Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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仲間との殺し合い

見届ける者


四十八話 鬼が喰らうは椿の華

第一試合が終わり、第二試合へと移行していく。休憩時間として10分間は観客達が小休止し始めていた。

 

休憩時間を終え、会場整備も終了するとアナウンサーが実況を始める。

 

『お待たせしました!一回戦から勝ち上がってきた強者達の戦い、その組み合わせが発表されます!第二試合!土谷将矢・スラフティン!対するは、紅椿・篠ノ之箒!!』

 

なんという運命のいたずらか。よりにもよって殺し合いの舞台にて、顔見知りで仲間であり、クラスメートとの対決が実現してしまったのだ。

 

「束姉さんの妹か・・・容赦なんかしない」

 

「殺し合いの舞台・・私も負けん」

 

試合のリングに二人が上がり、相対する。箒は鉢金を額に付け、ポニーテールをより単純に縛り上げている。

 

将矢の方は変わっておらず、マッハマッシヴRの頭部で目元を隠している。試合が始まる寸前、誰かがリングへ向けて声を上げた。

 

「やめろーー!二人共ーー!なんで二人が殺し合うんだよ!!」

 

『おおっと、織斑選手。試合前に高揚しての乱入か?戦いを止めようとしているようだ』

 

アナウンサーの声に観客達は一夏に向けてのブーイングが始まる。中には暴言まで吐き始める者まで出始めた。

 

「引っ込めー!若造!」

 

「試合を止めようなんて野暮な事をするんじゃないわよー!!」

 

「帰れ!!」「帰れ!!」「帰れ!!」「帰れ!!」

 

一人の観客から始まった怒涛の帰れコールに一夏は恐怖した。ここにいる誰もが気が狂っているのではないかと。

 

だが、一夏が消えるまで帰れコールは止る事はない。居た堪れなくなった一夏は逃げ出すように控え室へと走っていった。

 

『えー、皆様。ちょっとしたハプニングがありましたが試合を止める事はありません!それでは試合開始!』

 

喜びの歓声を上げた観客達は興奮の最高潮となっていった。試合が始まると同時に選手の二人は戦いをすぐに開始した。

 

 

 

 

 

 

 

「将矢、一つだけ答えろ!お前は何のためにこんな殺し合いの戦いに参加したのだ?」

 

「恋人を助けるため・・・」

 

「何!?があああ!?」

 

マッハハンマRの一撃が箒を捉える。学園での訓練時よりも遥かに重く、全身に響いた。箒はエネルギーの斬撃を両手に握った刀から繰り出し始める。

 

「私が訓練で編み出したものだ、受けろおおおおお!」

 

「ぐぅ!ぐあぁ!」

 

将矢はその斬撃を防御し、耐え抜くしかない状態にされてしまった。箒の単一能力は完全エネルギー回復だ。本来は白式と対になる為の能力だが、それを自分自身に使えるようになるまで、鍛錬を欠かさなかった。

 

この殺し合いの試合の中で、彼を止めようとしている人間は少なからずいる。箒もその一人でこの大会に参加したのだ。

 

「お前を止める・・・!」

 

「・・・・」

 

箒の連続攻撃はエネルギーが続く限り止まらない。徐々に削られていくエネルギーだが、将矢は発動する隙を伺っていた。

 

「これで、終わりだ!将矢!!」

 

最後の止めは己自身でする、箒から出てくるこの心境を将矢は見逃さなかった。いくら鍛錬や修行を積んだとしても止めを刺すという甘美な誘いから抜け出すのは、容易ではない。

 

エネルギーの斬撃による連続攻撃を止め、実体の刀で斬りかかった瞬間、将矢の姿が消えてしまった。

 

「!き、消えた!?いや、違う・・・これは・・っ!オーバードライブか!がはっ!」

 

「気づくのが遅い・・・あのまま連続攻撃を続けていれば・・俺が負けていた」

 

蹴りで脳をシェイクさせ、倒れそうになるのを手で掴み、マッハハンマRの拳を何度も何度も撃ち込んでいく。

 

これは絶対防御のエネルギーを弱めるためであり、更には回復に意識を向けさせないようにするためでもある。

 

だが、蹴りによって脳を揺らされた箒にそんな余裕はなかった。防御しようにも攻撃が速すぎて直撃してしまう。

 

「ぐああ・・・景色が・・揺れて」

 

「!!」

 

女にも容赦のない顎への強烈なアッパーカット、脳を再び揺らされた箒は地面がせり上がってくるような感覚を味わっていた。

 

実際には箒が前のめりへと倒れて行っているだけである。

 

「ま・・まだ・・・私は・・・やれ・・る」

 

「・・・知っているか?椿の花ってのは・・・完全開花すると地面に落ちるんだよ。退け」

 

オーバードライブを利用した音速戦闘による斬撃。斬られていくたびにエネルギーが減っていき、回復する暇を与えない。

 

将矢の狡猾な作戦の一つは相手に対し、自分が有利だと錯覚させる事にある。有利であると錯覚させる事が出来れば、必ず隙を作り出してくれるのだ。

 

将矢が箒の連続攻撃を受け続けたのは、彼女の根底にある有利に対する喜びと倒せるという傲慢さを引きずり出すためだったのだ。それに乗ってしまった箒は逆転させられてしまった訳である。

 

マッハソードRの斬撃で切り上げると同時に、遠心力を加えてリングの地面に叩きつけると同時に胸元へ胸骨を折る鈍い音すら気にせずに連続で叩き込み続けた。

 

息が絶え絶えになった箒をまるでボールを投げるかのように、宙にへと浮かせ箒を蹴り飛ばし、控え室に繋がる通路へと叩き込んだ。

 

「が・・・っ・・・ぐっ・・?ごぼっ!は・・・肺が・・・」

 

吐血と共に気絶してしまい、箒が戻ってくる事はない。むしろ気絶した事が幸いとも言える。彼女の胸骨とアバラ骨は全てバキバキに折られており、呼吸すらままならなかったからだ。

 

「・・・・殺す一歩手前にしておいた、」

 

『それでいい・・・殺すとしても相手を間違えてはならぬのだ』

 

ロクショウの言葉を聞きながら、将矢は自分が試合前に歩いてきた通路を歩いていった。

 

 

『勝者!土谷将矢!!』

 

 

 

 

 

箒はすぐに会場内部の医務室に運ばれ、治療が行われた。折れた骨が臓器に突き刺さっており、特に肺が酷かったが、なんとか自立呼吸や出血多量にならず、感染症もない。だが、重体である事に変わりはないため、すぐに病院へと搬送されていった。

 

「箒まで・・・再起不能に・・・ぐ・・く」

 

一夏は再起不能にした相手である将矢を恨み始めていた。何故、仲間だったはずの相手にこんな酷い事が出来るのか?相手は女性、しかも自分の幼なじみである。守りたかったのに、目の前で殺されかけた・・。

 

それも、自分が最もよく知っている相手に。

 

「よくも箒を・・・許さねえ、もう・・許してやるものかよ・・・俺が、俺が必ずお前を殺してやるからな!!将矢ーーーッ!!」

 

その叫びを通路の角で覗いていた影があった。それは代表候補生の一人であるラウラとシャルロットであった。

 

「将矢を殺す・・・か」

 

「アイツには無理だな・・」

 

二人は戻りながら、会話を始める。内容は一夏に関する事と試合に関する事だ。二人は並んで歩いているが選手としては登録されていない。

 

ラウラの場合はまだ軍籍に席を置かれているという点である。VTシステム事件後、責任を擦り付けようとした上層部が全員、懲戒免職となった。

 

原因は一通の動画付きメールにあった。それはラウラに責任を擦り付け、自分達だけは助かろうとする会議の模様を撮影されたものだった。

 

世界中のマスコミや政治家達にもリークされ、ドイツは軍の内部改革を強制的に行わざるを得なくなった。

 

更に上層部は自分達の権限を使い、裏資金や娼婦との永久愛人契約なども行っていた為に内部からの反逆が勃発。

 

黒ウサギ隊が中心となって新たに結成されたドイツ軍は、レスキュー活動などを世界中で行っており、信頼を取り戻すため、日夜奮闘しているという。

 

 

 

 

シャルロットの方はデュノア社の不正が暴かれ、現在は手腕と改革的な考えが強く、女尊男卑に染まっていない女性が新社長として、経営を盛り返している最中だ。

 

無論、養母の妨害もあったが、内部で過半数以上の社員の信頼を得ていた為に内部での味方が沢山いた事、更には不正を行っていた証拠がメールにて送られていたと。

 

それにより義母は逮捕され、デュノア社は一時、経営が悪化した。

 

新社長が行ったのは、社内の内部改革であった。最初に行ったのは役職は権力ではなく、ただの名称に過ぎず、自分も社員の一人であることを自覚させた。これは社長自らも同じだと明言。

 

次に行ったのは備品の新品化。時代に合わせなかれば効率も上がらない。パソコンから社内用連絡手段、ありとあらゆるものを最新鋭に変えた。

 

また、社員の労働環境の改善も行った。家族構成、勤務時間、あらゆるものを調べ上げた。その結果、残業を極力減らし、申告制にした。どうしても終わらない時は残業を申告するか、出社一時間前などに来て終わらせるなどの方法も提案。

 

早朝の手段を取った社員には残業代ではなく、賞与として上乗せし、電気なども使わない時は消灯しておくなど、細かい節約の成果を社員全員の給料に反映させた。

 

長時間残業の支持、役職による残業の強要、社内での誤魔化しを一切禁じ、社員教育も行った結果、右肩上がりとなり、またもやフランスのナンバーワンに返り咲いたのだ。

 

ISだけではなく、今の状態で出来る限りの業界開拓にも手を伸ばしているという。

 

 

 

 

 

「ボクには人を殺す覚悟なんてないよ・・・・」

 

「出来ればそんな事とは縁が無い方が良いぞ・・辛くなるだけだ」

 

「ねえ、ラウラ・・」

 

「なんだ?」

 

「ラウラは・・・人を殺した事があるの?」

 

シャルロットの質問にラウラは一瞬、口を紡いだ。答えるかを迷ったが意を決して答えることにした。

 

「あるぞ・・やり方は違っているが、見捨てたり、自分が手をかけたりな」

 

「そうなんだ・・」

 

「軽蔑するか?」

 

「ううん、ボクと出会う前の事だもの。気にしたって仕方ないよ」

 

実際、試合を観ていた時、シャルロットは試合終了と同時にトイレで嘔吐したのだ。血みどろで殺し合う戦いなど、普通なら観る事がない故の不快感から来たものだろう。

 

「・・・・土谷将矢はもう、あの頃のあやつではない・・・奴は・・もう、オーガだ」

 

「それも、障害全てを破壊する・・ね」

 

元の優しくも厳しかった時を知っている二人にとって、今の将矢は恐怖でしかなかった。まるで伝説上の怪物である鬼が、獲物を食い散らかすかのように相手を殺している。

 

それが、恐怖となって心を蝕み、彼が戻って欲しいと願うことしかできないのだ。

 

「私達は見届けよう・・・・」

 

「そうだね、それがボク達の役目だよ・・」

 

二人は再び、観客席へと通じる通路へと向かっていった。あの頃、厳しくとも楽しかった日々には戻れないのか?

 

それだけが二人の中で深く深く、小さな希望であると同時に最も消えない傷として、疼き続けていたのだった。




仲間殺し(正確には重傷)を、とうとう行いました。

これによって、一夏は怒りに支配されます。

次回は一夏と推薦選手の最強枠。

使うのは忍者・・・とだけ言っておきます。

特殊な擬似スラフティンとして登場します。
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