フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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皆さん、おはようございます、あるいはこんにちは。ぽおくそてえでございます。さて、今回は原作時系列順に戦闘は進みません。あと、ちょっとだけナツ対ガジルを出してますが、次話で書く可能性は低いと思います。
どうかご容赦を。


第16の唄 終焉の鐘を鳴らして

アリアを撃破する金星を挙げたシリルのところに来たのは復活したエルフマン、大海のジュビアを倒したグレイだった。

 

「派手にやったな」

「無事ということは、エレメント4は全員倒せたみてぇだな。これでアビスブレイクは出せねぇだろ」

「これで一安心ですね。あと残っているのは…」

(くろがね)のガジルとマスター、か。ガジルの方はナツが倒してくれんだろ」

 

いつも喧嘩ばかりしているグレイといえど、やはりナツのことは信頼している。そうとなればやることは1つとなった。

 

「マスター・ジョゼの撃破か。漢としてなんとしても倒さないとな」

「しかし、私たちは全員怪我人。無理もできません」

「心配はいらねぇよ。俺たちの結束があれば負けやしないさ」

 

グレイとエルフマン、シリルは最終決戦へと心をひとつとし、残るジョゼのいるだろう音声室へと向かう。だが、あちらも主力のエレメント4を倒されたことでマスターが直々に出向いて来た。

 

「これはこれは…よくもやってくれましたね」

「こいつがファントムの…」

「さて、消えてもらおうか、このクズども!」

 

圧倒的な威圧感と実力を前に瞬きすらさせてもらえず、前に出たグレイとエルフマンがいとも容易く倒されていく。その隙をついて攻めかかるシリルの攻撃も簡単に受け流す。

 

「無駄な足掻きは為にならんぞ。今降伏すれば無傷で帰すことも(やぶさ)かではない」

「お互いにもう引けないところまで来てるんですから、貴方を倒すまでです」

「ふふふ、気高く美しく強い。壊し甲斐がありますね」

「生命の巫女、参る!」

 

正直心が折れそうだった。これほどに悪意のある敵は見たことがない。だが、ここで下がれない理由がある。震える体に喝を入れ、拳を前に構える。自分しか立ち向かう者がこの場にはいない。

 

「いつまで立っていられるかな?『デッドウェイブ』!」

「死霊の塊!?くっ…」

「流石ですね。ならばこれでどうです!」

 

開いた左手を振り払うと、その軌道上で地面が連続で爆破する。ギルドマスターの名に恥じぬ猛攻を前にシリルも先ほどまでの戦いによる傷も相まって、防戦になりがちだ。

 

「ちょこまかと煩い虫ですね。破ァ!」

「きゃあっ!」

「すぐにマカロフのところへと送ってやりましょう」

「流石に頭にきました。打ち抜け、神器『アウラの弓』!」

「ぐっ!?即座の反撃とは…伊達に神の巫女を名乗ってはいませんね」

 

しかし、ただやられるだけではギルドの意地が許さない。倒せるとは思えないが、一矢報いることはあり得る。そう信じて強敵に挑む。

 

「ルーシィ姉さんは渡しません。何があろうと」

「ルーシィ・ハートフィリアは我々の手中にあり。ここで彼女の大切なもの、叩き潰してやる」

「…(奪われてたか。でも、今ならまだ取り戻せる。信じてますよ、ナツ兄さん!)」

 

====

 

「ギヒヒ!暇つぶしにはもってこいだな!」

「テメェ、叩き潰してやる」

「この空に二頭のドラゴンは必要ねぇ。堕としてやる」

 

ルーシィの囚われている広間では助けに来たナツと、ファントムのエースで鉄竜の子供のガジルが今まさに衝突しようとしていた。双頭の竜が互いの意地をぶつけようとしていた。

 

「大丈夫かな?」

「心配ないよ、ルーシィ。だってあのナツなんだよ?負けるはずない」

 

彼女の心配を払うようにハッピーが力強く答える。ナツの怒りは全てを燃やし尽くす灼熱となって現れている。こうなったナツを止められた者はそういない。それほどの信用と信頼がある。

 

「せめて俺を楽しませてくれよ、火竜(サラマンダー)

「お前はギルドの名にかけて俺が倒す。ナメた真似をしたこと、後悔させてやるよ。鉄のガジル」

 

荒ぶる感情の炎を燃やして、先に殴りかかったのはナツだ。その一撃は素早く、そして重い。鉄と呼ばれて鉄壁の守りと攻めを誇るガジルも流石にこの一発に吹き飛ばされる。

 

「このクズが…なっ!?」

「ぶっ飛べ!火竜の劔角!」

「すごい!圧倒してる!」

「ガジルが吹っ飛ぶなんて初めて見たぞ!」

 

勇猛なる男の威を前に、ガジルも押されていく。だが、それでやられるほど鉄竜も甘くない。続け様に繰り出された拳が当たったが、今度は痛そうにもしていなかった。

 

「これを使わされるとは、テメェも中々やりやがるな。見せてやるよ、俺が鉄竜なんて呼ばれる理由をよ」

「こ、これって…!?」

「鉄の皮膚!!」

 

そう、ガジルの強みはその鉄に変化できる体質にある。頑丈な滅竜魔道士の中でもその防御力はかなり高い。

 

「ギヒッ、今度はこっちが攻める番だ」

「くそっ」

 

====

 

「貴方もかなりの強情っぱりなようだな、生命の巫女よ」

「はぁっ、はぁっ……それが、妖精の尻尾(うち)の強さ…ですよ」

「苦しむだけだ。そこらに転がってる奴らのように、すぐ楽にしてやるものを…」

 

双頭の竜が激戦を繰り広げようとしている中、シリルとジョゼの戦いもまた、佳境を迎えようとしていた。

 

「ジュピターの一撃で既に死にかけていた女がまだ抵抗するとはね。無駄なのだよ、全て!私の前で飛ぶハエは嫌いなのだよ!」

「っ!?きゃあ!」

「これはただの戦じゃない!我々はハートフィリア財閥の依頼であの小娘を捕らえているだけの事!貴様ら如きに邪魔されてたまるか!」

「きゃあああっ!」

 

シリルを捉えた魔法に激昂を乗せ、さらに締め上げていく。まるで囚われた邪念を振り払うかのように。

 

「る、ルーシィ姉さんは泣いていた。自分に全ての責任があるって……そんな彼女の何がわかる!彼女ほど苦しんでいる人はいない!貴方たちには彼女の心は分からないし、あの涙の真意を理解するなんてできない!」

「これから知っていくのさ。だが、すぐには渡さん!そして、貴様らとの繋がりなどというクソみたいなものを全て断ち切ってやる!」

 

激昂するジョゼの魔法はシリルに凄まじい激痛を与える。意思の強さと意地は彼にもあるのだろう。だが、その魔法がなぜかかき消された。

 

「なっ、私の魔法が!貴様のせいか、いや、誰だ!?」

「この戦場には多くの涙と、血が流れた。互いのガキが嘆き、悲しみ、苦しんだ。ワシのギルドも、お前さんのギルドも多大な犠牲を払った。この戦争、ワシらの手で終わらせようぞ」

 

刹那、殺伐とした戦場は暖かくも厳しい光に包まれたようだ。その光は戦場の誰もが感じるほどの大きな光。それを纏って現れたのは小さな巨人、そう、フェアリーテイルのマスターマカロフ。戦争は彼の出現を伴って終焉へと向かおうとしていた。

 

「天変地異を望むか、マカロフ・ドレアー」

「家族を守るためならば、ジョゼ・ポーラ」




もうそろそろファントム編が終わりそうです。
オリジナル編に入ると思います。

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