フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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遅くなりました、ぽおくそてえです。
少しずつではありますが、お気に入りが増えて嬉しい限りです。今回は丁度キリのいいところまで進めました。

次回は本格的な戦闘になります。


第12の唄 不穏

大事な子供達の血が流れた事に怒りをおぼえ、その怒りに任せて全面戦争へと移った。もはや巨人マカロフのこの怒りに否定的な者はおらず、家族のために皆が立ち上がった。彼らがファントムへと向かう中、シリルとユリア、ルーシィはギルドでマスターの知り合い、ポーリュシカが嫌々ながら手伝ってくれている中でレビィ達の治療を終え、そのままギルドに残っていた。

 

「全く、これだから私は人間が嫌いなんだ。こんな戦争じみたことで呼び出されるのは御免だよ」

 

そうぶつくさ言いながらも無事に治療をしてポーリュシカは帰路につき、残った3人は心配そうにレビィ達のことを見ていた。

 

「なんでこんな酷いことができるんだろ…」

「お姉ちゃん、心配なのは分かるよ。でもね、ここで悔しがってるだけじゃ進まないよ。私たちも行こう」

「うん…ありがとう」

「1人では危ないからみんなで行きましょう?それに、少しは気がまぎれるでしょうから」

 

3人が外に出て皆を追っていると、なぜかにわか雨が降りだした。先程までの快晴が嘘のようだ。

 

「こんな時に雨なんて…ついてないわね」

「早めに動こ。なんか嫌な予感がする」

「待って、誰か来てる」

 

ルーシィの手を引こうとしたユリアを制したのはシリルだ。ギルドを出る時から違和感を覚えていたのだ。明らかな敵意のある波動が近寄っている感じがあったのだ。雨模様の中で歩いてくるのは傘をさした見るからに怪しい女性だった。

 

「しんしんと、振りゆく雨は涙色。晴れることなき心の雲かな……ルーシィ・ハートフィリアを捕らえろってことだったけど護衛がいるなんてね」

「誰よあんた。まさかファントムじゃないわよね?」

「ご名答。流石はハートフィリア財閥のご令嬢、頭の方は冴えておいでですな」

 

何処からか声が聞こえたかと思えば地面から生えるように紳士然としたモノクルをかけた男が現れた。

 

「申し遅れましたね、私はファントムロードのエレメント4が1人、大地のソルでございます」

「大雨のジュビアよ」

「自分から名乗るなんて随分と余裕があるようで…破ァ!」

 

敵の方から現れた上に挑発に近い自己紹介に痺れを切らしたのはシリルだ。大事な仲間を守らんと、先手を取って空気砲を撃つ。

 

「ノンノンノン。そういった攻撃は無効ですぞ?」

「ジュビアの体は水で出来てるから」

 

しかしながら、特殊な体をしているジュビアにはまるで効いておらず、ソルも地面に潜り込んで避けている。

 

「厄介な…」

「お姉ちゃん、後ろ!」

「なっ!?」

「『水流拘束(ウオーターロック)』!」

 

先程まで前にいたのは水で出来た分身で、まるで攻撃してくるのが分かっていたかのような手の込んだ策を練ってきた。後ろからの襲撃にいとも容易く捕われてしまう。

 

「さあ、彼女を離して欲しければ私たちに降りなさい、ルーシィ・ハートフィリア」

「誰が…誰があんた達に!」

「そう。なら終わらせる…」

「逃げるよ!『闇刹那』!」

 

とっさの暗闇に対処できなかったのか、簡単に逃げおおせることができた。水牢に捕らわれていたシリルも闇に乗じて姿をくらませることができた。

 

「逃げられてしまいましたか、Tellement mauvais(残念ですな)

「次狙えばいいわ。戻りましょ」

 

====

 

次の日、ギルドは騒然としていた。ルーシィへの襲撃、ギルドマスターのまさかの戦闘不能、屈辱の撤退などが主な理由だ。

 

「くそったれ!」

「痛ぇ…ちくしょう」

「俺たちが逃げるだなんてよぉ!」

 

そんな騒ぎの中、次第に事件の背景がぼんやりながら見えてきた。ルーシィの父親が彼女の身柄の確保と即時帰宅を目的にファントムに依頼してきたこと、拙速の用なのかかなり強引な方法を取っていることなどだ。

 

「なんで今更私を…家を出て何ヶ月も経つっていうのに」

「お姉ちゃんさ、お家やなの?」

「あんな人のとこには行きたくないし、正直あそこが我が家って感じじゃないの」

 

自分のせいで今回の件が起きたと思っている彼女の口調は普段の明るさが消え、暗い。そんなルーシィに声をかけたのはいつものメンバーたちだ。

 

「これはお前のせいじゃねえ。それに、どんな理由があれ、家族を守るのは当然だろう?」

「そうですよ。私たちはいつでもあなたの味方です」

「それにさっきグレイが言ってたけどよ、ここがお前の家だと思いたいなら、それでいいじゃねえか?お前の心はこのギルドにあるんだろ?」

 

その温かい言葉に自然と涙が溢れる。今まで感じてこなかったような感情が溢れ、それに驚いたグレイたちが慌てふためいていた。

 

「ユリア、これがギルドの結束よ」

「うん」

 

張り詰めた空気が和らぎ始めようとしたその時、アルザックの伝えた一報が再び緊張をもたらす。

 

「敵襲だ!あいつらギルドごと攻めて来やがった!」

「何!?」

 

全員で表に出てみると、そこには移動式ギルドが湖の真ん中を堂々と歩いていた。

 

『もはやここまでだ。貴様らをマカロフと同じような苦しみに陥れてやろう。魔導砲ジュピターを受けよ!』

「じゅ、ジュピターだと!?まずい、全員下がれ!!」

 

怒りと焦りの声が飛んだ場所は、戦場へと変わっていく。




もっと速筆になりたい…次回は未だいつになるか未定です。

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