もう一つの小説の投稿は月2回ほどでして、こちらもそのペースに合わせる形になるかと思います。何卒ご了承をば。
「4人の戦士…何者なんでしょう?」
「この塔にいた奴らでさえ知らないみたいだしな。あまり得策じゃねえが別れた方がいいな」
グレイは提案をしてみたのはある意味最後の手段だ。味方同士で分裂してしまった以上、なるべく早く敵を倒すためにペアで行動する方法を考えた。
「私はシリルお姉ちゃんと行く!」
「それなら私はグレイ様と…」
「ちょっとぉ!一番弱っちいのを1人にしないでよ!」
「皆さん、先に行ってください。ユリア、私に力を貸して」
「おい、どういうことだよ!?」
「貴方が望む敵は私とユリアでしょう?堕天使ベリアル!」
シリルの指差す方には黒い羽を生やした男がいた。不気味なほどの色気と高慢さを持ち合わせる神々の敵である。
「我は天への反逆者が1人。我と戦え、神の御子たちよ」
「お母様から堕天を言い渡された使いよ。せめて私の手で浄化してあげましょう。皆さん、ここは危険です。先に!」
「任せたぞ!俺たちは追いながら倒して行く!」
「ユリア、生冥の巫女揃い踏みよ!」
「2人の力を合わせれば、向かう所敵なし!」
不気味な堕天使と高貴なる神の子達の人類をかけた戦いが始まる。
「貴方は何者なの!?」
「400年前よりゼレフに魅入られ、付き従い堕天を命じられたもの。我ら堕天は闇ギルド『
「そのうちの1人が…貴方だとは!お母様や先代を裏切った罪は重いですよ!」
「我にとっては小さく些細なことよ。今の我らにはゼレフがついている!」
堕天使となったことで力の枷が外れ、大いなる力を発揮する。無詠唱、印を結ばずして大魔法を発動するその並外れた魔力と精神力は、もはや悪魔とさえ言える。
「『天喰らう餓狼』!」
「我らを守り給え、『八咫の鏡』!」
命を喰らう飢えた狼たちが2人を目掛けて殺しにかかってきている。それに対してシリルは己の扱える防御魔法の中で、最硬の盾を2人の前に召喚する。ぶつかる両魔法は人類の力をはるかに超えていた。同じ神に仕えていた両者、されど立場も心意気も真反対。遠慮はない、何があろうと相手を倒すまで。
「撃ち貫け、怒りの一閃!『神弓ダークネスライン』!」
「ゴッ!?やるではないか。だが、外しては意味が無い!『煉獄』!」
「かき消せ、『大血波』!」
闇魔法の次に放った炎の魔法を相殺する血による大波。だが、それでも余波で2人とも吹き飛ばされる。2人がかりで戦っても余裕のある表情を浮かべるベリアルの、底が見えない。
「貴様らには経験が足りん。我を超えるのは不可能よな」
「こいつ…」
「うう…強い…」
「消えろ。我の過去を清算するために」
「レディに手を挙げるとはダンディじゃねえな」
「貴様は確か…ジェラールの友の。雑魚は下がってろ、貴様に用はない」
敵であるはずのウォーリーがなぜか、リボルバーを仲間であるはずのベリアルに向けている。
「俺だけだと思ってるのか?」
「何?…っ!この紐は…」
「ニャー!」
「何故だ?我には貴様らが裏切るメリットが見出せないが」
「外には俺らにはない夢があると気付いてな。
裏切り。それはつまり、彼らの心が未来を見つめようとしていることを意味する。不思議に思う堕天使にウォーリーは力強く返す。人間に宿る力強さを感じる。
「さあ、立とうぜ。俺たちは自分で勝ちにいかねえとな」
「ありがとうございます。でも、あなた達は…」
「信用するもしないもあんたらに任せる。でもさ、俺たちは前を向くんだ」
「覚悟は受け取りました。とりあえず一時休戦です。ユリア、攻勢を仕掛けましょ!」
「巫女の本気、見せてやるもん!」
再び立ち上がった2人は先程まで対立していたウォーリーらと手を組み、目の前の堕天使に立ち向かう。作戦の要になるのはミリアーナだ。彼女の魔法は縛り付けた相手の力を封じるというトリッキーながらも多人数ではかなり役立つ能力だ。
「魔拘束チューブ!」
「またこの紐か。『魔空波』」
「そこよ!『気功掌』!」
「『秒間32フレームアタック』!」
「『神の啓示書・第一巻第一章閻魔の項』参照、『河原石』!」
守りに入った隙を狙った3人の能力が見事にクリーンヒットした。4対1では自分に不利だとすぐに察したベリアルは、すぐにまた縛り付けに来た紐を無理やり引き破り最大級の魔法を発動するため、詠唱に入る。
「天を穿ち、地を裂く刄よ…今この時を持って我が命を伝えん」
「俺たちで妨害する!ミリアーナ、行くぞ!」
「任せて!元気最強!」
「シリルとか言ったな!お前達でとどめを刺してくれ!」
「やれるだけやってみます!(でもどうすれば…あいつの攻撃を消し去るほどの攻撃魔法は…)」
万事休すかと思われた時、ユリアからある提案がなされる。
「お姉ちゃん、一緒に魔法を撃とう!
「あれはかなり難しいって聞くわ。いくら私たちでも…」
「私を信じて!私はお姉ちゃんを信じてるもん!」
「っ!?……そうね、私がしっかりしないでどうするっての。ユリア、私たちの力、見せつけちゃいましょう!」
しばらく動けなくなる2人を庇うようにミリアーナが立ち、チューブを飛ばしてベリアルの妨害をする。だが、その紐も次々に破裂し、時間稼ぎにも限度がある。
「混沌を吹き荒ぶ狂乱の風となりて光を引き裂かん!」
「まだ溜まらないの!?」
「あと少しです!ユリア、行ける!?」
「うみみみみ!もうちょい待って…よし!」
「行けるみたいだ!ミリアーナ、離れろ!」
妨害もあり、2人の力がたまりきるまで時間が稼げた。ミリアーナは素早くその場を離れ、それを確認したシリルたちは遠慮なく全力を放つ。合体魔法、気の合ったもの同士でなければ使えない魔道士の境地とも言える魔法だ。
「「合体奥義『天地護業法』!」」
「我が魔法で大地の塵にしてくれん!『真・魔空波』」
「勝て…競り勝ってくれ!」
「ウォーリー!私たちも援護するニャ!」
「でもあの威力の中でか?」
「頑張ってる子がいるんだよ!?やるしかない!」
自分たちの問題だからこそ、ミリアーナは自分がやらなければならない事案だと自負している。それに、外から来たほぼ無縁の少女たちが奮戦しているとあっては、やらなければ名折れと説得する。
「こうなっては仕方ない!漢をあげるぞ!」
「それでこそのウォーリーだよ!ネ拘束チューブ、喰らえ!」
「俺の銃弾を喰らいな!」
「くそ、邪魔臭い」
「攻撃が少し緩んだわね。ユリア!」
「チェストー!」
決して一人では打ち破れない壁があったとしても、皆でかかれば超えて行ける。敵味方で別れた者たちであっても、団結する術はある。縁を切り続け、孤独に陥っていたベリアルにとっては最後まで持ち合わせなかったものだ。
「こんな雑魚どもに我は…敗れるのか…ガァァッ!!」
「やった!勝ったよ!」
「我は堕天…常に孤独か…」
「何か、辞世の句はありますか?」
「ナーガよ…すまなかった……」
苦悶の表情を浮かべ、最期の言葉を発して事切れた。かつて仕えたチキの先代に陳謝し、予想外の反応の中、ついに戦いは幕を下ろした。
「なぜ最期に彼の方の名を?分からない…」
「お姉ちゃん…」
「落ち込んでるところすまねえが、逃げるぞ。さっき連絡が入ってよ、エーテリオンまで十数分しかねえそうだ」
「……そうですね」
敵の思わぬ言葉が心に反芻する中、上へと向かった皆を信じ、撤退を余儀なくされた。運命の光が構える中、果たして楽園の行方はどちらに向かうのか……