく見えるくらいに。
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