何かUA数が一万を超え、お気に入りが50を超えてますね。
そんなに見られてると思わなかったので心が踊ると同時に砕けそうです。
第三訓練場を後にし、第四訓練場へと向かう吹雪。
訓練場が近くなると徐々に歓声のようなものが聞こえてきた。
~第四訓練場~
吹雪が第四訓練場につくと訓練場の周囲に多くの艦娘と思わしき人達が集まっており、訓練場に向かって何やら応援や野次を飛ばしている。
吹雪は中を覗こうとしてピョンピョンと跳ねるが、身長的にあまり良く見えない。
意を決して人混みの中に入り、もみくちゃにされながらも何とか最前列に来た。
吹雪「す、凄く狭い……けど、なん…とか見え…る」
吹雪はあまりの窮屈さに圧殺されるんじゃないかと重いながらも訓練場の中心に目を向ける。
そこにはおそらく戦艦であろう長身の艦娘と、昨日お世話になり、部屋に案内してもらった扶桑が対峙していた。
二人はさっきまで吹雪が見てきた艦娘よりも、更におかしな装備をしていた。
扶桑は見たところ砲の類いは一切装備しておらず、足の艤装は一見スマートだが良く見ると多数のスラスターと思われる噴出口がある。
しかし如何せん目を引くのが背中から伸びる6枚3対の大きな翼だ。畳んだ状態でも扶桑の膝下に届くような大きさだ。
翼はどう見ても鉄で出来てるが、まるで本物の翼のように羽の先が風に揺れてなびいている。
そして扶桑と対峙する艦娘は足、腰、背中に見た目からわかるほど出力の高そうなスラスターをつけており、左腕には少し大きい手甲をつけている。
しかし、それらの存在感が薄くなるほどおかしな物を持っている。
異常な大きさの剣だ。目測でも長さ3メートルはあり、厚さも相当な物だ。剣腹も幅広く、40センチはあるように見える。重量は200キロ近いのではないだろうか。
それを軽々と担ぎ上げ扶桑と対峙している。
「では始めるか。扶桑、ルールはいつも通りでいいな?」
扶桑「構いません。いつでもどうぞ」
「そうか。では、いくぞ!!」
対峙している艦娘がそう言うとスラスターが轟音を鳴らし、先ほどまで見ていた艦娘達が遅く感じるほどの速度で始動する。
それと同時に訓練場の周囲に集まっている吹雪以外の艦娘は歓声を上げた。
「せぁあ!!」
艦娘は声を上げながら馬鹿げた大きさの剣を片手で大上段から扶桑に叩きつけるように振り下ろす。
しかし扶桑はその場から動かない。
あの大質量の剣を受ければ確実にケガではすまないであろうことは容易に想像でき、吹雪は思わず叫びそうになるが次の瞬間声をのみこんだ。
ガアアアァァァァン!!!!
内蔵を叩くような重い金属音が辺りに鳴り響く。
扶桑は振り下ろされる大質量の剣を翼を盾のように使って防いだのだ。
扶桑「小手調べは不要でしょう?」
扶桑は微笑してそう言うと翼が開くように動き、剣ごと艦娘を弾き飛ばした。
翼に押された大気が辺りに突風を巻き起こして、突風は吹雪達のところにも届き一部の艦娘は髪や帽子を手で押さえている。
弾き飛ばされた艦娘は剣の重量をものともせず、空中で受け身をとり、ズザァーと音を立てながら着地する。
「そう言うな。次からは本気だ」
艦娘はニヤリと笑みを浮かべると再度扶桑に高速で接近すると、剣の腹で押し出すように扶桑を叩く。
扶桑はまた翼で防ぐが力が強いのか先ほどのように弾き飛ばせない。それどころかじりじりと扶桑を後退させている。
扶桑も確かに地面に轍が出来るほど踏ん張っているが、艦娘は止まらずに今度は逆に扶桑を弾き飛ばした。
そして飛ばされた扶桑に追い討ちをかけるようにスラスターを利用して飛び上がって身体を大きく回しながら剣を扶桑に叩きつけた。
扶桑が叩きつけられたと同時に地面にヒビが入り、辺りに土埃が舞う。
宙にいた艦娘は更に追撃しようと切っ先を叩きつけられた扶桑に向けてスラスターを全開にして突貫する。
しかしその瞬間土埃の中から扶桑が高速で後ろに飛び退いて回避するのが見えた。
良く見ると扶桑の翼はただの翼ではなく、翼事態が盾とスラスターの役割をはたしているようだ。
土埃を突っ切って艦娘がまたしても扶桑に向かって突貫しだした。艦娘はスラスターを全開にして体重と剣の重量を全て乗せた突きを繰り出した。
戦艦艦娘の装甲でも余裕で貫通しそうな貫徹力をしているのが見ててもわかる。
しかし扶桑は6枚全ての翼を使ってその突きを受け止めてしまった。
周囲に一回目とは比較にならない重音が響き、まるで大気が揺れているような錯覚すら覚える。
「これすらも受けるか。前よりも堅牢になったな」
扶桑「私も皆さんに置いていかれないように必死ですから」
「それは私も……同じことだ!!」
艦娘がそう叫ぶと同時に剣を瞬時に引き、野球のような動きで剣をフルスイングする。
扶桑はそれを翼で防いだにも関わらず宙にカチ上げられる。
扶桑「くっ…!」
「行くぞぉ!!」
扶桑をカチ上げた直後に艦娘は剣を左手で逆手に持ち変え、スラスターを噴かして空中の扶桑にアッパーのような動きで飛び上がって切りつけようとする。
扶桑「甘いです!」
扶桑は宙に浮いたままスラスターを噴かしてあろうことか空中で横に移動して回避した。
「な!?くそっ!」
扶桑が空中で動くと思わず直撃を確信していた艦娘の剣は空を切った。
艦娘は驚きで僅かに動きが鈍るが、外れた瞬間に身を捻ってスラスターで地面に瞬時に着地し、それと同時に扶桑も着地した。
「ふぅ……なるほど。いつの間にそんな動きを身に付けたんだ?」
扶桑「最近ですよ?少しずつ練習しましたから」
「なら、私も新しい動きを見せてやらねばな」
そう言い剣を右手に持ち変えるとスラスターの出力を更に上げて高速で接近する。そして剣を左から右へと振り、″切り抜けた″。
扶桑「速い!?」
いままでであれば扶桑に防がれればそこで止まってしまっていたが、今回は切り抜けてスラスターの出力を落とさずにスラスターの角度を巧みに操作してUターンしてきた。
「言っただろう。私も必死だと!」
そして次々と繰り出される剣戟。
切り抜け、切り抜け、袈裟斬り、逆袈裟斬り、切り抜け、大上段から叩きつけ、撫切り、切り抜け。
扶桑は何とか防ぎとおすが縦横無尽に切りかかってくるため、その場から動けないでいる。
「これで……終わりだぁ!!」
艦娘が切っ先を前に向けて両手で剣の柄を持ち全身全霊の一撃を放つ。
それは突きではなく、もはや大砲と呼ぶに相応しい威力と速度だった。
扶桑「私は……終わりません!!」
扶桑は迎え撃つように翼を開き、翼の先を艦娘にむける。
すると羽根の隙間に内臓されたスラスターが出力を上げ、銀の翼が赤熱しだした。
吹雪は知らないがそれは扶桑がもつ唯一の攻撃手段であり、隙は大きく射程も短いがデメリットに相応しい火力を持っている。
「オオオァァァアアアアア!!!!」
扶桑「はぁぁぁあああああ!!!!」
二人の渾身の一撃が重なり、思わず目をつぶってしまうほどの衝撃と、耳の横で爆弾が爆発したかのような文字通り爆音が周囲の艦娘を襲う。
吹雪を含む一部の艦娘はその余波で転倒している者やあまりの音量にクラクラと目眩を起こす者もいた。
吹雪がゆっくりと目を開けると変わり果てた二人が爆心地に立っていた。
扶桑は制服のほとんどが衝撃で破けてしまい、左胸に剣が刺さり剣より左の翼が折れ曲がり、肉体はほとんど皮でぶら下がっている状態だった。
艦娘は扶桑の渾身の一撃を正面から受けたようで制服は上半身のものは消し飛び、下半身のものもボロボロになっていた。
その上右腕が根元からなくなっており、左腕もボロボロで焼け爛れたようになっている。
しかし、二人は笑っていた。
「ハ、ハハハハハハ……また、決着がつかなかったな……扶桑……」
扶桑「フフ、フフフ……。そうです……ね……また、ですね……」
吹雪は急いで二人のもとへ向かおうとしたが身体がフラつく。すると先に誰かが後ろから二人のもとへ駆けつけた。
吹雪「あれは!司令官!?」
誰よりも先に二人のもとへ向かったのは提督だった。
吹雪が呆然としていると提督が何やら二人に話をしているようだ。
「お前ら……またやったのか?やるのはいいが、後始末のことを考えて海上でやってくれると助かるんだがな?」
「そう、言わないでくれ、お前にそう言われたら……私は悲しくなってしまう……」
扶桑「それに……これだけ……負傷してしまったら、海上では轟沈して……しまいます」
二人は途切れ途切れに言葉を紡ぐと冗談めかして提督にそう言う。
「まぁいい。すぐに入渠するぞ。おい!動ける奴等で手分けして担架持ってきて二人を風呂にぶち込んでこい!」
提督にそういわれて何人かの艦娘が担架持ってきて二人を運んでいった。
私はしばらく二人の立っていたところを眺めていた。
7話終了です。
何か2連休貰えたので今のうちに書いてしまいました。
初めてですね。こんなスラスラ書けたのは。
自分が普段どれだけ死にそうになりながら書いてるかよくわかりましたね。
自分の社畜魂が憎い……。