同級Pのハーレム(暴走気味)を眺める事務員Bのお話 作:Aりーす
アイドルには様々な種類がある。正統派アイドルと呼ばれるものもあれば、全く別種のアイドルだって存在する。もちろんそれはアイドル世界での、一つの生き残る手段だ。
全く同じジャンルで戦うアイドル、と言うのは完全に弱肉強食の世界。仲が良かったアイドルが売れ始めると、仲が悪くなり蹴落とし合う……そんな裏があったとしても何ら不思議ではない。
アイドルはどこの国でも人気が出る。その国にはその国のアイドルがいるのだろうけど、この国……日本とやらは特にアイドルに力を入れてるようにも思えてしまう。
スカウトは俳優などにもあり得るけど……アイドルとして売れ始めてから存在するルール、と言うのもある。よく聞く事でもあるだろうけど、恋愛禁止って奴だ。
アイドルとしての姿は普通の日常生活でも出せ、と言わんばかりの縛りだと思う。ファン達のアイドルとしての姿を崩させないため、なのかは知らないが……年頃の女子に恋愛をするな、なんて意外に過酷とも思ってしまうわけだ。
さて、何故こんなに俺がこういうことを思っているのか。まず一つとして俺はアイドルの事務所で働いている、って所だ。もちろんアイドルとして働いているわけじゃない。
かと言って、スカウトする側……社長だとかプロデューサーなどで働いているわけじゃない。何で働いているか、答えは事務員だ。事務員ってのはまぁ、スケジュールを決めたり……事務所の中じゃランク的には低いかもしれない。いや、低いのは確定だわ。
二つ目の理由はプロデューサーにある。俺と同い年……まぁ高校、大学が一緒で仲良くなったってだけなんだが、アイツはプロデューサーとしてスカウトされたらしい。その時に俺を事務員として指名したらしい。
アイツ、現プロデューサーの名前は進藤(しんどう)裕也(ゆうや)。Pヘッドだと思ったか、優男風のそれなりに顔整ってる普通の人間だよ。ちなみに俺は芝崎(しばさき)咲良(さくら)。女っぽい名前にも聞こえるだろうけど、俺は男です。
まぁ、プロデューサーとして働いてるアイツはかなり大変そうなんだ。毎日何十人と言ったアイドルを送り迎えしたり、管理したりするわけだからな。そのサポート役が俺なんだが……
俺はすごい悩んでる。仕事を優先したほうがいいのか、こちらの悩みを解決した方が良いのか、全く分からないわけだ。その悩みの種ってのはアイドル業界……ってかウチやその系列の事務所で発表された、あるルールだ。
『恋愛解禁』これが発表されたルールだ。理由としては……まぁ8割は進藤とかいうプロデューサーのせいだ。とにかく優しい上に気配りも出来る、相手をしっかり女として扱う……つまりモテる訳だ。
ただし悲しい事にかなりの、鈍感なのである。モテる奴に鈍感要素をいちいち加えるんじゃねえよ!どう考えたって詰め込みすぎだよ!ハイスペックの上鈍感ってよりモテるフラグでしかねぇじゃん。
さて、アイドル達は少なからず裕也に好意を寄せている。俺が知ってる限りのアイドルの中の9割は、確実にLoveの感情だけどな。しかも何人かは暴走気味だった。
あるアイドルがいる。それはヤンデレなのだが……日記をつけてたり赤い糸がどうのこうの言ってる結構、ヤバ目な感じな奴なのだが……うん、裕也を好きなアイドルの内の数名はそれすら超えてる可能性がある。
恋愛解禁って言われて目を輝かせるアイドルが何十人もいるのに、それにすら気づかない鈍感がいるからこうなるんだよ。
「……で?恋愛解禁されて……1週間経つ訳だが、何か感じることはあったか、裕也」
「別に何も?なんかみんな楽しそうな雰囲気だよな〜。仲よさそうだし」
「相変わらずお花畑の脳内だな、ほじくり出してやろうか」
「怖いわ!久しぶりの休みに飲めるんだから、物騒な単語はよせよ!」
「……はぁ……つか今日、お前結構色々な子と話してただろうが。夜だけ仕事がないってのは、休みとは言わねーぞ」
「そうなのか?まぁいいじゃん。ちひろさんは飲まないんですか?」
「私ですか?んー……明日も事務はありますしね、明日に響かない程度で、ですかね?」
「別に飲んでもいいんじゃないですか?帰り、俺送りましょうか?」
「じゃあ飲みます!生追加で!!!」
流石千川ちひろ、汚い。完全に狙ってただろ今の。千川ちひろ、俺と同じ事務員で裕也に好意を寄せている中じゃ、かなり長い方に入る。しかし好意に気づかれる事はないという、悲しい人間だ。
「はぁ……俺はいつから胃薬常備人間になっちまったんだよ……」
「胃薬?なんで?」
「お前の後処理。後はアイドル対応。どんだけ精神擦り減らしてると思ってんだ!」
「別に擦り減らないだろ、みんな可愛い子達なんだから。お前だって可愛い子は好きだろ?わり、トイレ」
可愛いからって許される許されないくらいはあるぞ。お前のパソコンから個人情報を抜き取ってるアイドルを見て、どれだけ胃薬を飲んだかお前は知らないんだよ……
「ちなみにですけど……芝崎さんは今日はどの子を?」
「鷺沢、渋谷、本田、新田、北条、橘、速水……後はギャル姉妹。神崎二宮ペアは特に何もなかったんで。正確には言語がそこまで理解できてないってだけですけど」
「わぁ……年末もびっくりな豪華ラインナップですね……」
「恋愛解禁なんてやるからでしょ……まぁ、社長から見ても常務から見ても隠し切れてないから、いっそのことって訳なのかもしれないですけど……」
「目に見えて暴走が始まりましたもんね。特に凛ちゃんは」
「元からヤバイのに。知らない間に裕也の家の中を知ってた事に気付きました。この1週間で何を学んでんだアイツ」
「行動が早いですね……こう、過激派が増えてきてる辺りを気づかないのが裕也さんですもんね……」
「未だに恋愛解禁なんて自分には無縁、と思ってる節ありますよ。……しかもアイドル連中は何故俺に何かしらがあると聞きに来るのかが……」
「ほら、1番付き合い長いのって芝崎さんじゃないですか?写真とか持ってるんでしょ?」
「それのせいで俺まで巻き込まれてんですよね。思い出とかならまだいいけど、なんで俺が裕也の攻略法を知ってると思われてんのか……」
「まぁ、1番強敵みたいなとこ、ありますし?」
「どこがですか。普段クールとか言われてる奴ほど、暴走しやすい傾向にあるんだよな……」
今日やばかったのは渋谷と新田な。渋谷凛、普段かなりクールで……家は花屋だったか?まぁ俺には興味を示してないだろうから別にいいや。新田はラクロス?うん、あんま覚えてないわ。酒回ってるってのもあるからだな……
今日の渋谷はこんな感じでした。
『芝崎さん』
『なに……?さっきから色々対応してっから手短、かつ俺に胃薬が必要になる案件じゃなけりゃ言っていいぞ』
『もう既成事実作った方が早いって思ってきた』
『帰ってくれない?高校生、しかも女子だよな。その決断早すぎだろ』
『いや、ちゃんと最後まで聞いて?私も今回のこの決断、ちゃんと考えてるんだ』
『早いとか言ってたんだけど?……まぁまぁ、そこは置いておこう。言ってみろ』
『まず、プロデューサーを堕とすのは相当大変。これから5年経ってもできない可能性の方が高い』
『正解。直接告白しても伝わってない時を目の前で見たからな。なるほど』
『さらに敵も多い。アイドルのほとんどが好意を寄せてる訳だからね。それに他の子らと喧嘩になりたくもないの』
『確かにな。蹴落としあいになるなんてのは最悪なパターンだ。それで好意に気づいたとしても、責任を感じそうだしな』
『そう。もちろん私達全員が幸せになる方がいいに決まってるじゃんか。抜けがけする子もいるけど』
『俺に色々かましてくるのも抜け駆けに含めるなら半分は抜け駆けしてるだろ』
『……まぁ、そこは良いよ。で、みんなが幸せになって尚且つ好意を伝えられる方法を私なりに探したんだ』
『筋は通ってるな。で、その結論は?』
『既成事実作ればみんなで共有できるじゃん。プロデューサーを』
『帰ってくれない?俺忙しいんだわ、戯言に付き合ってる暇ないんだ』
『そこで芝崎さんに協力して欲しいんだよね』
『もしかして日本語通じてない?帰ってくれって頼んだはずなんだけどな』
『プロデューサーが週に何回シテるんんっ!?』
『うん、ひとまず頭おかしくなってるから黙ろう。俺がそんなの知るわけないよな、まず』
『え、男子ってそういうのお互いで話し合ったりするんじゃないの?本で読んだよ?』
『ちなみにどんな?後誰から?』
『本はR指定入ってる奴。見せてくれたのは速水さん』
『速水ィ!!!』
俺の胃薬を飲む頻度を高まらせるつもりか。もし小さい子らにも見せ始めてたら……プロデューサーに速水は同性愛者とでも伝えてやろうか。最近、俺への相談が増えてるのは速水のせい説を考えつつあるからな。
しかもそれに加えて速水も来るからな。ちょっと頭おかしくなってるんじゃないかな。大人組と強制旅行休暇にでも連れて行かせてやろうか。休暇あげるとか俺優しすぎだろ、あの大人組と一緒に行くとかごめんだけどな。ダジャレ言われるし酒飲まされるし。あれ、速水って未成年?まぁいけるでしょ。
で、次はどこかのスレとかでは歩く18……まぁそこは良いか。まぁあまり嬉しくないんじゃないかって感じの二つ名?を持ってる新田美波との会話だ。
『サクさ〜ん』
『あ、ちょっと今日は飲みなんだ。20時からだからそろそろ帰る時間だ』
『そうなんですか〜。今15時ですけど』
『早帰りするつもりなんだよ。てか……なにその格好』
『撮影のコスプレなんです。小悪魔のコスプレなんですけど、これでプロデューサーに突撃したいんです』
『いや、別に突撃すれば良いじゃん。なんで俺の所に来たし』
『似合ってます?』
『小悪魔っていうか、ガチ悪魔じゃん……』
『ガチ悪魔なので目の前の人を嬲っても許されますかね?』
『調子に乗りましたすいません。……まぁ、似合ってるけどなぁ。さほど俺に見せる必要ないじゃん』
『何言ってるんですか。あのプロデューサーが、似合う以外言うと思いますか?』
『うん、そうだな。服を買いに行くときに何個か見せられて、全部似合うしか言わない男だもんな……』
『悪魔のコスプレ、と言うことなので今回のコンセプトは搾り取る作戦なんですけど……』
『及川にでも頼めば?牛の乳を搾ってこいよ』
『まぁ同じ感じですよ?色的には』
『自分がアイドルって自覚ある?裕也の前だと一度もそんな発言してないよな?俺になんでする訳?』
『いつも色んな厳しい事言いながら、ちゃんと構ってくれるじゃないですか。そんな感じが好きなんですよ、私は』
『変わってるな。構ってるつもりはないんだけど。てか逃げれないから仕方なく、という理由だけなんだけど』
『ふふっ、嫌なら辞めてそうですけどね?』
『少なくとも変態化してるアイドルが犯罪に走ったり、それに巻き込まれる鈍感は見たくないからな……別に恋愛はどうも言わねえけど』
『でもサクさんも恋愛解禁なんですし、サクさんも出会いを探してみたらどうです?』
『なんでアイドル限定なんだよ。出会いなんかあるわけねーだろ、あの鈍感が近くにいるのもそうだし、俺自身モテるとか思わないし』
『……んー、まぁそれでも良いんじゃないですか?』
『流石引く手数多な新田って所の発言だな……』
『引く手数多って……まぁ本当に相手がいなかったら私が貰ってあげても良いですよ?』
『アイドルがアホな事言うなっての。ヒモになりたくもねぇし……』
『ふふふっ……あ、お仕事の時間なので行ってきますね〜』
『……え、裕也に見せるってのどこに行ったし』
……うん、疲れた。恋愛解禁前から相談受けたり、悪ふざけ受けたりしてたけども。恋愛解禁してからより増えたよな……俺に裕也の攻略法を聞かれても困るんだが。
別に幼馴染とかでもねぇしな……確かにアイツの好きなタイプくらいなら知ってはいるけど、鈍感はどうしようもないんだよな。フィクションでもそんな感じだし。
「悪い、結構長くなった」
「注文届いたぞ。枝豆と生、後はレバニラな。あさりバターもついでに頼んでおいたから」
「おっ、サンキュー!」
「えっ、いつの間に……」
「千川さん、こいつ結構魚介のツマミが好きなんですよ」
「そ、そうなんですね……」
「流石サク、気がきくよな!しかもバターってのがまたいいな!」
お前に褒められてもさほど嬉しくないんだよな……俺を褒めるならもう少しアイドルらに対して、好意を悟れるようになってくれればいいのに。いきなり襲われたりしても知らんぞ、そうなる可能性は低いと信じたいけど。
渋谷とか新田とか……他にも危ない奴は数名いるけど、そこら辺が協力なんてし始めたら裕也は死ぬんじゃないかな。後俺の胃も死ぬと思うけど。
「んじゃ、もう一回乾杯しますか。明日からも仕事頑張るぞー、的な」
「仕事の話するなよ、辛くなる。千川さんもほら、乾杯ですよ?」
「あ、はいっ!」
もう一度乾杯し直す。出来ればアイドルだったり、千川さんだったり、世の中の裕也が好きな女子らの気持ちが100分の1でも伝わりますように。後仕事が減らないかなって思いながら、3人での飲み会は再びスタートし始めた。
芝崎咲良→今作品の主人公。最近は胃薬が最高の親友。名前とは裏腹に全く女子っぽくない、と言われるが気にしていない。
進藤裕也→同級鈍感P。恋愛解禁されてからもスキンシップが増えたな、程度にしか思っていない朴念仁。
千川ちひろ→好意を寄せてる勢のなかでは付き合い長い方なのに、気づかれてすらいない哀れな方。実は芝崎が最大の敵なのでは?と思い始めた。
渋谷凛→言わずと知れたクール美少女。他のアイドル達の影響を濃く受け、今や変態化侵攻率は8割になっている。同級Pの前では変態発言0
新田美波→歩くなんたら禁さん。歩くだけでフェロモンバリバリだが気づいて欲しい人には何一つ気付かれていない。際どいコスプレばかりで少し凹んでいる。