ジェラール戦については直接書く部分はかなり少ないと思ってくだされ。どうにもストーリー上必要最低限しか書かないことになりそうで…。
「おい、あれってお前さんたちのとこのお嬢ちゃん方じゃねえのか?」
「ルーシィ姉さん!それにファントムの…」
「なんか変な奴も倒れてたニャ。多分こいつ倒して魔力切れ起こしたんじゃない?」
逃げるためになるべく全員を安全なところに避難させようと、限りある時間の中で塔を巡っていると、倒れたルーシィとジュビア、そして四戦士の一人、ヴィダルタス・タカが見つかった。
「よし、俺たちはこの二人を担いで先行ってるぞ」
「二人も早く来てね」
「ええ……その、ありがとうございます」
一緒に戦った以上、もはや蟠りはない。リスクを顧みずに組してくれた彼らに礼を言い、他のみんなを探すべく塔内をかける。果たして無事であろうか、状況はどうなっている。様々な不安が脳内をよぎる。
「みんな、どうかご無事で…」
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「クソ炎が!勝手にやられてんじゃねえよ!」
「お前はグレイ・フルバスターだな?名前と数々の悪行は我々も聞き及んでいるぞ、ホーホホウ!我が腹中にいる
「舐めた口きけんのも今のうちだぞ!アイスメイク・
グレイの氷槍が眼前まで迫るが、ナツの能力をコピーしているだけあって、口から炎を吐いて全て溶かし切る。それには皆驚きを隠せず、余波をモロに受けてしまう。
「お前なら知っていよう、
「クソヤローが……」
「まだ足りないようだな!さらに喰らえ!」
「うおっ!?」
氷対炎。一見かなり不利に見えるこの戦いにおいて、側から見てるシモンは勝ち目は薄いのではないかと半ば諦めがある。それに、グレイの魔力などの情報を得ている彼にとってはそれが最も現実的な判断だ。
「グレイとやら、もう下がれ!お前の残り魔力じゃ…!」
「こんな炎、熱くもねえよ!」
「なっ!?炎が凍った!?」
魔法は意志から発せられる。古来よりそう伝えられている言葉の通り、グレイの強気な姿勢が情報を上回り、発せられた炎を全て凍らせる。
「お前の吐く生ぬるい炎より、俺は熱い心を既に知ってるんだ。甘かったな、フクロウやろう!」
「ほ、ホホホッ!?」
「二度とナツの炎と一緒にすんな!『氷刃七連武』!」
「ほ、ホブァッ!?」
全ては仲間を守るため。その強き意志と覚悟、親愛がなせる技を目の前にして、シモンは驚きを感じると共に、エルザの行き着いた安寧を見たように感じた。
「エルザ…良いギルドに入ったな。流石はロブさんのいたギルド」
「くっ、俺もここまでか…」
「グレイ!」
魔力を意志により引き伸ばしたことによる反動と、炎による火傷。並大抵の人間では意識を保つのもやっとだろう。
「ここから先は私が…」
「お前たちは確か生命神と冥府神の…」
「うん!さっき猫ちゃんと四角さんに頼まれたんだ!」
「ウォーリーとミリアーナが?そうか、分かった。グレイとハッピーを連れて船着き場まで行っててくれ。必ずエルザを連れて帰る」
「ナツ兄さんは?」
「これから先の戦いに必要なんだ。どうか理解を示してほしい」
梟が倒されて吐き出されたナツをジェラール討伐のキーと捉えているシモンにとっては、どうしても引けないところだ。
「無茶を言っているのは分かっている。どうか、この通りだ!」
「頭をあげてください…貴方の真摯なる言の葉を信じましょう。そのかわり、貴方も、ナツ兄さんも、エルザ姉さんも…皆、帰ってくるのですよ?」
「ありがとう」
全ての騒乱はナツに託すという彼なりの覚悟と、己の非力さを感じる弱さ。それを否定して止めることも考えたが、最早この手に乗じるしかない。自分の力ではもう止められない次元にまで来ているのだ。
「エーテリオン発射までそう時間はありません。お互いの無事を祈ります」
「分かっている。聖なる者の加護、信じてみよう」
そう言って別れてから数分、エルザと共にいたショウと合流し、エルザが最上階のジェラールの元へと向かったことを知り、彼女の意思により、避難することを最優先にした。
「ねえお姉ちゃん、大丈夫かな?」
「今は信じるしかない。一人でも無事で帰るには彼らに託すしかないのよ……これほど、自分の力の無さを呪ったことはないわ」
「二人とも、やっと来たのね!こっちよ!」
先に避難していたルーシィたちに導かれ、行きに乗った小舟に再度乗って待つ。エルザやシモンたちの願いとはいえ、まるで見捨て同然の選択しかできない自分がいることが許せない者たちもいる。
「エーテリオンが落ちるまであと10分弱だそうだ」
「ここから少しでも離れてましょう。『
「揺れますよ、何かに捕まってください。『気功砲』!」
今は安全を確保するために塔から離れるしかない。船に乗る皆は空を見上げ、落ちる光がナツたちを何処か遠いところへ連れて行かないことを祈るばかりだ。
「姐さん…」
「ナツ〜、無事で帰って来てよ〜…」
「信じれば大丈夫よ。なにせ、あのエルザにナツ、それとシモンだったっけ、がいるんだから」
だが、彼女たちの祈りも無残に裏切られる形になろうとは、ゆめゆめ思わないだろう。天からの裁きが下る頃、ある命が散ることになるとは、全く思いもせず…。