ようこそ実力至上主義の教室へーIn this deceitful world, even bigger lieー 作:lOOSPH
「まったくもう私ってば
もう少し相手を怖がらせないようにしてってば」
「仕方ねえよ
何しろ私はもっとも
最悪な位置に位置してるんだからな」
「まあ逆に俺だったら
何か言う前に
とっくに引き上げてたがな」
「ねえ、教室がなんだか騒がしくなってない?」
「本当だね・・・・
一体何が起こってるんだろうね・・・・」
「・・・・・・・・・・」
六人は急いで教室に入っていくと
そこから聞こえてきた声はあまりにも騒がしかった
「ええっ
それ本当なの!?」
「まじまじ!
俺どうしよう・・・」
「どうせ後で反映されるっしょ」
何かが起こっているのは明白だった
すると池が綾小路たちに気が付く
「あ!
綾小路ちゃん達はどうだった?」
「どうだったって何が?」
そして池は告げた
「ポイントが振り込まれて・・いないんだよ!
それもみんな!」
「え・・・・?」
女子の綾小路は思わず
男子の綾小路の方を見ると
男子の綾小路は学生証を操作していた
「本当だ・・・・
振り込まれていないみたいだね・・・・」
そう静かにつぶやくとその後ろから
二つののぞき込む影が現れたのだった
「あ、ほんとだ
ポイントが全然増えてない・・・・
振り込まれるのって確か今日だよね?」
「どうなってんだこりゃ?」
「・・・・・・・・・・」
それを見てうっすらと笑みを浮かべるのは
端末を操作している方の綾小路である
「ふふーん・・・・
ひょっとしてこれは・・・・
私の予想が当たってしまったってことかな・・・・?」
するとそこに
扉が開いて茶柱先生が入っていく
「全員座れ!
これより朝のホームルームを始める」
そう言われていそいそと自分の席に
座っていくクラスメイト達であった
するとクラスメイトのうち一人の男子生徒が手をあげる
「あの、一ついいですか?
今朝確認したらポイントが振り込まれていないんですけど
毎月一日に支給されるんじゃなかったんですか?」
「本堂、前に説明をしただろう、その通り
ポイントは毎月一日に振り込まれる
今月も問題なく振り込まれたことは確認されている」
「え、でも・・・・振り込まれてなかったよな?」
本堂という生徒と山内、池らが顔を見合わせていく
「・・・・お前たちは本当に愚かな生徒たちだな」
すると急に怒りか悦びかわからぬ不気味な気配をまとう茶柱
「愚か?
っすか?」
その彼女の言葉に間抜けに聞き返す本堂
「座れ、本堂
二度は言わん」
「さ、佐枝ちゃん先生?」
その声色に思わず腰が引けて座り込んでしまう本堂
「ポイントは振り込まれた
これは間違いない
このクラスだけ忘れられた
という可能性もない
ここまで言ってもわからんか?」
茶柱は意味深に生徒たちに語り掛けていく
「フフフフフフ・・・・
そういうことか・・・・」
綾小路の静かな笑みに
堀北が一瞬気づき、彼の方を見るが
すぐに視線を茶柱の方に向ける
「どうやらクラスの中で気づいたのは
どうやらほんの数人のようだな
まったく嘆かわしいことだ」
突然の出来事にあたりがシンと静かになる
「・・・先生、質問いいですか?
腑に落ちないことがあります」
平田が挙手をする
「振り込まれなかった理由を教えてください
出なければ僕たちは納得ができません」
その問いにゆっくりと答えていく茶柱
「遅刻欠席、合わせて98回
授業中の私語や携帯を触った回数391回
ひと月で随分とやらかしたもんだ
この学校では、クラスの成績がポイントに反映される
その結果お前たちは振り込まれるはずだった10万ポイントすべてを吐き出した
それだけのことだ
入学式の日に直接説明したはずだ
この学校は実力で生徒を測ると
そして今回、お前たちは0という評価を受けた
それだけにすぎない」
茶柱は何の感情も込めていない冷たい声で説明していく
「そんな、僕たちはそんな話、説明を受けた覚えはありません・・・・」
「逆に聞こう
お前らは説明されなければ理解できないのか」
「当たり前です
振り込まれるポイントが減るなんて話は聞かされてなんていませんでした
説明さえしてして貰えていたら、みんな遅刻や私語なんかしなかったはずです」
「ほう、それは不思議な話だな平田
確かに私は振り込まれるポイントが
どのようなルールで決められているかを説明した覚えはない
しかし、お前らは学校に遅刻するな、授業中に私語をするなと
小学校、中学校で教わってこなかったのか?」
「それは・・・・」
「身に覚えがあるだろう
そう、義務教育の九年間
嫌というほど聞かされてきたはずだ
遅刻や私語は悪だと、そのお前らが
いうに事欠いて説明されてなかったから納得できない?
通らないな、その理屈は
当たり前のことを当たり前にこなしていたなら
少なくとも0ポイントになることはなかった
すべてお前たちの自己責任だ」
その言葉に誰も反論できない
当然だ、茶柱の言うことは正論なのだから
「高校一年に上がったばかりのお前らが
何の制約もなく毎月10万も使わせてもらえると本気で思っていたのか?
日本政府が作った優秀な人材教育を目的とするこの学校で?
ありえないだろ、常識で考えて
なぜ疑問を疑問のまま放置しておく?」
あまりの正論に平田は口惜しそうな
表情を見せるがそれでも茶柱先生の方を見る
「では、せめてポイントの増減の詳細を教えてください・・・・
今後の参考にします」
「それはできない相談だ
人事考課、つまり詳細な査定の内容は
この学園の決まりで教えられないことになっている
社会も同じだ、お前たちが会社に出て、企業に入ったとして
詳しい人事の査定内容を教えるか否かは企業が決めることだ
しかし、そうだな・・
私もお前たちのことが憎くて冷たく接しているわけじゃない
あまりに悲惨な状況だ、一つだけいいことを教えてやろう」
薄い笑みを見せる茶柱先生
「これを機会に私語を改め・・仮に今月マイナスを0に
抑えたとしてもポイントは0ということだ
裏を返せば、どれだけ遅刻や欠席をしても関係ないという話
どうだ、覚えていて損はないぞ?」
「っ・・・・」
平田の表情がより一層暗くなっていく
ほとんどの生徒がその意味を理解できていない
いな、理解できてはいるが素直に呑み込めない
だが茶柱はそんな生徒たちの様子を
まるで予想していたかのように見つめる
そこにチャイムが鳴って、ホームルームの時間が終わりを告げる
「どうやら無駄話が過ぎたようだ
大体理解できただろう
それでは本題に移ろう」
手にしていた筒から紙を取り出し
それを広げて黒板に張り付け磁石で止める
「これは・・・各クラスの成績、ということ」
半信半疑ながらも堀北はそう解釈する
Aクラス 940
Bクラス 650
Cクラス 490
Dクラス 0
「ねえ、あれを見てどう思う?」
「ああ・・・・・・きれいにそろいすぎているね・・・・」
不意にそんなやり取りが一つの席から聞こえた
堀北は不意に隣を見たが変わったところもなかったので
意識を再び黒板の方に向けていく
「お前たちはこの一か月間、学校で好き勝手な生活をしてきた
学校側はそれを否定するつもりはない
遅刻も私語も、すべては最後に自分たちにツケが回ってくるだけのこと
ポイントの使用に関してもそうだ
得たものをどう使おうとそれは所有者の自由
その点に関しても制限をかけていなかっただろう」
「だからって、こんなのあんまりっすよ!
これじゃ生活できませんって!」
今まで黙って聞いていた池が叫ぶ
山内にしてはもはや言葉にもなっていない
「よく見ろ馬鹿ども
Dクラス以外は、全クラスがポイントを振り込まれている
それも一か月生活するには十分すぎるほどのポイントがな」
「な、なんでほかのクラスはポイントが残ってんだよ
おかしいよな・・・」
「言っておくが不正は一切していない
この一か月、すべてのクラスが同じルールで採点されている
にもかかわらず、ポイントでこれだけの差が付いた
それが現実だ」
「なぜ・・・・ここまでクラスのポイントに差があるんですか?」
平田もポイントの数字の違和感に
気づいたようで恐る恐る茶柱先生に訪ねていく
「それはお前たちがどうしてDクラスに選ばれたのか」
「どうしてって、そんなの適当なんじゃねえの?」
「そうだよね?
普通、クラス分けってそんなもんだよね?」
各々それぞれ近くの友人と顔を見合わせあっている
「この学校では、優秀な生徒の順にクラス分けされている
優秀であれなあるほどAクラスへ
逆にダメな奴ほどDクラスへ、とな
ま、大手集団塾でもよくある制度だな
つまりここDクラスは落ちこぼれが集まる最後の砦ということだ
つまりお前たちは
最悪の不良品ということだ」
その言葉に堀北の表情がこわばった
「しかし逆に感心したぞ
一か月の間にすべてのポイントを
吐き出したのは歴代のDクラスでもそういない
お前たちが初めてだな」
茶柱がわざとらしく拍手をする
「このポイントが0である限り、僕たちはずっと0のままということですね」
「ああ
このポイントは卒業までずっと継続する
だが安心しろ、寮の部屋はただで使用できるし
食事にも無料のものがある
死にはしない」
それを聞いて喜ぶ生徒は一人もいない
当然だ、今まで贅沢三昧してきて急にそれを我慢しろというのだから
「・・・つまりこれから俺たちはほかの連中に馬鹿にされるってことかよ」
須藤は不機嫌そうに自分の机をける
「ほほう、お前にも対面を気にすることがあるんだな、須藤
だったら頑張って上のクラスに上がれるようにするんだな」
「あ?」
「クラスのポイントは何も毎月振り込まれる
プライベートポイントと連動しているだけじゃない
このポイントの数値がそのままクラスのランクに反映されるということだ」
茶柱の言葉の意味
つまりもしもここで残っているポイントが
500ポイントだったらDクラスからCクラスに昇格していた
大まかに例えるとそうである
「さて、もう一つお前たちに伝えなければならない残念な知らせがある」
そう言って黒板に追加されるように張り出された一枚の紙
そこにはクラスメート全員の名前がずらりと並び
さらにその横には数字が記載されている
「この数字が何か、馬鹿が多いこのクラスの生徒でも理解できるだろう」
そう言って生徒たちを見渡していく
「先日やった小テストの結果だ
そろいもそろって粒ぞろいで
先生はうれしいぞ
中学で一体何を勉強してきたんだ、お前らは?」
そう言って茶柱の見せた表にあるテストは
そのほとんどがおよそ60点前後の点数しか取れていないのが見てわかる
「それにしても運がよかったな
もしもこれが本番だったらこのクラスから
7人の退学者が出ることになっていたぞ」
「た、退学?
どういうことですか?」
「なんだ、説明していなかったか?
この学校では中間テスト、期末テストで一科目でも
赤点を取ればそのものは即退学となることが決まっている
今回のテストで言えば32点未満の生徒は全員が対象となる
この中にいるその該当者はこの赤線より下の七人全員だ」
「「「「「「「は、はあああああああ!?」」」」」」」
その言葉に驚愕の声を上げたのはその該当する7人
「ふっざけんなよ佐枝ちゃん先生!
退学とか冗談じゃねえよ!!」
「私に言われても困る
学校のルールだ、腹をくくれ」
不満が大きいのか阿鼻叫喚の声が教室中に響き渡る
「それからもう一つ!
付け加えておくが国の管理下にある
この学校は高い進学率と就職率を誇っている
それは周知の事実だ
おそらくこのクラスのほとんどの者にも
目標とする進学先、就職先を持っていることだろう」
茶柱先生が最初の部分を強めの口調に行って
騒いでいた七人の生徒たちを黙らせて説明していく
「が・・・・世の中そんなうまい話はない
お前らのような低レベルな人間がどこにでも進学
就職できるほど世の中甘くできているわけがなかろう」
その言葉が教室中に響き渡っていく
「つまり希望の就職、進学先が叶う恩絵を受けるためには
Cクラス以上にあがる必要がある・・・ということですね?」
「それも違うな平田
この学校には将来の望みをかなえてもらいたければ
Aクラスに上がるしか方法はない
それ以外の生徒には、この学校は何一つ保証することはないだろう」
「そ、そんな・・・・聞いてないですよそんな話!
めちゃくちゃだ!」
そういうのは幸村という眼鏡をかけた生徒だが
そんな彼の返答などどこ吹く風に茶柱は話を進めていく
「どうやら浮かれた気分は払しょくされたようだな
お前らの置かれた状況の過酷さを理解できたのなら
このながったるいHRにも意味はあったかもな
中間テストまではあと三週間、まあじっくりと塾考し
退学を回避してくれ
お前らが赤点をとらずに乗り切れる方法はあると確信している
できることなら、実力者にふさわしいふるまいをもって挑んでくれ」
そう言ってちょっと強く扉を閉める茶柱
教室には頭を抱える赤点組の面々がいたのであった
・一・
「ポイントが入らないって、これからどうするんだよ」
「私昨日、残りのポイント全部使っちゃったよぉ・・」
休み時間、生徒たちのテンションは瞬く間に下がっているのがわかる
そんな彼らをじっと見つめる六人の人物
「やれやれ、大騒ぎだね・・・・」
「先のこと考えてないからこうなるんだよ」
「まあ、さすがにこれは想定していなかったが・・・・」
机に座っている一人の少年と
その少年の前あたりにいる二人の少年が言う
「・・・・ふざけんなよ
なんで俺がDクラスなんだよ・・・・」
すると眼鏡をかけた幸村という男子生徒が
その額には汗も薄らと浮かんでいるのがわかる
「っていうか、そもそも私達好きなところに進学できないわけ?
じゃあ、この学校に入った意味ないじゃない!」
やがてその場が荒れ始めんとしていく
「混乱する気持ちはわかるけれど
いったん落ち着こう」
その流れを察した平田が、周り制そうと立ち上がる
「落ち着くってなんだよ
お前も悔しくないのかよ
落ちこぼれだの欠陥品だの言われて!」
「今はそう言われても、力を合わせて見返してやればいいじゃないか」
「見返す?
そもそもこっちはクラス分けの時点で納得いってねーんだよ!」
「気持ちは十分わかってる
でも、今ここで愚痴を吐いたって始まらないだろう?」
「なんだと?」
今にも一触即発の勢いが出てきたが
その二人の間に割って入った人影がいた
「落ち着いてよ二人とも
きっと先生は私たちを奮い立たせるために
あえて厳しめに言ったんじゃないかな?」
それは櫛田だった
平田に詰め寄った幸村も思わず半歩下がった
「それにさ、まだ入学して一か月だよ?
平田君の言うようにこれからみんなで頑張ればいいじゃない」
「それは・・・・確かに言っていることは間違いではないが・・・・」
幸村の怒りはもう半分近く雲散しているのがわかる
「そ、そうだよな
焦ること、ないよな?
幸村も平田も頭冷やせって」
「・・・・悪い、冷静じゃなかった」
「いいよ
僕だってもう少し言葉を選ぶべきだったんだ」
どうやら櫛田の存在がうまい具合のカンファレンスになったようだ
「やるじゃないかあの櫛田って子・・・・
あの場を見事に抑えてしまうとはね・・・・」
「でもだからって現状が変わるわけでもないし・・・・
でも問題はポイントがどのように変動されていくのかってところだよね・・・・」
「この先生活を改めてもポイントが増えることも減ることもない、か・・・・
普通に聞いたら、みんな余計に生活態度を改めないと思うが・・・・」
「ったく、随分と厄介な問題だな」
「櫛田ちゃんがどうにかこの場を収めてくれたけど
やっぱり何らかの対策は練っていかないとだめだよ・・・・」
「・・・・・・・・・・」
すると六人のもとに堀北がのぞき込むように入ってきた
「何をしているの?」
「うん?
ポイントの詳細を割り出せないかと考えててね」
そこにいた六人の人物は堀北が向いた時には
すでにおらず残っていたのは一人の少年、綾小路であった
「現段階で詳細を割り出すのは難しいんじゃない?
それに、あなたがそれを調べたところで解決するとは思えない
このクラスは単純に遅刻や私語をしすぎたのよ」
「うーん確かにそうかもだけど・・・・
でもだからってそれで終わりっていうこともないと思うけどね」
その口調はどこか幼さがあるが
同時になにか冷静というか思いやりのない声色が見て取れる
すると
「堀北ちゃんも納得してないんだ
自分がDクラスに入れられたこと」
「・・・・なんでそんなことを聞くの?」
「だってさっきの話の時、堀北ちゃん
すっごく怖い顔してたもん、さっきの幸村君って男子と同じようなね」
「そうだったらなに?
むしろこの状況に納得している人の方は少ないでしょ?
入学する前に説明があったならともかく
この段階で言われても納得なんてできない」
堀北はそう言うと少年は急に彼女の方に顔を近づける
その雰囲気はどこか変わっているのは堀北も感じていた
「多分茶柱先生が説明したって状況は変わらなかったと思うぞ・・・・?
お前だってわかってるはずだ
相手と仲良くするために自己紹介したり
お互いのことを理解してもそれでお互いが
仲良くなれるとは限らない物なんだってさ・・・・」
「・・・・っ!」
不気味な笑みを浮かべて堀北の顔に近づく綾小路
「理屈では同じさ・・・・
仮に最初っから説明したところで
君たちがそれを素直に受けいれてくれるとは思い難い・・・・
それどころか、自分たちそれぞれの都合のいいように解釈して
今までのようにそれぞれがそれぞれの思うような生活を送っていただろうさ・・・・
つまり説明していたとしてもいなかったとしても
おそらく結果は違っていただろうが状況は変わらなかったろうさ・・・・
頭のいい君ならどういうことかわかるだろう・・・・?」
「・・・・確かに言っていることはそうかもしれない・・・
仮に説明をしても、その話の真偽を確かめるすべはないから・・・」
堀北がそういうと綾小路はゆっくりと顔を離していく
「だったらこんなところで現実から目を背けている暇はない
今やるべきことはこの現実にどう向き合い、なおかつどうするのか・・・・
少なくともそういうところだろうさ・・・・」
そう言って自分の席に座り直す綾小路
「しっかし学校もとんだ甘い餌をつるしてくれたもんだね・・・・
まあ私自身はそんなにポイントを使ったこともないしね・・・・」
「そういえば綾小路君は先月どのくらいポイントを使ったの?」
「そうだね、大体二万くらいか
ほかの奴と違って余計なものに使ってないからね・・・・」
そう言ってポイントをほぼ失ってしまった池や山内の方を見る
「気の毒だと思う反面、自業自得ともいえるね・・・・」
不意にそんな声が隣に聞こえて
堀北は綾小路の方を見たが特に変わったこともなかったため目をそらす
「みんな、授業が始める前に少し真剣に聞いてほしい」
まだ騒然とする中で平田は教壇に立ち生徒の注目を集める
「今月僕たちはポイントをもらえなかった
これは、今後の学校生活においても非常に大きいく付きまとう問題だ
まさか卒業までに0ポイントで過ごすわけにもいかないだろう?」
「そんなの絶対いや!」
悲鳴のように叫ぶ女子生徒に
平田は優しく頷いて同調する
「もちろんだよ
だからこそ、来月は必ずポイントを獲得しなければならない
そしてそのためにはクラス全体で協力しなきゃならない
遅刻や授業中の私語はやめるようにお互いに注意するんだ
もちろん、携帯を触るのも禁止だね」
「は?
なんでそんなことお前に指示されなきゃならねえんだ
ポイントが増えるならともかく、変わらないなら意味ないだろ」
「でも、遅刻や私語を続ける限り僕たちのポイントは増えない
0から下がらないだけで、マイナス要素であることには間違いないんだから」
「納得いかねーな
真面目に授業受けてもポイントが増えないなんてよ」
一人不満を漏らしているのは、須藤だった
「学校側からすれば、遅刻や私語をしないのは当たり前の話ってことなのかな?」
「うん、櫛田さんの言う通りだと思う
出てて当たり前のことなんだよ」
「それはお前らの勝手な解釈だろ
それにポイントの増やし方がわかんねーんじゃやるだけ無駄だろ
増やし方を見つけてから言えよ」
「僕は、何も須藤君が憎くて言っているわけじゃないんだ
不快にさせたなら謝りたい」
不満を漏らす須藤に対しても平田は丁寧に頭を下げる
「だけど須藤君、いやみんなの協力がなければポイントが得ることができないのは事実だ」
「・・・お前が何やろうと勝手だけどよ
俺を巻き込むんじゃねえよ!」
そう言って教室を出ていってしまう須藤
「須藤君ほんっとに空気読めないよね
遅刻だって一番多いしさ
須藤君がいなかったら少しぐらいポイント残ってたんじゃない」
「だよね・・もう最悪
なんであんなのと同じクラスに」
そんな声が聞こえ始めていくと
平田は教壇を降りて、綾小路と堀北のもとにやってきた
「堀北さん、それから綾小路君もいいかな
放課後、ポイントをこれ以上減らさないためにも
どうしていくべきか話し合いたいんだ
是非二人にも協力してほしいんだ」
「なんでそれを俺たちに?」
綾小路の雰囲気がまたも変わっていく
「もちろん全員に声をかけるつもりだ
だけど一度に全員に声をかけても
きっと半数以上は話半分に聞いて真剣に耳を傾けてはくれないと思うんだ」
平田がそう教えていくと
「もちろん、あたしも協力す・・・・」
「ごめんなさい、話し合いは得意じゃないの」
「無理に発言をしなくても構わない
思いつくことがあったらで構わないし
その場にいてくれるだけても、十分だから」
「申し訳ないけれど
私は意味のないことに付き合うつもりはないから」
「これは、僕たちDクラスにとっても、最初の試験だと思う
だから・・・・」
「断ったはずよ
私は参加しない」
強くも冷静な一言で
平田の立場を斟酌しつつも堀北は拒絶を示す
「そ、そうか
ごめん・・・・もし気が変わったら、参加してほしい」
残念そうに引き下がる平田を、もう堀北は見ていなかった
「綾小路君は、どうかな?」
すると綾小路の傍にいた女子の綾小路は参加を表明しようとしたが
机に座っていた綾小路がその服をグイっと引き寄せて有無を言わせずに答える
「君の気持ちを尊重したいが・・・・
残念だが今のところ君のこの提案が
完全にいい手だとは残念ながら思えない・・・・
参加自体はパスだね・・・・」
「・・・そうか、でも協力したいという意思があるだけでも十分だよ
気が向いたらいつでも言ってね」
平田は特にとよく言うことなくあっさり引き下がった
「私は平田君に協力するつもりはないの?」
「平田のやり方は残念だが
答えのわからない問題を答えを見ずにやるのと一緒だ・・・・
ましてや平田の方法はただのその場しのぎでしかない・・・・
私はまずは一同を納得させるための答えを探してみるほかあるまい・・・・」
「僕も私と大体同じかな
現に納得していない生徒は須藤君以外にもいるみたいだし・・・・」
「ああ、なるほど・・・・」
そう言って一同は一斉に堀北の方に目線をやる
「平田も偉いよな
ああやって行動を起こすんだから
落ち込んでもおかしくないのに」
「それは見方一つね
安易に話し合いをもって解決する問題なら苦労しないわ
頭の悪い生徒が束になって話し合いをしても
むしろ泥沼にはまって余計に混乱するだけよ
それに私にはこの今の状況を素直に受け入れることなんてできない」
「ああ?
それはどういうことだ?」
堀北はその問いに答えることなく、それ以降黙り込んでしまうのであった
・・二・・
放課後
朝の告知通り平田は教壇に立ち
黒板を使って対策会議の準備を始めていた
平田の探求心のすごさがうかがえる参加率だ
だが残念ながらその場に須藤や堀北をはじめ
数人の男女が参加していなかったのが見える
「あたしはここに残るのか?」
「うん、平田君がどう出るのかを
聞いておかないといけないって思って・・・・」
「それじゃあ僕も行きますか・・・・
あまりここにとどまっているとかえっで目立ってしまうしね」
そう言って綾小路のうち女子の綾小路以外がその場から出ようとするが
「綾小路ぃ~~~~・・・」
そこにぬっと出てきたのは何やら今にも死にそうな顔をした山内だった
「何かおごってくれ~、たのむぅ~」
そんな彼に向かってパアンという景気のいい音が響く
「人にたかろうとするんじゃねえ」
「頼むよお、だ、だったらこのゲーム機
20000ポイントで売ってやるから」
「いらね、ぶっちゃけまったくほしくない」
「そこを頼む!
今にもポイントが何もなくって死にそうなんだよ~」
「死ぬことはまあないだろうが・・・・
とにかく、ない袖は振らん、以上」
こうして綾小路は祈願する山内を
無視して教室を出ていこうとするのだが
「ええっと、いいの山内君のこと?
なんだか大変そうだよ?」
「・・・・・・・・・・」
その前に今度は櫛田が現れて
綾小路はげんなりした表情を見せる
「お前こそ人の心配してていいのか?
女ってのはいろいろと金がかかるもんだって
軽井沢だのそういった女子は言ってたぜ?」
「うーん、まあ、今のところは、かな
でもそれでも半分くらいは使っちゃったかな
この一か月自由に使いすぎてた来たから
ちょっと我慢するのは大変だね
綾小路君の方は大丈夫なの?」
「・・・・・・全部とまではいかねえが
俺自体はほとんど使ってねえよ
ポイント払ってまで欲しいと思うものもねえし
まあそういうお前の方は交友関係のこともあるだろうが・・・・」
「そっか・・・
つまり綾小路君は友達がいないから
そんなにポイントを使うことはないと・・・」
櫛田がそんなことを言うと
パアンというまたも小気味よい音が教室に響き
額を本気で痛そうに抑えている櫛田と
人指し指をピンっと伸ばしている綾小路がいた
「事実だけれどはっきり言われていい気分じゃねえな」
「いたたた・・・
ひどいよ綾小路君、女の子を殴るなんて」
「お前の額をはじいてやっただけだろうが
誤解を招くような言い方はやめろ」
痛そうに額を抑えて
綾小路を恨めしそうに見つめる櫛田
はたから見るとかわいらしいが
綾小路自身はそれを見てややあきれ気味だ
「え、えっと櫛田さん、ちょっといいかな?」
「軽井沢さん、どうしたの?」
「実はあたしさ、ポイント使いすぎちゃってマジ金欠なんだよね
今、クラスの女子からも少しずつポイント貸してもらってるんだけれど
櫛田さんにも助けてもらいたいって思って、ほんの2000ポイントでいいの
だからお願い!」
頼みこむような態度とは思えない態度でポイントを催促する軽井沢
「うん、いいよ」
櫛田は少しも嫌がるそぶりを見せず
軽井沢の援助を快く承諾するのであった
「さんきゅ~
やっぱ持つべきものは友達だね
そんじゃ、よろしく~
あ、井の頭さーん・・」
軽井沢はそう言って
井の頭という女子生徒のもとに行く
「あれ絶対に戻ってこないパターンだろ・・・・」
「困ってる友達がいたら放っておけないし
軽井沢さんも交友関係が広いから
ポイントなしじゃ大変だと思うもん」
「だからって10万をほぼ使い切るっていうのは問題あるだろ・・・・」
「あ、でもポイントってどうやって渡せばいいのかな?」
「軽井沢から番号の書いた紙、もらっただろ?
携帯でそれを打ち込めば譲渡できるはずだ」
「学校側はちゃんと、生徒たちのこと配慮してるんだね
軽井沢さんみたいに困った人を助けられるように
こんなシステムまで用意しているんだから」
「助け、か・・・・
そんな単純な言葉で済ませられるとは思えんがな・・・・」
櫛田の言葉に綾小路は何かを考えるようなそぶりを見せる
するとそこに
『一年Dクラス、綾小路 清隆君
一年Dクラスの綾小路 清隆君
至急、職員室まで来てください
繰り返します・・・・』
そんな放送が盛大に流れていく
「先生からの呼び出しだね」
「ったくお前といい堀北といい、この学校は
どうしてこうも面倒ごとばっか持ってくるんだか・・・・」
そう言って職員室にまで向かっていく綾小路だった
・1・
「お前らも来たのかよ・・・・」
「そりゃまあ綾小路 清隆って言われたらね・・・・」
「まあいざってときはいつもの手を使えばいいんだよ」
「しっかし茶柱先生は何の用でおいらたちを呼び出したのやら」
「何にも悪いことはしてないつもりなんだけどな・・・・」
「・・・・・・・・・・」
そこに歩いているのは
五人の少年と一人の少女の六人
職員室の前まで来て
そこでコンコンと扉をたたく
「失礼します!
茶柱先生に呼ばれてきましたけど・・・・」
周りを見渡すがそこに茶柱の姿はいない
「あれー?
いない・・・・」
そんな綾小路のもとに一人の女性が近づいていく
「ええっとそこの君
佐枝ちゃんに何か用事?」
「用事っていうか、むしろ僕が呼ばれたっていうか・・・・」
セミロングで軽くウェーブのかかった髪型の今どきの大人って感じの人だ
「どうやらちょっと席を離してるみたい
中に入って待ってたら?」
「じゃあ、そうさせてもらいまーす」
そう言ってその女性にその待ってもらうために
先生たちの邪魔にならない場所に案内してもらう
「私は星之宮 知恵っていうの
Bクラスの担任を務めてて
佐枝ちゃんとは高校時からの友達なんだ」
「Bクラス・・・・・・ですか・・・・?」
ぶっちゃけどうでもいい情報なので
とぼけたようにつぶやいていくのだった
「ねえねえ、佐枝ちゃんにはどういう理由で呼び出されたの?」
「僕にもわかんないんだー
だから急に呼び出されてちょっと混乱してるの」
「そうなんだ
理由も告げずに呼び出したの?
そういえばまだ君の名前を聞いてなかったよね?
君の名前は?」
じろじろと綾小路を観察するように見つめる星之宮先生
「綾小路です、綾小路 清隆」
「綾小路君かぁ
なんて言うか、かなりかっこいいじゃない~
モテるでしょ~」
そう言って体をくねくねさせながら迫ってくる星之宮先生
それに対して特に抵抗するわけでもないがちょっと困惑気味になる綾小路
「ねえねえ、もう彼女とかできた?」
「えーっと・・・・・・そういうの僕、よくわかんないから」
あからさまに嫌な顔をしてみるが
星之宮先生はそれすらも楽しそうに迫っていく
「そうなんだー?
私がもしおんなじクラスにいたら
絶対放っておかないのにー
ひょっとしてうぶってわけでもないでしょー?」
あんまりにもしぶといので少し無理やりにでも引き離そうかと思ったその時
「何やってるんだ、星之宮」
そこに現れた茶柱先生が手にしていたクリップボードでスパン、と
響きの良い音をさせる、頭をしばかれていたそうに頭を押さえてうずくまる星之宮先生
「いったぁ
何するの!」
「うちの生徒に絡んでるからだろ」
「佐枝ちゃんに会いに来たっていうから、その間相手してただけだってばぁ」
「放っておけばいいだろ
さてと、待たせたな綾小路
ここじゃなんだ、生活指導室まで来てもらおうか」
「ったく、なんで呼び出されたのか分からずにここに来させられるわ
ここに来たら変な女に絡まれるわ、散々だぜ全く・・・・それで?
おいらは何かしたのか?
これでも一応学校に目を付けられるようなことはしてないぜ」
「そういうのは良い、とにかくついてこい」
なんだよと思いながらも
茶柱先生についていく綾小路
すると
「あのー茶柱せんせー?
星之宮せんせーも付いてきてるけど・・・・」
茶柱先生はそう言うと綾小路の後ろにいた少年の横に
星之宮先生がおり、それを見て鬼の形相で彼女を睨みつける
「お前はついてくるな」
「そんな冷たいこと言わないでよ~
聞いても減るものじゃないでしょ?
だって佐枝ちゃんって個別指導とか絶対しないタイプじゃない?
なのに、新入生の綾小路君を
いきなり指導室に呼び出すなんて・・・・何か狙いがあるのかなぁ?って」
そのやり取りを一つの視線がじっと見つめているのがわかった
「もしかして佐枝ちゃん、下克上とか狙ってるんじゃないの?」
その言葉に誰かがうっすらと笑みを浮かべるのがわかった
「馬鹿を言うな
そんなこと無理に決まっているだろ」
「ふふっ、確かに
佐枝ちゃんにはそんなこと無理だよね~」
含みのあるセリフをつぶやいて、今だにその後をついていく星之宮先生
「ついてくるな!
これはDクラスの問題だ」
「え?
一緒に指導室だけど?
ダメなの?
ほら、私もアドバイスするし~」
するとそこに
「失礼します星之宮先生
生徒会の件でお話があります」
薄いピンク色の髪をした美人の女子生徒が星之宮先生に話しかけてきた
「ほら、お前にも客だ
さっさと行け!」
とクリップボードで星之宮先生のお尻を叩く
「もう~しょ~がないな~
またね、綾小路君っ
じゃあこっちで話をしましょうか、一ノ瀬さん」
そう言って一ノ瀬と呼ばれた女子生徒とともに
自分の机のもとに向かっていくのであった
「あれが一ノ瀬さんか・・・・
本年度の新入生で主席で入学したっていう」
「あたしってそういうことも知ってるんだな」
そんなことを言っていると茶柱先生がクリップボードで
こっちにこいと言わんばかりについついと突っついてくる
「それで・・・・・・なんなんだ
俺を呼んだ理由っていうのは」
「うむ、それなんだが・・・・話をする前にちょっとこっちに来てくれ」
何やら生徒指導室にある丸時計をちらちらと確認しつつ
指導室の奥にある扉を開けてそこに綾小路をいざなっていく
コンロややかんなどが置かれていることからそこは給湯室のようだ
「おいおいおい、俺にお茶くみでもしろってのか?」
綾小路は部屋の様子を見て不満そうに言う
「余計なことはしなくていい
まだってここに入っていろ
いいか、私が出てきてもいいというまでここで物音を立てずに静かにしているんだ
破ったら退学にする」
「なんて無茶苦茶な
そもそもあんたは何がしたくって・・・・」
そう言い切る前に茶柱に無理やり部屋に入れられて扉を閉められた
「んだよったく・・・・」
「まあ待て俺・・・・
ここは言うとおりにしてみようじゃないか・・・・」
そこにはいつのまにか六人の人物が入っていた
話をしている二人の少年のほかに三人の少年に一人の少女
しばらく待っていると指導室の扉が開く音が響く
「よく来た、入れ
それで、私に話とはなんだ?
堀北」
どうやら入ってきたのは堀北のようだ
「率直にお聞きします
なぜ私が、Dクラスに配属されたのでしょうか」
「本当に率直だな」
「先生は本日、クラスは優秀な人間から順にAクラスに選ばれたと仰いました
そしてDクラスは学校の落ちこぼれが集まる最後の砦だと」
「私が言ったことは事実だ
どうやらお前は自分が優秀な人間だと思っているようだな」
そんな会話をしていく二人
「堀北の奴も呼ばれていたのか・・・・?
いや、あの様子だと堀北の方が話があって
茶柱に話の場を設けるためにここに呼ばれたって感じか・・・・」
「ふふーん・・・・
ひょっとして茶柱先生の狙いは・・・・」
不気味な表情を浮かべた方の少年は
不敵な笑みを浮かべて聞く耳を立てている
「入学試験の問題は殆ど解けたと自負していますし
面接でも大きなミスをした記憶はありません
少なくともDクラスになるとは思えないんです」
堀北が不満の声を上げていく
「入試問題は殆ど解けた、か
本来なら入試問題の結果など個人に見せないが
お前には特別に見せてやろう
そう、偶然ここにお前の答案用紙がある」
「ずいぶんと用意周到ですね
・・・・まあこのような場を設けるくらいですから
私を納得させるために用意してきたと言っているようです」
「これでも生徒の性格はある程度理解しているつもりなんでな
堀北 鈴音
お前の入試結果はお前自身の見立て通り
今年の一年の中では同率で3位の成績を収めている
一位二位とも僅差
十分すぎる出来だな
面接でも、確かに特別注視される問題点は見つかっていない
むしろ高評価だったと思われる」
「ありがとうございます・・・・ではなぜ?」
「その前に、お前はどうしてDクラスであることが不服なんだ?」
「正当に評価されていない状況を喜ぶものなどいません
ましてやこの学校はクラスの差によって将来が大きく左右されます
当然のことです」
「正当な評価?
おいおい、お前は随分と自己評価が高いんだな」
茶柱先生は堀北に向かって失笑に近い笑みを向ける
「確かにお前の学力は優れている、それは認めよう
確かにお前は頭がいい
だけどな、学力に優れたものが優秀なクラスに入れると誰が決めた?
そんなこと我々は一度も言っていない」
「それは・・・・世の中の常識の話をしているんです」
「常識?
その常識とやらが今のダメな日本を作ったんじゃないのか?
ただテストの点数だけで人間を評価し、優劣を決めていた
その結果無能な人間が上で幅を利かせて本当に優秀な人間を蹴落とそうと躍起になる
そして、結局最後に行きつくのは世襲制だ」
茶柱先生のそんな説明を聞いていて六人は頭を抱える
「確かに勉強ができることは一つのステータスだ
それ自体を否定するつもりはない
しかし、この学校は本当の意味で優秀な人間を生み出すための学校だ
それだけで上のクラスに配属されると思ったら大間違いだ
この学校に入学した者には、それを一番最初に説明しているはずだがな
それにもし仮に学力だけで優劣を決めているのなら
須藤たちのような奴らが入学できると思うのか?」
「っ・・・」
黙って会話を聞いている六人
「そして、正当に評価されていない状況を喜ぶ者はいない?
そういった決めつけた発言をするのは早計というものだ
Aクラスともなれば
学校から受けるプレッシャーは強く下のクラスからの妬みも強い
その日々思いプレッシャーの中で競争させられるのは想像以上に大変なものだ
それに、中には正当な評価を受けなかったことを良しとする変わり者だっている」
「冗談でしょう?
そのような人間、私には理解できません」
「そうかな?
低いレベルのクラスに割り当てられて
喜んでいる変わり者がもしもDクラスにいたとしたら?」
その言葉に六人のうちあるものはやや不満げに
あるものは静かにため息をするような仕草を見せる
「説明になっていません
私がDクラスに配属されたかどうかの
事実かどうか採点基準が間違っていないかどうか
再度確認をお願いいたします」
「残念だがお前がDクラスに配属されたことはこちらのミスではない
お前はDクラスになるべくしてなった
言えることはそれだけだ」
「・・・・そうですか
あらためて学校側に聞くことにします」
それを聞いて六人のうち何人かが
あきれを交えたため息を静かについた
「上に掛け合っても結果は同じだ
それに悲観する必要もない
朝も話したが、出来不出来次第でクラスは上下する
卒業までにAクラスへと上がれる可能性は残されている」
「簡単な道のりとは思えません
未熟なものが集まるDクラスがどうやってAクラスよりも
優れたポイントをとれるというのですか
どう考えても不可能じゃないですか」
それを聞いた綾小路はもっともだとつぶやく
「それは私の知ったことじゃない
その無謀な道のりを目指すか目指さないかは個人の自由だ
それとも堀北、Aクラスに上がらなければならない特別な理由でもあるのか?」
「それは・・・・今日のところは、これで失礼します
ですが私が納得していないことだけは覚えておいてください」
「わかった、覚えておこう」
そう言って椅子を引く音が響く
「ああそうだった
もう一人指導室に呼んでいたんだったな
せっかくだしお前に合わせておこう、お前にも関係のある人物だ」
「関係のある人物・・・?
まさか・・・・兄さ・・・」
「出てこい綾小路」
茶柱先生がそう言って扉に向かって言うと
そこから一人の少年が現れるのだった
「待たせたn・・・・ぶっ!」
「待たせすぎだ!
こっちとらずっと息ひそめて待ってんだぞ、ったく」
茶柱先生の口元をぎゅっと握って不満を口にする
「よさないか俺・・・・
私としてはおかげで面白い話が聞けたよ・・・・」
「待ってる間お茶、ごちそうになったしね」
さらにその奥から二人の少年が出てきた
「あ、綾小路君・・・・聞いていたの今の話?」
「ああ、さっきのね・・・・
ここに待ってるのも退屈だったから
君のことを脅かしてあげようと思ったんだけど・・・・
なんだかおもしろい話をしているからさ
面白そうな話には黙って聞く耳を持つことにしたんだよ・・・・」
「まったく、悪趣味だな
私は給湯室で待っていろとは言ったが
だからと言って盗み聞きは感心しない」
「何を白々しぃ・・・・
あえて聞かせるためにセッティングしたくせに」
堀北自身も仕組まれていることに気づき、ご立腹の様子だ
「・・・・先生、なぜこのような事を?」
茶柱先生はそう言うも茶柱はさっさと綾小路に意識を向ける
「お前たちが上のクラスに上がるために
必要なことだと判断したからだ
さて、綾小路、お前たちを指導室に呼んだわけを話そう」
話題を切り出す茶柱先生
「私はこれで失礼します・・・」
「待て堀北
最後まで聞いておいた方がお前のためにもなる
それがAクラスに上がるためのヒントになるかもしれないぞ」
出ていこうとする堀北だったが
茶柱がそう言い放ち、椅子に座りなおす
「手短にお願いいたします」
茶柱先生はニヤニヤと笑いながら手に持っていたクリップボードに視線をやる
「綾小路、お前はなかなかにユニークな奴だ」
「ユニーク?
いきなりこんなとこに呼び出して
散々待たせて揚句に挙げた言葉がそれかよ」
「まあ待て俺・・・・
ここは私に任せてもらおう・・・・
それで・・・・?
私に対して何を言いたいのかな・・・・?」
「まあ別に大したことではないが・・・」
クリップボードから取り出したのは
堀北のと同じ、入試のテストの結果だ
「入試の結果をもとに、個別の指導方法を思案していたんだが
お前のテストの結果を見て興味深いことに気が付いたんだ
最初は分からなかったぞ、こうして見比べてみなければ私も気が付かなかったよ」
そう、茶柱の出したその答案用紙は綾小路のものだ
「堀北、ここにあるのはこいつの入試の結果だ
ついでに今回の小テストの結果、何か気づかないか?」
「何と言われても、見ても別にそれほどすごいとは・・・・っ!」
堀北は何かに気が付いたようだ
「この点数、数字が規則的に変動してる・・・」
「そうだ、国語33点、数学44点、英語55点、社会66点、理科77点
加えて小テストの方は国語を中心に数字を変動させている
さらに驚きなのはその数字は見事に赤点のボーダーラインを下回っていない
まるでこの点数なら赤点になることはない、そう予測していたかのようにな」
堀北はそれを見て思わず綾小路の方を見る
「へえ・・・・
どうやら先生は思ってた以上に勘が鋭い人のようだ・・・・」
「ほう?
その口ぶりはどうやら図星ととらえていいな?
テストの点数を意図的に操作したことを」
「フフフフフフ・・・・
先生は少し私のことを買いかぶりすぎですよ・・・・
私が点数操作をしたとして
これが赤点にならないのかどうかなんて保証はない・・・・
遊びにしてもぎりぎりの賭けになるじゃないか・・・・」
互いににらみ合う茶柱先生と綾小路
「遊びか、まったくお前は実に憎たらしい奴だな
確信に至る証拠ならばいくつかある
まずはこの数学の問い5、この問題の正解率は学年では3%だった
が、お前は間の複雑な照明式も含めて見事正解にたどり着いている
一方でこの問い10は正解率76%、赤点組でも正解した者は多かったというのに」
「なるほど・・・・
理屈としては筋は通っているけど・・・・
残念ながら私が意図的に点数操作したという証明にはならないし
なぜ私がそんなことをしたのかという答えにもならないでしょう・・・・」
「ほほう、随分と自分の意見に自信があるのだな
だがこのような遊びを続けていても将来苦労するだけだぞ?」
「あいにく私は、将来には興味がない・・・・
私がここに入学したのは将来のこととは別の理由さ・・・・」
綾小路はそう言って背もたれに背中を預けていく
だが茶柱は今度は堀北の方に視線をやる、どうだ?と言わんばかりに
「あなたは・・・・遊びでこんなわけのわからないことを?」
「君には関係のないことだよ堀北・・・・
私は天才でも君みたいに秀才でもない・・・・」
「天才でも秀才でもないか
だがこれほどに見事な構築は
並みの高校生にできるものでもあるまい」
茶柱はさらに堀北をあおるように言うが
その茶柱の口元にまたも手が当てられる
「とにかく
俺がこの点数に
なったのはただの偶然だ!
余計な詮索はやめろ
俺は詮索されるのが嫌いなんだ」
「っ!
ならなぜお前はこの学園に入った?
高円寺のように自分はAでもDでも
大した問題ではないというのなら、その理由とはなんだ?」
意味深に告げる茶柱先生
またも突っかかろうとする綾小路だが
それを座っている綾小路がいさめていく
「あなたこそどうしてそこまでしてそんなことにこだわるのかな・・・・?
あなたがもしもその理由を話してくれる
というのなら答えてあげても構いませんよ・・・・」
「ならば聞かせてやろうか?」
そう言って互いににらみ合いその場が
凍り付くような雰囲気になっていくのがわかる
「フフフフフフ・・・・
どうやらあなたという人は
随分と人をいらだたせるのが好きなようだ・・・・
しかし、まあそれを今ここで口論しても仕方のないこと・・・・
それはまたの機会に話しておくとしましょう・・・・」
「賢明だな・・」
「まあ別に、俺は俺の望む平穏が送れるのならば
その時はその時で俺の好きにさせてもらうとしよう・・・・」
「まあこの学校はあくまで生徒の意思を尊重する
今回はここまでにしておくとしよう、
これからの学生生活を満喫してくれ」
そう言って立ち上がる茶柱と綾小路
「ねえ、茶柱先生・・・・」
扉から出ていきかけたその際に綾小路は茶柱先生に問いかける
「ひょっとしてさ・・・・
今いるDクラスの中で
一番上に上がりたがってるのはさ・・・・
先生なんじゃない・・・・?」
「っ!」
その言葉に茶柱は不意に体を震わせたが
特にその問いに答えることもなくただ
「悪いがこれから職員会議だ
積もる話はまた次の機会だ」
とうやむやにするように答える茶柱先生であった
「ねえ私
今のってどういうこと?」
「さあね、フフフフフフ・・・・」
少年の問いに対しても
茶柱のようにうやむやにして答える少年だった
「待って綾小路君!」
だがそんな際に堀北が綾小路のもとにやってくる
「さっきの点数・・・・本当に偶然なの?」
「はあ~、堀北ちゃん
その話だったらもう終わったはずだよ」
「でも・・・・綾小路君にはどこかわからないところがあるし
さっきの会話の内容からAに上がることに興味はなさそうだし・・・・」
「堀北ちゃんこそAクラスに並々ならぬ思いがあるって感じだけど?」
「・・・・いけない?
進学や就職を有利にするために頑張ろうとすることが」
「僕にはそれが一番の理由にはならないみたいだけど?」
「・・・・気に入らないわねその言い方
なんだかまるで私の考えを読み透かしているようなその物言い
じゃあ聞くけれど、私がAクラスであることにこだわる理由は?」
堀北は綾小路の隣に立って問いかけていく
「認められたい人がいるんじゃない?
そしてその人は今もこの学校にいる、そういったところかな?」
「・・・・・・・」
「さっき茶柱先生が僕を読んだ際に不意につぶやいた、兄さん・・・・
つまりこの学校には君のお兄ちゃんがいる、そしてそのお兄ちゃんって
今の生徒会長さん、っていうところかな?」
綾小路のその推測に思わず息をのんでしまう堀北
「だって僕だってあの時、生徒会長の演説の場にいたんだよ?
あの時の堀北ちゃんの反応からの大体の推測だけれど・・・・
堀北ちゃんは本当は、お兄さんに認められたいんじゃない?」
「・・・・貴方・・・本当に何者なの・・・・・・・?」
堀北のそんな問いに対しても
綾小路は気にすることなく言葉を続ける
「ふふーん・・・・
やっぱり図星だったんだね、その反応・・・・」
すると綾小路の雰囲気がまたも変わった
「さて、それでこれから堀北はどうするのかな?」
「まずは学校側の真意を確かめる
私がなぜDクラスに配属されたのか
もし、茶柱先生の言うように私がDだと判断されたのだとしたら・・・
その時はAを目指す
いいえ、必ずAに上がって見せる」
「しかしそれは簡単な道のりじゃない・・・・
何しろうちのクラスは問題児だらけだからね・・・・
遅刻、さぼり癖、授業中の私語、テストの点数・・・・
それらの課題をクリアして、やっとプラスマイナスゼロだ」
「・・・・わかってるわよ」
綾小路自身も何も考えていないわけではない
確かにこのまま学校のルールを守ればポイントが減ることはある程度防げる
だが問題はどのようにすればポイントがプラスされるのかということ
もしもポイントが変動しないものならば
Aクラスがわずかにポイントが減ることはない
何かポイントを増やす効率的な何かがあるなら
それはおそらくほかのクラスにも適用されるものだろう
「私はこの学校がこのまま静観し続けるとは思えないわ
ずっとこのままだっていうなら競争の意味はないもの」
「確かにそうだね・・・・」
堀北の考えはある程度理解できる
学校側が入学一か月でAクラスの逃げ切りを許す、ということはないだろう
おそらくどこかでポイントが増減する機会が訪れると堀北は確信しているのだ
「もしもこの状況をどうにかできる方法があれば
どうにかしてみたいと思わない?」
「思わない、その方法が見つからなければ何をやっても意味はないからね・・・・」
「そうね・・・・でもだからって手をこまねいているつもりもない」
堀北はなおも詰め寄っていく
「そもそもこれは個人でどうにかできる問題じゃない・・・・
須藤が言っていただろ
自分か改善してもクラス全体がマイナスならどうにもならないと・・・・」
「違うわね
正しくは、個人ではどうにもならないけれど
個々が解決しなければならない、非常に厄介な問題よ
一人一人がやらなければ、スタートラインにも立てないもの」
「だが決して楽な道じゃない・・・・」
「そうね、解決する問題は三つ
遅刻と私語
そして中間テストで全員が赤点をとらないこと・・・・」
「確かにそうだが、やはり目下の問題は中間テストだね・・・・」
綾小路ははあー、とため息をつく
小テストでやって分かったことだが
いくつかはどう考えても高校生が解けるレベルの問題ではないが
大半は難しいと言えるものではない
だがその問題でも赤点をとる生徒が七人もいる、頭を抱えるのも必然だろう
「そこで・・・・綾小路君に協力をお願いしたいの」
「協力?」
堀北の言葉に反応したのは女子の綾小路であった
「別に協力ぐらいするのは構わないけれど
どうしてそういう話になるの?」
「断りたいの?」
「逆に聞くけど、どうして貴方はあたしが協力すると思うの?」
「喜んで協力するとまで思ってなかった
けれどまさか断られそうになるなんてね
でももしも本気で断ろうというのなら、しようがないわね・・・」
堀北はそこまで言うと綾小路に手刀を繰り出してきた
「口で言ってもわからないなら体で覚えてもらうってわけ?
それはさすがに無理があるでしょう・・・・」
「やっぱりあなたって何か習っているでしょ」
「だったらどうだっていう話だけれどね!」
「別に無理やり従わせるつもりなんてないわ
私はただ、どうしたらあなたを納得させてなおかつ協力してくれるのか
まずは一度シンプルな方法で行かせてもらおうと思っただけよ!」
手刀を受け止められて互いに距離をとっていく堀北と綾小路
「まあまてあたし、ここは一度乗ってみるのもいいだろうさ・・・・」
すると女子の綾小路の後ろから現れたのは
ぬっと不気味な表情を浮かべた少年の綾小路が出た
「あなたは、私に乗るってどういうこと?」
「だって君の口ぶりから推測するにさ・・・・
この状況を打開する方法があるってことでいいんだろ・・・・?」
「・・・・ええ、そうよ」
「君に協力してみるのも面白そうだが・・・・
その前に君はなぜほかの者に頼ろうとしない・・・・?
私以外にも使える奴なら案外いると思うがな・・・・」
「それじゃあなんで茶柱先生はわざわざあなたのことを私に教えてくれたのかしら?
もしも茶柱先生にとって、あなたの協力を得ることがAクラスに上がる近道なら
むしろほかの誰でもないあなたの力を得ることの方が有利だと私は判断するわね」
「ほほう・・・・
どうやら君は私が思っている以上に優秀だね・・・・」
すると少年の綾小路は後ろの方を向く
堀北は不意にまた彼の雰囲気が変わったことを感じた
「そんなことは聞いていないわ
私に協力してくれるか、私が聞いているのはそれだけよ」
堀北は言うが綾小路はこう返答する
「あなたにはあなた自身が気が付いていない欠点がある・・・・
その欠点に貴方が気が付かない限り
あなたが何をやったって、あなたの思い通りにはいかないわ・・・・」
「私に欠点・・・・
そんなものあるわけ!」
綾小路の返答に堀北はそう言うと
「だったら、あなたに協力はできないわね・・・・
貴方は自分の欠点に気づいていないし、向き合おうともしてない
なによりもその欠点こそが、あなたがDに送られた理由なのよ
そんなあなたに協力するなんて私は面白そうだって思ってもあたしは嫌
絶対に嫌」
そう言ってすっかり暗くなった廊下の中へと消えていく綾小路であった
「私に欠点・・・?
私はあくまで私が正しいと思ったことをするだけ・・・
絶対にAに上がって、兄さんに認められるんだから・・・・」
堀北は一人そうつぶやくのだった
「フフフフフフ・・・・」
Ein Mädchen, das seine Fehler nicht kennt