作者「難産でした」
友人「プロットすら組まずに全部その場で考えるとかお前の正気を疑う」
十日目
今日でヒャッハー師匠による厳しめの指導は終わった。筋肉痛が1週間ずっと止まないのは正直可笑しいと思う。ペンを持つ手が今も震えているのはきっと気のせいじゃない。
今日の訓練は一撃熊の討伐。装備はモップの柄、防具は無し。目隠しでジャイアントトード討伐や安物の槍と防具ありで初心者殺しの討伐の難易度が恋しくなりはしたが、何とかこなすことができた。
一撃熊は一言で言うなら巨大な熊。前腕部が異様に発達しており、名前の通り一撃で獲物を仕留めることに特化していた。主な攻撃方法は腕を振り回すことと噛みつき攻撃。正直ヒャッハー師匠との組手の方が危険度高いからそんなに脅威ではなかった。
主な対処法としてはまず身体能力が高いことが大前提となるが、腕の動き自体は単調な振り下ろし、薙ぎ払いくらいしかレパートリーが無いようなので、腕の届かない中・遠距離から急所に向けた攻撃が効果的だと思われる。近接攻撃しかできないパーティーで挑む場合は、1人がシールドバッシュなどのスキルを使って一撃熊を転倒させるか攻撃を跳ね上げるかして体制を崩し、崩れたタイミングで背後から攻撃力の高い冒険者が、正面はそのまま盾持ちが攻撃すれば楽に倒すことができるだろう。
私の場合はモップの柄。強度なんて高が知れているし、一撃熊の腕を受け止めるなど自殺行為なので仕方がないので腕の下に柄を入れて腕を跳ね上げるようにして逸らすことに専念しつつ、大きな隙ができた時点で頭部と腹部に執拗に攻撃することにした。何度目かの攻撃で一撃熊が怒ってしまい、攻撃に対してうまく対処できずにモップが折れてしまったが、ちょうど先が尖るように折れたので鋭利な部分を眼球に突き刺してそのまま脳を破壊することで討伐した。
一撃熊の皮はかなりごついが、加工すればそこそこ使い道があるそうなので剥いだ。肉は獣臭く硬いので好きだという人は少ないらしい。血の匂いを嗅ぎつけて別のモンスターが集まらないようにしなければならない、ということで、火のルーンを使って一撃熊の死体は焼いておいた。肉が焼ける臭いで思わず涎を垂らしかけた私は悪くないと思う。
街に戻ってから気が付いたことだが、1週間の修行でステータスがかなり上昇した。魔力と幸運を除く全項目が一回り上の数値になっていたので目の錯覚かと不安になった。筋力が一番成長しているのは女性としてどうなのだろうか。これで私が惚れやすい体質だったりしたらただのアマゾネスではないか。そういった認識をされることだけは避けないといけない。それはそれとして、修行中にレベルが大幅に上昇した。まぁ、初心者殺しと一撃熊討伐の時点でかなり経験値を貰えているだろうし、当然と言えば当然だろう。もうすぐ10レベルになれるだろうし、10レベルになったらスキルポイントを振り分けることにしよう。
1週間ずっと修行漬けだったこともあり、疲労がとんでもないことになっている。気を抜いたら瞼が降りてきてしまうのがいい証拠になるだろう。そういえば1週間ずっと馬小屋の壁にゲイ・ボルグを立て掛けていたわけだが、久しぶりに手に取ってみたらなんだがゲイ・ボルグに抗議されているような気がした。本格的に疲れているみたいなので今日はこの辺にして早めに寝ようと思う。
十一日目
結局全然寝れなかった。今日は昼頃まで惰眠を貪りたかったのに、毎日健康的な生活をしているせいか朝早くに起きてしまった。しかも最近寝起きがいいせいで二度寝もできなかった。初めて自分の体を憎んだ。日本にいた時は休日は二度寝、平日は講義の最中に仮眠を取っていたのだが、どうもこの世界に来てからはそういったことが無くなった。結構忙しい日々を送っているんだなぁと自覚できた朝だった。
昼にギルドで休息をとっているとちょっとした事件が起きた。新しい冒険者がギルドに加わることはそう珍しくは無いのだけど、今日加わった新人は私をこの世界に転生させた女神だった。もう1人日本人がいたけれど、転生特典のようなものは無かったので、もしかしたら女神様を特典として連れてきたのかもしれない。その発想は無かった。そしてなぜかお金を持っていなかったので登録料と合わせて生活費を譲ってあげた。その後の登録の時に女神様のステータスがだいぶ優秀なことが分かった。これからの活躍に期待しよう。
ずっとギルドで怠けていてもいけないのですぐに終わりそうなジャイアントトードの討伐をこなしておいた。1週間の修行の成果なのか、かなりあっけなく依頼が終わってしまった。
明日はもう少し骨のありそうな依頼をこなそうと思う。
十二日目
今日は屋外で日記を書くことになった。理由は今回受けた依頼がダンジョンの探索だったから。ダンジョンの探索はかなり時間と手間がかかるため、ダンジョンの入口で1日寝泊まりしてから朝一で突入するのが基本らしい。
明日はダンジョン突入ということで、初めてパーティーを組んでみ(文字が乱れていて読めない)
危なかった。日記を書いている途中でクリスに後ろから驚かされたせいで変な声が出そうになった。私は日記を読まれることに特に抵抗はないけど、日記を書いている最中は一日の出来事を思い出すために集中して周りのことがあまり分からなくなるので声をかけられても返事ができないことが多い。今回もクリスは声をかけても一心不乱に日記を書いている私を驚かせてやろうと思ったそうだ。
先ほど私の背中に飛びつくという悪戯をしてきたクリスは、今回私がパーティーを組んだ2人組の内の1人で、好奇心が旺盛だと印象を持たせる少女で、職業は盗賊だった。もう1人はダクネスという女性で、自己紹介の時に自分を遠慮なく盾代わりにしろと口走ったクルセイダーである。その後クリスに肘でどつかれているのが印象的だった。
この2人とパーティーを組んだ理由はギルドの掲示板で募集をかけていたからで、私としてもダンジョンという狭そうなところで槍を使う練習をしたかった。一応槍が全然使えなかった時のために武器屋で長剣を買ってきたが、おかげで懐が少し寒くなった。明日のダンジョンで失ったお金は取り戻そうと思う。
ちなみにこの2人、私よりも背が高い。いや、147cmの私が小さすぎるのかもしれない。19歳で成長期を期待しても許されるのだろうか。許してください。
十三日目
今日は朝一番から探索三昧だった。クリスの持つ宝探知というスキルのおかげでかなり儲けることができた。他にも敵探知や罠探知、隠密のスキルはかなり役に立った。
ダンジョン内で遭遇したモンスターはダンジョンモドキとコボルトが多かった。ダンジョンモドキは少し高度なミミックのようなモンスターで、ダンジョンの通路などに擬態し、これまた擬態によって宝箱や怪我をした人を作り出し、欲や親切心に駆られた対象を捕食するという性格の悪いモンスターだ。コボルトはファンタジー系の小説ではかなりメジャーな部類に入るのであまり説明はいらないだろう。
ダンジョンモドキの対処法としては、もう盗賊を連れて行くのが一番手っ取り早い。本職のクリスによると、壁全体から敵意を感じたりするからすぐに分かるらしい。盗賊を連れずにダンジョンに入ることはまず無いそうなので、ダンジョンモドキに引っかかることは無いだろう。あえて対処法を考えるなら、少しでも違和感を感じたところに向けて石を投げ入れるとすぐに分かるだろう。
コボルト。英語ではゴブリンなどと訳されたりもする小人で、犬のような体を持つ生物。コボルトは石でできた粗雑な剣や槍を使って攻撃してくるので対人戦闘なんかにはもってこいの練習台だろう。視界が良ければただの雑魚、視界が悪ければただの雑魚である。剣や槍を砕けば拳の攻撃以外何もできなくなるので、初心者の弾き飛ばし攻撃の練習にはいい相手だろう。ただ油断しすぎると足元をすくわれるので注意が必要だと思われる。
と、ここまで客観的な視点で書き綴っているが、私たちはどうなのかというと、楽勝でしかなかった。クリスの敵探知スキルで位置を補足して接敵した瞬間に討伐である。槍の扱いに関しては突きや小さく切り払うのは可能だったので長剣の出番は無かった。でも今度機会があれば練習してみようと思う。ダクネスは長剣を所持はしているが、不器用すぎて止まっている相手にも当てられていなかった。ちょっと引いた。
今回のダンジョン探索ではたくさんの貴重品や装飾品、宝石を獲得したので自分達が使えそうなものを各自で回収し、残りはギルドで換金した。3等分にするため1人あたりの貰える金額は少なくなるが、それでも宿で安定して寝泊まりできるくらいの金額は手に入ったので、そろそろ馬小屋の生活を脱出したいと思う。まだ余裕はあるとはいえ、あと2,3週間もすれば段々と寒季がくるだろう。今から対策をして聞きたいと思う。
PS.レベルが10になったので