ようこそ実力至上主義の教室へーIn this deceitful world, even bigger lieー   作:lOOSPH

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Au moment de la délibération


Les gens veulent, la vérité et les mensonges

「さあて、いよいよ審判の時が来た・・・・

 

 すべてに決着をつけるための第二段階と行こうじゃないか・・・・」

 

不気味な雰囲気の綾小路の言葉に

ほかの五人はゆっくりと頷くが、ただ一人

 

仮面で顔を覆った綾小路は声を上げる

 

「・・・・・・私、一つだけいいでしょうか・・・・」

 

「なんだい・・・・?」

 

「・・・・・・佐倉嬢の件、我に任せてもらえますか・・・・?」

 

「・・・・・・別に構わないが

 討論に出られるのは二人でうち一人は堀北で決定している・・・・

 

 残念ながら、ここにいる全員が出られるわけじゃないよ・・・・」

 

「・・・・・・わかっています・・・・

 

 討論に出るのは私で構いません・・・・

 

 ですから、その・・・・・・佐倉嬢のことは我に任せていただきたいのです」

 

その言葉に不気味な雰囲気の綾小路はしばらく考え込むようなそぶりを見せる

 

「・・・・・・いいだろう・・・・

 

 佐倉の件・・・・・・我に任せておこう・・・・」

 

こうして意見が一致にするのであった

 

仮面をかぶった綾小路は佐倉の様子を見に行くと

やはりどこか緊張している様子がうかがえるのだった

 

「・・・・・・佐倉嬢

 

 ご均等なされている様子ですが、大丈夫ですか・・・・?」

 

「あ、綾小路君

 

 ・・・大丈夫、だよ」

 

そうは言うがどこか落ち着いている様子はない

 

「こんな私でも、休んだらいけないと思って・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

佐倉自身も有力な証言を持つと自覚しているからこそ

注目されていく中、それでも登校することにしたのだろう

 

仮面をかぶった綾小路はあくまで佐倉の意思を尊重することにした

 

「・・・・・・佐倉嬢・・・・

 

 申し訳ありませんが我は今日の討論に参加することはできません・・・・

 

 ですが、昨日も言いましたが佐倉嬢自身のために

 証言してください、我が言う事はそれだけです・・・・」

 

「・・・うん

 

 ありがとう、綾小路君・・・」

 

仮面をかぶった綾小路はそうですかと言って佐倉の元を離れていくのであった

 

仮面越しに見えるその目はどこか優しい感じがし

佐倉も不思議とそれを感じ取っていたのであった

 

・一・

 

放課後のチャイムが鳴ると同時に

堀北と須藤は外に出るのだった

 

「いよいよよ、須藤君

 

 心の準備はいい?」

 

「ああ・・・いいぜ

 

 俺は最初っから準備はできてんだ」

 

目を閉じて気を落ち着かせるように深呼吸をする須藤

 

「お前には散々バカにされてきたが、俺は俺だ

 

 言いたいことははっきり言うぜ」

 

「仮にやめなさいと言っても聞くつもりもないでしょう

 

 勝手にしなさい」

 

「へ、相変わらず偉そうな女だぜ」

 

そう言って互いににらみ合う須藤と堀北だが

その互いの表情に敵意のようなものは感じられない

 

「へえ・・・・

 

 随分と仲が良くなったんだね・・・・

 

 準備は万端と言ったところかい・・・・?」

 

二人のもとに現れたのは

不気味な雰囲気をまとわせた綾小路

 

その後ろには櫛田と佐倉、仮面をかぶった綾小路が来た

 

「頑張ってね堀北さん、須藤君」

 

櫛田の呼びかけに堀北は応えずに

須藤は軽くガッツポーズを作って応えた

 

「・・・・・・佐倉嬢、我はここで

 櫛田嬢と戻らせていただきます・・・・

 

 ご健闘をお祈りします、皆様方・・・・」

 

やや緊張気味だが佐倉は口をふるわせながらも答える

 

「うん・・・大丈夫

 

 ありがとう・・・」

 

まだ佐倉は緊張が解けていないようだが

仮面の綾小路は残念ながら何もできることはないと悟り

 

櫛田の隣にまで引く

 

「それじゃあ、さっそく行きましょうか」

 

堀北の声とともに須藤と綾小路がともに場所に向かっていく

 

この件には互いの担任教師も同席するので

茶柱先生もまた同伴することになる、するとそこに

 

「やっほー

 

 Dクラスの皆さんこんにちは~」

 

Bクラスの担任である星之宮先生だ

 

「なんだかすごいことになってるんだって?」

 

するとさらにその後ろから姿を現したのは

 

「何をしている」

 

「ありゃ、もう見つかっちゃった」

 

茶柱先生が星之宮先生の頭を小突く

 

「お前がこそこそ出ていくときは

 大体私に後ろめたいことがある時だからな」

 

それを聞いて、ばれちゃった?、てへと舌出してウィンクする星之宮先生

 

「私も参加しちゃダメかな?」

 

「ダメに決まっているだろう

 

 今回の件にはBクラスは何一つかかわっていないだろうが」

 

「わちゃ、でもまあ、大体一時間で結果も出ると思うけど」

 

「はいはい、そこまで・・・・

 

 部外者はさっさと退散しなさい・・・・」

 

と綾小路に言われて、いじわるぅと

言わんばかりに見つめながら職員室に入っていくのであった

 

「それでは行こうか」

 

「職員室で行うわけではないんですね」

 

「ああ、この学校には特殊なルールは複雑に存在するが

 今回のようなケースでは問題のあったクラスの担任と

 その当事者、そして生徒会との間で決着がつけられる」

 

「生徒会・・・・・・ねえ・・・・」

 

綾小路は不意に堀北の様子を見る

堀北の表情が硬くなっていくのがわかる

 

「もしもそうだったらまずいかもねぇ・・・・

 

 どうする堀北・・・・?」

 

須藤は理由もわからずにはてなマークを

浮かべるように首を傾げ、茶柱は含みのある笑いを浮かべていた

 

「・・・・大丈夫、今更退くつもりはないわ」

 

堀北は余計な心配はいらないと言わんばかりに綾小路を見つめるが

どうにも不気味な雰囲気の綾小路の表情はどこか浮かないように見える

 

やってきた場所は生徒会室

 

茶柱先生がノックをして入り

それについていくように三人も入っていく

 

そこにはCクラスの三人と眼鏡をかけた男性がいる

おそらくはCクラスの担任だろう、向かい合っての席にいる

 

さらにその長机を挟んだ場所には堀北にとって

これ以上ないほどの想定外の相手が座っていた

 

「遅くなりました」

 

「まだ予定時刻になっていませんので大丈夫です」

 

「面識は?」

 

茶柱の問いにその場にいた

Dクラスの生徒は全員首をかしげる

 

「Cクラスの担任の坂上先生だ

 

 それから・・」

 

部屋の奥にいる男子生徒に注目を集める

 

「彼はこの高度育成高等学校生徒会の会長だ」

 

茶柱先生に言われた生徒会長、堀北兄はDクラスの生徒たちの方を見る

 

しかしそれほど興味がなかったのかすぐに書類の方に目を通していくのだった

 

堀北妹は兄を見つめていたが、自分のことなど気にしていない様子を見て

すぐに目を伏せ、Cクラスの生徒たちと向かい合う位置の席に座っていく

 

その左隣に須藤、右隣に綾小路、さらに隣に茶柱先生が座る

 

「では是より、一週間前に起こった暴力事件について

 生徒会及び事件の関係者、担任の先生を交えて審議を執り行いたいと思います

 

 侵攻は私、生徒会書記、橘が務めます」

 

と会長の右隣に付き従うようにして立っている少女が言う

 

「まさかこの規模のもめごとに生徒会長が足を運ぶとは

 珍しいこともあるのだな、いつもは橘だけのことが多いだろうに」

 

「日々多忙故、参加を見送らせていただく議題はありますが、原則立ち会いますよ」

 

「あくまでも偶然、と言うことか」

 

茶柱と堀北兄はそんなやり取りを交わすと

橘は堀北兄に言われて事の経緯を説明していく

 

「うむ・・・・」

 

不気味な雰囲気の綾小路の表情は

どこか余裕がないようにも見えている

 

そして隣にいる堀北妹の方を見ると

兄を前にして放心状態になっているようだ

 

だが今は様子を見ることを決め、しばらく静観していくことにする

 

「・・・・以上のような経緯を踏まえ

 どちらの主張が真実であるかを見極めさせていただきたいと思います」

 

説明を終えて橘書記はDクラスの方へと視線を向ける

 

「小宮君達バスケット部二名は、須藤君に呼び出され特別棟に行った

 

 そこで一方的に喧嘩を吹っかけられて

 殴られたと主張していますが、それは本当ですか?」

 

「そんなわけねえだろ

 

 呼び出されたのは俺の方だ!」

 

須藤は間髪入れずに否定する

 

「では須藤君にお聞きします

 

 事実を教えていただけますか?」

 

「俺はあの日、部活の練習を終えたら小宮と近藤に特別棟に呼び出されたんだ

 

 うっとおしいとは思ってたけど

 日ごろからこいつらの態度にはムカついてたから

 

 もうはっきりさせようと思って出向いてやったんだよ」

 

須藤がこうやって歯に衣着せぬ物言いにも何の反応も見せない堀北妹

 

「それが嘘です

 

 僕たちが須藤君に特別棟に呼び出されたんです」

 

「ふざけんなよ小宮

 

 てめえらが俺を呼び出したんだろうが」

 

「身に覚えがありません!」

 

「ふざけんなあ!」

 

須藤は思わず机をたたき

その音が部屋中に響き、静粛が起こる

 

「今はあくまで双方の話を聞いているだけですのでお静かにお願いいたします須藤君

 

 小宮君も途中で口を挟むような行為は慎んでください」

 

「ちっ」

 

「双方ともに呼び出されたと主張しており、食い違っています

 

 ですが共通することもあります

 

 須藤君と小宮君、近藤君の間にはもめごとがあったんですね?」

 

「もめごとと言うか、須藤君がいつも僕たちに絡んでくるんです」

 

「絡む、とは?」

 

「彼は僕らよりもバスケットがうまいことを鼻にかけてくるんです

 

 僕たちだって負けないように懸命に練習しているのを

 馬鹿にされるのは気持ちの良いものではないので

 そう言う意味では度々ぶつかっていました」

 

あくまで双方の話を聞き入っていく綾小路

 

「ふざけんな!

 

 絡んできてんのはそっちじゃねえか!

 

 人が練習してるときにわざとぶつかってきたりして邪魔しやがってよ」

 

須藤はそう反論する

 

「両方の言い分がこれでは、今ある証拠で判断していかざるを得ませんね」

 

「僕たちは須藤君にひどく殴られました、それも一方的にです」

 

確かに顔には傷がついている

だがその傷に違和感を覚える綾小路

 

だが隣の少女はまだ立ち直っていない

 

「嘘だ!

 

 先に仕掛けてきたのはそっちだろうが」

 

このままでは逆にこちらを追い詰めていく事になる

 

「堀北・・・・」

 

綾小路は堀北妹に声をかけるが心ここにあらずだ

 

「Dクラス側から新たな証言がなければ

 このまま侵攻しますがよろしいですか?」

 

橘書記が問いかけるが堀北妹は無反応だ

 

「どうやら議論するまでもなかったようだな」

 

ここで初めて生徒会長が口を開いた

 

「どちらが呼び出したにせよ、須藤が一方的に相手を殴ったという事実は

 けがの状態から見ても明らかだ、それを基準に答えを出すしかあるまい」

 

「ま、待てよ!

 

 そんなの納得できるかよ!」

 

須藤は弁明のつもりで発した一言に

相手の担任が微笑みを浮かべたのが分かった

 

「力の差がある相手に正当防衛でも主張するつもりか?」

 

「んな・・・

 

 んなの、向こうは三人がかりだぞ」

 

「だが、実際にけがをしたのはCクラスの生徒だけだ」

 

だんだんとこちらが一方的に打ちのめされていくのがわかる

 

「はあ・・・・

 

 まったく何が余計な心配はしないでだよ・・・・」

 

小声でそう言うと、堀北妹の下っ腹を思いっきりつねった

 

「ふえ!?」

 

堀北妹は普段は上げないような声を上げて

立ち上がるがそれでも綾小路の手は止まらない

 

「ちょ、まっ、なっ、やめっ」

 

しばらくして手は離される

堀北妹は乱れた服装を直しつつ

 

綾小路の方を見るが、綾小路は

人差し指を唇に当てて、静かにと言うような動作を見せる

 

「・・・・・・どうやら戻ってきたようだね・・・・」

 

「っ!」

 

堀北妹の反応を見て綾小路は元の堀北妹に戻ったのだと確信する

 

「このまま一方的にやられるのは

 はっきり言って好ましい展開ではない・・・・

 

 今こそここで君が戦わないと

 君がここに来た意味がないだろう・・・・

 

 君はそれを望むのか・・・・?」

 

「え・・・」

 

堀北妹はそう言われて事態を把握していく

 

それを見ていた茶柱は特に何も言わずに笑みを浮かべている

 

「・・・・失礼いたしました

 

 私から、質問させていただいてもよろしいでしょうか」

 

「構いませんか?」

 

「許可する

 

 だが次からはもっと早くに答えるように」

 

堀北妹はゆっくりと椅子を引き立ち上がる

 

「先ほど、貴方達は須藤君に特別棟に呼び出されたと言いましたが

 須藤君は一体だれを、どのような理由で呼び出したんですか?」

 

今更なんでそんな質問を、と小宮達は顔を合わせる

 

「答えてください」

 

堀北妹は追撃するように一言付けたした

橘書記もそれを認め、説明を求めた

 

「僕たちを呼び出した理由は知りません

 

 ただ、部活が終わって着替えている最中に

 今から顔を貸せって言われて・・・

 

 俺たちが気に入らないとか、そんな理由じゃないでしょうか

 

 それが何だっていうんですか」

 

「では、どうして石崎君もいたのでしょうか

 

 彼はバスケット部員ではありませんし、無関係のはず

 

 その場にいるのは不自然だと思いますが」

 

「それは・・・用心のためですよ

 

 須藤君が暴力的だというのは噂に聞いていましたから

 

 体格だって、俺たちよりも大きいんです、それが普通でしょう」

 

「つまり暴力を振るわれるかもしれない、そう感じていたと?」

 

「そうです」

 

発言が思った以上にスムーズに行く双方の会話

 

「なるほど、それで中学時代喧嘩が強かったという

 石崎君を用心棒代わりとして連れて行ったんですね

 

 いざと言うときは対抗できるように」

 

「自分の身を守る、ただそのためだけですよ

 

 それに、石崎君が喧嘩が強いことで有名なんて知りませんでした

 

 ただ、頼りになる友達なので連れていっただけです」

 

場がだんだんと変わっていくのが分かっていく

 

「実は私は多少、武道の心得があります

 

 だからこそわかるのですが、複数の敵と相対した

 場合の戦いは乗数的に厳しく難しいものになります

 

 喧嘩慣れしている石崎君を含め貴方達が、一方的にやられたことが腑に落ちません」

 

「それは、僕たちに喧嘩の意思がなかったからです」

 

「喧嘩が起こる要因は、自分と相手の『エネルギー』がぶつかり合い

 その間合いを超えたときに発展すると客観的に見ています

 

 相手に戦う意思がない場合や無抵抗な場合

 三人がそこまでけがをする確率は非常に低いはずです」

 

堀北妹はルールや根拠に基づく客観的な意見を述べ

それに対して小宮達は実際の証拠と言う武器で対抗する

 

「その一般的な考えが、須藤君には当てはまらないということです

 

 彼は非常に暴力的で、無抵抗なことをいいことに、容赦なく殴りつけてきたんです」

 

そう言って自分たちのけがを見せてくる

堀北妹の言い分がどれだけうまくともそのけがと言う証拠は協力だった

 

「以上でDクラスの主張は終わりか?」

 

堀北兄の口からか放たれるのは

その程度の発言しかできないのなら

最初からしない方がましだ、と言わんばかりの冷たい一言

 

だがそれでも堀北妹には手はまだ残っている

 

「・・・・須藤君が相手を殴りつけたことは事実です

 

 しかし先に仕掛けてきたのはCクラスです

 

 その証拠に、事件の一部始終を目撃した生徒がいます」

 

「では、Dクラスから報告のあった目撃者を入室させてください」

 

そう言って入室してきたのは

いまだに不安げで落ち着かない様子に佐倉だった

 

「一年Dクラス 佐倉 愛里さんです」

 

「目撃者がいるというので何事かと思いましたが、Dクラスですか」

 

Cクラスの担任は眼鏡を吹きながら失笑する

 

「何か問題でもありますか、坂上先生」

 

「いえいえ、どうぞ進めてください」

 

互いの目線を交差させる双方の担任

 

「では証言をお願いしてもよろしいでしょうか、佐倉さん」

 

「は、はい・・・

 

 あ、あの・・・その・・・」

 

佐倉はやはり踏み出せないのか言葉が続いてこない

 

「佐倉さん・・・」

 

堀北も思わず声をかけるが当の佐倉には届いていない

だが、綾小路はあくまでその様子を見守っているだけ

 

「どうやら、これ以上は時間の無駄のようですね」

 

「何を急いでいるんですか坂上先生」

 

「そりゃそうでしょう

 

 このような無駄なことで、私の生徒が苦しんでいるんですよ?

 

 彼らはクラスのムードメーカーで

 多くの仲間たちに心配をかけたことを気にしています

 

 バスケットだってひたむきに励んでいる

 

 その貴重な時間が奪われているんです

 

 担任として、それを見過ごすことはしたくないのでね」

 

「そうですね

 

 確かにその通りだ」

 

茶柱先生は相手の言い分を聞き、納得したように頷いた

 

「確かにこれ以上は時間の無駄、とするしかないでしょう

 

 佐倉、もう下がっていいぞ」

 

興味が失せたというように佐倉に退室を命じる

 

生徒会側の人間も、遅延は勘弁願いたいのか止めなかった

 

結果はもはや、Dクラスの敗退で決定していくような雰囲気になる

 

佐倉は自分の弱さを悔いているように耐え切れずに強く目を閉じ

須藤と堀北ももう佐倉は無理だと感じ、あきらめかけている

 

すると佐倉は目を開いて顔を上げた

 

「私は確かに見ました・・・!!!」

 

佐倉がそう発言したのを聞いて

綾小路は不気味なほどに笑みを浮かべた

 

「最初にCクラスの生徒が須藤君に殴りかかったんです

 

 間違いありませんっ!」

 

佐倉は普段の彼女からは考えられないような声で証言する

 

「すまないが、私から発言させてもらってもいいだろうか」

 

挙手したのはCクラスの担任だ

 

「本来、極力教師は口をはさむべきではないと理解しているが

 この状況はあまりに生徒が不憫でならない、生徒会長、構わないかな?」

 

「許可します」

 

「佐倉君と言ったね

 

 私は君を疑っているわけではないんだが、それでも一つ聞かせてくれ

 

 君は目撃者として名乗りを上げたのが

 ずいぶん遅かったようだがそれはどうしてかな?

 

 本当に見たのなら、もっと早くに名乗り出るべきだった」

 

茶柱先生と同じ部分を指摘する

 

「それは・・・その・・・巻き込まれ、たくなかったからです・・・」

 

「どうして巻き込まれたくないと?」

 

「・・・私は、人と話すのが、得意ではないので・・・」

 

「なるほど

 

 よくわかりました

 

 ではもう一つ

 

 人と話すのが得意でないあなたが、週が明けた途端

 目撃者として名乗り上げたのは不自然じゃありませんか?

 

 これではDクラスが口裏を合わせて貴方に

 嘘の目撃証言をさせているようにしか思えない」

 

「そんな・・・私はただ、本当のことを・・・」

 

「いくら話すのが苦手だとしても、私には君が

 自信をもって証言しているようには思えない

 

 それは本当は嘘をついているから

 罪悪感に苛まれているからではないのかな?」

 

「ち、違います・・・」

 

「私は君を責めているわけではないよ

 

 おそらくクラスのため、須藤君を救うため

 嘘をつくことを強いられてきたんじゃないのかな?

 

 今正直に告白すれば、君が罰せられることはないだろう」

 

この執拗な心理攻撃にさすがに見かねた堀北が手を上げる

 

「それは違います

 

 佐倉さんは確かに対話をするのは得意ではありません

 

 しかし、その事件を本当に目撃した生徒だからこそ

 こうしてこの場に立ってくれているんです

 

 そうでなければ頼まれたとしてもここに立っていたのかどうか

 

 堂々と発言させるだけでよいのなら

 ほかの代役だって立てられたと思いませんか?」

 

「思いませんね

 

 Dクラスにも優秀な生徒はいる

 

 それは堀北さん、君のような生徒です

 

 佐倉さんのような人物を立てることで

 本当の目撃者であるとリアリティを持たせたかったのではないですか?」

 

坂上先生は不敵に微笑んで腰を下ろそうとすると

 

「証拠なら・・・あります!」

 

佐倉のその訴えに、坂上の腰が途中で止まる

 

「もうこれ以上はよしたまえ

 

 本当に証拠があるなら、もっと早い段階で・・・」

 

すると佐倉はバンっと数枚の小さな

長方形の紙のようなものをたたきつけるように置く

 

「それは・・・?」

 

Cクラスの担任の表情が固まっていく

 

「私が、あの日特別棟にいた証拠です・・・!」

 

橘書記が佐倉の傍によって、軽く断りをいれて紙に手を伸ばす

 

それは数枚の写真だった

 

「・・・・会長」

 

写真を見た橘書記は、堀北兄にその写真を提出する

しばらく見ていた堀北兄は面々にも見えるように写真を広げる

 

「私は・・・あの日、自分をとるために人のいない場所を探していました

 

 その時に撮った証拠として日付も入っていますっ」

 

広げられた写真を一枚一枚見つめていく面々

これには今まで被害者の顔をしていたCクラスの表情も変わっていく

 

「これは何で撮影したものだね?」

 

「デジタル・・・カメラですけど・・・」

 

「確かデジカメは容易に日付の変更ができたはずだ

 

 パソコン上で日付のみ操作してプリントアウトすれば

 事件当時の時間帯を再現できる、証拠としては不十分です」

 

「しかし坂上先生

 

 この写真は違うと思いますが」

 

堀北兄は下に重なっていて見えなかった写真を見せる

 

「こ、これは・・・!?」

 

それはこれ以上ないタイミングを抑えた、喧嘩騒動を表す一枚がそこにはあった

 

それは夕暮れに染まる校舎、その廊下

 

須藤が石崎を殴った直後と思われる場面の写真だった

 

「これで・・・私がそこにいたことを、信じてもらえたと思います」

 

「ありがとう、佐倉さん」

 

堀北は安どの様子を見せるが

綾小路の方はまだ浮かない表情を見せている

 

「なるほど

 

 どうやらあなたが現場にいたことは本当のようだ

 

 その点は素直に認めるしかありません

 

 ですが、この写真ではどちらが仕掛けた者かはわかりません

 

 貴方が最初から一部始終を見ていた確証にも至りませんし」

 

Cクラスの担任のいうとおり

これではどちらが先に仕掛けてきたのかが分からない

 

 

「・・・・どうでしょう茶柱先生

 

 ここは落としどころを模索しませんか?」

 

「落としどころ、ですか」

 

「今回私は、須藤君が嘘をついて証言したと確信しています」

 

「てめ・・・」

 

「須藤・・・・!」

 

須藤はとびかからんとするが

綾小路の不気味なまでにこわばった声に思わず制止し

 

おとなしく座っていく

 

 

「いつまで続けていても話し合いは平行線でしょう

 

 私達は証言を変えませんし、あちら側も目撃者と口裏を合わせて諦めない

 

 つまり、相手が嘘をついていると応酬してやまない

 

 この写真も決定的証拠としては弱い

 

 ・・・・そこで、落としどころです

 

 私はCクラスの生徒がにも幾ばくかの責任はあると思います

 

 三人いたことや、一人は喧嘩慣れしている

 過去を持っているそうなので、それは問題でしょう

 

 そこで須藤君に二週間の停学、Cクラスの生徒たちに一週間の停学

 

 それでいかがでしょうか?

 

 ばつの重さの違いは、相手を傷つけたかどうか、その違いです」

 

そう告げる坂上先生だが、須藤は納得がいかないようだ

 

「ふざけんなゴラ!

 

 冗談じゃねえぞ!」

 

「茶柱先生、貴方はどう思われますか?」

 

坂上先生は茶柱先生に意見を求めていく

 

「結論はすでに出たようなものでしょう

 坂上先生の提案を断る理由はありません」

 

妥協点としては申し分ない内容だ

堀北は一度天井を見上げる、もうここまでねと言わんばかりに

 

堀北もわかっていたのだ、むしろここまで妥協できただけでも立派だ

 

「・・・・・・もうここまで・・・・

 

 そう言いたげな表情だね堀北・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

そこに綾小路が話しかけてきた

 

「そう言うあなたこそ、何か手があると?」

 

「・・・・・・ないね・・・・

 

 むしろ私は坂上の提案を受けるのがいいと思う・・・・」

 

その言葉に坂上は薄く笑って眼鏡をくいっと上げる

 

「そもそも須藤の無実を証明する証拠ははなから存在しない・・・・

 

 そもそも場所はあの時間帯誰も利用しない特別棟

 もっと多くの奴らが見てくれている可能性のある

 教室やコンビニなら、まだ何とかなっただろうさ・・・・

 

 だが場所が場所、こればかりはどうしようもない・・・・」

 

堀北は綾小路の目を直視する

それは見下しているというよりは関心の見えぬ不気味なものだった

 

「そもそも私はね、こんな話し合いに意味なんてなかったと思ってる・・・・

 

 どれだけ訴えてもCクラスは嘘だと認めないし、須藤も同じく認めない

 佐倉の活躍のおかげで同じ土俵には立てたがそれまで、結局は平行線だよ・・・・

 

 むしろ本来は一か月になるはずだった停学が二週間まで落ちたんだ・・・・

 

 Dクラスの生徒としてはむしろよく頑張ったと認めてくれたわけだしね・・・・

 

 私も同じ意見だよ、Dクラスの生徒としてはよくやった方だと思う・・・・」

 

堀北の耳元に顔を近づけて耳打ちをする

 

「・・・・っ!」

 

堀北の目が不意に見開いた

 

「・・・・・・私はあくまで君の意見に従うよ堀北・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

堀北は綾小路の方を睨みつける

だが、そうも言ってはいられない

 

なぜならまだ、自分にはやらねばならぬことが残っているから

 

「ではDクラスの代表の堀北さん

 

 意見をお聞かせください」

 

綾小路の話を聞いて、それをそのまま

受け取って余裕の表情で意見を求めてきた

 

「わかりました・・・」

 

堀北はゆっくりと顔を上げた

 

「堀北!」

 

須藤は叫ぶように言うが

堀北は己が下した結論を口にしていく

 

「私は今回、この事件を引き起こした

 須藤君には大きな問題があると思っています

 

 なぜなら、彼は日ごろの自分の行いを

 周囲への迷惑を全く考えていないからです

 

 喧嘩に明け暮れていた経歴

 気に食わないことがあればすぐに声を上げ、手を上げる性格

 

 そんな人が騒動を起こせば、こうなることは目に見えて明らかだったからです」

 

「てめっ・・!」

 

「あなたのその態度が、すべての元凶であるとと言うことを理解しなさい」

 

須藤は意見しようとしたが

堀北はさらにそこに気迫をもって須藤を睨みつけた

 

「ゆえに私は、当初から須藤君を救うことには消極的でした

 

 無理に手を差し伸べたところで、彼はまた同じことを

 繰り返すことは分かっていたからです、そのことについて私は反省が必要と考えます」

 

「よく正直に答えてくれました

 

 これで決着が付きそうですね」

 

「ありがとうございました

 

 それでは着席してk・・・」

 

「ですが、それはあくまで過去の自分を見つめなおすという意味での反省です

 

 今回の事件に関しては・・・・私は須藤君に何ら非はないと思っています

 

 なぜなら、この事件は偶然起きてしまった不幸な出来事ではなく

 Cクラス側が意図的に仕組んだ事件であると確信しているからです

 

 このまま泣き寝入りする気は毛頭ありません」

 

堀北は橘書記の言葉を遮るように

やや威圧的ともとれる態度でそう答えた

 

「・・・・どう言うことだ?」

 

堀北兄はその時、妹に初めて目を向ける

堀北妹はそのまなざしをしっかりと見つめ答えていく

 

「理解していただけなかったのなら、改めてお答えします

 

 私達は須藤君の完全無罪を主張します

 

 よって、一日たりとも停学処分は受け入れられません」

 

「はは・・・・何を言うのかと思えば

 

 意図的な事件?

 

 どうやら会長の妹は不出来としかいいようがありませんね」

 

「目撃者の証言通り須藤君は被害者です

 

 どうぞ、間違いのない判断を」

 

「被害者は僕たちです生徒会長!」

 

Cクラスの生徒も声を張り上げて主張する

 

「ふざけんな!

 

 被害者は俺だ!」

 

それに感化されて須藤も主張していく

 

互いに異議ありの繰り返しは何の意味もないことは誰もが理解している

 

「そこまでだ

 

 これ以上この話し合いを続けても時間の無駄だろう」

 

生徒会長、堀北 学はこの泥仕合のような嘘の押し付け合いを一瞥する

 

「今日の話し合いで分かったことは、互いの言い分は常に真逆

 

 どちらかが非常に悪質な嘘をついているということだけだ」

 

そして堀北兄は双方を睨みつけるように見渡す

 

「Cクラスに聞く

 

 今日の話に嘘偽りはない

 そう言いきれるのだろうな」

 

「も・・・もちろんです」

 

「Dクラスはどうだ」

 

「俺は嘘なんてついてねえ

 

 全部本当のことだ」

 

「では、明日の四時にもう一度再審の席を設けることにする

 

 それまでに相手の明確な嘘、あるいは自分たちの非を

 認める申し出がない場合、出そろっている証拠で判断を下す

 

 もちろん、場合によっては退学と言う措置も視野に入れる必要がある

 

 以上だ」

 

堀北兄は結論を下し、この審議を収めた

 

「まずまずの成果だね・・・・

 

 これで第二段階は終了だね・・・・」

 

不気味な雰囲気の綾小路はそうつぶやく

 

「そんなのんきなことを言っている余裕があるの?

 

 猶予は実質あと一日しかないというのに」

 

「一日あれば十分さ・・・・」

 

すると坂上先生はDクラスの方を見て冷たい言葉を言い放つ

 

「君たちがどのような方法を使ってくるのかは知らないが

 関係のないクラスメートを巻き込んでまでこのような事態を招いた

 

 その事実はいずれ君たちだけの問題じゃ済まなくなることは分かってるんだろうね」

 

「知らないねそんなの・・・・

 

 だって私達は嘘をついていない・・・・

 

 あくまでそれを主張するだけだよ・・・・」

 

「その余裕がいつまで続くかね」

 

坂上先生はそれだけ言い放って

わざとらしく嘘の目撃者なんてひどすぎるなどと

こちらをあおっていくような言葉を言いつつ、生徒とともに去っていく

 

「ずいぶんと思い切ったことを言ったが、勝算はあるのか綾小路」

 

「知らないね・・・・

 

 あくまでそれを決めるのは彼女だからね・・・・」

 

「相変わらず嫌な性格してるわね・・・・

 

 まあどっちにしても、引き下がるつもりはありませんよ、茶柱先生」

 

「思いだけでどうにかなる問題ではないことはお前たちにも十分理解できているはずだ

 

 下手をすれば余計な傷口を広げる結果になるかもしれんぞ?」

 

「私はあくまで負けるつもりはありません

 

 では、私はこれで失礼いたします」

 

「フフフフフフ・・・・」

 

堀北が立つのと同時に

綾小路は不気味な笑みを浮かべて供に出ていく

 

須藤はそれを見て、慌てて追いかけるように出ていく

 

ひとり残った佐倉はそこで静かに泣き続ける

坂上先生の一言が彼女に次々と突き刺さってきたのだ

 

むしろ今までこらえてきただけでも頑張った方だ

 

そんな彼女にハンカチが差し出される

 

「・・・・・・大丈夫ですか・・・・?」

 

そこにいたのは仮面で顔を隠した綾小路であった

 

「綾小路君・・・」

 

佐倉の涙をそっと吹いてあげる綾小路

仮面越しのその瞳はどこか優し気に感じたが

 

佐倉はそれでもどこか浮かない様子だ

 

「・・・私が最初から名乗り出ていたら大丈夫だったんだよね・・・

 

 それなのに、私に勇気がないからこんなことになっちゃった・・・」

 

「・・・・・・もし佐倉嬢が最初に名乗り出ていたとしても結果は変わらずでしょう

 

 その時は相手は須藤殿と同じクラスメートであると強く攻めていたでしょう・・・・

 

 我はむしろ、佐倉嬢は良く戦った方だと思いますよ・・・・」

 

「でも・・・」

 

すると佐倉をそっと優しく抱きしめる

 

「・・・・・・自分を責めないでください・・・・

 

 むしろ佐倉嬢がこうして名乗り出たからこそ

 こうして、審議の結果が持ち越しになったのですから・・・・

 

 佐倉嬢がいなければきっとDクラスは敗北していたでしょう・・・・

 

 それを食い止めただけでも、佐倉嬢の貢献は大きいと我は思いますよ・・・・」

 

「綾小路君・・・」

 

佐倉は彼の胸の中で声を殺して、泣いた

綾小路は静かに彼女に胸を貸してやるのだった

 

「・・・・・・佐倉嬢、もう動けますか・・・・?」

 

佐倉はそれに答えずに立ち上がろうとするが

まだどこか足元がおぼつかない部分があるようだ

 

綾小路は彼女を見捨てずに

あくまで彼女が動けるようになるのを待つことにする

 

すると

 

「まだいたのか?」

 

部屋の奥から堀北兄が現れる

 

「・・・・・・失礼、彼女は少しショックで動けないようなので

 

 もうしばらく、ここにいる許可をお許しいただきたく思います・・・・」

 

「好きにするがいい

 

 今日はもう、この部屋を使うことはない

 だが、あまり長居はしてくれるなよ」

 

堀北兄も佐倉の様子を見て理解したのか

そっけなくも佐倉を優先してくれた

 

「それで、お前は?」

 

「・・・・・・綾小路 清隆・・・・

 

 我とこうして会うのはこれが初めてですね・・・・」

 

綾小路の名前を聞いて驚いたようなやや睨むように言う

 

「なるほど、その佐倉に証言させる後押しをしたのはお前か」

 

「・・・・・・我はあくまで、彼女のお力添えをしたのみ・・・・

 

 この場に立つ決意をしたのは間違いなく彼女の意思です・・・・」

 

「だが、あくまで状況は平行線だ

 

 何かが変わったということはない」

 

「・・・・・・確かに、佐倉嬢の働きがなくては

 おそらくDクラスはこうして同じ土俵に立つこともできなかったでしょう・・・・」

 

「なるほど」

 

会話を続けていく双方

綾小路の仮面より覗く瞳は鋭く相手を睨みつけているように見える

 

「それから佐倉」

 

まだ多少のショックの残っている佐倉に話しかける堀北兄

 

「綾小路の言う通り、お前の証言と咲子の写真は

 審議に出すだけの証拠能力は確かにあった

 

 だがその証拠をどう評価しどこまで信用するのかは説明力で決まる

 

 だがそれもお前がDクラスの生徒である

 ということでどうしても下がってしまうものだ

 

 どれだけ事件当時のことを克明に語っても

 100%受け入れることはできない

 

 今回、お前の証言が『真実』として認識されることはないだろう」

 

堀北兄の言葉に何とか反論しようとするが

もともとの性格と先ほどのショックのせいでうまく言葉がつながらない

 

「わ、私は・・・ただ、本当のことを・・・」

 

「説明しきれなければ、ただの戯言だ」

 

堀北兄の威圧感のせいで言葉が続かない

 

「・・・・・・我は信じます・・・・

 

 他人に注目されるのが苦手な彼女が

 こうして勇気をもってこの場に赴いたのです

 

 その言い方は、彼女のその精一杯の勇気に対して不敬かと思われますが・・・・」

 

「俺はあくまで事実を述べただけだ

 

 確かにお前の言うこともわかるが

 あくまで佐倉はDクラスの敗北を先送りにしたのみでしかない」

 

「・・・・・・まだ敗北したと決まったわけではありません・・・・

 

 今より明日のこの場におけるまでの時間が残っております・・・・

 

 その十分な時間をもって我は彼女がもうしたことが

 決して戯言ではないと証明しましょう

 

 我、いえ我らのすべての力をもって・・・・」

 

「ほう、つまりお前はすでにそれを証明する手立てを用意していると」

 

「・・・・・・ええ、まあそれはあくまであなたの妹君のお役目・・・・

 

 しかし、それでもって必ずや、佐倉嬢の勇気が

 決して無駄ではないと証明して見せましょう・・・・」

 

堀北兄はそれを聞いてほう、と笑みを浮かべながら

傍についている橘書記とともに部屋を後にしていくのだった

 

「・・・・・・佐倉嬢、お顔を上げてください・・・・」

 

「だって・・・私のせいで・・・っ・・・・・・」

 

「・・・・・・佐倉嬢は誰かに責められることはしていません・・・・

 

 貴方は真実を述べた、それだけではないですか・・・・」

 

「・・・でも・・・っ・・・・・・」

 

「・・・・・・佐倉嬢、もう泣くのはおやめになってください・・・・

 

 貴方は何も悪いことはしていない

 貴方はあなたがやるべきことをやったのみ・・・・

 

 そのことでご自身をお責めにならないでください・・・・」

 

佐倉の前に立ち彼女と同じ視線になる

佐倉はそれに気づき、思わず顔をそらす

 

「でも・・・私は・・・何の役にも立たなかったし・・・・・・?」

 

あまりに自分に自信の持てない発言を繰り返す佐倉に

綾小路はやや強引に佐倉を自分の方に向かせて言う

 

「・・・・・・我はあなたを信じます・・・・

 

 たとえ回りがどれほどあなたを責めようと

 あなた自身があなた自身を信じられなくなくなったとしても・・・・

 

 最期のその時まで、我は友人として仲間としてあなたを信じる・・・・!」

 

佐倉は不意に綾小路の目を見る

仮面越しに見えるその瞳は鋭いが怖い感じがしない

 

「・・・・・・約束いたします、佐倉嬢の身に

 何かがあったとするならば、我が必ずお力になりましょう・・・・

 

 それとも、やはり我では頼りありませんか・・・・?」

 

仮面をかぶった綾小路の言葉に佐倉は何も反応しなかった

ただ不思議と、綾小路の言葉に安心と重みを感じていたのだった

 

・・二・・

 

「ごめんね、私泣いてばっかりで・・・」

 

佐倉は綾小路とともに歩く

その表情は恥ずかしそうながらも笑みを浮かべていた

 

「ありがとう綾小路君

 

 思いっきり泣いたらすっきりしちゃった」

 

「・・・・・・男子たるもの女子に

 胸を貸してさしあげることは誉れ高き事・・・・

 

 それに、人は涙を流すことで少しずつ進むことができます・・・・

 

 無理にため込ませるよりは、貴方のためになると思っただけでしよ・・・・」

 

「綾小路君って、やっぱり優しいね」

 

「・・・・・・我はあくまで我が正しいと思ったことをやっただけですよ・・・・」

 

佐倉はどこか、嬉しそうに綾小路にほほえみかけていた

 

「・・・私うれしかった、私を信じるって言ってくれたこと」

 

「・・・・・・我だけではありません

 

 堀北嬢も須藤殿も、クラスメイトの方々も信じていると思いますよ」

 

「うん・・・

 

 でもね、綾小路君はまっすぐに伝えてくれたから・・・」

 

佐倉は残った涙をぬぐおうとハンカチを取り出すが

不意にそれは綾小路に渡されたものだったことに気が付く

 

「あ、あの・・・

 

 綾小路君、これ・・・」

 

佐倉は綾小路にハンカチを返そうと突き出すと

 

「・・・・・・よろしければ、差し上げますよ・・・・」

 

「え?」

 

「・・・・・・貴方は前にこんな自分が嫌だと仰いました

 

 それは逆にとらえれば、そんな自分を変えたいとも言えます・・・・

 

 その気持ちがあるなら貴方は変われます

 しかし無理に変わろうとすれば逆効果です・・・・

 

 ゆっくりと時間をかけて変わっていきましょう・・・・

 

 その時が来るまで今日のようなことがまた起こるかもしれません・・・・

 

 その時は、そのハンカチでまた涙を拭えばいい・・・・

 

 貴方があなたが変われたと思ったその時お返しいただければいいです

 その時が来るまでは、どうかあなたが持っていてください・・・・」

 

「あ・・・」

 

その瞳はどこか気遣っているように見えた

 

「綾小路君」

 

すると不意に佐倉は綾小路に話しかけていく

 

「あ、あのね私・・・」

 

玄関までそろそろと言うところで佐倉は話しかける

 

「・・・・・・いかがなされましたか・・・・?」

 

「・・・う、うん、あのね綾小路君

 

 あとでいいんだけれどよかったら

 また私の話、聞いてもらってもいいかな?」

 

佐倉がそう言うと綾小路は

 

「・・・・・・構いませんよ、こんな我でよろしければ・・・・」

 

「うん・・・」

 

そうして二人は別れていくのだった

そのころ別の場所では、堀北とともに出ていた

不気味な雰囲気の綾小路の前に二人の人物が姿を見せる

 

「やっほ

 

 ずいぶん遅かったね」

 

それは一之瀬と神崎だった

 

「おや・・・・?

 

 私達のことを待っていてくれたのかい・・・・?」

 

「どうなったのかなって思って」

 

一之瀬は彼の不気味な雰囲気に圧されずに話しかける

 

「堀北・・・・

 

 説明してあげなよ・・・・」

 

「はあ・・・」

 

綾小路に押し付けられて

あきれながらも堀北は説明をしていく

 

「そっか、Dクラスはあくまで、無罪を主張するんだね」

 

「向こうはあくまで須藤を停学に追い込めば勝ちだからね・・・・」

 

その説明に二人はどうにも納得がいかない様子

 

「相手を殴ったという事実は消しようがない

 

 それよりもせっかく目撃者の裏付けと咲子が出てきて

 相手に譲歩させたんだ、そのタイミングで受け入れ妥協するべきだった」

 

「でも綾小路君の言う通り

 停学を受け入れるのはDクラスの負けみたいなもの

 

 須藤君は停学になるような生徒と判断されて

 素行不良ととられてレギュラーが白紙になるかも」

 

「そうとも限らないだろう

 

 確かに心証は悪くなるかもしれないが

 どちらにも責任があったとわかれば

 学校側もそれに考慮した査定に変わるはずだ

 

 しかし、明日須藤の責任割合が増えれば、それすらも危うくなる」

 

それぞれの意見を述べる一之瀬と神崎

 

「まあそうだろうね・・・・

 

 私なんてそもそもその答えには

 今日の討論が始まる以前に気が付いてたしね・・・・」

 

「だったらなぜ、止めなかったんだよ」

 

「私はあくまで今日の話し合いを止めることの方がいいと考えた・・・・

 

 神崎の言う通り完全無罪を勝ちとることは実質不可能だからね・・・・」

 

綾小路の言葉に堀北はやや顔をゆがめる

 

「それでも戦うんだ?

 

 新しい証拠も証言もないのに・・・」

 

「あくまでその判断はうちの大将の判断さ・・・・

 

 そしておかげで第二段階はうまくとまでは

 いかないが予定通りの結果に終わったよ・・・・」

 

不気味な雰囲気の綾小路はにやりと笑みを浮かべる

 

「予定通りって、もう有力な手掛かりが手に入るとも思えないと思うけど」

 

「そうだな、探すのは簡単だが見つけるのはそう簡単じゃない」

 

不気味な雰囲気の綾小路は二人の方をじっと見つめる

 

「フフフフフフ・・・・

 

 あくまでまだ協力してくれるんだね・・・・」

 

「まあ乗り掛かった舟だしね

 

 それに前にも言ったでしょ

 

 嘘は許せないって」

 

それを聞いて笑みを浮かべる綾小路は目を閉じた

 

堀北とBクラスの二人は不思議そうに見つめる

 

・・・・・・・

 

ーどうするんだい・・・・

 

 状況はかなり悪い・・・・ー

 

ーそうだね・・・・

 

 あるはずのない証拠

 目撃者はクラスメート・・・・ー

 

ーやっぱりあの時、素直に提案を受け入れればー

 

ーでもそれを決めたのは堀北ちゃんでしょ?ー

 

ーまあそうさせたのはこっちだけどな

 

 でも、どうにか先延ばしには成功したー

 

ーでもこっからどうすんだよ?ー

 

ー次の審議までに新しい証拠を見つけるのか?

 

 それも無理だろー

 

ーいいえ、もう審議はさせないわ

 

 その方法はすでに考えてる、あとは次の手に移るのみよー

 

ーあとは賭けだがこれならうまくいく、そうー

 

ーーーーーーーーーーーーーーこれでチェックメイトだーーーーーーー

 

・・・・・・・

 

しばらくすると綾小路は目を見開いて三人を見る

 

「ねえ一之瀬に神崎・・・・

 

 君たちがまだ協力してくれるっていうんなら

 私の提案を飲んでもらってもいいかな・・・・?」

 

不意にそんなことを二人に述べていく

 

「提案って・・・・どういうこと?」

 

「残念ながらもう話し合いをすることに意味はない・・・・

 

 もし仮に新しく目撃者が出できたとしてももう

 十分すぎるような証拠能力はもうない、だったらもう・・・・

 

 無罪を勝ち取ることはできない・・・・

 

 だったらいっそのこと無罪を手にする手を捨てればいい・・・・」

 

「貴方何を言って・・・・ってまさか!?」

 

「フフフフフフ・・・・」

 

綾小路はまず一之瀬に頼んで前から手に入れたかったものを

手に入れるために協力してほしいと頼み込むと、一之瀬は表情は少し硬くなる

 

「・・・・うーん、それはちょっとハードな提案だね」

 

やや渋ってしまう様子を一之瀬

 

「まあ無理もないだろうね・・・・

 

 しかしこの作戦は残念だが私や堀北

 仮に協力者全員を合わせても難しい・・・・

 

 まあ無理だったら無理でいいけど・・・・」

 

「あ、ううん、そのお願い自体は一応何とかはなるよ

 

 Dクラスの現状もわかってるしそれが有効だとも・・・・でも

 理由を聞かずにっていうのはちょっと都合がよすぎるんじゃない?」

 

「・・・・・・それじゃあもう少し話をしよう・・・・

 

 納得できないならそれでよし

 納得してくれるなら協力してくれるね・・・・?」

 

とさらに話をしていく不気味な雰囲気の綾小路に

その話を聞く一之瀬と神崎、そして堀北は不思議と納得いった

 

「君たちならこの作戦のリスク・・・・

 

 有用性は理解できるだろ・・・・?」

 

「確かに・・・・でもすごいね綾小路君

 

 そんなこといつの間に考えてたの?」

 

「君たちとここで会う前に堀北が提案した作戦さ・・・・

 

 ただどうしても手が出なくて一度却下してたのさ・・・・」

 

「っ!」

 

堀北は不意に彼の方を見るが

彼は今は一之瀬の方を見ていたのだった

 

「そうなんだ、すごいね二人とも

 

 私もあそこに行ったのに全然意識してなかったよ

 

 蚊帳の外と言うか、想像の範疇になかった」

 

一之瀬達にはしっかり狙いと効果は伝わったようだが

表情はまだ硬い、まだ考え込んでいる様子

 

「確かにその発想は私もびっくりしたし

 効果も、多分見込めると思うけど、そんなのってあり?」

 

一之瀬は神崎に視線を移す

意見を求めているようだった

 

「確かにこの方法はお前のモラルには反するかもしれないな、一之瀬」

 

「うん、そうだね・・・・でも・・・確かにたった一つの方法かも」

 

「確かにそうだな、確かにこれなら活路を開けるかもしれない」

 

「私もそう思うよ、でもやっぱり・・・」

 

一之瀬にはどこか悩みが見えるが

 

「何を迷う必要がある・・・・?

 

 相手だって嘘をついているんだ・・・・

 

 目には目を歯には歯

 嘘には嘘をぶつければいいだけだ・・・・」

 

不気味な雰囲気の綾小路は表情を動かさずに言うと一之瀬は、うんと頷く

 

「そうだね、綾小路君の言うとおりだよ

 

 でも、それって実現可能なのかな?

 

 頼まれたそれが手に入るとも思えないけど・・・」

 

「ちゃんと調べてきたさ・・・・

 

 心配はいらない

 さっき確認してきたからね・・・・

 

 だよね堀北・・・・?」

 

「・・・・ええ、そうね」

 

堀北はどこか腑に落ちない様子ながら

言っても無駄と考えて返事をする

 

「これでやっと一つの心配が消えた・・・・

 

 いよいよ明日で決着をつけさせて貰うとしよう・・・・

 

 私は先に戻るよ

 くだらない時間つぶしのせいでいろいろ疲れたからね・・・・」

 

そう言って一人部屋の方に戻っていく綾小路だった

 

「ねえ神崎君・・・

 

 ひょっとして私達ってとんでもないことになってきてるんじゃない?」

 

「そうだな」

 

「Cクラスと差をつけるためにやったのに

 気が付かないうちに自分たちを追い込む事態になってきてるんじゃ・・・」

 

「かもしれないな」

 

「参ったなあ

 

 まさかDクラスに彼みたいなのが

 いるなんてね、完璧計算外だよ」

 

そう言って綾小路の去っていった方を見つめる

 

「彼ってさ、いったい何者なのかな

 

 堀北さんは知ってる?」

 

堀北に聞いていくが

堀北は首を横に振る

 

「知らないし知るつもりもない

 

 私はあくまで私のためにやるだけよ・・・」

 

と堀北も寮の中へと入っていくのであった

 

一之瀬と神崎と別れた堀北は

自分の部屋に行かずに、ある部屋に向かっていく

 

その前には尋ねたかった相手の姿を見る

 

「貴方、さっきのはどういうつもり?」

 

堀北がそう話しかけていくと

不気味な雰囲気の綾小路は堀北の方を向く

 

「何のことだい・・・・?」

 

「貴方のさっきの言い方

 一之瀬さんの意識を私に向けさせようとしてたわよね

 

 まさか、私を隠れ蓑にでもするつもり?」

 

「ひょっとして・・・・

 

 一之瀬に話した例の作戦のことかい・・・・?

 

 でも君だって作戦そのものは思いついてたんだろ・・・・?」

 

「・・・・ええ、確かに・・・

 

 作戦そのものは私も思いついてた・・・

 

 でもだからって!」

 

「堀北・・・・

 

 これは今後のDクラスのためにも必要なことだよ・・・・」

 

「え?」

 

不気味な雰囲気の綾小路はそう言うと堀北が首をかしげる

 

「今のDクラスは問題が山積みだ

 

 その第一に結束力のなさ・・・・

 

 その証拠に今のクラスメートに須藤君を

 本気で救いたいと思っているものはほとんどいない・・・・

 

 みんな平田がまとめることで

 どうにか保っているだけの表面張力・・・・

 

 もう少しまとめ上げられるにはやはり

 人をまとめ上げられる強い存在が必要・・・・

 

 私はそう考えている・・・・」

 

「いっている意味が分からないわ・・・

 

 確かにDクラスの結束力は心もとないし

 平田君はあくまでクラスをまとめているだけ

 

 それはいうなれば形を無理やり作ってるだけで

 すぐに何かのトラブルですぐに崩れてしまう・・・

 

 そこは私もわかるけど、あなたのその言い方と

 これまでの行動、まるでそのまとめあげる存在を

 

 私に担わせようとしているように聞こえるけど・・・」

 

堀北は疑わしそうに不気味な雰囲気の綾小路を睨みつけると

 

「その通りだよ堀北・・・・」

 

「え・・・?」

 

不気味な雰囲気の綾小路は堀北の方を向いて言う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君が平田とともにDクラスをまとめ上げる存在になるんだ・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        




佐倉が雫だと言う事が分かってしばらくした後のこと

「しっかしまさか綾小路

 グラビアアイドルのことしらねえなんてな」

「ぶっちゃけ興味ねえからな」

池と綾小路が話をしていた

「ようし!

 それじゃあこの俺が
 グラビアアイドルを知らない
 悲しいお前にその良さをたっぷり教えてやる」

「いや、いい・・・・」

「遠慮すんなって

 俺のおすすめを教えてやるよ」

「いやちょっとまっ・・・・」

こうして池にさんざん話しかけられたが
ぶっちゃけおっぱいが大きいだの尻のことだの

動物的な綾小路にとって参考にはならなかったという



















      
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