フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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今回は早めに書けました、ぽおくそてえでござりまする。
さて、今回から少しの間オリジナルでいこうかと考えておりまして、その都合でガルナ島編はスルーです。
次回いつになることやら…


第8の唄 新たなる旅路

「こいつがララバイの本体か!?」

「でけぇ…」

「ワシらも手伝うべきかの?」

「そこまでは無理であろう」

 

顕現した悪魔に集まっていたマスターたちが加勢しようかどうか迷っていたが、高齢な者が多いことと命が惜しい故になかなか出れないでいる。

 

その頃、建物の外側ではその脅威たるララバイと相対する者たちは、まだ諦めや絶望感は持ち合わせていなかった。エルザの換装からの足元への突貫を皮切りに総攻撃が始まった。その後ろではルーシィに背負われたシリルが指示を飛ばす。

 

「各マスターは下がってください!ナツ兄さんは上方へ、グレイさんはその場で待機を!エルザ姉さんは時間を稼いでください!」

「よっしゃあ!」

『あの小娘め、邪魔臭い…まずはあいつから…』

「や、ら、せ、る、か!」

『ぬぉっ!?』

 

邪魔者を排除せんと動いたララバイだったが、ナツの炎の一撃がその巨体をふらつかせるほどに揺さぶった。周りのギルドマスター達は彼の珍しい魔法に驚嘆するばかりだ。

 

「あやつ炎を纏ったぞ!」

「暴力的じゃのう…」

『くっ、退かぬか小僧!』

「おっと、あぶねっ」

 

煩わしさを感じてか、ナツに向けて数発の魔法弾を放つが間一髪でかわしていく。その流れ弾が方向が悪く、ルーシィたちに当たりそうになる。

 

「ようやく出番か。アイスメイク…!」

「今度は造形師か!?」

「しかし、間に合わんぞ!もっと下がるぞ!」

 

危険を感じたマスターたちであったが、その心配は杞憂に終わることとなる。

 

「…(シールド)!」

 

グレイの造形術は神速と言っても過言ではないくらいに早く造れる。その甲斐あってか一発も背後に流れずに防がれる。

 

「すごい、なにあの魔法」

「造形魔法だよ。名前の通り形を『造る』ものなんだけど、グレイのはそれ以上だよ」

「アイスメイク『(ランス)』!」

 

グレイの両手から放たれた槍たちは巨悪を穿つまさしく牙となってララバイの腹を抉るほどの大穴を開ける。

 

「すごい!」

「流石ですね。ルーシィ姉さん、この紙に魔力をありったけ流し込んでください。私たちも最後の準備に入りますよ」

「う、うん!わかった!」

 

シリルがルーシィに手渡したのは見慣れない文字の書いてあるお札だ。言われた通りに魔力を流し込んでいるとそれに呼応するように赤く輝き始める。

 

「こ、これは…」

「私の術を組み込んだ特別製です。さぁ、私に渡してください」

「今がチャンスみたいよ」

「そうみたいですね、行きます!」

 

三人の大いなる一撃に崩れ去るのを見逃さず、魔力の篭った札を投げる。

 

「『六鎖封結《ろくさふうけつ》』!」

 

シリルの声に呼応して札から6つの血でできた鎖が伸び、侵食し、遂には元の笛へと戻して無力化に成功した。辺りは歓喜の声で包まれる。

 

「今度こそ、じゃな」

「ええ。間違いないでしょう」

「あら、あんたいい男ねぇ。ちゃんと治療してきなさいよ?」

「そうよ。捕まるのはその後でもいいんだから」

 

こうして(ミラ曰く)最強チームの仕事は平和裏に終焉を迎えた。

 

その後、様々なことが起こった。鉄の森(アイゼンヴァルド)がエリゴール以外が逮捕されて解散、ナツとの約束で戦っていたエルザの形式的な逮捕、それを救わんと評議会に突入してナツも拘束されたことなどだ。そして、次の日、ギルドは騒がしさとともに平穏が訪れた。

 

「いやっはぁー!やっぱり娑婆は良いもんだぜー!」

「うるせぇ!少し静かにしやがれ!」

「ちょっと、物壊さないでよね」

 

しかし、そんな中でも1つだけないものがあった。シリルだ。

 

「そう言えばシリルは今日来てないの?」

「なんか評議会の方に頼まれたって」

「何かまずいことでもしたのかしら?」

「あぁ、気にすんな。いつものことだよ」

「え?」

 

ルーシィはその言葉に驚きを隠せない。このギルドに来てから評議会に関わることなんて余程のことばかりだったからだ。先程のララバイの一件にしても然りだ。

 

「あいつ、言ってただろ?闇ギルドと黒魔道書に関わる運命だって。おそらくそれ関係だろうさ」

「そ、そうなの?」

 

====

 

その頃、シリルは青空のもとに立っていた。

 

「さてと、私の宿命の呪縛から解放されに行くとしましょう…一日も早く…」

 

彼女の顔は普段ギルドで見せるような優しいものではなかった。まるで修羅の如き、覇気を纏った仕事人のそれだった。


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