Medaro IS メダルと共に   作:アマゾンズ

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互いのエゴのぶつかり合い。

スラフティンがランクアップ、二次移行。


第五十一話 Danger!Danger!Genocide!Death The Crisis!

大会もいよいよ、準決勝。この戦いに勝利した者だけが、ディフェンディングチャンピオンに挑戦する事が出来る。

 

『さぁ、いよいよ準決勝戦!ここまで勝ち上がってきた両選手の紹介と共に、試合を開始します!』

 

アナウンサーの声が響き、紹介を始める。最初に紹介するのは、右側のコーナーからだ。

 

『世界初のIS男性操縦者!その白い機体を紅に染め上げ、白き刃は更なる獲物を求めるのか?龍の方角!白式!織斑一夏ーー!!』

 

俯いているかのように一夏はリングへと上がる。先ほどの紹介は何だ?まるで自分が獲物と称して殺戮したみたいではないかと。

 

『続いて、寅の方角!第二のIS男性操縦者、青を黒に変え・・突き進む鬼!行く手を阻むのなら、残る物は屍の轍!スラフティン・土谷将矢ーーー!』

 

一歩一歩、歩んでくる音が近づき、リングに向かってくる。それはまるで『最後の大隊』(ラストバタリオン)と呼ばれた兵達が、戦地へと向かうかのように。

 

「・・・」

 

何故、彼一人しかいないのに兵達なのか?それは彼の後ろには、メダルの意志が自分の正式パーツを装備した姿の幻影が、後ろに控えるように歩いてきたのだ。

 

人間の友人として作られたが、兵器として有能であったが故に欲望を叶える道具ともされた。

 

月と地上の戦いも、太古の戦争すらも、夢という形で見せられた。あれは別世界の彼らだったのだろう。

 

「将矢、箒と鈴を痛めつけたお前は・・お前だけは必ず!」

 

「必ず・・なんだ?」

 

「倒してやる!!」

 

将矢はこの大会で初めて、頭部パーツのフェイスカバーを外した。今、纏っているパーツは、純粋なヘッドシザース一式だ。

 

「乗り越えたよう・・・・だな?嬉しく思う・・お前には本気だったが、全力じゃなかった」

 

鬼の角を表すように角を持つ、ヘッドシザースの頭部。だが、それ以上に驚くべきことがある。

 

フェイスカバーを外した顔には、一切の情愛などを否定してる目が隠されていたが。

 

「だからこそ、本気の全力でお前を叩き潰す。例えどんな、咎や罪にまみれようとも取り戻すためにな!」

 

「な、なんだよ・・!?その目!!」

 

将矢の片目、左目に当たる部分から左頬に真っ直ぐと太く、深く、長い傷が刻まれていたのだ。

 

 

 

 

 

それは大会前の訓練中に起こった事であった。束との模擬戦の最中・・。束が剣での一撃を繰り出した時だ

った。

 

「隙有り!」

 

「うっ!しまっ・・!ぐあああああああああ!」

 

「つーくん!?」

 

「う・・ぐ」

 

避けようとした時、足場の砂にバランスを崩され、束の剣をまともに受けてしまったのだ。これはISを使った訓練ではなく、生身の、しかも本物の真剣を使った訓練。

 

「つーくん!」

 

「触るなよ、束姉さん・・・流石に叫んだけど・・こんなの、鬼になるためなら構わない」

 

「・・・っ」

 

「さぁ・・続けよう?訓練を・・瞳が切られてなきゃ儲け物だよ」

 

 

 

 

修羅にならんとして優しさを捨てきれないまま、鬼となる訓練での事故だった。だが、この傷を受けた事で彼は更に鬼となることが出来たのだ。

 

「そうまでして・・・そんなになっても戦うのかよ!?人を殺してまで!!」

 

「前に言ったはずだけどな?もう、お前と交わす言葉は無いって・・・俺達の言葉はこれだけだ!」

 

将矢はチャンバラソードの刃を飛び出させ、構えを取った。一夏も雪片を構えて合図を待つ。

 

『試合開始!!』

 

人殺しになった将矢を止める。だが、殺意を拭えず殺す気で突撃し、刃を将矢へと振り下ろすが、ピコペコハンマーで受け止め、カウンター気味のパンチを一夏へ打ち込んだ。

 

純粋な殺意の篭ったパンチを受けて、一夏は冷や汗をかく。学園で戦った時以上に重く強いパンチ故に恐怖する。

 

「どうした、織斑・・・臆したか?」

 

「なんだと・・・?」

 

「殺したくないと言いながらも、相手を手にかけ、此処まで来れたのは偶然だったのか?」

 

将矢が相手を苗字で呼ぶ時は、その相手に対し怒りを感じているか、関わりたくないかのどちらかである。

 

彼自身も何処かで、男性操縦者という繋がりを感じていた。しかし、それはもう昔の事。今、目の前にいるのは理想ばかりを口にする男だ。

 

「俺の爺ちゃんの言葉で、よく言っていた事だ・・・。よく聞けよ?戦いというものは臆した者に必ず"負け"が訪れるものだ!」

 

祖父の言葉の中で最も彼が厳守していた言葉であり、気に入った言葉でもある。戦いを臆する者には敗北しかない。

 

その敗北に価値があるのか、無いのか?人によっては栄光を、後続に託せるといった捉え方をするだろう。

 

だが、敗北はすべてを失う側面も持っている。勝者と敗者はそれだけの違いがあるのだ。古来より、全ては勝者が何事も決めてきた。

 

果し合いにおいても勝者は生き残り、敗者は屍を晒し、何も意見は言えない。

 

「誰が、ビビってんだよォォ!」

 

「ふんっ!」

 

雪片をチャンバラソードで受け、競り合いを起こす。初めて学園で戦った時の再現だ。ウォーバニットを使おうとしたが、射撃では己の持ち味が生かせない。

 

だからこそ、己の基本に帰る事にしたのだ。ロクショウのパーツであるヘッドシザースに。

 

「俺は人を殺してなんかいない!怪我をさせただけで俺は・・!」

 

「そうやって現実から逃げるのか?俺は箒や鈴を瀕死にさせた、スラフティンと似た機体を使う女性達は手にかけた。俺はもう人殺しの罪を背負っている」

 

「だから、俺がお前を倒すんだよ!人殺しを野放しなんかさせて置けるか!」

 

瞬間、将矢はピコペコハンマーで思いきり殴りつけた。己自身が綺麗なまま戦いに参加出来ているという妄想を打ち砕くためだ。

 

「ぐは・・・ぐっ」

 

「いい加減にしろ・・自分の都合の悪い事だけを忘れてやがって・・!だから、お前は温室育ちなんだよ」

 

「!俺は・・俺は温室育ちなんかじゃねええええええ!!」

 

温室育ち、それは一夏が今まで聞いてきた中で最も聞きたくなく、また忌み嫌う言葉であった。

 

人間は己を的確に表現する言葉や禁句を極端に嫌う傾向がある。どんなに強い相手であろうとそれは変わらない。

 

将矢にとっての禁句が『大切な何かを壊す』というのなら、一夏にとって『温室育ち』がそれに該当する。

 

「人殺しが悠々と語るんじゃねえ!お前が持っているメダルも、ゴッドエンペラーもビーストマスターも、お前が使う機体の全てを壊してやる!」

 

「っ・・・!そうか、だったら俺はそれをさせる訳にはいかないな・・!」

 

「人殺しが使う道具を壊して何が悪いんだよ!!」

 

「ああ、そうだ。お前からすれば俺は人殺しだな・・だが、お前もだ。お前が戦ってきた女性達を手にかけてるのに」

 

「違う!俺は!」

 

「もう、お前との対話に意味はなくなった。お前が栄光の道を進みたいのなら、俺は修羅の道でいい・・二度と愛した人の側にいられなくても、俺は相棒と共に阿修羅の道を往く!!」

 

瞬間、スラフティンが変化を始めた。全身装甲なのは変わっていないが、ブラックデビルと戦った時のようにより強く一体化している。

 

「二次移行・・・身体への負担が極端に減ってる。メダフォースの発動可能時間まで解る」

 

スラフティンは二次移行したが、外見ではなく内部のプログラムの向上だったようだ。これは非常に珍しいパターンである。

 

「へん、なんにも変わってないじゃねえかよ!」

 

「・・・」

 

将矢は素早く間合いを取ると雪片の切っ先を掴んで喉元に当てた。一夏はそれを見て引き戻そうとするがビクともしない。

 

「は、離せよ!将矢、お前!このまま零落白夜を俺が使ったら死ぬんだぞ!?」

 

「だからなんだ?殺せるものなら殺してみろ・・!織斑先生を助けたいのなら俺を殺して、先に進めよ」

 

 

[推奨BGM CODE CRUSH ロックマンX7 主題歌]

 

 

一夏は初めて見る覚悟を決めた人間の目に戦慄していた。これが本当に同年代の目つきなのだろうか、顔にある傷は関係なく、威圧感を醸し出していた。

 

 

「!」

 

業を煮やした将矢は、雪片の切っ先を自分の生身がある腕に突き刺した。まるで何かを見せつけるかのように。

 

「なぁっ!?」

 

「来い、織斑・・!俺はお前を殺す気でぶちのめす!殺されたくないのなら俺を倒せよ。そうすれば二度とお前を温室育ちとは言う奴は居なくなるだろうからな」

 

「っぐ・・・があああああ!うるせええ!!殺す!必ず殺してやる将矢ーーー!」

 

挑発に挑発を重ね、感情的になった一夏は突撃し、将矢自身も迎撃するために向かっていく。鬼となった者と鬼になりきれない者。

 

白い騎士と鋼鉄の修羅が、再び激突を開始した。




此処までです。

挑発しぬいて、自分を殺したいほど憎ませた将矢はどうなるのか?

決着は次回へ持ち越しです。

スラフティンの二次移行に関しては、モーションプログラムの更新とメダフォースゲージが見えるようになった事くらいしかありません。

一体化に関しては親和性が強くなったとの解釈です。
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