FE覚醒の方は今一章が終わったあたりまで書き溜めてます。四章あたりまで書けたら出すかも
第19の唄 招かれざる来訪者
「迷惑をかけたね」
「良いの良いの!良かったね、天に還れて」
「ユリアとルーシィには感謝してもし足りない。せめてもの感謝の証だ。これをいつものメンバーで使うと良い。ナツたちには渡しておいたよ」
ユリアとロキ、ルーシィは帰り道に着き、ギルドで皆に事情を説明したら、呆れながらも暖かい言葉がかけられた。それから数日、感謝と敬意の表れとして高級ホテルの無料券を渡された。
「ありがとうユリア。じゃ、楽しんできてね」
「うん!あ、シリルお姉ちゃん!」
「良いことしたわね。楽しむ為にも準備しましょ」
「はーい!」
2人は仲良く、姉妹のように皆の待つ場所へと向かった。
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やって来たのはリゾート地として有名なアカネビーチだ。夏の太陽と美しい海、夜まで遊べる娯楽により、さまざまな人たちでごった返す夏の名所だ。
「はじめての海だー!」
「遊ぶぞー!」
「やっぱり泳がねえとな!」
「これは楽しめそうだ」
折角の休暇で、友人から譲り受けた招待券。遊び倒さねば損、とばかりに皆で騒いで楽しんでいく。水泳、バレーボール、砂遊びに何故か喧嘩といつも以上に楽しい一日を過ごし、気がつけば日も沈み、夜の帳が下りた。
「いやぁ楽しかったな!」
「ロキのおかげだぜ!やっぱり持つべきは友だな」
「あいさー!」
「ここの地下にギャンブル場があるみたいですよ。私とユリアは行けそうにないんでロビーでゆっくりしてますけど」
「流石高級ホテルだな、至れり尽くせりだ」
「ルーシィたちも誘うか。じゃあまた後でな」
シリルとユリアは歳が歳なだけあって賭けをやることはおろか、ギャンブル場に入らせてもらえるか怪しい為、こうして別行動をとることとなった。
「暇だね〜」
「そうね〜」
「眠い…お姉ちゃん膝貸して…」
「もう、しょうがないわね。ほら」
「はひ…お姉ちゃんの膝、やわらかい…ふにゃ…」
「おやすみなさい」
静かな時間が2人を包む中、突然、下からやってきた人々が悲鳴をあげながら出口に大挙して押し寄せたり、自分の部屋へと逃げようとしているのが嫌でも聞こえたり見えたりする。何事かと見やれば、地下のギャンブル場で誰かが魔法を使い、一触即発の状況になっているという。
「ううん…お姉ちゃん、何?」
「ユリア、伏せてて。何か不穏なことが…」
「ね、ねえ。あれってエルザお姉ちゃんじゃ…」
「何!?」
地下から上がってきた大柄の男に担がれているのは意識を失い、眠っているドレス姿のエルザだった。襲撃者に攫われているように見え、助けに向かおうとしたがあのエルザがいとも容易く捕まっているのだ。返り討ちに合うのがオチだと自制し、ナツたちがいるであろうギャンブル場に意を決して向かった。
「一体何が…」
「カードに人が…閉じ込められてる…」
「この声、シリルとユリアなの!?た、助けて!」
「ルーシィ姉さん?何してるんです?」
「変な奴にやられたの!うう、背中が…」
「ちょっと待ってください。すぐにはずしますから…はい、取れましたよ」
ルーシィの拘束を解き、何があったのかの説明を受けた。突然エルザの友人と名乗る男たちがやってきて、魔法を使って彼女を攫い、そして周りにいた大勢の人をカードに閉じ込め、ルーシィを拘束してエルザを捕らえ、悠々と去って行ったという。
「ナツ兄さんたちは?」
「ごめん、分からない」
「ちょっと探してくる!」
「お願い。それにしても、さっきの連中は一体…」
長考に耽りそうになっていた。何故、エルザを拉致同然に攫ったのか。彼らは彼女とどんな繋がりがあるのか。どうして人目につくタイミングで決行したのか。色々と考えが巡り、底が尽きない。そこに戻ってきたユリアによって意識も戻ってきた。
「ナツお兄ちゃんたち見つけてきた。あと、元ファントムの人も居たから来てもらったよ」
「ったく、いきなり襲ってくるなんてよ」
「銃弾口に打ち込むかよ普通。あー、痛え」
「あんたそれ、尋常じゃないよ」
「さっき連中が外に出るのを見ました。今すぐ追えば、まだ間に合うでしょう」
全員が頷き、友を取り返す為にたちあがる。たとえ無謀な挑戦でも、借りは返さねばギルドとしての名折れ。皆の拳を突き合わせ、港にあった小船を漕いで、後を追う。
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「ジェラール様、エルザを捕まえたとの報が入りました」
「そうか。これでまた計画が一歩進んだ。後もう一歩、前に進もうか。我々の大いなる夢の為に」
月夜に照らされた大きな塔の中。そこには不気味な笑みを浮かべるジェラールと呼ばれた男がいる。彼の目的は果たして…。