フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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お久しぶりでございます。大変お待たせして申し訳ないです、ぽおくそてえです。

投稿を開始してから半年経ちますが、前作の半分ほどしか進んでません。ヤバイ……。そしてFAIRY BEASTが意外にも読まれてることに驚きを隠せないです、有難きことかな。

さて、本編に参りましょう。


第14の唄 戦局の動く時

ギルド前のせめぎ合いが起こる中、ナツとハッピーは砲台に乗って壊そうと叩くが、ビクともしないそれに次第に苛立ちを覚え始めていた。

 

「チックショー、硬いなぁ」

「外側からじゃ無理だね。中から行こう!」

「それもそうだな。時間もねぇし、ちゃっちゃと済ますぞ!」

 

外からでダメなら内から。切り替えの早さが彼らの良いところである。魔法の砲撃である以上ラクリマを破壊すれば機能が止まったも同然になる。

 

「よっし、入れたな」

「外からじゃ分からなかったけど、かなりでかいね、ジュピターのラクリマ」

「でかさなんて関係ねぇな。ぶっ壊すだけだからよ」

「そんな事を我々がさせるとでも?ここは作戦の重要地点なんだ」

 

物騒なことを口にするナツに、上から牽制するように男は口を開く。主力の砲台なのに、守りはこの男一人だ。

 

「お前のことは聞いているぞサラマンダーのナツ。俺は大火の兎々丸、お前を倒す男の名前だ」

「どうでもいい。邪魔をするってんならぶっ飛ばすまでだ」

「その威勢、いつまで続くかな?」

 

猛火の燃え盛る砲台前の決戦が始まる。

 

====

 

「う…ここは…」

「気づいたのね!?大丈夫、ギルドの中よ。みんな頑張って闘ってるわ」

「ミラ姉さん…ありがとうございます」

「ルーシィなら隠れ家に行ってもらってるわ。リーダスも一緒にね」

 

敵の狙いは彼女にある。それならば護衛をつけて離れてもらうのも1つの手だ。それでも自分が寝ているような暇がないのは承知の上だ。身体がいまだに痺れるが、戦場に出ようと立ち上がる。

 

「私も出なきゃ」

「ダメ!貴女は怪我人よ?ここでみんなを信じて待ってなさい」

「ごめんなさい」

「うんうん、良い子ね」

 

ミラの忠告を聞かなければ皆の足を引っ張りかねないと感じ、心苦しく思いながらもこの場にとどまる決意を決めた。

 

「ユリア、みんな…どうかご無事で…」

 

窓の外で続く乱闘を気にかけながら、ただここで待つしかない。

 

====

 

「くっ、しつこい!」

「流石に多いね。ナツ達はどうしたんだ?まだ砲台は崩せてないみたいだけど…」

「弱音はまだ聞かないよ。ナツ達を信じなさい!」

 

ナツが飛び立ってから10分ほど、未だに健在な砲台に皆心のどこかで怯えながら戦っている。弱気になりかける者を鼓舞するようにカナが無理を押して大声を上げる。

 

「カナお姉ちゃん、無理したらダメだよ!」

「せっかくシリルが託してくれたんだ!私たちが頑張らなきゃね!」

『若者たちよ、よくやっておるな。こやつらの相手は私がしよう』

「師匠!?」

 

立て続けに湧いてくるシェイドに消耗戦を強いられている妖精達の前線を押し戻すために、いつの間にか来ていたクローバーが前に出る。人間同士の争いにはなるべく干渉しないようにしていたが、見逃せる状況ではなくなって来ているのも事実だ。

 

『このクローバーが遊んでやろう。神の啓示書、第八巻第六章アヌビスの項より参照……『地獄の雷』!』

 

冥府から呼び出した魔法陣は敵の戦力を大いに削り、残った兵たちに恐れを植え付けるにはうってつけの効果を発揮した。敵の動きが鈍ったこの好機を逃すまいと士気の上がった妖精たちは前へ前へと突き進んで行く。

 

『更なる馳走をくれてやる…神の啓示書第六巻第二章チェルノボグの項より参照…『怒りの獄炎』!』

「よし、道が出来たぞ!私たちも攻めに転じるぞ!」

「「「オオーーッ!!」」」

 

数の不利を覆した彼女たちはエルザを先頭にただひたすらにナツを信じて突き進む。そんな中でクローバーはユリアを呼び止めた。

 

『弟子や弟子、今少しだけ力を貸そう。こっちに来なさい』

「師匠、いいの?」

『今は躊躇している場合じゃないのじゃ。『神の啓示書』の基本の基、『第一巻第一章閻魔の項』を託す。よく学べよ』

 

託した力は冥府の神々が扱ってきた古の魔法(エンシェント・スペル)の類だ。基礎中の基礎とはいえ神の力の一端、威力は推して知るべしだ。

 

『さあ行け、これから護るべきもののために……私の大事な娘よ、頑張れ』

「し、師匠はどうするんです?」

『これから向かうべきところがある。しばしの別れだ…さらばだ』

「師匠…うん!私、やってみるよ!」

 

期待をかけられ、それに応えてみせようと護るべき人たちのために前を向く。

 

====

 

「いい加減に渋といんだよ!」

「俺に炎は効かないと言ったはずだ!その巨炎も支配下に…」

 

ジュピターが魔力の装填の最終段階に移る中、ナツと兎々丸の一騎打ちは続く。最後の抵抗と言わんばかりに腕に魔力を溜め込んでいく。

 

「んぐぐぐぐっ!!」

「くっ、コントロールが効かない!どういうことだ!?」

「この炎は俺のもんだ!勝手に操るんじゃねぇ!」

 

暴力と意思の権化と化した爆炎は兎々丸の制御力を大きく上回り、一気呵成に攻めたてるように放たれる。それをギリギリでかわして笑いをあげる兎々丸だったが、その真意を理解するにはもう遅かった。

 

「ハナからお前なんか狙ってねえよ!ぶっ壊れろぉ!」

「なっ!?しまった!」

 

その先にあったのはジュピターのラクリマ。炎竜王の炎を受けたラクリマは抵抗を許されず、破壊を受け入れる他なかった。

 

「さぁ、今度はテメェの番だ、ファントム!」

「(や、ヤバイよ!こんな奴だなんて聞いてねぇ!)」

 

ジュピター、完全停止!妖精達の歓喜の声が轟く中、戦局は大いに動こうとしていた。


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