それでは本編どうぞ!
完膚なきにまで壊されたラクリマの前に立つ二人の男の心境は全くもって逆のものだった。かたや目的の1つを達成して意気揚々としているナツ、そして彼の前にいて冷や汗を浮かべる大火の兎々丸だ。
「もうお前らに勝ち目はねぇよ」
「くっ、役目を果たせないなど…っ!これは!」
「な、なんだ!?急に動き…うぷっ」
だが、そんな情勢もあることを切っ掛けに立場が入れ替わる。砲台の破壊を受けたことによるのか、急にナツ達のいるギルドが姿を変えていく。
「お、おおっ……」
「まさか『超魔導巨人ファントムMkⅡ』に切り替えてるのか!くそ、足元が不安定すぎる」
「くそ、酔いが…」
「ナツー!」
ギルドが座った状態から立ち上がった姿に変えようとしているのだ、乗り物酔いを持つナツは急激に弱っていく。
「まさかお前にそんな弱点があるとはな!今こそ俺の究極魔法を喰らえ!『
「お、おおお!?」
「そんなことさせるかよ…『
「吹っ飛べぇ!」
切り札を前に手も足も出ないナツを助けたのはグレイとエルフマンだ。隙をついて凍らせて投げ飛ばしたのだ。
「ったくよ、くたばるにはまだ早えぜ」
「漢なら根性を見せろ!」
「おお、かっこいいぜお前ら」
「情けねぇな」
ようやく揺れが収まったところで外の状況をハッピーに確認させるととんでもない事態が発覚する。ギルドがまるで魔人のような姿になっており、その魔人がとてつもない威力を誇る『アビスブレイク』なる魔法を発動しようとしている。しかも場合によっては街が半壊するかも、と。
「こりゃあのんびりしてらんねえな」
「あれ、元素魔法だって聞いたよ!」
「結論が出たな。残りのエレメントどもをぶっ倒すぞ、漢らしくな!」
「やってやんよ!急ぐぞ!」
それぞれ別々の人を倒すべくバラバラの道を進んでいく。
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「やはりここで休んでいる暇はなさそうですね。アビスブレイク、あれが発動しそうって言うなら乗り込むしかない!」
「無茶言わないで!死んじゃうわよ!」
「……いいえ、行きます。『秘術・
膨大な魔力を消費し、己の傷を治癒していく。己に秘められた決戦用の能力、
「姉さん、魔力回復薬を…」
「どうしても行くのね。それじゃあ、お姉さんとの約束……生きて帰ってきて」
「ええ。みんなで笑って帰りましょう」
ミラの心配に笑って答え、勇ましく突き進んで行く。外では激戦が続いており、クローバーによって数は減らされたものの敵も踏ん張っている。
「戦況は?」
「巨人の動きが少しだけだが遅くなってる。中で頑張ってるんだろう」
「わかりました。私も中に行きます!」
ロキから情報を得たシリルは単騎、敵城へと突貫した。血で作った翼を頼りに腕の方から潜り込むと、既にそこには倒された大地のソルとトラウマを克服して全身テイクオーバーのコントロールに成功したエルフマンが立っていた。
「シリル!?お前大丈夫かよ!」
「ええ、お陰様で。エレメントたちは?」
「知ってる限りじゃもう既に2人は倒してる」
「それじゃあ後2人ですね」
「こっちはもう動けそうにねぇ。グレイとナツは上に向かったはずだ」
「はい!」
魔力と体力を使い果たしたエルフマンに代わり、シリルが敵を討つべくさらに奥へと進む。広い部屋にたどり着いたところ、待ち受けていたのは大空のアリアだった。マスターに手をかけた張本人で、エレメント4のリーダー的存在でもある。
「ほう、思ったより早い復活だな、シリルとやら。あのジュピターを止めた相手となれば小娘だろうと毛ほども油断はしない。大空のアリア、巫女の命を頂戴しに参った」
「マスターに手をかけたのは貴方ですね。ならば、油断も手抜きもいたしません!いざ南無三!」
自分の親といっても過言ではないマカロフを苦しませる元凶の男を倒すべく、全力を尽くして攻めかかる。
その頃、ポーリュシカのいる森には1人の珍客が訪れていた。顔を隠し、正体を知る者を極力減らしている魔道士でありS級の実力を持つ男、『ミストガン』だ。治療を終えて一休み入れていたポーリュシカは不審に思いながらも彼に声を掛けた。
「あんた、私のとこに何の用だい?」
「役目を果たした、といったところか。もうまもなく巨人が動く時が来よう」
「巨人が動く?ま、まさか…マカロフ!」
「ポーリュシカか。治療、済まなかったな」
ファントムを攻めた際、アリアの一撃で魔力欠乏症に陥っていたマカロフであったが、もう既に復活をしていた。
「あんた、なんで動けるんだい?」
「私がマスターの魔力をかき集めて来たからだ。それと、ファントム系列のギルドは潰してある」
「そうか。ガキどもが必死に戦ってくれてるのか。ならば、親の役目を果たさねば…」
「止めないよ。ただ、無茶だけはするんじゃないよ?」
「わかっておる。ミストガン、ご苦労じゃった」
「ああ」
地に伏せたはずの巨人マカロフは己が本命を果たすため、再度立ち上がる時が来た。
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「この私を捉えるとはなかなかやるな」
「空気の魔道士は私の得意な相手なんですよ。気の力は貴方の実体を捉えられる」
実体と虚体を自由に行き来できるアリアを相手にシリルは血ではなく、気の力を軸に果敢に攻めかかる。しかし、お互いに決定打をうてず、魔力と体力を削るだけの戦いとなっている。
「私を倒してもマスターがおられる。無益なことよ、ルーシィ・ハートフィリアを差し出せば良いものを」
「断る。私は仲間と生きるとさっきも言ったはずです」
「ならば貴女を全力で倒さねばなるまい。私の目を開かせた者は死あるのみ」
「外道の言葉、聞き捨てなりませんね」
アリアとシリルはお互いのあるべき道を示すため、全ての魔力を引き出そうとする。
「『死の空域・零』。この領域に入ったものには等しく死を…」
「神の名において貴方を倒す。『生命神の剛拳』!」
死せる力と生ける力の正面衝突。だが、その結果は火を見るよりも明らかなものとなった。神の法を表すシリルの力が感情を乗せて、アリアの空域にヒビを入れた。
「なっ!?我が空域が!」
「砕けろぉ!」
「もしや、私が敗れるなど…!?」
「おおおぉおおぉおぉ!」
戦意喪失。心まで折られたアリアに防ぐ術などなく、あっけなくその一撃に服し、気を失った。
「これで…私達の借りは返させてもらいました。勝ちましたよ、みんな…」
シリル対アリア。軍配は妖精達に上がった。