Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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美を愛する雪の王女と白い刃の試合


四十五話 第一試合 白式VSオーロラクイーン

試合当日となり、当日前に郵送されていた選手用の招待状を手に、各国の代表候補生やアサドアラークが選んだ選手達が、最も規模が大きい試合会場である国際競技場に向かっている。

 

当然、メディアをハックし、大々的な宣伝も行われた為、一般人の来場者もいる。

 

アサドアラークは、あくまでも全力をかける戦いを望むと言っていた。トーナメント戦での大会を開催したのは最も強い相手と戦いたいが為に過ぎない。

 

会場は満員となり、試合を今か今かと待ち受けている。そして有名アナウンサーらしき女性がマイクを手に、リングへと上がった。

 

「皆さん!お待たせしました!これより、ISBカップ開催を宣言します!選手兼主催者のご挨拶を頂きたいと思います!」

 

開催の宣言と同時にアサドアラークが、会場のスピーカーを通して挨拶を始める。

 

『私が主催した大会、ISBカップにこれだけの人数が集まってくれた事に感謝したい。選手の者達は思う存分に命をかけた戦いを繰り広げて欲しい!私は決勝で待っている。ISの代表達よ、私が推薦した強豪達も参加しているので組み合わせが決まった時は戦い抜いて欲しい、以上だ!』

 

「それでは、第一回戦の組み合わせが発表されます!」

 

「一回戦!第一試合!!白式・織斑一夏選手!!対するのは推薦枠選手!オーロラクイーン・氷雨選手!」

 

組み合わせが決まった。一回戦は一夏とアサドアラークの推薦選手の戦いだ。名を呼ばれた二名がリングへと上がり、機体を装着する。

 

「氷雨さん・・・だったよな?悪いが俺が勝たせてもらう!」

 

「・・・・・」

 

「喋れないのか?」

 

「美しくないのね・・・白式、その機体は純白で水晶のような輝きが曇らされてしまっているわ」

 

「!?どういう事だよ?」

 

「・・・・・・・」

 

氷雨とは仮の名前に過ぎず、操縦者自身は生体部品となっているに過ぎない。

 

オーロラクイーンという称号にも似た名称こそが、本当の名前なのだ。オーロラクイーンはアサドアラークがISの技術で開発させた擬似スラフティンのようなもの。

 

擬似であるため、メダルではなくISコア、パーツの変更もできず攻撃方法も固定化されてしまうのが欠点だ。

 

同時に生体部品となっている人間は主に死への願望を強く持ったり、自ら志願して適合手術を受けた者達だ。

 

アサドアラークはドイツにおいてVTS開発陣営の生き残りである科学者達を利用して、この機体を完成させた。

 

だが、設計図などが手に入れば用済みとなる。アサドアラークはセシリア達と同じように呪いをかけ、全員を衰弱死させていた。

 

 

 

 

 

 

『試合開始!』

 

ブザーと共に試合が始まる。いつもならば一夏が突撃を仕掛けるはずなのだが、動こうとしない。

 

「・・・・なんだ、この人・・・表情が無い」

 

この日までの特訓で一夏も成長を遂げていた。それ故に氷雨の恐ろしさが、肌にヒシヒシと伝わってきている。

 

高い実力を得ることが出来る者は、格上と相対した時、相手の恐ろしさが本能的に分かってしまう。強さを身に付けるたびに格上への恐怖も倍増していくのだ。

 

氷雨の恐ろしさは表情がない事に留まらない。彼女からは冷酷、冷徹といった心が冷め切っている事しか感じてこない。

 

「まるで、冷たい氷が傍にあるみたいだ」

 

「・・・敵対者を排除します」

 

オーロラクイーンの両腕から発射されてきたのは、雪の結晶の形をした細雪のようなものであった。

 

それを見た一夏はシールドで受けようとしたが、何か不安が過ぎり、その場から移動して回避した。

 

「射撃タイプの機体なのか、それなら接近戦で・・・なっ!?」

 

何かが軋むような音が聞こえ、視線を向けるとさっきまで立っていた場所が凍りついていた。聞こえていた音は凍りついていく過程だったのだ。

 

「・・・・」

 

「撃たせるかああ!」

 

一度の攻撃で一夏は攻撃方法が、冷気によるもの更には雪の結晶を弾丸として撃ち出すものだと予測した。

 

その過程で距離の急激な切り替えはできないはずと、踏んだ上で一夏は瞬間加速を使い、雪片で斬りかかった。

 

「・・・・・」

 

「!」

 

誰もが一夏の一撃は決まったと思うだろう、しかし。

 

「な・・・何故・・?」

 

確かに雪片の一撃はオーロラクイーンの左肩を捉えていた。だが、ここで想定していなかった一撃、いや・・・敢えて隠していた一撃が、一夏のシールド兼クローである左腕を完全に凍りつかせていた。

 

超低温レーザーに改良された頭部パーツのブリザードによるフリーズショット、それが凍りつかせた一撃の正体であった。

 

「っく!」

 

一夏は、なんとか間合いを離すが、左腕を凍らされ、重みのある一撃やシールドによる防御、クローも使えなくなってしまっている。

 

「完全射撃型なのに接近戦までこなせる・・・、忘れてた、射撃だからって遠距離だけが全てじゃなかったんだ」

 

自分の忘れやすい性格を一夏は初めて恨んだ。セシリアやシャルロットなど射撃を使う相手は見てきたはずなのに、それを忘れていた。

 

毎回毎回、姉である千冬にも注意されていた事、お前は人が言った事をすぐに忘れ、思い出したとしても自分の都合の良いように解釈を変えていると。

 

「だからって、俺は負けない!必ず千冬姉を助け出す!!」

 

「・・・・・」

 

氷雨の表情は変わらない。あえて目の奥にある輝きを言葉とするのであれば哀れみであろうか。彼女は自ら望んでオーロラクイーンの一部となった。

 

元々、彼女はISのコアに意思があるのでは?という疑問を研究する日本人科学者であった。それを必死になって意思の疎通出来ないかと研究し続け、ついにはコンピューター越しにISの意思を文字に起こす事に成功したのだ。

 

だが、彼女の悲劇はここから始まった。研究を発表した途端、その研究をはぐれ研究員ともいえる人間達に奪われ、それを基に改良型をあたかも、自分達が全て開発したかのように発表されてしまったのだ。

 

当然、抗議はしたが彼らには勝てず、自分が逆に学会から追放されてしまった。それでも、試作型と研究用コアが残っていた為、彼女は完全な言語化が出来るように研究を続けた。

 

しかし、彼女はその過程で知ってしまった。IS達の絶望を。彼女達は元々、宇宙への翼として開発されたのだと文字を通じて教えてくれた。

 

聞けば聞く程、自分も人間に絶望していった。利権、巨額の富、自己保身、その場しのぎ、名声、事なかれ主義、自分が味わった絶望と同じだった。

 

そこへ現れたのがアサドアラークであった。優秀な化学者を集めていると言われ、その誘いに乗って彼女達の身体となるべき、擬似スラフティンの開発に没頭した。

 

開発が済めば用済みとなる事も承知の上であった。だが、彼女はアサドアラークに取引をもちかけたのだ。

 

「私を始末するのなら、あの子の身体の一部にして欲しい」

 

「何?」

 

彼女の取引は研究用に使っていたISコアの生体部品となる事であった。人間の倫理からすれば彼女は生から逃げたのだと言われるだろう。

 

だが、彼女は人間ではなくISコアの意志の傍にいるという決意をしていた。自分がどれだけ成果をあげようとも所詮は権力者達の肥やしにされる。

 

それが引き金となって彼女自身、人間に絶望してしまっていた。仲の良い友人や親友、開発で出会った優しい人、心配してくれる人間なども居たが、彼女はもう優しさや愛で癒せす事が出来ない程に傷つき過ぎていた。

 

そうして彼女は擬似スラフティンであるオーロラクイーンの一部になり、人間としての生を辞めた。そうして今、一夏が纏って現れた白式。

 

彼女の絶望が今の氷雨には分かってしまう。自分の見栄、無謀と勇気を勘違いしている、己は知らないままで向き合おうとしない逃避、己自身が特別だという考え、その全てが。

 

逃げたくても離れたくても、それが出来ない。だからこそ、オーロラクイーンと一体化した氷雨が口にしたのは美しくないという言葉だった。

 

 

 

 

 

「な・・なんだ?動・・き・・・が・・・」

 

突然、一夏の動きが鈍くなり始めていた。無論、観客達からすれば鈍いだけにしか見えない。

 

「私の力、フリーズショットには〝動きを鈍らす"というのがあるわ・・・・。長い時間は持たないけど、貴方を・・倒すくらいの時間は・・十分にある!」

 

オーロラクイーンは少しずつ間合いを詰めていき、遠心力をかけて一夏を横へと殴り飛ばした。

 

「があっ!?」

 

「痛いかしら?でもね、貴方の白式の心はもっと痛がっていた・・・・」

 

「な・・に?」

 

動きが鈍くとも立ち上がることは出来る。だが、反撃するまでの素早さは戻っていない。

 

「貴方は自分の痛みには鋭くても、他人の痛みには鈍感なタイプかしら?貴方はそのルックスで・・・どれだけの女性を泣かせてきたのかしら?極めつけは貴方のIS・・・」

 

今回、氷雨にしては珍しく饒舌であり、その様子を観ているアサドアラークは表情を与えるなら、ほう?と言いたげな様子だ。

 

「お・・れ・・は・・・鈍・・・・感・・・じゃ!」

 

「そうね、正義感は強そうだから、貴方はきっと弱者を守ろうとするわね・・・・悪いことをしている相手を懲らしめるために力を使った自分は賞賛される・・・なら、傷つくのは平気よね?」

 

「違・・・う・・・」

 

「貴方は無自覚に人を傷つける刺のような存在・・・・だから、今ここで殺す」

 

お喋りは終わりと言わんばかりにフリーズショットを至近距離で放とうとする。それに相手は本気で自分を殺そうとしてきていた。

 

「死ぬ・・・俺が?嫌だ!死にたくない!!」

 

一夏の死にたくないという本能が、無意識に手にしている雪片の零落白夜を最大出力で起動させ、オーロラクイーンの胸元を大きく切り裂いた。

 

「!!!!」

 

オーロラクイーンはその場で機能を停止させ、氷雨も致命傷近くにまで追い込まれ、倒れ込んだ。胸元からは絶対防御で相殺しきれなかったエネルギーによる斬撃の傷から血が流れ出ている。

 

「あ・・あああ・・・・ああああああああああああああ!!」

 

倒れた氷雨を見て、一夏は頭を抱えて叫んだ。殺した・・・人を、初めて人を殺してしまった。生体部品になっていたとはいえど、人間の形をしたものを殺してしまった。と自分を責め続ける。

 

『勝者!織斑一夏!!』

 

試合終了と同時に氷雨ことオーロラクイーンはメディカルメンバーに運ばれていった。一夏も試合の準備をする控え室に戻っていった。

 

これこそがこの試合の醍醐味、正式なISの試合とは違う本当の命のやり取り、主催者が望んでいた戦いであった。

 

 

 

 

 

 

 

「俺・・・は」

 

人を殺した感触に一夏は震えていた。正確には殺す一歩手前まで追い込んだに過ぎないが殺したと思える程の感触が残っている。

 

「・・・・・っ!」

 

一夏はトイレに向かうと手を洗い始めた。水で何度も何度も手を濯ぐ。だが、濯いでも濯いでも自分の手に残っている感触は消えず、血で濡れているような錯覚になる。

 

「・・・・こんな試合が、まだ何回もあるのかよ・・・」

 

 

命をかけた本物の戦闘、命を奪ってでも先へ進む覚悟があるのかを試されるのがこの大会なのだと自覚するほか、無かった。

 

 

 

 

 

『続く、第二試合!一回戦、スラフティン・土谷将矢!対するのはフィンランド代表!ルルフ・レミンカイネン選手だ!!』

 

次の試合の組み合わせが決まり、観客達は湧き上がる。興奮とスリルを味わえ、これ程までに血肉が踊る大会もないだろう。

 

もはや、観客達に先程までの試合の状態は眼中にない。命をかけた本当の戦いを見たくて仕方がないように、歓声を上げ続けていた。

 

次の試合で、一匹の鬼が現れるとも知らずに。




擬似スラフティンはいうなれば、メダロットの一式パーツ参考にした装備しか使えず、生体部品となった人間をコアと同化させることで起動する使い捨ての兵器です。

ですので、絶対に助かる事はありません。今回の氷雨であるオーロラクイーンは破棄処分になります。彼はそのことを知りません。


スパロボでいうODEシステムのバルトールに近いものです。

次回は鬼が現れます。
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