さて、今回はラハールさんにも出てきてもらいました。強行検束部隊大隊長なのか、原作じゃまだ先の登場なのでわからなかったですが、そういう体で書かせてもらってます。
マグノリア駅から数駅、とある駅前にはシリルを待っていた評議会の部隊がいた。彼らの緊張感がひしひしと伝わってくる。
「お待ちしておりましたシリルさん。今回の作戦を担当するラハールと申します」
「お疲れ様です、お待たせして申し訳ないです。今回はどんな御用で?」
「闇ギルド『
「なるほど、そういうことでしたか」
もちろん、評議会にも黒魔術関連の対策班があるはずだ。しかし、今回は彼らが別件で動いているのか、厄介払いのために、そしてギルドの問題に目を瞑る条件のために呼んで来たのだろうと彼女は独りごちた。
「協力しましょう。ただし、危険な場合は即撤退を」
「承知しました」
「問題は魔道士よりも魔法の方ですね。性能が分からない以上どう対応すべきか…」
「密偵の話では本ではなく猫とのことですし、黒い光を放っていたとか…」
「…思い当たる節がありますが、何故あの方が?」
「ここで議論するのは止しましょう。全員準備を!」
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「マスター、評議員の連中どもがここに来るそうでござる」
「左様か。分かった、戦闘準備をせい!ワシも出よう。『黒猫』お主には逆らう権利はない、来い」
『全く面倒な…(ただ、今日は運が良さそうじゃな、この感じ)』
評議会とシリルの共同戦線が押し寄せる中、闇ギルド『
「今日は強者に出会えると良いがな」
『ワシの感知が狂っておらねば良き武者に会えると思うがのう?』
「ふふふ、面白そうだな?さぁ、開幕だ!」
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「もうあと100メートル程で彼らの本拠です。各自展開!暴れるようなら容赦はいりません!」
「この感じ…黒い猫がいたら攻撃はしないように!その方は危険です!」
「「「はっ!」」」
身に覚えのある生体反応を捉えたシリルは注意喚起を行い、戦闘態勢に入った。その側で部隊長のラハールが耳打ちに近い形で確認の質問をする。
「先程の黒猫の件ですが、知っている方なのですか?」
「ええ。何故ここにいるかは不明ですが、冥府神の使いです。闇の系譜と、毒、病気など死の恐怖を体現した方ですので、先程のような注意を…」
「なるほど、手を出せば厄介ですね」
しかし、そんな二人の会話も、敵拠点から上がる爆炎によって中断を余儀なくされる。このままでは被害が拡がりかねないと判断し、早急に対応すべく突入を決断した。そして建物内では既に数人の捕縛者と未だに抵抗を続ける魔道士たち相手に苦戦を強いられている評議員たちが小競り合いを続けていた。
「生命神の…『一喝』!」
「うおおっ!?」
「な、なんだあのクソアマは!?」
シリルがナツの技を参考に繰り出したのは血と気が織り交ぜられた神の一声に相応しい強力な咆哮だった。それは悪魔じみた力と違い、決して殺す魔法ではなかった。
「今です!彼らを捕縛なさい!」
一気に数を減らした闇ギルドの連中はなす術もなく次々に捕らえられ、残った者たちもシリルの魔法と評議会の数に押されて最終的には全員が同じ状態となった。
「ギルドマスターはどこにいるのです?」
「は、話せるかよ。俺たちの計画はまだ…」
ここに姿のないギルドマスターの所在を誰に尋ねてもやはりというべきか、口が堅い。そこで持ち込まれたのは魔力検知器である。こういった案件の時に人を手早く追うために作られたものだ。
「隊長!この階段の奥へ何者かが進んだ跡が見られます!」
「異様な魔力も検知されました!この奥で間違い無いと思われます!」
「なるほど、ありがとうございます。確かこの先は祭壇があったと聞いてますが…」
「冥府の使いと祭壇…死の厄災でも起こす気でしょうか?」
冥府の神の一使いと言えど、その者の力のコントロールと使用ができれば死の恐怖が訪れるのは目に見えている。止めねばならない。その場にいる全員がそう考えを揃えた。
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「いよう、評議会と神の使い!ワシを待たせるとはいい度胸だ!」
『やはりお主だったか、シリルお嬢ちゃん。手間掛けさせるのう』
「まだ健在ということは始まっていないみたいですね」
階段の先の祭壇ではマスターのドジャーが不敵な笑みを浮かべて全員を出迎えた。まるで勝利と目的を確約したような笑みで。
「ワシはお前たちを完膚なきまでに叩き潰さんといかんと考えててな、目的の為にも死んで行けや」
「私は生きる者のためにいる。貴方をここで潰します」
生と死の激突がここで始まろうとしていた。