強い提督と強い艦娘たちの楽しい生涯   作:樽タル

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1話です。

演習を見せられたあとに執務室に通された着任したての駆逐艦。
提督はその子に何を思い、何を言うのか……。


1話 意味と価値

~執務室前廊下~

 

演習の様子を見て驚愕した私は大淀さんの話もろくに聞こえないまま、気がついたら執務室の前に立っていた。

 

大淀「緊張してるの?」

 

私の様子を見て、大淀さんが声をかけてくれる。

 

確かに、少し緊張している。

他所では役立たずの自分が、ここではどのような扱いになるのか。

鉄砲玉のように帰ることのない存在か、それとも兵器のようにただ使役されるだけの扱いか、はたまた少女としての面だけを見て行為を強要されたりするのか、考えが浮かんでは沈んでいく。

 

大淀「大丈夫ですよ。あの人は優しいですから。さぁ、どうぞ。私はここまでです」

 

そう言って大淀さんは去っていった。

 

2回深呼吸をし、扉を4回ノックする。

 

「入っていいぞ」

 

中からそう声が聞こえたので意を決して扉を開いて中に入る。

 

執務室の窓際には司令官と思われる男性がこちらに背を向けて立っていて、外で行われてる演習を眺めていた。

 

「このたび○○鎮守府より異動してきました。欠陥駆逐艦吹雪です」

 

この挨拶は好きじゃない。まだ2回目だけど自分を欠陥品と呼ばなければいけないのは、事実でもやっぱり心地の良いものじゃない。

 

私の挨拶で司令官がこちらに向き直る。

 

司令官は若い男性で身長は大体平均くらい。

でも制服の上からでもわかるぐらいに筋肉が発達していて、とても指揮官といった体系じゃない。

そして、なぜか若さに似合わない異様な威圧感を放っている。

 

正直、怖い。

 

「そうか。吹雪、お前の欠陥はどこだ?」

 

全て書類で伝わってい内容ではあるが、おそらく書類と誤りがないかを確認しているのだろう。

 

吹雪「はい。私は速力が低く、雷撃能力がありません」

 

「なるほど。じゃあ次だ。お前は何のためにここに来た?」

 

吹雪「はい。私は海を守り、人類を守るためにここに」

 

「建前は聞いちゃいない」

 

私が言い切る前に、司令官にそう言って遮られた。

建前は聞いてない…か。

どうやらお見通しらしい。

確かにそれは建前だ。

自分が艦娘としてあるための。

正直に言うなら、私が言うことは決まっている。

 

吹雪「私は…自分に意味が欲しいんです、価値が欲しいんです。生まれながらに欠陥品の烙印を押され、廃棄されるだけの存在の自分に。意味がないのに耐えられません。価値がないのに耐えられません。だから私は…!」

 

つい思いが口からでてしまい息を詰まらせる私に司令官はまた質問する。

 

「なら、お前は自分にどんな意味が欲しい?どんな価値が欲しい?」

 

吹雪「私が私でいられる意味が欲しいです!代わりのいない価値が欲しいんです!」

 

つい興奮し、少しずつ声が大きくなるのが自分でわかる。

でも、この声は止まらない。心が止めてくれない。

 

吹雪「役立たずでも認められたい!欠陥品の烙印を消せるだけの意味が欲しい!!私がわたしであるために…!!艦娘であるために!!!」

 

ひとしきり叫んで冷静になって謝ろうとするが、司令官が先に喋り出す。

 

「それだけ聞ければ十分だ。まずはお前にここの一員という意味と、価値をやる。」

 

司令官はそう言うと私に何かを渡してきた。

 

それは2.5メートルほどの鉄の棒の様なもので、棒の半分くらいまで布の様な物が巻き付いている。

 

吹雪「司令官…これは?」

 

「お前の所属する隊の旗だ。これからはその旗に従って生きろ」

 

吹雪「広げても?」

 

司令官が頷いたのを確認して、私は旗を広げる。

そこに描かれていたのは地球と、大きな翼で地球を守るように包み込む美しい天使だった。

 

「それと同じ旗を掲げてる寮が、これからのお前の家だ。あとで寮員に挨拶でもしてくるといい」

 

吹雪「あの…この旗にはどんな思想があるんですか?」

 

「それは俺より寮長に聞くといい。その旗を作り、掲げた張本人だ。それと、明日は工廠でお前の適性検査をする。影響が出るとお前の今後に関わるから十分な睡眠をとれよ」  

 

吹雪「はい!失礼します!」

 

私はここへ来たときと比べ、随分と心が変わっていた。

なぜだか欠陥品の自分でも、ここでなら意味と価値が見つけられると確信していた。

 

私は少し元気を取り戻し、自分の家となる寮へと向かっていった。

 




1話終了です。

はい。名前を伏せていた駆逐艦は吹雪ちゃんでした。
今後も基本的に名前の出てない人物はかっこの前に名前をいれずに書いていきます。

では次回をお楽しみに。
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