ようこそ実力至上主義の教室へーIn this deceitful world, even bigger lieー 作:lOOSPH
「力があるのにそれを使わないのは、愚か者のすることだ」
・一・
「愚か者ね・・・・
確かにそうかもしれないね・・・・」
何気に外に出てきたのは
不気味な表情を持つ綾小路だった
「うん・・・・?」
エレベーターを降りると不意に話声が聞こえた
それに気が付いた綾小路は声のする方に行って様子を見ることにする
すると
「・・・・鈴音
まさかここまで追ってくるとはな」
そこにいたのは堀北だった
だが彼女に詰め寄るようにもう一人の影が見える
だが服装からして男子であることはわかった
「もう、兄さんの知っているころのダメな私とは違います
私は絶対に兄さんに追いついて見せます」
「追いつく、か」
堀北の姿が見え、物陰からその様子を見る
「Dクラスになったらしいな
お前は何も変わっていない
お前はただ単に俺の背中を見ているだけで
お前自身の中にある欠点にまだ気が付いていない
どうやらこの学校に来たのは間違いのようだな」
「それは・・・」
堀北は不意に女子の綾小路に言われたことを思い出す
ーあなたにはあなた自身が気が付いていない欠点がある
その欠点に貴方が気が付かない限り
あなたが何をやったって、あなたの思い通りにはいかないわー
だがそれを心の中で必死に振り払う
「・・・・何かの間違いです
すぐにAクラスに上がって見せます
そうしたら・・・」
「無理だな
お前ではDクラスにはたどり着けない
それどころか、クラスも崩壊するだろう
この学校はお前が考えているほど甘いところではない」
「絶対に・・・・絶対にたどり着いて見せます・・・」
「何度も言わせるな、お前には無理だ」
やがて綾小路からも見えるようにその人影が姿を表す
それはかつて部活の説明会にて
演説していた生徒会長、堀北 学であった
彼はやがて堀北に詰め寄り
その手首を壁にたたきつける
「どんなにお前を避けたところで、お前は俺の妹であるという事実は変わらない
Dクラスになった妹、それが知られれば恥をかくことになるのはこの俺だ
今すぐにこの学校を去るがいい」
「で、できません・・・っ
私は、絶対にAクラスに上がって見せます・・・!」
「聞き分けのない妹だな」
「兄さん・・・・私は・・・」
「お前には上を目指す力も資格もない
それを知れ」
堀北に向かって掌底を打とうとする兄を見て
堀北は直感的に危険を感じて目をつぶるが
いつまでも衝撃が来ない
堀北は恐る恐る目を開くと
「・・・・っ!」
「ふふーん・・・・
やっぱりそうだったんだ・・・・
しかし、あんまり過激な行動は感心しないね
いくら妹さんでもこんなところで暴行なんて
いろいろ問題だろう、生徒会長殿・・・・?」
そこには自分の兄の右手をつかんで
技を制限する不気味な雰囲気の綾小路があった
「あ、綾小路君!?」
「悪いけれど私は彼女に用があってね・・・・
いくら兄妹水入らずのやりとりでも
こういうのは見過ごせないね・・・・」
「ほう、その口ぶりからすると鈴音の知り合いのようだな」
「まあそんなところさ、とりあえず彼女をつかんでいるその腕・・・・
離してもらえるかい・・・・?」
「それはこちらのセリフだ、その手を離せ」
生徒会長のすごみの聞いたにらみでも
不気味な雰囲気を揺らぐことなく無表情で見つめている
「やめて・・・・綾小路君・・・」
「ほほう・・・・
君のそんな声を見せるとはね・・・・」
そう言ってゆっくりと生徒会長のつかんでいた腕を離すと
そこに突然、すごい速さの裏拳が飛んできた
「おっと・・・・」
それを見て表情を崩すことなく難なくかわす
さらに今度に素早いけりが繰り出されるが
「おお、今のは危なかったねぇ・・・・」
そんな口調を言いながらも表情を崩すことなく難なくかわした
それを見てわずかに疑問の表情を見せ
呼気を吐くと右手をまっすぐ、開いた状態で伸ばしてくるが
それを右手の裏ではたくようにして流した
「ほほう、いい動きだな
まさか立て続けにかわされるとはな
それに、先ほどの行動から見ても
俺が何の技を繰り出すのかもよく理解している
何か習っていたのか?」
生徒会長はようやく攻撃をやめると
綾小路は音を立てて、首を鳴らす
「いろいろさ、何しろ物騒だからね・・・・
地獄のようなこの世界を生き抜くのも簡単じゃないからね・・・・」
「お前もDクラスか
確か、綾小路と言ったな・・・・」
生徒会長は構えを解き、眼鏡をなおす
「そういえば今年、理事長直々の推薦によって入学したという
異例の新入生がいると聞いていたが、もしやそれはお前のことか?」
「え・・・!?」
兄の言葉を聞いて
妹の堀北は思わず綾小路を見る
「さあねぇ・・・・
別に興味もないからさ・・・・」
当の綾小路は特に意に返すことなくそう告げる
「鈴音、まさかお前に友達がいたとはな・・・」
「彼は・・・ただのクラスメイトです」
堀北は弱弱しくも、そう答えるのであった
「相変わらず、孤独と孤独をはき違えているようだな
綾小路、お前のような奴がいるなら少しは面白くなるかもしれないな」
「それはどうも・・・・」
不気味な雰囲気の綾小路の様子にも
特に動揺することなく彼の横を通り過ぎていく
「上のクラスに上がりたかれば死に物狂いで足掻け、それ以外に方法はない」
そう妹に告げて去っていく兄
堀北は兄の姿が見えなくなると壁際に座り込んでうつむいてしまうのだった
「余計なことをしてしまったかな・・・・?
まあ、私としては君の意外な一面を見れて少し高揚したよ・・・・」
「貴方、何者なの・・・
入学試験と小テストの点数の時と言い
さっきの兄さんの話に合ったものと言い
私にはあなたのことが全く分からない・・・」
まだ先ほどの出来事のおかげで弱弱しい様子を見せる堀北
「そうだろうね・・・・
あえてそうするためにふるまっているのだからね・・・・」
「・・・・そんなあなたがどうしてここに
さっき私に用事があるって言ってたし・・・」
堀北にそう言われると思い出したように目を見開く
「ああ、そうそう・・・・
よかったら少し話をしようと思ってね・・・・
さっそくだけれど付き合ってもらうよ・・・・」
「・・・・?」
そう言って場所を移動する二人
ベンチに座っている堀北に
綾小路は自動販売機の方を向く
「何か飲むかい・・・・?」
「結構よ・・・」
「おやおや・・・・
どうやらいつもの調子に
戻り始めてきたようだね・・・・
さっきまでは弱弱しくって
私にその気があれば抱きしめてあげたくなるほど魅力的だったのに・・・・」
堀北は綾小路の発言ににらみを利かせるが
彼は特に気に留めることなく彼女の傍らに立つ
「さあて・・・・
それじゃあ本題に入ろうじゃないか・・・・
君は本当に今のままでいいと思っているのかい・・・・?」
そう言って前に立つ不気味な雰囲気の綾小路
「そんなことを聞くために私に会いに来たというの?
もともとは私が開くといった勉強会なので
貴方だって億劫に感じていたのに、気にしているの?」
「そうはいかないね・・・・
私だってこの状況は面白いと思えるほど
性格も人も悪くないし、悪人でもないしね・・・・」
「私は慣れているから別に気にしていないわ
それに大半の赤点組は平田君が拾い上げた
彼も勉強はできるし、人付き合いだって得意みたいだし
少なくともボーダーラインをクリアさせてくるはずよ
だけど私は赤点保持者に時間を割くだけ無駄だと判断した
卒業まで同じようにテストは繰り返される
そのたびに赤点をとらないようにカバーするなんて、愚の骨頂よ」
「現状赤点組のうち須藤たち三人は平田のことをよく思っていない・・・・
つまりあいつらは平田が開催する勉強会に参加するとは到底思えん・・・・」
「それは彼らが判断するのであって、私には関係のない話ね
それに、退学が迫れば、四の五の言ってられないでしょうし
それでも平田君すり寄れないなら、退学してもらうだけ
確かに私はDクラスをAクラスに引き下げることを目標にした
でも、それは私自身のためであって、誰かのためなんじゃない
ほかがどうなろうと関係ないわ
むしろ、今回の中間テストで赤点組を切り捨ててしまえば
残ったのは必然的にましな生徒だけになるでしょう?
上のクラスを目指すこともたやすくなる
願ったりかなったりね」
「そうだね、君の言っていることは間違っていない・・・・
退学の件に関しては赤点をとってしまうような奴が悪いだろうさ・・・・
でもさぁ、私は本当にそれでいいと思っていないんだよね・・・・」
綾小路の発言に堀北は彼を見る
「どういうこと?
まさか、クラスメイトを見捨てるような人間に
未来はないなんて言うつもりじゃないでしょうね・・・」
「違う・・・・」
「じゃあなぜ?
赤点組を救うメリットなんて、何もありはしないわ」
「でもデメリットを防ぐこともできるだろう・・・・?」
「・・・・デメリット?」
「だってさあ・・・・
遅刻や授業中の手遊び一つでマイナスポイントをつけるような制度だ・・・・
もしかしたらクラスから退学者が出れば・・・・
どのくらいのマイナスなるのかな・・・・?」
「それは・・・」
「まあ言いたいことはわかるさ・・・・
可能性としては捨てきれないだろう・・・・
もしも赤点が七人も出ればどれほどのマイナスになるだろうねえ・・・・?」
「で、でも遅刻や私語によるマイナスは0以下にはならないわ
むしろ今の状態であればこそ、勉強のできない生徒を排除した方がいい
ほぼダメージはないのと同じじゃない?」
「そんな保証がどこにあるんだ・・・・?
もしかしたら見えなくどこかで
マイナスが付加するかもしれないじゃないか・・・・
そんなリスクを放置すること自体が危険だろう・・・・?」
「そ、それは・・・」
「君だって本当は気が付いているんだろう・・・・?
だからこそ君は勉強会を開いたんじゃないのかい・・・・?
赤点組なんて最初から見捨てればいいんだからさ・・・・」
不気味に笑顔を浮かべながら綾小路は堀北に顔を近づけていく
「そうだったとしても、赤点組を
切り捨てた方が、将来的にクラスのためになる
これから先ポイントが増えてきた時
彼らを切り捨てなかったことを後悔するのは嫌でしょう?」
「本当にそう思っているのかい・・・・?」
「ええ、むしろ必死に彼らを救おうとするあなたの考え、理解に苦しむわ」
そう言ってベンチから立ち上がり寮に戻ろうとする堀北だったが
不意に手をつかまれてしまい、そのまま背中を壁にたたきつけられる
必死にもがくが両腕も壁に抑えられて抵抗が効かず、身をよじっていくが無駄な抵抗だ
「やっぱり君なんかに私を理解しきるなんて無理だね・・・・
そんな程度の解釈で本気で君はこの先乗り越えていくつもりかい・・・・?」
「で、でもこの問題は私達二人だけで解決できることじゃない
結局この答えを知っているのはあくまで学校だけ、押し問答になるだけよ」
「ずいぶんと饒舌だねぇ・・・・
ここまでよくしゃべるとは思わなかったよ・・・・」
「そ、それは・・・・貴方がしつこいから・・・」
「だったら私のこの拘束を振り解けばいい
君は女性とはいえ武道を心得ているんだ・・・・
簡単だろう・・・・?」
堀北は反論しようとするが言葉が出てこない
否定の言葉も出ない、彼女自身はどうしてそうなのかがわからない
だが綾小路は堀北の顎を上げ
もう少しでキスをしてしまうのかも
知れないほどに顔を近づけていった
「それじゃあさ・・・・
たとえとして入学式の時のバスのあれをおぼえているかい・・・・?」
「あの老人に席を譲らなかったあの時のこと?
あれは・・・」
「あの時あたし、ううん女の綾小路は迷わず席を譲った・・・・
でも私はあれが本当に正しかったのかと言えばどうなのかがわからなかったさ・・・・」
「・・・・あの時言ったはずよ
私は老人に席を譲ることに意味がないと思った
そうしたところで何のメリットもない、ただ労力と時間を浪費するだけ・・・」
「ふふーん・・・・
つまり君はあくまでも損得で行動することを趣旨としているってことだね・・・・」
「・・・・それはいけないこと?
人は多かれ少なかれ、打算的な生き物よ
商品を売ればお金をもらうし、恩を売れば恩で返すし
お年寄りに席を譲ることで社会貢献という愉悦を得る、違う?」
「だろうねぇ・・・・
私もむしろそれが人間だって思うしね・・・・」
「・・・・だったら・・・」
「君は所詮物事を主観で見ている・・・・
言ってみれば物事を狭い視野で見ているんだ・・・・
怒りと焦りは目を曇らせていく・・・・
今の君のようにね・・・・」
「・・・・貴方、そこまで私のことを言う資格があるとでも・・・?」
「逆に聞くけどさ・・・・
今の君こそどうこう言える資格があるのかい・・・・?
だったら教えてあげよう・・・・
君が気が付いていない堀北 鈴音という人間の欠点をね・・・・」
そう言って堀北の腕と顎から手を離し堀北は地面に崩れ落ちる
「君は他人の能力を低く見ている・・・・
足手まといと決めつければそいつを寄せ付けずに突き放す・・・・
そうやって相手を下に見るその姿勢こそが君がDクラスに送られた理由だ・・・・」
「・・・・そんな、私はただ・・・」
「例えば君が勉強ができないという理由で切り捨てようとしている須藤・・・・」
「彼と私が同じような人間だとでもいうの・・・」
「そうだねぇ・・・・
勉強に関してなら彼は君には一歩も二歩も後れを取ってる・・・・
仮に猛勉強したとしても学力では君には遠く及ばないだろう・・・・
学力ではね・・・・」
堀北は顔を上げて立ち上がっていく
「机の上では君の方に分がある
でもこの学校は普段の生活態度すらも
クラスの成績に当てているほどに厳しい・・・・
そんな学校が、知識面のみで成績を決めると思うか?」
「え・・・?」
「もしもこのテストが知識面ではなく
運動能力を見るためのテストだったら・・・・?
きっと結果は違っていただろうさ・・・・」
「それは・・・・」
「まあ君だって運動ができることは
水泳の時間でもしっかりと見せてもらった・・・・
でも須藤だって運動面では非常に優れているじゃないか・・・・
其れに関しては君だってあの場にいたからわかっているはずだ・・・・
それに知識面、運動能力のほかにも例えば対話能力が求められるものがあったら?
池や山内は軽いがその面では非常に優れている・・・・
逆に君のような対話能力の低い君は
知識面と違ってクラスの足を引っ張ってしまうかもだろう・・・・
ではその君は無能だというのか・・・・?
答えは違う・・・・
人間ていうのは誰にでも特異不得意があるものなのさ・・・・」
堀北は何も言えない
何か言おうとしても喉元に引っかかって何も言えない
だがそれでも口を開く
「・・・・でもそれはあくまで机上の空論でしょう?」
「その通りさ・・・・
ないものに手を伸ばしても
なにもつかめるわけがない・・・・
だったらあるもので予想するしかないだろう・・・・
そこでもう一つ、思い出してもらおう
茶柱先生が指導室に呼び出した際に言った言葉・・・・
’学力に優れたものが優秀なクラスに入れると誰がきめた‘ってさ・・・・
つまりこれを聞いていれば
この学校は学力以外のものを求めていると予想はつく・・・・」
堀北は感じている
まるでこの場を綾小路という人間によって
制圧されていくのが感じられていき、右往左往していく
「確かに赤点を切り捨てなかったことを後悔することもあるかもだろう・・・・
だがそれは逆も然りさ・・・・
彼らを切り捨ててのちの後悔することだってあるかもしれないだろう・・・・?」
だんだんと認めていく、認めざるを得ない
彼は、綾小路という人間は自分の中にある物差しで決して測れる人間ではないと
「・・・・そうかもしれないわね・・・」
「うん・・・・?」
「あなたの話はおおむね正しい
あなたの言葉に不覚にも引き込まれた、それほどに説得力があった
口惜しいけどそこは認めてあげる
でも、あなたはどうしてそこまで私に固執するの?
あなたがこの学校に来たその真意は何?」
「・・・・・・ふふーん・・・・
どうやら冷静さまではかけてはいなかったようだね・・・・」
「そうよ、人を説く以上
説く人物にも説得力がなければ
ずるがしこい理論も破綻する・・・・
それで私を納得させなければ、私を引き込めないわよ」
堀北も綾小路という人間に引き込まれないように必死にあらがう
「教えて、あなたは何のためにここに来たの・・・?」
「・・・・・・・・・・」
しばらく黙り込んでいる綾小路だったが
すぐに堀北の方を向いて彼女の耳元に近づく
「私は知りたいんだよ・・・・
この世界において求められている一番の課題・・・・
この世界で求められている真の実力・・・・
この世界における本当の平等をさ・・・・」
「本当の実力と、平等・・・?」
「私は知りたい・・・・
私だけじゃない・・・・
僕も、俺も、おいらも、あたしも我も・・・・
それを知り、取り込むことで私は私の求める何かが手に入るかもしれない・・・・
だからすぐに知りたい、君の考える実力と一緒にね・・・・」
堀北は綾小路から少し離れ、その発言をする彼の目を見る
その目はまるで未知に飛び込むことに興奮する得体のしれない何かのように
「ねえ・・・・・・堀北・・・・
堀北の思う実力って何なのかな・・・・?」
「・・・・・・・」
堀北はやがてまたも妙な感覚に見舞われる
まるで何かに包まれて彼に引き寄せられていく感覚だ
だが堀北はその感覚に見舞われながらも笑顔を見せる
「だったら教えてあげるわ
そのために私はまずやるべきことをやる
あなたが言うように彼らを残しておくことが
この先有利になるというなら、私はそれにかける
あなたの言うその賭けにあえて乗ってあげる」
「・・・・・・フッ、フフフフフフ・・・・
はーっはっはっはっはっはっはっ!!!!
いい返事じゃないか、ならばお前の実力が
私の満足のいく答えになるかをみせてもらおう・・・・
堀北 鈴音!
お前の実力を見せてみるがいい!」
「ええ、これで契約成立ね・・・」
まるで面白い玩具を見つけたような笑い声を上げる綾小路
堀北も笑顔を崩さずにそんな彼から目を背けなかったのだった
「堀北 鈴音・・・・
私とともに地獄まで付き合ってもらおう・・・・」
Ein Mädchen, das mit Dämonen in der Hölle kontrahiert