フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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どうもです。次回投稿は不明です。なるべく九月初め頃には出したいと思います。


第26の唄 良き旅立ちの日

「そっか、シモンのやつ…最期の最期までおまえは……」

「悲しいけど、受け止めなきゃだね」

「私はあいつや皆に助けられた。ロブおじいちゃんを彷彿とさせる最期だったよ」

 

アカネビーチに帰ってきた翌日の夕方、治療を受けたエルザはかつての仲間たちと共に、シモンについて語り合っていた。久しぶりに巡る外の世界に、ショウたちは驚かされてばかりだ。

 

「俺たちも前向いて生きなきゃな、あいつのためにも」

「そういうことだ。私はシリルとナツを介抱しに戻るが、お前たちはどうする?」

「一旦戻るぜ。恩人たちと少しでも話してえからよ」

「それは良かった。あいつらも喜ぶだろう」

 

まだ目覚めぬ両者や一緒にいたルーシィたちの元へと戻る。そんな中、エルザには海から声が聞こえたような気がした。

 

『ありがとうエルザ。俺もようやく呪縛から解放されたよ』

「ジェラール!?……いや、まさかな」

 

====

 

「お姉ちゃん、起きた?」

「ええ。無事みたいね」

「うん。シモンさん以外全員生きて帰ってこれたよ」

「そう。祈りは届かなかったか」

 

エルザたちが話し合ってる頃、シリルはナツよりいち早く復活を遂げた。まだ体に痺れが残るものの、動くには支障はなさそうだ。

 

「看病してくれたみたいね。ありがとう、それとごめんなさい」

「良いの良いの!助けてもらったから、それに応えただけだよ」

「ありがと。さ、みんなに会いに行こう」

 

無事に復活したことを伝えれば皆も少しは表情が和らぐだろう、そう考えてユリアの肩を借りながら皆の待つ部屋へと戻る。

 

「みんな〜、お姉ちゃん復活だよ!」

「ご迷惑おかけしました。ただいま復帰しました」

「お、怪我はもういいのか?」

「ええ。まだちょっと痺れますけど」

「あとはナツだけね。全く、シリルの方が復活早いって、ナツもまだまだね」

 

和気藹々とした雰囲気を醸し出していたところに、楽園の塔組も戻ってきて、ナツ以外の皆でワイワイと話が盛り上がる。彼らも世界を見たいと夢を語り、正規ギルドに入ればそれも現実味を帯びてくると助言しながらその日は夜も忘れて語り合う。

 

「それじゃあ俺たちは部屋に戻るよ。また明日話そう」

「そうだな。これからは自由に暮らせる、話すことくらいいくらでも出来よう」

「良かったです、姉さんが楽しそうに話せて」

「お前たちのおかげで蟠りなくいろんな話に花が咲かせられる」

 

失ったものはあるが、こうして得られるものもある。エルザにとっては幸せなことなのかもしれない。

 

====

 

それから2日後、ようやくナツも復帰を果たした。あまりの遅さに皆からいじられてはいたものの、いつものギルドの雰囲気は取り戻せた。彼も交えて皆と話せば、前よりさらに盛り上がり、楽しいひと時を過ごした。

 

「あいつらもいい奴らだな!俺たちのギルドにピッタリだぜ!」

「確かにな。あいつらあの塔にいた奴らだがよ、根っこの部分は俺らと一緒なのかもな」

「あいさー!」

「ふふ、仲良くなるのに時間はいらないのかもしれませんね」

 

和やかで平和な時間がこれからも訪れると思っている皆に、ルーシィが慌ててある一報を伝えた。どうもショウたちが何も知らせずにどこかに行ったのだという。

 

「どこ行きやがったんだ?これ以上逃げる必要ねえのに」

「分からない。あと、エルザが花火の用意しとけって…」

「あれか」

「あれだな」

「え?なんの話?」

 

長年ギルドにいるグレイやナツ、ハッピーはすぐに何をするか見当がついたが、シリルら比較的新入りに近い者たちは何がなんだかわかっていない。

 

「まああいつらと話すのはエルザに任せるとして、俺たちもとりあえずあいつのいるとこに行くしかねえな」

妖精の尻尾(俺たち)流の別れの儀式ってやつだよ。行くぜ」

「はあ…行きましょっか?」

「別れの儀式…え!?あの人たちどっか行くの!?」

 

ようやくルーシィも察しがついたみたいで、皆でエルザの後を追ってホテルを出た。途中で祭りが開かれており、そこで話を聞く限りでは無人の砂浜に行ったということらしい。

 

「お、居た!」

「もう始まっているな」

 

====

 

「おまえたちは自分の道を歩こうと言うのだな?」

「ああ。俺たちの自由はこの旅から始めようと思ってね。姉さんにはこれ以上迷惑はかけられないし」

「そうか。なら、私としても壮行会をしなければな。たった数日だったが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間として、3つの約束をしてもらう」

「俺たちそういう立場だったか?」

「言っちゃダメだにゃ。エルちゃん、案外そういうとこ、頑固というか真面目だから」

 

正直何が起こっているのか飲み込めないウォーリーを嗜めるミリアーナたちを余所にエルザは換装し、口上を述べていく。

 

「1つ!ギルドにとって不利益となる情報を他言すべからず!」

「いや、不利益な情報って…俺たちなんも知らねえぜ?」

「2つ!過去の依頼者にみだりに接触し、個人的な利益を生むべからず!」

「依頼者って何?」

「これから別のギルドに行けば、自然と知るだろう。そして、最後の一条だけは…どんな時でも守ってほしい。3つ!たとえ進む道は違えども、力ある限り、強く行きねばならない!そして…自分の生命(いのち)を決して小さなものとして見ず……愛した友を決して、生涯ずっと忘れてはならない!!」

 

たとえ距離がどんなに離れていようと、ずっと心は繋がっている。涙を浮かべて話し、涙を拭って聞く。それぞれに抱えた思いはあれど、心は常に寄り添っているのだから。

 

「私はお前たちを決して忘れない…心に思い出を刻んで進もう。だから、お前たちも今日までの艱難辛苦を忘れずに、進め。妖精の尻尾(フェアリーテイル)式壮行会、開始!」

「お前ら、また会おうな!」

「私たちはいつまでも友達だよ!」

「どうか息災であってください!」

 

彼ら見送る妖精たちの花火の音色に背中を押されながら、これから自由を知る者たちは新たな旅路へと行く。心構えがあれば、強く生きていけるだろう。この旅立ちを思い出に。晴れ渡った夏の日、シリルはこの情景を歌に残していた。

 

『行く船の 去りて離れて 目に涙 されど心は 寄り添いしかな』

 

====

 

その頃、ジェラールを陰で操っていた元評議員で彼の側近だったウルティアはある男と連絡を取っていた。

 

「そういう訳で、評議会は壊滅。しばらくは機能しないため、私たちからは注目はそらせるかと…」

『よくやったウルティア、これで我らの念願に一歩近づいたろう。あの男も哀れよな。死んでもいない『ゼレフの亡霊』に踊らされるとは』

「ええ。彼は400年間、ずっと生きてましたから」

 

彼女たちは知っていながら、計画のためにあの楽園の塔を巧みに利用したのだ。

 

「それではまたギルドで会いましょう、マスターハデス」

『ではな。それと、あるギルドから3人、堕天使を寄越してもらった。我らのために、働いてもらうこととなった。詳しくは後でな』

「了解しました」

 

闇はまた一歩、光の知らぬところで進んでいる。




下手くそな和歌で申し訳ないです。

それと主タイトルの生命の唄とはおそらく、きっと無縁です…タイトルとか回収できるか不安になってきた…

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