なんかチート能力を持った三人がFT世界に殴りこむ話 作:アイソー
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
「誓いを此処に。 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
「ちくしょう……『ガンド』しか出ない……爆死だ……」
「いい加減、十連ガチャの度にそれ言うのやめない? しかもこんな公共の場で」
目の前の友人がスマホを持ったまま突っ伏す。あれだけノリノリで詠唱まで言ったのに、盛大に爆死したようだ。石もつきたようで、落ち込み具合が凄い。
ただ爆死するのはいいが、こんな喫茶店であんな詠唱を言うのはやめて欲しい。自分を含め三人で席に座っているのだが、自分達三人を見る店員さんの視線が痛い。
しかも道路側が一面ガラス張りのオシャレな喫茶店なのだ。他のお客さんがいないのが幸いだが、肩身が狭い。
「でも前に詠唱した時にはメルト出てくれたし……」
「あれお前七万課金してたじゃねぇか。詠唱関係なく、マネーパワーだから」
ちなみにこの友人は廃課金者だ。大学の合間にバイト――いやバイトの合間に大学へ行く生活をして、稼いだ金は殆ど課金に使っている。
「こうなれば、また課金をするしか……」
「……落ち着け」
さらに課金地獄に陥りそうな友人をもう一人の友人が止めに入る。
こいつは詠唱している間も一人静かにコーヒーを飲むぐらいクールな奴だが、仲間思いのいい奴だ。
「課金以前に……ギルガメッシュを呼ぶには、触媒が足りない……」
ただ悪ノリするのが玉にキズだ。
「それもそうだ……そうなると世界で初めて脱皮したヘビの抜け殻が必要か……」
「落ち着け! せめてギルのフィギュアとかにしとけよ! てかAmaz〇nで探してもヘビの抜け殻とか売ってないから!」
「……やっぱりこいつ、アホ」
「お前のせいでアホが暴走しているんだがら、止めるの手伝えよ! 優雅にコーヒー飲むな!」
「素に銀と鉄。 礎に――」
「なんかもう課金してる!?」
大学の講義の空いた時間。
趣味の合う友人三人でグダグダする時間。
とても建設的ではないがとても楽しく居心地が良く、この時間がもっと続けばいいなと思っていた。
しかしそんな時間も唐突に終わりを告げる。
「は?」
「--汝の身は我が下に、我が命運は――え?」
「な!」
ガラス張りの壁から、大型のトラックがこちらに突っ込んで来ているのが見えた。
そして逃げる間もなくトラックが喫茶店に突っ込み、そこで自分の意識は消えた。
「おっす、ちわっす、ちゃっす。神様的な存在だよ」
そして目が覚めると、目の前にシルバーのアクセサリー沢山つけた、何やらチャラチャラした男がいた。
慌てて周りを見ると、一面真っ白の空間で、両隣には二人の友人達がいた。そして三人とも何故か正座をさせられている。動かそうと思っても、体はピクリとも動かない。
「唐突ですが、現世での生を終了した三人には、別の世界に行ってもらいまーす。こっちの暇つぶし的な意味で」
……これ、俗に言う神様転生的な感じではないだろうか。目だけ動かして両隣の友人を見ると明らかにソワソワしている。二人も同じ事考えているようだ。
「あ、ちなみに喋られると面倒くさいから全員喋れないようにしているからね。さーて、三人が行く素敵な世界を決めようかー」
神? が手を叩くと、目の前のダーツボードが現れる。ダーツボードにはいろいろ漫画やアニメのタイトルが書いてある。ただ字が細かく、数が多すぎて全部は把握しきれない。
「はーい、パジェロ、パジェロー」
神? の言葉と同時にダーツボードが回転する。そしていつのまにか持っていたダーツを適当に投げた。ダーツが当たると、ボードの回転がゆっくりになっていく。
「FT……FAIRY TAILの世界に決定だー」
行く世界が決まった。しかし正直FAIRY TAILはあんまり知らないのだが……。
「この前漫画は六十三巻で完結したよー。アニメもやるからよろしくねー」
え、なにそのステマ。
「じゃあ三人には早速にはFT世界に行ってもらおうか。勿論、皆にチート能力あげちゃうぜー。どうせだし、好きな作品の能力上げようかー」
神? が俺達三人の頭を順番に触っていく。
俺の頭が触られると、唐突に頭に言葉が浮かぶ。
『金色のガッシュ!! の全ての魔物の呪文使用能力』
テラチートやん。
しかし何故にガッシュなのだろうか。確かに好きだけど、古くない?
……そういえば一昨日ゲ〇で借りて全巻一気読みしたな。あれが原因か?
「それじゃーそろそろ行こうかー」
そう言うと、自分達の頭上に巨大なハンマーが出現する。赤黒く汚れ、なんとも禍々しいハンマーだ。
それを見て顔から血の気が引く。多分両隣の二人も同じ思いの筈だ。
しかし、転生するのに痛いなんて話は聞いた事は――。
「大丈夫、痛いのは一瞬だよー」
え、痛いの、あれ。
「それでは新世界にレッツゴー」
瞬間、ハンマーが降ってくる。
こうして俺達は違う世界に旅立った。激痛と共に。