ようこそ実力至上主義の教室へーIn this deceitful world, even bigger lieー 作:lOOSPH
「いよいよ残る一日・・・・
準備の方はあらかたすんでいる・・・・
だがどうしても必要なものがそろえられない・・・・」
「うーん・・・・
どうしたらいいんだろう・・・・」
「やっぱりポイント持ってる奴に借りるしかないか・・・・」
「今のDクラスにそんなポイントを持ってる奴なんて・・・・」
「あー思ってたよりも手間取りそうね・・・・」
「・・・・・・・・・・」
六人の少年少女が雑談をしている
「ところでおいら・・・・?
一之瀬の方はどうなったんだい・・・・?」
「ふえ!?
さ、さあ、何にも聞いてねえが・・・・・・うん?」
好戦的な雰囲気の綾小路が何かに気が付いた
それは掲示板の張り紙だった
「これは・・・・!?」
それは須藤の事件についての情報を持つ生徒を募集する張り紙だった
「ふふーん・・・・
これは親切な奴がいたもんだ・・・・」
「・・・・・・しかしいったい誰が・・・・」
「そんなの決まってるじゃない、ほらきた・・・・」
女子の綾小路が指さしたその先から現れたのは
「おっはよー綾小路君」
一之瀬であった
「あ、一之瀬さん!」
「おはよーってあれ?
綾小路・・・・さん・・・?
綾小路君にあいさつしたつもりだったんだけど・・・・」
「まあそれはともかく
この掲示板張ったのって・・・・?」
一之瀬に張り紙を見せる
「おーこれはいい手だね」
「一之瀬さんじゃないっていうことは・・・・」
すると
「・・・・あ、いたいた
おはよう神崎君」
一之瀬が一人の男子生徒を呼び止める
「この張り紙って、神崎君が?」
「ああ、金曜日のうちに用意して張っておいた
それがどうかしたのか?」
「ううん、ただやっぱり神崎君なんだなって思っただけ
やっぱり神崎君って頭いいよね」
「綾小路か、こうして話すのはしばらくぶりだな」
「あれ?
二人って知り合いだったの?」
「うん、一之瀬さんよりもちょっと後だけどね
まあその時は二、三お話ししただけだけど」
「ふうーん
まさかあのあがり症の神崎君がね~」
「それは別にいいだろう・・・」
神崎と呼ばれた男子生徒は恥ずかしそうに顔をそらす
「まあそれより、何か有力な情報はあった?」
「いくつか入ってはきたが、残念ながらどれも有益だと思える情報はない」
「そっか
じゃあこっちの方も見てみるね」
「一之瀬さん、掲示板って?」
一之瀬はケータイを女子の綾小路に見せる
「実は学校のHPにも掲示板があってね
そこで情報提供を呼び掛けているの
学校での暴力事件について目撃者がいれば話を聞かせてもらいたいってね」
「なるほど・・・・」
画面をまじまじと見つめる女子の綾小路
「でも有力な情報をくれた人にはポイントを支払うってあるけど・・・・」
「あ、ポイントのことなら気にしなくていいよ
私達が勝手にやってることだから
それに今の手ごたえだとちょっと新しい情報は難しいかもね・・・・あ」
「どうしたの?」
「書き込み、2件ほど、メールが来てる
えーっと・・・」
一之瀬は携帯の画面を確認する
「こんな感じなんだけど」
携帯を相手に見えるように見せていく一之瀬
「例のCクラスの一人、石崎君は中学時代相当なワルだったみたい
喧嘩の腕も結構立つらしくって地元じゃ恐れられてたんだって
同郷の子からのリークかな」
「なるほどな」
神崎はそうつぶやく
女子の綾小路の方もふむふむと掲示板を見る
「神崎君はこれ見てどう思った?」
「もしかしたら須藤にやられたのはわざとなのかもしれないな
三人が須藤を罠にはめるために動いたと考えれば自然と話はつながる」
「うん、そうなんだよね
あとはこの情報の裏付けがしっかり取れたら
須藤君の無罪に一歩繋がるかもね、綾小路さんはどう思う?」
「おそらくそれでもまだ弱いと思う
よくても多分半々だね、何しろ一方的に
殴ったっていう事実が重くのしかかっていくと思うし」
一之瀬もそうだねと言って顎に手を当てて考え込む
「やはり例の目撃者にかけるしかない
そうすれば6:4、あるいは7:3まで持っていけるかもしれない
それで目撃者の方はどうだった?」
「櫛田さんが頑張って話をしてるけど
まだ何とも言えないみたいで・・・・」
佐倉の名前を伏せて、そう答えていく
「そっか・・・
何か事情があるのかな・・・」
一之瀬はどうしたらいいものかと考え込んでいる
「さすがに別の目撃者に関しての報告はないね
もう残ってる時間は短いけど
やっぱり情報が来てくれることにかけるしかないね」
「ありがとう一之瀬さん、下手したら
Cクラスに目を付けられるかもしれないのに」
「大丈夫大丈夫
もともと私達はCクラスにもあとAクラス
その両方から狙われることになるわけだし」
「一之瀬の言うとおりだ
俺たちには何も問題はない
それに、ルールに基づいての競争なら望むところだが
今回はそのルールの外、許していい行いじゃない」
一之瀬も神崎もともに学校側と同級生と、正々堂々と戦わんとしていた
「それじゃあ、情報くれた子にはポイント振り込んであげないとね
あ、でも相手は匿名希望か・・・・どうやってポイント譲渡すればいいんだろう?」
すると一之瀬の後ろからぬっと出てきたのは
「ちょっといいかな・・・・?」
「うわああああ!?
だ、誰!?」
不気味な雰囲気の綾小路であった
「私は綾小路だよ・・・・
それよりもちょっと貸してくれるかね・・・・?
これでも私は機械には強いからさ・・・・」
「う、うん・・・」
一之瀬の学生証を借りて
ポイントの譲渡を教えていく
「こうやってポイントの差金画面を開いて
この画面の左上に自分のID番号が見えるだろう・・・・?」
一之瀬は最初動揺していたが
丁寧に教え込んでくれるので聞き入っている
「えーっと・・・」
一之瀬はある程度理解すると
いよいよ実践しようとしていくと
差金画面が開かれると一之瀬は不意にあ、っと声を漏らし
学生証を不気味な雰囲気の綾小路から取り上げる
「えーっと確かこのID番号をこうすればいいの?」
「そのID番号から一時的なトークンキーを発行できる・・・・
それを対象に伝えれば入金のリクエストが来るはずだよ・・・・」
「うん、覚えた
ありがと綾小路君」
「それじゃあ先に行くよ・・・・
そろそろ時間だ・・・・」
「うん」
一之瀬と神崎が自分のクラスに向かって歩き出していくのであった
「・・・・・・・」
「どうしたの神崎君?」
「・・・・いや、なんでもない」
神崎は去り際に不気味な雰囲気の綾小路を見る
不思議と彼は笑っているように見えたのだった
・一・
「おっはよー綾小路君!」
櫛田が元気に挨拶をするが
対象は櫛田の方を向かずに携帯をいじっていた
「あれ?
何やってるの?」
「ああ・・・・
一之瀬が言っていた
情報提供のための掲示板さ・・・・
私の方からも何かないと思ってね・・・・」
櫛田はふうんと綾小路の携帯の画面をのぞき込む
「そう言えば、昨日家電量販店にいたみたいだけど
何か探していたの?」
「そうだよ・・・・
まあポイントがないから
見るだけに終わってしまったがね・・・・
まあもっとも手に入れる方法はもう見つけたけどね・・・・
フフフフフフ・・・・」
不気味な笑みを浮かべる綾小路に
やや櫛田は乾いた笑いを浮かべる
「ねえ綾小路君、よかったらまたいつか遊びに行こうね」
「・・・・・・そう言うのは誰もいないときに言ってくれないかね・・・・」
すると櫛田は綾小路の隣人に気づいて、ごめんねーと言いながら去っていく
「休日は櫛田さんと一緒だったの?」
聞いてきたのはその隣人、堀北だった
「ちょっとした用事で出かけていただけさ・・・・
一緒に出掛けていたわけじゃないよ・・・・」
「そう」
「うん・・・・?」
綾小路は堀北の方を見ると
堀北の表情は見たことのないものになっていた
「どうしたんだい・・・・?」
「どうした、とは?」
「言いたいことがあるなら言えばいいじゃないか・・・・」
「別に言いたいことなんてないわ
ただ言わせてもらうなら
随分勝手に動くようになったなと感心していたのよ
私が頼むときは渋るくせに、櫛田さん相手だとすんなり承諾するのね
その違いは何なのか、冷静かつ慎重に分析していたところよ」
堀北がそこまで言うと不意に後ろに誰かが立つ
「・・・・・・違いなんてありませんよ・・・・
それに正確には誘ってくださったのは櫛田嬢ではありませんので・・・・」
不意に話しかけられて吃驚した様子で勢いよく振り向く堀北
「・・・・・・堀北嬢、昨日もお話ししましたが
佐倉嬢は証言してくださると仰ってくださいました・・・・
堀北嬢にはそれをもとにできる限りの手立てを考えていただきたいのです・・・・」
「そのくらい分かっているわ」
仮面をかぶった綾小路の言葉に堀北はややそっけなく突き放すように言い放つ
すると仮面をかぶった綾小路の後ろに近づいてきたのは
「堀北さんもあんな表情をするんだね、なんだか新鮮だね」
「新鮮ねえ・・・・
特に何も変わらなかったと思うけど・・・・」
「あれは間違いなく、どうして私を誘ってくれなかったのって感じの表情だよ」
「・・・・・・堀北嬢がそのような心情を・・・・?」
「堀北さんも気が付いてないんだと思うよ
きっと友達と話したり過ごしたりする
時間の楽しさにに気が付いたんじゃないかな?」
「まさか・・・・
君だって彼女が君に良い感情を
持っていないのは知ってるだろう・・・・?」
「違うって綾小路君、堀北さんは綾小路君に
誘ってもらえなかったことが嫌だったんだよきっと」
「「・・・・・・それはないね(でしょう)・・・・」」
櫛田の言葉に声をそろえて否定する二人の綾小路であった
・・二・・
ホームルーム後
職員室の前で茶柱先生を呼び止める櫛田
そのそばには佐倉の姿もある、教室では目立ってしまうため
ホームルーム後、人通りのほとんどない職員室前で呼びかけたのは
人見知りな佐倉に配慮したものである
「目撃者?
須藤の事件のか?」
「はい
こちらの佐倉さんが事件の一部始終を見ていたんです」
櫛田がやや後ろにいた佐倉をそっと誘う
「須藤たちの喧嘩を見ていたそうだな」
「・・・はい、見ました」
佐倉は茶柱先生に凝視されてどうしても身を引いてしまいそうになる
「話は分かった
だが、それを素直に聞き入れるわけにはいかないな」
茶柱先生の言葉に櫛田は慌てて聞く
「どういうことですか?」
「佐倉、どうして今になって証言した
私がホームルームに報告した際に
名乗り出ればよかっただろう欠席していたわけでもなかろう」
「そ、それは・・・その・・・
私は、人と話すのが、得意じゃないので・・・」
「得意じゃないのに今になって話すのはおかしいと思うがな?」
茶柱先生は佐倉に追及していく
「でも先生、佐倉さんは・・・」
「今私は佐倉に聞いているんだ」
茶柱先生の鋭く、怒気のこもった声で櫛田を鎮圧する
「えっと・・・クラスの、が
困ってるから・・・私が証言することで
助かるなら・・・そう思ったから・・・」
佐倉は小さく縮こまりながらも自分の心情を語っていく
「・・・・なるほど、お前なりに勇気を振り絞ってのことだったんだな?」
「はい・・・」
「私も担任としてお前の性格は分かっているつもりだ
だからお前がこうして名乗り出てくれたなら
私も当然の義務としてそれを学校側に伝える用意がある
だがだからと言って学校側がそれを素直に聞き入れ
須藤が無罪になることは残念ながらないだろう」
「ど、どういうことですか?」
「本当に佐倉は目撃者なのか?
Dクラスがマイナス評価を受けるのを恐れて
でっち上げた嘘なんじゃないかと学校は思い込むだろう」
「そんなの、いくら何でもひどいですよ!」
「ひどい?
本当に事件を目撃しているなら初日に申し出るべきだ
期限ぎりぎりになって名乗り出られても怪しむのが自然だ
ましてやDクラスの生徒であるとくればなおさらな
疑うなと言う方が無理がある、少なくとも私はそう思う
都合よく同じクラスの生徒が人気のない校舎にいて偶然一部始終を目撃した
出来すぎだ」
茶柱は言い放つ
「出来すぎか・・・・・・確かにね・・・・」
そこに不気味な雰囲気の綾小路が姿を見せる
「あ、綾小路君!?」
「茶柱の言うことはもっともだよ・・・・
佐倉が事件を目撃していた
これは第三者から見ればできすぎている・・・・
私も第三者ならばきっと茶柱と同じ意見だったろうさ・・・・
公正な判決を下そうと考えるなら目撃証言としては弱いだろう・・・・
でもだからって彼女の意見を嘘だと決めつけるのは早計だと思うが・・・・?」
「・・・・そのくらいは分かっている
一応受理はしておくことにはしよう
それともう一つ、場合によっては審議当日
佐倉には話し合いに出席してもらうことになるだろう
人見知りなお前に、それができるか?」
含みを込めた言葉で佐倉に言いよる茶柱先生
「嫌なら嫌で構わない、自体と言う事にしておく
ただしその際には審議に参加する須藤に伝えておくように」
「佐倉さん・・・、大丈夫?」
「う、うん・・・」
佐倉は返事をするが、自身はなさそうである
「・・・・・・茶柱先生、失礼を承知で
一つ我から提案させていただきたいことがあります・・・・」
その場に突然現れた仮面をかぶった綾小路が茶柱先生に言う
「・・・・・・その当時の審議ですが・・・・
我々の方でも参加させていただきたく存じます・・・・」
「ふえ・・・!」
「私からもお願いします」
仮面をかぶった綾小路の提案を受けてもらいたく
頭を下げる二人、すると茶柱先生は答える
「須藤が了承するならば許可しよう
だが、公平を促すため最大二人までの同席
それ以上は残念ながら承諾はできない、誰を出席させるかは
お前たちの方で任せる、よく考えて決めておくように」
と職員室に入っていく茶柱先生
教室に戻って堀北にこのことを報告する
「まあ、当然と言えば当然ね」
「ごめんなさい・・・私が、もっと早く名乗り出ていたら・・・」
「確かに事態は少し変わったかもしれないけど
それほど大きな違いはなかったでしょうね
目撃者であるあなたが同じDクラスだということが運の尽きね」
「フフフフフフ・・・・
まさか君が誰かをかばう
ような言い方をするなんてね・・・・
君なりの慰めかい・・・・?」
「違う、私はあくまで私のために動いてるって言ったでしょ」
不気味な雰囲気の綾小路の言葉にやや怒って否定する堀北
「それと櫛田さん
その同席する役目だけど
私と綾小路君に出席させてもらえないかしら
貴方なら佐倉さんの支えになることは十分理解はしてる
でもこれは討論、そうなってくると話は変わっていく」
「・・・そうだね、確かに私だとその部分じゃ力にはなれないと思うし・・・」
「・・・・・・私もそれで構わないよ・・・・」
こうして話がまとまっていく
「佐倉さんもそれで構わないかしら?」
「・・・わ、わかった」
佐倉はまだ自信が持てないようでそう返事をするのであった
・・・三・・・
「ねえ綾小路君・・・
どうして私までここに来る必要が?」
「君も出席する以上君も一緒に
これからのことを話し合っていくのは大事だろう・・・・
当日にかかっているのは君の能力だからね・・・・」
「私に全部任せるつもり?
まったく・・・
日和見主義も度が過ぎれば押しつけがましいわね」
「そうかい・・・・?」
不気味な雰囲気の綾小路は堀北を連れて櫛田と須藤たちのもとに来たのだった
「いよいよ明日だね・・・須藤君の無実を証明できるかな?」
「あったりまえだろ櫛田
はめられたのは俺なんだ
無実なのは当然だろ、な、堀北」
堀北に意見を求めるが堀北は黙って昼食のパンをとっている
「どうなんだよ?」
須藤は空気を読まずに堀北の顔を覗き込む
「汚い顔を近づけないで」
「・・・うぐ、汚くなんかねーよ・・・」
堀北の直球に須藤はひどくショックを受ける
「まったく、どうして貴方は簡単に無実を
証明できると思っているのが不思議でならないわ
対抗する材料が集まってきたとはいえ
状況的にもまだこっちが確実に不利なのよ」
「真実を知る目撃者
敵の過去の素行の悪さ
それだけで十分だっての
ったくわりぃ奴らだぜ」
「素行が悪いのはお互い様だろう・・・・」
不気味な雰囲気の綾小路がそう言うと
須藤はうぐ、っと口をつぐんでしまうのだった
「あ、おいちょ、まだ読んでる途中なんだよ!」
「いいじゃんかよ
俺だって金半分だしてんだからさ
あとで渡すって」
池と山内が漫画の週刊誌をとりあっている
「まったく・・・・
金がないって言ってるくせに
よくもまあそんなのが買えるものだね・・・・」
「なんだよ綾小路!
そんなこと言うんだったらぜってぇに読ませねえからな」
「どうぞ・・・・
私は漫画よりは小説の方が好きだからね・・・・」
笑いながら二人の会話をあおっていく不気味な雰囲気の綾小路
「あれ・・・?」
櫛田は不意に二人の見ている
週刊誌の表紙を見て何かを考えこむ仕草を見せる
「・・・もしかして・・・」
「・・・・・・櫛田嬢・・・・?」
「あ、ううん、何でもない
ちょっと引っかかったのことがあって」
櫛田はそう言って何かを調べ始めるのだった
・・・・四・・・・
綾小路の部屋
「須藤君は相変わらずだね・・・・
まだ自分が不利なのは変わらないっていうのに
これはもう、馬鹿を通り越して大物だよねまったく・・・・」
「ぶっちゃけあの時同席を提案しないと
まずいことになっているのは間違いないと思うし・・・・
まあどんな意見を述べるのかは堀北に任せればいい・・・・
今の時点ならばそれで問題はないと思うけれどね・・・・」
六人のうち二人の少年がそんな会話をしていると
「・・・・・・・・・・」
仮面をかぶった綾小路は不意に部屋を出ていく
「我?
どこに行くの?」
「・・・・・・・・・・」
女子の綾小路の問いに答えずに
ただ部屋を出ていくのであった
その後部屋から出てきた仮面の綾小路は
鍵を閉めたのち、エレベーターの方へと向かっていく
「・・・・・・・・・・」
エレベーターが来たがそこには招かれざる客がいた
「あら?
綾小路君?」
それは堀北だった
「・・・・・・・・・・」
仮面をかぶった綾小路は黙ってエレベーターの10階のボタンを押す
「・・・・・・お買い物をなされていたのですね・・・・」
不意に声をかけられたものの
特に驚くこともなく答える堀北
「ええ、材料がそろそろ足りなくなってきてね」
とビニール袋を上げて綾小路に見せる
「・・・・・・なるほど・・・・」
それ以降は特に会話をすることはなかったが
今度は堀北が不意に声をかけてきた
「それで?
貴方は何で女子寮のところまで行くつもり?」
堀北の問いに仮面越しに堀北の方を見る綾小路
「答えないつもり?」
堀北はにらみを利かせるが
少なくとも不審者を見つめるものではない
「普通だったら不審者として疑うところだけれど
貴方は少なくともこんな無意味なことをする人じゃない」
「・・・・・・何が言いたいので・・・・?」
やや凄みの聞いた声だが
堀北は動じずに続けていく
「佐倉さんに会いに行くんじゃないの?」
「・・・・・・いいえ・・・・」
仮面越しに見つめるその目は
堀北の反応を見つめていたが
「まあ別にいいわ
貴方がどこに行こうと何をしようともね」
やがて目的の階に来たので降りていくのであった
「・・・どうぞ」
「・・・・・・失礼いたします・・・・」
ある部屋の中に入っていく綾小路
その部屋は堀北の指摘通り、佐倉の部屋だった
「・・・・・・それで、我に話というのは・・・・?」
「あの・・・綾小路君が前に、言ってたこと覚えてますか・・・
私が目撃者だったとしても名乗り出る義務はないって言ってたこと
無理に証言したことに意味はないって」
「・・・・・・特別棟で話した時のことですね・・・・」
綾小路の言葉に佐倉はうなずく
「・・・私・・・やっぱり不安です・・・・・・」
「・・・・・・人前で証言することに対して、ですか・・・・?」
「昔っからダメなんです・・・人前で話すことが苦手で・・・明日
先生たちの前であの日のことを聞かれたら、ちゃんと答えられる
自信がなくって・・・それで・・・」
佐倉はテーブルに額を打ち付けて小さな声で口を開く
「うう・・・どうして、私はこんなダメな性格に生まれてきちゃったんだろ・・・」
自分を恥じる言葉が綾小路の耳にも届く
「・・・・・・佐倉嬢、余りご自分を責めてはなりませんよ・・・・」
仮面越しに佐倉に気遣うような視線を向けて佐倉に優しく声をかける
「・・・ふぇっ!?」
佐倉はその言葉を聞いて顔を真っ赤にして勢いよく顔を上げる
「ご、ごごご、ごめんなさいっ!」
慌てて頭を下げる佐倉
「・・・・・・お気になさらぬよう・・・・
それにしても佐倉嬢はどうして我に声をかけたので・・・・?」
あえて話題を変えて、意識を変えようと質問をする
「そ、それは・・・
あ、綾小路君からはどこか
安心できるって感じがしたから・・・」
佐倉の返答に首をかしげる綾小路
「・・・・・・安心できる、ですか・・・・?」
「私そう言うのがなんとなくわかるんです・・・
どう、伝えらればいいのか、わからないけど」
佐倉自身もそう言うのはうまく伝えられないらしい
「男の人はその・・・優しそうな人も、急にその、怖くなったりするから・・・」
佐倉はどうにかして伝えようとするも
どうしてもどう伝えればいいのかわからずに、口ごもってしまう
「見たことや感じたことをそのまま話せばいいってわかってるんです
だけど、それがどうしても
イメージできなくって・・・どうすれば積極的に話せるんでしょうか?」
佐倉は綾小路に問いかける
「・・・・・・どうしても無理だというならそれでいいと思いますよ・・・・?」
「・・・怒らないんですか・・・?」
「・・・・・・強要したところで
意味のないことだとは、最初に言いましたから・・・・」
仮面越しになるべく優しい目つきで佐倉に話しかけていく
「あの・・・
綾小路君はどうするのが一番だと思いますか・・・?」
「・・・・・・申し訳ありませんが
佐倉嬢のその問いには答えかねます・・・・」
綾小路は佐倉の問いにそう返す
「そうですよね
こんなこと急に言われても困りますよね・・・ダメだな、私
こんなだから友達が一人もできないんでしょうね・・・」
佐倉は再び、自分を責めるようなことを言い始める
「・・・・・・友達というものは、自然にできる物だと我は思いますよ・・・・」
「え・・・?」
「・・・・・・まあ言うならば友達が欲しいからと
あれこれ難しく考えることはありません・・・・
むしろ自然に、自分から歩み寄っていけば
自然と相手と親しくなれる物だと我は思います・・・・
自分からでも相手からでも、あ、このお相手となら大丈夫・・・・
たったそれだけのことでもいいのですよ
佐倉嬢は先ほど我のことを安心できると感じた・・・・
それだけでも、友達になるきっかけとしては十分ですよ・・・・
その証拠に、貴方はこうして我と己なりに向き合って話しています・・・・」
仮面をかぶった綾小路は佐倉の肩にそっと手を置いた
「・・・・・・佐倉嬢は、我が友達ではいけないとお思いですか・・・・?」
佐倉は不意に首を勢いよく横に振る
「・・・そんなことはありません
むしろ私こそ・・・綾小路君と友達で・・・いいのかなって・・・」
「・・・・・・我はそんなこと思っていませんよ・・・・
我は、佐倉嬢が我をどのように感じているのかが
佐倉嬢自身のお声で、お言葉でお聞きしたいのです・・・」
「・・・わ、私は・・・私も、うれしいです・・・
こんな私に、親身になってくれて、友達だって、言ってくれて・・・
ありがとう・・・」
佐倉は自然と笑顔を浮かべて答えていく
そんな佐倉を見て仮面でおおわれているが
その仮面からのぞかせる瞳が不思議と笑みを浮かべているようにも見える
「綾小路君、今日は私なんかに会いに来てくれてありがとう」
「・・・・・・いいえ、大したことではありません・・・・
こんな我でもお力になれるのならばいつでもお声をおかけください・・・・」
仮面をかぶった綾小路の言葉に不思議と佐倉は笑みを浮かべる
だがやはりどうしても先行きが不安なのが見て取れている
「・・・・・・佐倉嬢、この後のご予定は・・・・?」
「この後ですか・・・?
いえ、特には・・・」
佐倉は恐る恐る答えていく
「・・・・・・よろしければ、少し外をご一緒に歩いてみませんか・・・・?」
それを聞いた佐倉は
「はう!?」
勢いよく立ち上がって膝をぶつけてしまった
「・・・・・・佐倉嬢!?」
「いたたた・・・だ、大丈夫ですから・・・」
慌てて駆け寄る綾小路に大丈夫と訴える佐倉だが
涙を流して激痛に耐えているのは誰が見ても明らかである
「・・・あ、あの・・・
出かけるのはいいですけど、どこに行くかは決めているのですか?」
ぶつけた際にとんだ眼鏡をかけなおしながら問う佐倉
「・・・・・・いえ、特には決めていません
あくまで我は佐倉嬢に合わせたいと思っていますので
佐倉嬢がお決めになってくださって結構です、嫌ならばそれで構いません・・・・」
すると佐倉は遠慮がちに答える
「もしよかったら・・・行きたいところがあるんです・・・そこでもいいですか?」
「・・・・・・先ほども申した通り
佐倉嬢のいきたい場所で構いませんよ・・・・」
佐倉の望みに、仮面越しに優しく返す綾小路だった
・・・・・五・・・・・
「・・・・・・ここは確か部活動を中心に行っている施設ですね・・・・」
その場所に気て仮面をかぶった綾小路は正直驚いている
佐倉は性格上こういうところには来ないと思っていたからだ
「いつか行ってみたいって思ってたんですけれど
一人で来るとどうしても目立ってしまうから・・・」
「・・・・・・確かにこの場に一人でくれば
部活に興味のある者と勘違いされる恐れもありますし・・・・」
二人でそのあたりをぶらぶらと歩いている
「あ、あの、綾小路君はどうしてこんなにも親身になってくれるんですか?」
「・・・・・・その答えには、少し答えかねますね・・・・」
あえて言うならばと言葉を続けていく綾小路
「・・・・・・ただ我は佐倉嬢のお力に
少しでもなれるのならばと思った次第です・・・・
それに我は佐倉嬢のことを少しでも知りたいと思いました・・・・
そうすれば少しでも、佐倉嬢の助けになれればと思い
こうして外に出て気分が少しでも晴れていただけばと思っただけですよ・・・・」
佐倉はその言葉に疑問があるのか、懐疑的な態度を見せる
「でも綾小路君には、周りにたくさんお友達がいますよね?」
「・・・・・・お友達、ですか・・・・?」
「えーっと・・・
堀北さん、櫛田さん、池君、須藤君、山内君・・・」
佐倉は名前を上げていく
「・・・・・・その方たちは確かに親しくはさせてもらっていますが・・・・
佐倉嬢の言うような友達、と言うのとは少し違うかもしれませんね・・・・
佐倉嬢から見ると、我と彼らは仲がいいと感じますか・・・・?」
綾小路の問いに佐倉は黙ってうなずく
「私は、友達を作るとか、そう言うのが苦手だから・・・ちょっと羨ましいなって
だからさっき綾小路君に友達だって言ってもらえたのだって初めてだから・・・」
「・・・・・・いえ、最初にお声をかけた櫛田嬢は・・・・?」
すると佐倉はどこか自嘲気味にいう
「櫛田さんにはいつか謝らないといけません
声をかけてくれたのも最初に誘ってくれたのも櫛田さんだったのに
私、優生が出なくって・・・・どうしても答えられなくって
情けないです、私にも話しかけてくれたのに」
櫛田はまたも自分を責めていく
「・・・・・・佐倉嬢、あまり多くのことを気にしていては
それこそ余計に己自信を責めていく事になっていくと我は思いますよ・・・・」
「え?」
仮面をかぶった綾小路は佐倉に話しかけていく
「・・・・・・明日のことについても同じです・・・・
須藤殿のため、櫛田嬢のため、クラスのため
一度その考えをすべて捨てて、ある一つに絞っていくと良いと思います・・・・」
「え・・・?
ある一つ・・・って?」
「・・・・・・事件を目撃したという真実を話す
佐倉嬢自身のために証言なさればいいと我は思います・・・・
佐倉嬢はどこか自分自身を大切にするということができていなく感じます・・・・
自分自身の問題を何でも一人で抱え込んでしまう傾向があります・・・・
誰かのために動くにはまずは己自信のために動くことから始めてみませんか・・・・?」
不意に佐倉の頬に優しく触れていく
「・・・・・・本当のことを自分のために話す
それで須藤殿が少しでも救われるのならば
それで十分だと我は思いますよ・・・・」
あくまで須藤やクラスのためでなく
佐倉自身のために、その言葉に佐倉はどこかすっきりしたように感じた
「・・・綾小路君、ありがとう」
佐倉は笑顔でそう答えるのであった
・・・・・・六・・・・・・
「我の奴、一体どこに行ってんだ・・・・」
外では動物的な雰囲気の綾小路が外を歩いていた
「あ、綾小路君」
「うん・・・・うげっ」
声をかけられた方を向くと
そこには彼ができることなら
かかわりたくない人物、櫛田だった
そして周りには池たち三人もいる
「櫛田ちゃんが何か進展があるって言ってたら
綾小路の姿が見えたから、声をかけようって櫛田ちゃんが」
「実は綾小路君やみんなにも見てもらいたいものがあるんだけど・・・」
そう言ってケータイを操作し
ある画面を一同に見せていく
「これなんだけど」
それはブログのようだった
見たところ作りが凝っていて
個人用と言うよりも業者が手掛けるような本格的なものだ
「あ、この子、雫ちゃんだ!」
「雫?」
「グラビアアイドルだよ
ちょっと前までは少年誌にも出てたことあるんだぜ」
「グラビアアイドル?
なんだそりゃ・・・・?」
動物的な雰囲気の綾小路の言葉にあたりはシンと静まり返る
「・・綾小路、それはいくら何でも冗談きついぜ?」
「雫ちゃんはおろか、グラビアアイドル自体も知らないなんて・・・」
「え?
ひょっとして俺、とんでもなく恥ずかしいこと言った・・・・?」
「・・・マジかよ」
三バカは信じられないといった具合に綾小路を見る
「ま、まあそんなことより
この子、どこかで見たことない?」
「いや、雫ちゃんだろ?」
「よく見て」
櫛田が顔の部分をアップさせていくと
「・・・・・・こいつ、佐倉か!?」
「へ?」
「やっぱり、そうじゃないかなって思ったの」
「ちょっと待ってちょっと待って?
もう一度言ってくれないか?」
「だからこの雫ちゃん、佐倉さんだよ」
「いやいや、雫ちゃんが佐倉だなんて
さっきの綾小路の爆弾発言並みにあり得ないっしょ」
信じられないと笑う二人
「綾小路はともかく、櫛田ちゃんまでそんなこと言うなんて」
「そもそも眼鏡だってかけてないし、髪型も違うぜ」
「俺としてはそう言う見分け方の方が爆弾発言だろ・・・・」
動物的な雰囲気の綾小路は櫛田の携帯を借りていくつか操作していく
「あの佐倉が、雫ちゃん・・嘘だあ
だって雫ちゃんこんなにも明るい感じがするぜ?」
「うん!?
これを見てみろ!」
綾小路は一同に声をかけてある画像を見せる
「この写真のこの背景、どこかで見たことないか?」
「どこかって・・・・あれ?
なんかこの部屋、どこかで見たことが・・・」
「ああ、ここ、この学校の寮だよ!
私の部屋もだいたいこんな感じだし」
それを聞いて三人も思い出したようにまじまじと画像を見る
「じ、じゃあやっぱ佐倉は雫なのか・・・全然ぴんとこねー」
「櫛田はいつ気が付いたんだ?」
動物的な雰囲気の綾小路は櫛田に問う
「池君達が前に週刊誌読んでるのを見て、思い出したんだ
それ以前にも佐倉さんってどこかで見たことがあるなって感じてたから」
「まさか俺らのクラスにグラドルがいたなんて!
かーなんだか興奮してきた!」
ハイテンションで叫ぶ池に櫛田はやや引き気味である
「でも確か雫って人気で始めた後
急に姿を消しちゃったんじゃなかったっけ」
山内がそんなことを言うと
動物的な雰囲気の綾小路はそれが気になり始めていく
「ね、ねえ綾小路君、今からちょっと二人っきりで話せないかな?」
「あ?
なんで俺と・・・・」
「佐倉さんのことでちょっとね・・・」
「・・・・・・わーったよ」
そう言って櫛田を連れて人気のないところに行く
「あ、こら綾小路!
櫛田ちゃんをどこに連れていく気だ!!」
「佐倉のことで話があんだとよ」
池の追及にそう答える綾小路だったが
「怪しいぞぉ、もし告白したら許さないぞ!」
また疑り深いようだ
「・・・・・・ったく、そもそもよくもまあこの状況で
そんなのんきな考えにいきわたるもんだな、ったく・・・・」
そして誰もいないところに着く二人
「・・・・・・なるほどな、つまりあいつが
目立たないようにしてたのはそう言うことなんじゃないかってことか」
「うん、佐倉さんがアイドルをやってるってわかって、少し納得した部分があるの」
二人は佐倉のことについて話をしていた
「・・・佐倉さんはアイドルをやっている時が嘘の顔なんじゃないかな
うーん、嘘っていうか、もう一人の自分を創り出しているっていうか・・・」
「なるほどな・・・・
ある意味お前と一緒ってこったな」
「綾小路君、一言多いよ
でも、佐倉さんはそうやることで
笑顔を作っているんじゃないかなって」
櫛田が言うと不思議と説得力があるように思う動物的な綾小路
「だとしたら佐倉が証言に立つのはまだ、抵抗があるのかもな・・・・
そうしたら良くも悪くも目立っちまうし・・・・」
櫛田はそれを聞いてやや焦りのようなものを覚える
「明日の放課後までには佐倉さんを何とか説得してみる?」
「・・・・・・いや、そうするとかえって
抵抗を覚えるかもしれねえ、佐倉に合わせるしかねえ
それに佐倉だってこのままじゃいけないって思うのは本心だろうし
それに無理強いすればそれこそ佐倉の証言は無意味になっていくだろうよ」
動物的な雰囲気の綾小路は言う
「そうだね・・・綾小路君の言葉、信じてみるよ」
櫛田は笑顔そう言って答える
「さて、明日をどうにか乗り切っていけば何とかなるだろう
あとは堀北がうまくやってくれるかどうか、だな・・・・」
「大丈夫だよ、堀北さんなら」
そうか、と言って櫛田と別れようとするが
櫛田は不意に綾小路の腕を引いて止める
「・・・・・・まだ何かようか?」
「ねえ、綾小路君・・・
あの時電話で話した時のことだけど・・・」
櫛田の雰囲気がどこか変わっているのを感じる
「電話・・・・?
ああ、なんかあの時何か言おうとして
途中でやめたっていうあれか?
そう言うのはこの件が片付いてからでいいだろ?」
「・・・そうだよね、お話は須藤君の件が片付いてからでもいいよね
ごめんね綾小路君、急に呼び止めたりして、それじゃあまた明日ね」
そう言って綾小路の腕を離す櫛田
綾小路はそれを見て寮の方へと戻っていくのであった
「待って」
不意にそんな声が聞こえて振り向くと
櫛田が不意に距離を詰めており、そこからつま先を立てて
踵を浮かせて、綾小路の胸に手を当てて耳元に口を近づけて言う
「もし綾小路君がお願いを聞いてくれたら・・・私の大切なものあげるから」
それを聞いて綾小路は本能的にぞっとした感覚に襲われていく
櫛田はその後、元通りの笑顔を見せてその場を去っていくのであった
彼はその姿を見て、櫛田に向かって言い放つ
「天使の仮面をかぶった、悪魔め・・・・」
・・・・・・・七・・・・・・・
「へえ・・・・
まさか佐倉が、えーっと・・・・・・なんていったっけ・・・・?」
「グラビアアイドルだ・・・・」
「そうそう・・・・
そのグラビアアイドルっていうのは
分からないけどさ・・・・
調べてみる価値はありそうだね・・・・」
そう言ってパソコンを起動させていく
「・・・・・・・・・・」
「我?
どうしたの?」
それに対して終始無反応を貫く
仮面をかぶった綾小路に女子の綾小路が聞く
「・・・・・・いえ、何も・・・・」
仮面をかぶった綾小路の返答に女子の綾小路は首をかしげるが
「うげ・・・・」
不気味な雰囲気の綾小路が雫のホームぺージを開くと
その不気味に歪んだその表情をさらに不気味にしかめていく
「どうしたの私?」
「これを見てみなよ・・・・」
それはどうやらコメントや感想などを
打つところのようであった、最初は先ほどの
彼の反応の意味が分からなかったが、読み上げていくたびに
それを見ていた一同の表情がこわばっていくのであった
「うえ~・・・・
よくもまあこんなことを
ネットに書けるもんだよね
匿名であるとはいえさ
しかもこの部分ってどういうこと?」
「案外近くにいるってことじゃねえのか?」
「・・・・・・・・・・」
それを見て握りこぶしを作る仮面の綾小路
その仮面越しに見えるその瞳は
どこか口惜しそうな、怒っているようなものだった
「・・・・・・っ・・・・」
外にあるバスケットの練習場
須藤は一生懸命練習に励んでいた
やがて、練習を切り上げて
帰る準備をしていくが
「好きこそものの上手なれ、とはよく言うもんだな・・・・」
「あ?」
須藤は不意に声のした方を向くと
そこにいたのは動物的な雰囲気を持つ綾小路だった
「綾小路じゃねえか
こんなところで何やってんだ?」
「たまたま近くを通っただけだ・・・・」
須藤は綾小路の方に走っていく
「ふうん、っていうか声をかけてくれよ
ここに来たんだったらさ」
「練習の邪魔をしたら悪いと思ってな・・・・」
「け、そうかよ
まあ邪魔されるよりはましか」
「そう言えばお前は小学生のころから
バスケットをやっていたんだったな・・・・
俺はお前がうらやましいよ
俺はむしろ何かに夢中になったことがないからな・・・・」
「そうなのか」
須藤は驚いたようなことを言うが
特に気にすることなく去っていく
「まあ別に、俺だって好きでバスケやってんだ
お前も何か好きなことがあったらそれをやってみろよ
んじゃな」
と寮に帰っていく須藤であった
「好きな事・・・・・・か・・・・」