来週は投稿できる可能性が低いので、予約投稿してるもの以外は期待しないでくだされ。
「き、急に揺れが激しくなってない?」
「おい、塔の上を見てみろよ!あんなデケエ魔法陣が…」
「あれが例の兵器」
空に聳えるのは話に出てきたエーテリオンそのものである。準備段階の魔法陣が出現しただけでこの震え方である、発射されればひとたまりもないのは目に見えてる。ジェラールがそれを塔に降らせようとしている真意は計りかねる。
「一体なにが起こるってんだ。俺たちの建てた塔でなにをするんだよ?」
「分からん。でもゼレフを復活させるってことは余程の犠牲が居るってんだろ」
「死者の復活を企むなんて…しかもあの厄災と言われる男を…」
時間がなくなりつつあるが、それでもまだ彼らはやってこない。無事だろうか、無茶はしてないだろうか。色々と思うところはあるが、信じて待つしかない。
未来は平穏であると信じて。
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「待ってたぜ、エルザ。制限時間いっぱいだな」
「貴様をここで討ち取る。ショウやシモン、ウォーリーやミリアーナ、そしてこの塔を建てる時に亡くなったロブおじいちゃんの為にもな」
「させねえよ。ここをお前の墓場にし、
「世迷言はそこまでだ。因果を断ち切ってみせる、我が剣を持って!」
エルザとジェラールの長きに渡る因縁、そして確執をここで終わらせる。どちらが勝つにしろ、終わりを迎えるのはお互いに分かっている。
「楽園ゲーム、最終章の開幕だ!」
「行くぞ、ジェラール!」
剣閃が飛び、悪霊が舞う最上階。命懸けの攻防が繰り広げられる。四戦士の一人、剣豪斑鳩との一戦により、体力と魔力を消耗していたエルザにとっては不利な戦況ではあったが、静かな怒りに闘志を燃やす彼女には負けはない。一進一退のせめぎ合いは、最終的にはエルザに軍配が上がり、ジェラールをねじ伏せて馬乗りになって終幕した。
「ここまでだ。お前の負けだ、ジェラール」
「これで俺もようやく解き放たれる、か。いいぜ、その剣で俺を刺し殺してくれ」
「……この塔のことは調べ上げてある。ゼレフ復活にはこの大陸中の魔道士全員をかき集めてもやっと意味を成すかどうか、だろう?」
「さすがだな。無意味に8年間外にいたわけではないか」
「お前の計画は当初から破綻寸前のものだ、なのに、何故固執した!?」
エーテリオン発射まで残り数分もない。そんな切羽詰まった状況でも、ジェラールは笑みをこぼす。諦めによるものか、この状況を楽しんでいるのか。それは、彼の口から明かされた。
「ゼレフの亡霊だよ。あの時、俺は奴に取り憑かれ、今の今までずっと抵抗できずにここまで来てしまったんだ。だけどお前に負けて、最期を迎えようって時にようやく……」
「ジェラール…お前…」
「悪かったな」
「良いんだ。今更だ、それにエーテリオンからはもう逃げられん。共に逝くまでのこと」
最後のひと時くらいは二人で一緒にありたい。エルザはそう決め、天罰の光が下るまで、そっと寄り添うことにした。しかし、エーテリオンが発射される時に浮かべたジェラールの邪悪な笑みには気づかなかった。
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「うっ……」
「あの塔はどうなった!?」
「煙で見えやしねえ…」
審判は下された。罪人たるジェラールと楽園の塔は果たしてどうなったのか、波で揺れる中見守るが、煙で一向に見えはしない。
「……晴れてきたか」
「影?」
「壊れてねえのかよ、あんな膨大な魔力くらってよ…」
少ししてようやく見えてきた景色に皆唖然としていた。外壁が完全に崩れ、内側から姿を現したのは巨大なラクリマだ。しかも魔力を吸収し、青白く光っているのがわかる。
「あの塔はどんな仕組みなんだ?」
「俺たちは知らねえんだ。何を作ってんのか詳しく知らされてなかったんだよ」
「人の復活にはそれ相応の魔力がいるから、エーテリオンを落とさせたのでは?」
「あり得ない、とは言い切れませんね。まさかこの展開も最初から織り込み済みだったのですかね?」
「でもそんな事して爆発でもしたらどうするのかな?」
威圧感を与える塔を前に様々な憶測が飛び交うが、正確な答えと情報を持つのはジェラールと楽園の塔の設計に関わった今は亡き、ゼレフの信仰団体の幹部たちのみ。
「ここで議論してもダメだ。急いであいつらを連れ戻さねえとヤバイな」
「私たちが行っても巻き込まれて終わりよ?」
「もうその段階を優に超えてます。どちらにせよ危険なのは間違いない、なら、すぐに行動に移さないと」
「拙速は巧遅に勝るってやつだな?誰が行く?」
「私が行きます。ハッピー、運んでくれる?」
真の目的に進む悪魔の所業を止めるべく、最後の決戦に足を踏み入れる覚悟を決めたシリル。混沌渦巻くこの展開を止められるだろうか。