フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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どうもです、今回はかなり高速で書けました(次がかなり先になりそうですけどね)

文字数の割には進展がねぇ…


第13の唄 神の愛

「全員伏せろ!私が食い止める!」

「無茶すんじゃねえ!命を落とすぞ!」

「構わん!皆を守れるなら私1人の命など…!」

 

そう言って最前線に出ようとしたエルザを止めたのはシリルだった。ここしばらく見なかった憤怒の感情を前面に出した彼女の手には無意識に力が入る。

 

「ここは私がやります。あとは頼みますよ」

「待て!何をするつもりだ!」

「私は生命神の使い。誰一人死なせるつもりはありませんよ」

 

皆を守ることが己が使命と心得ているシリルを止めようとするが、その間にもジュピターの装填は刻一刻と進んでいく。

 

「時間がありません!離れててください!」

「くっ、無茶だけはするな!」

「私を誰だと思ってるんです?……『澄みたる心は天照す光。邪を破りて我が願いを叶えたまえ!』」

 

一寸の猶予もない。そんな緊迫した空気の中、詠唱とともに現れたのは普通の魔法陣よりはるかに巨大な魔法陣だった。

 

「『我が愛は聖なる刃となり、遍く全てを救う糧とならん!』」

『発射しろ!』

「お母様、我らに御加護を……『ディオ・アモーレ』!」

 

2つの砲弾が放たれたのはほぼ同時。天を震わせ、大地を揺るがす大魔法がそれぞれの思惑を乗せて解き放たれた。丁度中間の位置でぶつかり合った両者の一撃は最初は均衡を保っていたが、威力の差が出始めたのか、次第にシリルが押され始める。

 

「くっ…(やっぱり、押されるのね…)」

『諦めろ、生命の巫女。お前の力と我々の武威の差は歴然だ。散れ!』

「私は…貴方のような人間が一番許せないのよ!!」

 

強い意志に神の力が呼応したのか、それとも無意識のうちにそうさせたのか、威力をあげるとともにジュピターの砲弾の下から軌道をそらしていく。

 

「はあぁぁぁ!!」

『くっ、なんて奴だ。弾道を曲げるとは…』

 

力の衝突が大きかった分だけ、曲がった軌道は戻らず、フェアリーテイルの面々に当たることはおろか、後ろで守っているギルドの天井をかすりもせずに通り抜けるだけの結果になってしまった。しかし、攻撃を間近で防いだ少女は反動と風圧に、細い体が軽々と吹き飛ばされる。

 

「ぐっ、ううっ…」

「シリル!大丈夫か!?しっかりしろ!」

「傷だらけじゃねえか!」

 

馬鹿力への代償なのか、彼女の体には莫大な負担がかかり、何箇所か血管が切れた上に皮膚も破れて見るも無残なほどに痛めつけられていた。

 

『これで貴様らのマスターも、生命の巫女もダウンということか。全員を楽にしてやれたというのに、なんと馬鹿らしい。今そこにいるルーシィ・ハートフィリアを差し出せば穏便に済ませてやろう』

 

拡声器から響く無情の交渉に戦う妖精たちは反論していく。仲間を差し出すことなどあってはならない。どんなに傷つこうと、彼らにとっては仲間は何があっても守るべき大切な家族だからだ。

 

「あたし…」

 

それでもやはり、ルーシィはそんな彼らに傷ついて欲しくないと涙を堪えて震えている。自分が捕まればみんな無事に帰れる、これ以上は傷つかずに済む。彼女の優しさからくる震えなのだろう。だが、それを打ち破るのはやはり仲間の怒号だった。

 

「私は…仲間と一緒に生きると決めている!誰がそんな言葉に従うか!」

「仲間を見捨てて生き延びるくらいなら死んだ方がマシだ!」

「俺たちは何が何でも仲間を守り切ってやらぁ!テメェら全員ぶっ飛ばしてやらぁ!」

「みんな……」

 

どんな絶望的な力量差があろうと、強い意志と団結力がルーシィの心を満たす。何も悩むことはない。このギルドはただの仲間ではなく、自分を信じてくれる大切な家族なのだと。

 

『そうか…それが貴様らの回答か。ならば今度こそそのクズ程しかない誇りごと打ち砕いてくれる!次の装填までの15分、恐怖に震えろ!』

 

通信を遮断するとともに第二砲を充填しはじめる。それと共にファントムのギルドから兵隊がワラワラと湧いて出た。

 

「あいつら、仲間ごと撃つつもりかよ」

「容赦ねえな」

「違うね。あれは幽兵(シェイド)、命のない影のような存在だよ」

「なんだと!?」

 

カナが言う通り、幽兵が傷ついてもあっちのギルドにとっては大した損害にならない。混戦になったところでまとめて撃ち貫くつもりだろう。

 

「あのジュピターが装填される前に崩さなきゃね」

「だったら俺に任せておけ。シリルのあの気合いを見て何もしねぇのなんてな」

「任せていいのかい、ナツ?」

「おう!壊すのは俺の得意分野だしな、いくぞハッピー!」

「あいさー!」

 

脅威の砲撃に終わりを告げるためにナツとハッピーは先に乗り込んで壊しにかかる。それを見たグレイとエルフマンは、彼の漢気に当てられたか、はたまたライバル心からか、それに続くように駆け出した。

 

「よし、あっちはあっちに任せよう。私たちは全力でギルドを守るよ!」

「「「オオーッ!!!」」」

「シリルは戦える状況じゃない。ギルドで休ませてあげな」

 

強がって叫んではいたが、やはり先程の消耗は大きい。そんな気を失ったシリルを見送ると、ユリアは毅然とした態度でカナとロキの間に立つ。年の差があれど、彼女には彼女なりの理由があってそこに立っている。

 

「あんた昨日の子だね?どうしてあんたが?」

「私も……お姉ちゃんみたいに仲間ってのを守れるくらいに強くなりたいんだ!(見ててね、師匠…)」

「これは将来有望だね。ロキ、あたしとあんたで指揮を取るよ」

「任せてくれ。レディを守るのが紳士の務めだ」

 

装填まで十数分。ギルドの意地と名誉を賭けて、勇敢なる妖精たちの戦いが始まる。

 

====

 

「シリル、こんなに頑固な子だなんて知らなかったわ」

 

ギルド内では過去のトラウマから、戦闘が出来なくなってしまったミラがせめてもの助力をしようと介抱を務めていた。

 

「大丈夫。貴女は私が治してあげる」

 

一緒にギルドに入った亡き妹とどこかかぶって見えていたように感じる。あんな思いはもう二度としたくない。ミラの腕に更に力が入る。

 

「みんなで笑顔で戻りましょう」

 

全員無事に帰ることを信じて。

 

 

戦争は激化する。血は流れ、多くの者が傷つく。様々な犠牲の上にある勝利の星はいずれの手に渡るのか…。




『ディオ・アモーレ』
イタリア語を使いました。かなり直訳みたいなことになりましたが、意味合いとしては神の愛です。

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