最低系ちうたん魔改造物   作:hotice

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成人式出るのに忙しくてちょっと最後の方適当だゾ。
なので詳しいエヴァにゃんのバイブには勝てなかったよ(物理)編は後日閑話という形で投稿します。


3話

 桜がひらひらと舞い散るのを眺める。

 春の訪れを表す花は、新しい一年の始まりを祝っていた。

 始業式の今日で千雨は中学三年生になる。元々高校へエスカレーター式の中学であるために、受験等に奔走する必要がないためにゆったりとした一年を過ごすはずであった。

 というか、今からでも過ごしたい。全てを忘れて、最近また仲良くなった友達と気楽に遊んでいたかった。

 

 でもそれは出来ない。

 世界が血と悲しみに溺れると知って、それをもしかしたら回避出来るかもしれないと知って、無視を出来る程冷たい人間には成れない。

 

 「ネギ先生か・・・・。」

 

 始業式も終わった今、クラスの担任であるネギは同級生からしっちゃかめっちゃかに可愛がられている。

 彼はこれから世界を救うための冒険をし、そして世界を変えるために人生を捧げることになる。

 

 余りにも10歳の少年に求めるにしては馬鹿馬鹿しく、またそれ以上に残酷すぎる話だ。

 出来るならばこんなことはしたくなんてない。たとえ彼が自身の意志で選ぶのだとしても、もっと平穏な道を歩んでほしいと思う。

 この数か月の間、ネギのことをずっと見ていたし、話してもいた。困ったことがあれば迷わずに力を貸してやったし、間違ったことをしたならネギが教師であろうと年上の立場からきちんと諭して叱ってやった。

 だからこそ分かる。あいつは確かにずば抜けた頭と、それに見合った大人びた精神をしている。

 それでもネギは少年だった。興味のあることには年相応の感情を見せるし、・・・・誰かから愛されたいと無意識に思っているのだろう。

 

 「千雨さんって意外にもかなりネギ先生に入れ込んでますよね?

 もしかしてそっち系の趣味でした?なんならちっちゃくなりますけど?」

 

 黙れ、この汚物が。さっきまでのしんみりした空気を返せ。

 異空間に潜んでいるらしいバイブに向けて思念を飛ばす。こうすれば勝手に向こうが受け取ってくれる。

 一時期はこの機能を使って、授業中ずっと呪詛を送っていたのだが全く堪えていなかったのでやめた。

 

 ・・・・まあでも、確かに入れ込んでいるのは事実だった。

 ネギ・スプリングフィールドという少年の境遇を聞いてしまえば、私はこの少年に親近感を覚えざるを得なかった。

 私は心にもやもやとしたものを抱えていた。認識誤認の魔法によって私は振り回された。そうして孤立し、一人で殻に籠って生きてきた。

 

 それにネギという少年が重なって見えてしまった。魔法世界の英雄の息子という肩書に振り回され、魔族の襲撃によって村が滅び孤独になってしまったネギと、だ。

 私は周囲からの不思議なものを見る目に耐えきれなかった。孤独の寂しさをネットで埋め合わせていた。

 一体ネギはどれ程の苦しさの中で生きているのだろうか。周囲からの無自覚な期待の目、愛する家族もおらず共に育った村を失った孤独。

 それでも彼は折れずに真っすぐ生きているのが私には眩しくて、そして悲しかった。

 

 

 けれど、()()()()()()()()()()()()()()()()

 そもそも造物主を倒せる可能性があるのは、バイブとネギ、そしてなんか凄いらしい同級生のエヴァの三人(正しくは2人と汚物が一つだ)しかいない。

 そして火星の魔力枯渇問題を解決できるのはネギたった一人のみだろう。勿論解決するための方法はバイブから教えてもらった。

 けれど、その上でそれが解決につながると理解してなお、自分では実現出来る気がしなかった。恐らくネギにしかこの手段は取れない。

 

 やることは単純、火星のテラフォーミングだ。魔力が枯渇するならば、魔力を生み出せばいい。それだけの話だ。

 しかし・・・、しかし、だ。ほんとに何も計画もない状態で10年以内にある程度の目標を達成しないといけないのだ。

 

 無理だ。自分には、いや世界中を探してもそんなことを出来る奴なんていやしない。

 そのために魔法技術を公開して大幅な技術アップを図り、委員長から全面的な支援を受けたとしてもまるで希望が見えない。

 そもそも10年というタイムリミットが無かろうと、だ。資源採集が出来る程の実用的な宇宙開発技術と現代の科学技術に合わせれば分野によっては世紀単位で進めることのできる魔法技術、この二つの利権は莫大なんて物じゃない。各国はなんとしてでも有利な地位に付こうと争うことになるだろう。

 冗談抜きにこの二つの分野でリードを取れればそれだけで今後数十年、数世紀は超大国として君臨出来る。

 何せまさしく現代からSFへの時代へと踏み込むのだから。

 

 けれど火星を救うには世界中を巻き込んだ挙句に、戦争を起こさずに収めなければならない。そうでなければ10年というタイムリミットに間に合わず魔法世界が崩壊してしまう。

 全くもってなんて冗談だ。これぽっちも出来る気がしない。仮に歴史上の名君、賢君と呼ばれる偉人だったとしても無理だろう。

 

 でも、しかしネギならば出来るのだ。魔法世界からの全面的な支持を得られ、世界でもトップクラスの頭であらゆる分野の最先端の研究を統括できるネギならば。

 地球側は魔法後進国のため下手に出ざるを得ず、また生き残るために必死な魔法世界のごり押しがあればネギがトップに立てるだろう。そうしてトップに立ってしまえばその圧倒的な頭脳を持って、反論をねじ伏せる。

 そんなことが出来るのは、世界を救えるのはネギたった一人しかいない。

 

 こんな小さな少年に一体どれだけの責任と期待を負わせねばならないのか。

 だからこそ、出来る限りネギの傍にいて支えてやりたいと思う。

 少しでもその小さな肩に背負うことになる重みを減らしてやりたいと千雨は思う。

 けれど世界は止まらない。吸血鬼は桜吹雪へと紛れ込んだ。破滅への道は進み、そしてそれを阻止する彼の英雄譚は始まってしまった。

 

 

 「おい、千雨。まず先週辺りから生徒を何人か襲って、それを止めに来たネギ坊に退治された。

 それでこの後は、適当な理由を付けてネギを弟子にする。

 これでいいんだな?」

 「ああ、私も詳しい話は知らないからあれなんだが、多分それで大丈夫だ。

 なんなら"あいつ"に聞こうか?」

 「・・・やめろ」

 

 眉間にしわが寄るのが分かる。苦い思い出が蘇る。

 結果としては、()()だけは良かったのだ、あの出会いは。

 強制登校の呪いだって解けたし、ナギが生存していた事だって知れた。私を吸血鬼に変えた犯人である"造物主"のことも知れたし、倒すための手助けまで受けれる。

 恐らく情報が無ければまず敗北していたし、情報を聞いた後でもあいつによる対策がなければ勝率は低いと言わざるを得ないだろう。 それに造物主を倒せばナギまで帰ってくるのだ。

 

 本当に、本っ当に結果だけは最上なのだ。

 それこそこの事への対価がネギ坊に修行を付ける事とネギ坊の命に係わる危険が訪れた場合に助ける事。この二つだけでは全く足りぬほどに、恩義を感じてさえいるのだ。

 

 

 

 そう!よりによって協力相手がバイブでさえ無ければ!!!!

 

 

 長谷川千雨が私の家にやって来たのは2か月前のことだった。

 彼女が茶々丸を通して伝えた一言によって私は千雨を招かざるを得なかった。

 

 「ナギ・スプリングフィールドはまだ生きている。そして彼を救うのにあなたの力が必要となるので手を貸してほしい」と。

 

 正直に言えば非常に怪しかった。証拠もなく、また認識誤認の魔法をレジストしただけの女子中学生にはとうてい入手不可能な情報。

 しかし罠にしてはあまりにも杜撰で直球的すぎる。

 どう取り扱うべきなのかが全く分からない。

 

 結局私は判断しかねた結果、向こうの思惑通りに家へと招いた。

 どうあがこうとも長谷川千雨という少女は、ただの小娘でしかなかったからだ。たとえ封印された身であろうと茶々丸をどうにかは出来ない。何か策があろうとも家にはそれなりの対策も施してある。

 

 けれどこの面会は本当に欠片も予想していなかった方向へと進んだ。

 

 何故なら千雨の奴は、初めの初めから会話による理解を得ることを諦めていやがった!

 確かにいきなりこの情報源は全てバイブから得たものだなんて言われたならば、恐らく私は怒り狂っていただろう。

 いや、もしかしたらついに認識誤認の魔法で頭が少しおかしくなって未知の能力にでも目覚めたのかと哀れみ8割興味2割で研究材料にしながら治療しようとしただろうか。

 

 そうして会話を諦めた千雨の取った行動はとりあえずバイブの実力を見せる事だった。

 効果的だな。いやもう本当に効果的だよ。まさしく百聞は一見に如かずだな。

 でもな?ノリノリで魔法球に入って、かっこいい口上とか述べたりしたんだぞ?

 

 「ククク、長谷川千雨といったか。もしかしてお前封印された姿の私を見て少しでも全力の私に勝機があるとでも思ったのか?

 あれ程かよわい少女なら自分でも勝てると?甘い!甘いぞ!

 私は夜を統べる吸血鬼!人が戦う相手ではない!人という種が、人類そのものが戦うべき最強の個なのだ!

 さあ!全力を尽くし、その果てに倒れるがいい!」

 

 とか、こうね?めちゃくちゃ頑張ったんだぞ?

 中学生を15年もやってきたから威厳出そうと頑張ったんだぞ? 

 

 そこで、こうバーンとバイブを出された私の気持ちを考えたことあるか?

 バイブだぞ?バイブ。

 何でジャンプの王道バトルみたいな雰囲気からやっすいエロゲーRPG物になってるんだ?

 まあお前も顔真っ赤にしてたしな?かなり恥ずかしい思いしたのは分かるぞ?

 けれど、それでも対戦相手がバイブってお前・・・。600年を生きる吸血鬼の相手にバイブを構える女子中学生ってお前さ。

 

 しかも、あいつ強いんだよおおおおおおおおおおお!

 

 なんだよ!永遠なる氷河食らわせてやったら氷そのものを時間凍結でさらに凍らせるって!

 無茶苦茶にも程があるわ!出力は高くないから力量にしては火力、範囲共にかなり狭いみたいけど、あいつの能力はもはや魔法の域を超えてるぞ!

 どう考えても概念に影響を及ぼしてやがる!

 

 他にも魔法球の中の光を全て太陽光に変えてきやがったり・・・。

 駄目だろ。私真祖だから多少の耐性はあるけどあれなんか神性とか混じってない?

 焼けたんだけど、もうジュッって感じで灰になったんだけど?

 こう魔の物の存在など許さないとか、そういう雰囲気のやばげな光だったんだけど?

 なんかその後も時間操作とかでさらっと元に戻しやがったし。

 

 さらには闇の魔法で魔法融合したら空間切断までしやがって。

 そら魔法になって個体から形を変えても、存在してる空間そのものを切り裂かれたら分断されるんだけどさ・・・・。

 ほんとに何でもありかお前は。

 

 そんなこんなで私の切り札全部瞬殺されたんだけど?

 600年の積み重ねを、研鑽を全てバイブに粉砕されたんだけど?

 てか駄目だろ?なんでそんな強いの?

 バイブだろ?お前には股の間に突っ込まれてウィンウィン動く機能だけでいいんじゃないの?

 そんな機能を搭載して誰を満足させようとしてるんだ?

 

 私の孤高にして絶対、美しき夜のカリスマ支配者のイメージがこいつのせいでボロボロだ・・・・。

 さすがの私でもバイブにここまでコテンパンにされたら恥も外聞もなく大号泣したぞ?

 私に勝つのはナギだけじゃないと駄目なんだぞ・・・・。それをお前バイブなんかが・・・・。

 

 「うっ・・・。思い出すとまた涙が・・・・。

 バイブに負ける吸血鬼、バイブに負け・・・・グスッ」

 

 今度千雨の奴を誘って自宅で飲むか・・・。あいつも命令されれば家で大人しくしてるだろうし。

 




ちうたんの心象描写頑張ったのでこれで思う存分お姉さんデレデレちうたんが書ける!てか頑張りすぎて今回もネタが少なくなってしまったゾ、申し訳ない。
でももう長文書く必要のある要素はないからこっからネタまみれになります。

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