なんかチート能力を持った三人がFT世界に殴りこむ話   作:アイソー

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まず話すべき

 俺達がこの世界に来てから、早いものでもう三か月になった。

 

 最初こそ一悶着あったが、今ではギルドにもなじみ、順調に仕事をこなしている。

 また戦闘経験も積み能力の扱いも慣れ、三人とも確実に強くなっている。俺も中級呪文は使えるようになったし、上級呪文もいくつか使えるようになった。

 

 

 異世界での生活も至って順調だ。

 

 ただ問題があるとすれば……。

 

 

 

 

「妖精の尻尾(ケツ)共が調子乗りやがって……次会ったぶっ殺してやる!」

 

「しかし協定のせいで出来るのせいぜい小競り合いぐらいだからなぁ」

 

「一回デカい戦争してぇよな! な! キヨマロ!」

 

「ソーデスネー」

 

 うちのギルド妖精の尻尾――つまりは主人公サイドと滅茶苦茶仲が悪いんだよなぁ。

 

 しかもうちのギルド――幽鬼の支配者のやり方は多少強引な所があったり、周囲への被害が大きかったりと、完全にこちらは悪役の立場だ。

 

 今飲んでいるギルドの酒場にいる仲間達も、口が悪かったりガラが悪かったりと、なんか三下っぽい。まぁ悪人と断定できる程ではないが、悪い意味でアホが多い。依頼人を脅して依頼料を上げるとかアホ過ぎる。そんな事をすれば次から仕事がなくなるのが分からないのだろうか。

 

 とりあえずそういった脅迫行為はギルドマスターに言って辞めさせたが、口が悪いのと妖精の尻尾への敵対意識は変わらない。どうにもマスターが敵対意識を煽っているような気がする。

 

 

 そんな敵対意識と今後妖精の尻尾に入るガジルとジュビアがいる事から、幽鬼の支配者はそのうち妖精の尻尾と戦い、そして負けるのだろう。そのままガジルとジュビアは妖精の尻尾に吸収されて、めでたしめでたしと言った所か。

 

 

 ……俺達主人公サイドと戦って、無事でいられるかなぁ。

 

 幽鬼の支配者を妖精の尻尾と間違えたと気づいたとき、本当は入るのを止めようと考えていたのだが、何故かギルドマスターのジョゼに気に入られてしまい、入らざるおえなくなってしまった。彼も妖精の尻尾に対抗するために優秀な魔導士を集めていたようなので、逃がす気はなかったのだろう。

 実力的には三人がかりでも敵わないで、ジョゼに会った時点で幽鬼の支配者に入らない選択肢は消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

「ん? どうした、キヨマロ? なんか女の事でも考えてるのか?」

 

 ボーっと今までの経緯を考えていると、隣に座っていた奴が話しかけてきた。顔がニヤニヤとしているので、心配というよりかはからかいの意味合いが強いだろう。 

 

「違うから。ただこれからの事を――」

 

「そりゃそうだ! お前は風俗に誘っても来ねぇしな」

 

「男の方が趣味か? ギャハハハハ」

 

 あとこいつら下ネタ好きすぎ。高校生か。

 

 

「あーもう! うっさいわね! もう少し静かに酒飲めないの!」

 

 そんなやりとりをしていると、メルトが怒鳴りながら近づいて来た。

 なにやら機嫌が悪そうだ。

 

 

「おーメルト。ご機嫌斜めみたいだな。俺が慰めてやろうか? これでも俺テク――」

 

 下ネタを最後まで言えずに、俺の隣の奴がメルトに蹴り飛ばされた。

 そのまま吹き飛ばされ、壁にめり込み動かなくなった。まぁ死んではいないだろう。

 

「不潔。死んで」

 

「流石メルトさん!」

 

 その所業に女性のギルドメンバーは歓声を上げ、男のメンバーも手を叩いてまくしたてる。

 恰好はスタイリッシュ痴女だが、メルトは結構人気があった。

 

 

 そんな歓声にもメルトは不機嫌そうに鼻を一回ならすと、吹き飛ばされた奴が座っていた俺の隣に座る。

 そのまま俺がまだ手を付けてなかったグラスを両手で掴み、グビグビと飲み始めた。

 

「それ俺の酒なんだけど。で、何かあったのか? またギャンブル負けたか?」

 

 ギルドで安定して金を稼げるようになってから、メルトはカジノに入り浸るようになった。

 基本負けてはいるが。

 

「いいじゃないこれくらい。それより聞きなさいよ! 今回は勝ちそうだったのにあの女――」

 

 話をまとめると、今回珍しく勝っていて調子に乗っていたところ、エリーとかいう金髪巨乳の女とルーレットで勝負する事になったらしいのだが、このエリーとかいう女がまた強運の持ち主だったらしい。瞬く間にメルトは勝ち分を失い、一気に取り返そうとして貯金まで崩したが結局は惨敗。

 

 今やメルトは今月の家賃も払えないようだ。

 

 

 

「……軽い気持ちで聞いていたが、それやばくないか?」

 

「だから仕事行くわよ。高額なやつ」

 

 そう言ってメルトは依頼書を目の前に突き出した。

 報酬は七千万プラスおまけ。これなら家賃なんて余裕だし、しばらくは遊んで暮らせる。しかし――。

 

 

「呪われた島ガルナ島の解呪ってこれS級クエストじゃねぇか」

 

「私達もう資格あるからいいじゃない。折角暫定S認定貰ったんだから使わないと損よ」

 

 俺達三人は、マスタージョゼから暫定S認定を貰っていた。

 普通S級クエストは限られたS級魔導士しか受けられないのだが、俺達は暫定でその資格を貰っていた。手放さない為の措置なのだろう。

 

 

「しかしなぁ……これは原――」

 

 作のイベントだぞ。と言おうとしてメルトに顎を蹴られた。

 あ、これ意識失う。

 

「あーもう面倒くさいから気絶させて無理矢理連れて行くわ」

 

 無茶苦茶だ。

 薄れゆく意識の中、俺はそんな事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? これ原作のイベントなの? 何で言ってくれないのよ」

 

「言おうとしたらお前が気絶させたんだろうが!」

 

 気を失った俺はそのまま列車に連れ込まれ、メルトと共にガルナ島に向かっていた。目を覚ますともうガルナ島への船が出る港町のハルジオンの近くだった。メルトの奴、相当な力で蹴ったな。

 ちなみにジョジョはいない。二人の方が取り分が上がるからだそうだ。

 

 

「まぁいいじゃない。別に世界を左右するようなものではないんでしょう?」

 

「そうだが……てかお前、この列車代俺の財布から出したな? やけに財布が薄くなっているんだが」

 

「報酬貰ったら色をつけて返すわよ。それより、これはどんなイベントなのよ」

 

 こいつ……人の財布から金パクっておいて、悪びれる気がないな。

 

 

「……記憶は曖昧だが、なんか封印されているデカい悪魔がいたな。それで悪魔復活阻止のために戦って……でも最後島民は悪魔になっていたな」

 

「何それ? 最後に悪魔になるの?」

 

「全部終わった後島民と妖精の尻尾のメンバーで悪魔の宴とかやっていた気がするんだよなぁ……。あんまり自信ないけど」

 

 なんか宴で空を飛びまわっていた気がする。あと月の呪いがどうとかも言っていた気が……。

 

「使えないわねぇ……ん? ちょっと待ちない。この依頼はもう私達で受理しているのだから、もう妖精の尻尾は依頼を受けられないんじゃない?」

 

「ああ、それは確かS級じゃない主人公が勝手に依頼受けるから、多分かち合うぞ」

 

「呆れた……物語的には面白いんでしょうけど……着いたわね」

 

 そうこうしている内にハルジオンに着いた。 

 あとは島まで行く船を探すだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガルナ島? 冗談じゃない。無理だ」

 

「名前も聞きたくなにのだが……この前の小僧達といい、なんだってあんな島に……」

 

 しかしこれが難航した。

 呪いを怖がり、ガルナ島まで行ってくれる船が全く見つからないのだ。

 

 しかも妖精の尻尾の面々は既に島についているようだ。もし先に依頼を達成してしまえば、こっちは移動費分で大損だ。

 

 

「どうする? このままじゃマズいぞ」

 

 港から海を見るが、ガルナ島の形も見えない。泳いでいくのも難しそうだ。

 

「……仕方ないわね。これは生理的に使いたくなかった手段なんだけど……」

 

「ちょ、おい」

 

 メルトは心底嫌そうな顔をしながら海に飛び込んだ。

 慌てて海をのぞき込むと、巨大な木造船が海の中から飛び出してきた。会場から飛び出た衝撃で船が揺れ、その艦首に右手の中指にフックのようなものを装備したメルトが立っている。

 

 

「換装:『海賊紳士(エドワード・ティーチ)』」

 

「宝具:アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)」

 

「さ、行くわよ」

 

 これは黒ひげの船の宝具だ。まさかこんなものまで使えるとは。

 縄梯子が勝手に下りてきたので、そこから船に乗る。

 

 乗り込むと勝手に錨が巻かれ、帆が下りてきた。どうやら船の物はメルトの意思で勝手に動くようだ。

 

 

「凄いな。こんな奥の手があるなら早く使ってくれよ」

 

「黒ひげのキャラが少しね……この姿になってからああいったキャラがどうにも苦手なのよね」

 

「じゃあ同じ海賊のドレイク使えばよかったんじゃ」

 

「FGOで持ってなかったのよ。馬鹿。死ね」

 

 なんかめっちゃディスられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのまま順調に進んでいき、とうとうガルナ島が付近までたどり着いた。あと数分でガルナ島の海岸につける筈だ。

 時間はそれなりにかかってしまって、もう日が落ちて、月が昇っている。夜の海の航行は危ないが、この距離ならもうガルナ島に行った方が良いだろう。

 

 

 

「ん? なんか島の海岸が騒がしいな?」

 

 ここからでは良く見えないが、人影が数人見える。

 しかも何か戦闘をしているようだ。

 

 

「妖精の尻尾の連中――って何この波!?」

 

 気づくと船が渦潮と高波が混ざったような波に巻き込まれていた。

 これ船が沈みそうだ。

 

 

「自然こんな波ないだろ!? 魔法か?」

 

「どこの誰だか知らないけど、先制攻撃とはやってくれるじゃない!」

 

「とりあえず空に逃げるぞ! フェイ・ファルグ!」

 

 船が持ちそうになかったので、俺の呪文で二人を浮遊させる。飛行でいるわけではないので、一時しのぎにしかなわないが。

 

 船は俺達が浮かぶと同時に船が消えた。船が横転する前に、メルトが消したのだろう。

 

 

「換装:『第六天魔王(織田信長)』」

 

「誰に喧嘩を売ったか思い知らせてやろうじゃない……」

 

 それと同時にメルトの周辺に大量の火縄銃が出現した。その銃口は全て海岸の方を向いている。

 

「おい! ちょっと待――」

 

「宝具:三千世界(さんだんうち)!」

 

 すべての火縄銃が、海岸に向けて鉛玉を打ち出した。

 


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