この槍使いに祝福を!   作:シンセイカツ

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ルーキー日間ランキング20位に入っていたのを確認して衝動的に書きました。
…えっと、夢ですか?


影島奈々の記録(5)

二十日目

 

 今日は一段と濃い日だった。ジャイアントトードの討伐という危険度の低い依頼を請けたはずなのに心身の疲労が強い。しかも今日一日分だけでなく明日も似たような思いをする自信がある。ともかく一度自分の中で整理を付ける意味で、朝から思い出して書いてみようと思う。

 

 昨日のカズマ君との約束通り私はカズマ君のパーティーに入ることになった。パーティー募集の張り紙にはめちゃくちゃ怪しい宗教への勧誘紛いの内容と上級職に限るという項目があったけど、カズマ君が言うにはアクアが書いたものらしい。これでは誰も来ないだろうと言いたかったが、面倒なことになりそうだったのでぐっと飲みこんだ。

 

 ちなみに、昨日までの日記のようにアクアを女神様と呼ばないのはいろんな要因があるけど、一番強いのはカズマ君に目立ちたくないから名前呼びにして欲しいという要請があったからで、どうせなら日記での読み方も一緒にしようと思ったからである。この日記をアクアが読んだらどう思うだろうか。何の気なしにこの世界の言語で書いているので、この世界の人にも読めてしまうのが難点だと思う。今更変える気も起きないけれど。

 

 私が加わった時点でジャイアントトード討伐に向かうのではなく、もう1人、できれば魔法職が来てから挑戦したいとのことだったので、大人しくカズマ君と会話して待つことにした。会話の途中でカズマ君の年が私よりも3つ下なことが判明した。カズマ君には私が年上という事実にすごく驚かれたが。とりあえず軽く叩いておいた。頭には手が届かないので胸への水平チョップみたいになったけど。人の魅力は見た目じゃないんだよー。

 

 昼まで待った時点でカズマ君から募集要項の変更の提案が持ちかけられたが、ちょうどその時に念願の魔法職が現れた。名前はめぐみん。めぐみん。…めぐみん。最初聞いた時はあだ名を名乗って空気をほんわかさせる感じのジョークだと思った。だってマント翻して中二病じみた自己紹介始めるとか、日本にいた時にも1回しか体験したことなかったし。しかもその時はその人が合コンで自己紹介するときに場を和ませる練習してた時のだし。

 

 私の愉快な友人の話はともかくとして、めぐみんの職業はアークウィザード。魔法職の中でも高い知力と魔力が要求される職業で、強力な魔法を操るらしい。確かウィズさんも元アークウィザードだったと思う。

 

 見た目的な特徴は紅い瞳に黒い髪。黒いマントに黒いローブ、黒いブーツに黒いトンガリ帽子という黒一色で、名前を聞いたら多分「紅魔族随一の魔法の使い手のめぐみん」といった感じで返してくれると思う。彼女の名前は独特なので聴いたらすぐに覚えれるはずだ。私もすぐに覚えれた。

 

 ただ、紅い瞳に黒い髪、独特な名前というのは紅魔族全体に言えることらしく、それはめぐみんの父がひょいざぶろー、母がゆいゆいという名前だと言えば納得してもらえると思う。私達日本人も異世界の人から見たら独特な名前だとは思うけれど、正直紅魔族よりも酷い名前というのはなかなか見ることができないだろう。できるとしたらゲームの中だけだ。ちなみに私がゲームで見た一番酷い名前はもょもとである。発音不可能である。

 

 さて、3日も何も食べていないらしいめぐみんのご飯を私たちの昼食も兼ねて一緒に食べていざ討伐!と意気込んでいたものの、ジャイアントトードを視認した時点でアクアが速攻でジャイアントトードに突撃していき、口の中に吸い込まれた。止める暇も無かった。魔法使用までの時間稼ぎをお願いされた瞬間に走り出して、ジャイアントトードに打撃攻撃を加えて食べられる人なんて初めて見た。

 

 アクアに気を取られている間に爆裂魔法というめぐみんが持てる最強魔法の準備が完了。地面に20mほどのクレーターを作ってジャイアントトードは爆発四散。初めて見る強力な魔法に感動していたらジャイアントトードがめぐみんの魔法の爆音で目を覚まし、魔力切れで倒れためぐみんを捕食。ここまで5分もかかってなかったと思う。

 

 その時私は完全に事態が呑みこめていなかった。だってそうでしょ?自分からジャイアントトードに食べられに行ったも同然な女神、地面に巨大なクレーターを作る強力な魔法、そんなかっこいい魔法を使った本人は魔力切れで倒れる、湧き出る新手、食われる魔法使い。カズマ君がツッコミしてくれてなかったら多分ショートしてた。

 

 やっぱりパーティーを組んだら行動も変わるね。テイラーたちと一緒の時は前衛と後衛、サポートの役割分担がしっかりされてたし、クリス達のパーティーでは探索役、戦闘役、囮役とそれぞれが得意なことを分担してた。私はジャイアントトードは切断系の武器で挑んで、横方向から致命傷を与えるのが最善だと思ってた。まさか素手で突っ込むとは……。

 

 という感じで思考の海に現実逃避していた私はカズマ君にゆすられてからこの事態を何とかしないといけないとと動きまして、カズマ君にめぐみんの方のジャイアントトードをお願いして私はアクアを食べてるジャイアントトードの腹を裂いて救出。カズマ君は火事場の馬鹿力が発動しているんじゃないかといいたくなるような跳躍でジャイアントトードの頭部を破壊しているのが見えた。

 

 カズマ君の方を確認していたらアクアが泣きついてきて、怖かった臭かったと喚き散らすばかり。なぜ突っ込んだ。そして泣きつかれたせいで私の服まで粘液でヌルヌルに。思わずうへぇと声を出した私は悪くないと思う。

 

 ジャイアントトードの討伐終了後、ギルドに向かう道すがら反省会が行われた。アクアは言わずもがな。私はもうちょっと早めに復活できていたらめぐみんは食べられなかっただろうと反省。ただそのめぐみんが問題だった。

 

 めぐみんに次から他の魔法で戦ってくれと軽く言うカズマ君への返答が「できません」。めぐみんの言うことを私なりに解釈したところ、爆裂魔法以外を使う気が無いので他の魔法は使えないとのこと。頭痛がした。

 

 めぐみんの話を聞くうちに顔色が悪くなっていったカズマ君は、まくしたてるようにめぐみんの加入を遠回しに反対し、解散に持ち込もうとするが断念。何かの粘液でヌルヌルの少女を捨てようとする様子を近隣の住民に目撃され、変な風評被害が広まりそうになったためだ。あの女性3人はいささか想像力がエッチな方面に豊かすぎると思う。

 

 こうしてカズマ君のパーティーに1日1回しか魔法が使えない魔法使いが加入した。強力な魔法を使えるが日に一回しか使えず、使った後は全く動けない。ウィズさんの店にそんな産廃商品があってもおかしくはなさそうだ。

 

 こっそり隠れながらと宿に退散しようとしていた私もカズマ君の何かを訴える視線には抗えず、このままパーティーにいることになった。

 

 これで終わりかと思えばまだ少し悩ましい出来事が。

 

 私たちがお風呂に入っている時、カズマ君は報酬を受け取っていたのだが、その後テーブルで私たちを待っている時に更なる加入希望者が来たそうだ。

 

 特徴は金髪で長身。金属の鎧を着た女性だったそうだが、なんだか危ない感じがしたので適当にあしらったとのこと。

 

 どうしよう、凄く心当たりがある。

 

 間違っていることを願ってカズマ君に「もしかして美人だった?」と聞くと答えは応。金髪で長身の美人で、金属の鎧を着た危ない感じの女性。確定した。どうしよう、これダクネスだ。クリスがいないということはストッパーもいないということ。これはあのドMがこのパーティーに加わる可能性も出てきたんじゃないかな?

 

 ダクネスはなんとなくしつこい感じがあるから、多分明日も来るんだろうなぁと思いつつ吐いたため息は、今日1日分の疲れを全て表しているように思えた。

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