フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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どうもです、ぽおくそてえです。今回もよろしくです。


第2章 ファントムロード 迷いを払って
第11の唄 巨人の逆鱗に触れる時


『この一件、最悪抗争に発展しそうじゃな』

「こちらがどう動くか、と申すか。だが、家族に危害を加えぬ限りは派手に動くつもりはないのう」

『死人や怪我人だけは勘弁願いますぞ。こちらも無用な仕事は避けたいのでな』

「無論じゃ」

 

日も暮れかけ、ギルドに残っていた者たちが続々と家路につく中、酒場で2人の年長者が対面して盃を酌み交わしていた。今回の襲撃がやはり話題に上がる。

 

「戦争となれば被害はいくばくか…想像するだけで寒気が走るわい」

『さて、こちらは失礼するぞ。あの子のことを宜しく頼み申す』

「ではまた…」

 

====

 

その頃、ユリアを連れたシリルはナツたちに誘われ、家主が留守のルーシィの家に勝手に上がっていた。

 

「ねぇシリルお姉ちゃん、これいいの?」

「ツッコンだら負けよ」

「えぇ…。世の中知らない方だけどこれマズイよ」

 

まだギルドの空気にいい意味でも悪い意味でも慣れていないユリアは戸惑いを隠せない。いくら仲間の家とはいえ、勝手に上がっていいのかと玄関近くで立ち往生している。

 

「大丈夫、あとで説明すればルーシィは納得してくれるはずだ。なにせ、ファントムの連中に狙われてる可能性があるからな」

「そういうこった。1人でいるより安全だろ?」

「ま、まあ確かに」

「そういえばまだ名前聞いてなかったな」

 

ナツの疑問は当然で、半ば押しかけのようにやってきた少女を知る者はごく僅かだ。

 

「えっと、ユリア・アマリリスです。冥府神の巫女代理です」

「神の巫女か。ウチにはシリルに続いて2人目だな」

「2人並んでるとなんか姉妹みたいに見えるな」

 

仕える神も見た目も似ていないのに、どこかシンパシーを感じさせたのだろう、ナツの意見にエルザたちが賛同するように首を縦にふる。

 

「それよりルーシィはどうした?少し遅い気がするが…」

「大丈夫ですよ、今帰ってきてるところです」

「そうか。ではルーシィには悪いが、戻ってくるまでに夕飯を済ませよう」

 

====

 

「なんか不穏な空気になってきたね」

「奴らはこちらが仕掛けずともいずれやって来よう」

 

ルーシィの帰宅後は少し騒がしかったが、風呂に順番に入った後は落ち着きを取り戻し、今回の襲撃の件を話し合っていた。ファントムは表向き合法ギルドだが、闇ギルド並と批判する人もいる。その悪評に見合うだけの戦力とコネ、財力を持ち合わせているのは確かだ。

 

「あいつらなんか怖かねえよ!じっちゃんとかミラとかビビりすぎなんだよ!」

「落ち着かんか。今全面戦争をしたところで痛み分け以上の結果になるのは目に見えている」

「それに…あっちにもS級に当たる魔道士が4人もいるし、お前と同じ滅竜魔道士(ドラゴンスレイヤー)が居るらしいじゃねえか?」

「えっ!?あっちにもナツみたいなのが居るの!?」

 

滅竜魔法は『失われた魔法』という希少な魔法で、それを使える魔道士がそう遠くない場所に2人も使い手がいるとなればルーシィの驚きも無理ないというもの。

 

「ここまで派手に仕掛けてきたということは勝算があるか、糸を引いている人間がいるってことですね」

「もはや時間の問題ね」

「あいつらの目的はなんなんだ?」

「さあな。喧嘩は今に始まったことではないからな」

 

これ以上の推論による問答は無用と判断したのか、エルザを筆頭に全員で仲良く眠ることになった。そして日が上がった次の日、街角に出て見れば、広場で人々の喧騒があった。だが、いつもの明るい喧騒とは違い、まるで事件現場である。

 

「済まないギルドのものだ、通してくれ」

「一体何が…」

「これって…っ!?」

 

群衆の中を潜り抜けて前に出たら、そこには信じたくない現実が待ち受けていた。木に縛り付けられ、散々に痛めつけられたチームシャドウ・ギアの三人の姿がそこにあった。

 

「なんでこんな事に…すぐに降ろします!ユリア、手伝って!」

「うん!」

「いったい誰がこんな…」

「ファントムの阿呆共か…」

 

そこに悠然と現れたのは彼女たちの親であり、マスターのマカロフだった。普段の優しげな雰囲気はまるでなく、その表情は怒りと悲しみに溢れていた。

 

「ギルドのボロい建物は我慢できたんだがな…ワシの大切なガキたちがこうも傷つけられたらもう我慢ならん」

 

その言葉には苦悶の色が滲み出ていた。自分の大事な家族を傷つけられ、守れなかった事の現れでもある。

 

「問答無用じゃ。戦争じゃ!」

 

巨人の動く時だ。


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