今回から六魔将軍編です。
誤字とかあれば教えていただければと思います
第34の唄 集う者
「バラム同盟?」
「ええ。最近ギルド連盟の方で動きが活発になってるって議題に挙がっているみたいよ」
ギルドの方に顔を出してみれば、そのような話題が出ていた。『バラム同盟』は闇ギルドを統括する立場にある四つの大きなギルドのことであり、それだけ強大な組織とも言える。
「急に活発になったんだとよ。何か裏があんじゃねえのか?」
「それ、まずいよね?それと、『
「ああ。前に戦った闇ギルド、あのエリゴールのいたギルドだ」
「バラム同盟の『
何かの因縁か、こうして図式化してみると、厄介な相手を敵に回しそうな予感がして来る。そこに嫌な予感の答えを携え、会議から戻ったマスターがある宣言をする。闇ギルドを統括する者たちの一つ、『
「それは本当ですか?」
「無論、本当じゃ。じゃが、ここを集中的に報復されぬようにするためにも同盟を組むつもりじゃよ」
「それでじっちゃん、誰が行くんだ?」
「ナツ、ルーシィ、グレイ、エルザ、ハッピー。ここからはお主らが向かう。それとここにはおらぬが、シリルとユリアはギルド連盟の推薦で向かう」
さも当然だと言わんばかりに告げられる。周りも反対する者はおらず、なし崩しのように5人の出撃は後押しされ、決まっていく。
「うう、なんで私まで……」
「チームを組んでる以上、仕方ないよ」
「そ、そうね」
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ファンタジア終了から早一週間。ギルドでは仕事に行く者、酒を友と飲む者、喧嘩に走る者といつも通りに過ごしていた。マスターが引退宣言をした事もあったが、フリード直々の嘆願により、事なきを得た。そんな日常を取り戻した頃、ルーシィはシリルにある質問をぶつけた。
「そういえば2人はどこに住んでるの?」
「少し歩いたところです。仕事終わったら来ます?」
そんな誘いもあり、金欠を解消し終えた彼女たちはチームメイトのナツたちを伴ってシリルの家のある丘に到着した。そこにあったのは静かな場所にある一軒家だった。
「ただいまー!」
「姉さんたちも一緒にどうぞ」
「悪いな、邪魔させてもらうぜ」
「結構広いね」
「あまり物を置いてないだけですよ」
客をもてなすために簡素なお茶とお菓子を準備している2人の背中に、ギルドであった話をエルザは静かに問いかける。
「そういえばシリル、ユリア、聞いたか?『バラム同盟』の話」
「何それ?」
「お茶入れてきましたよ。で、バラム同盟ですか?」
「ああ。実は2人がギルドに到着する前に出た話なのだが……」
エルザ曰く、闇ギルドを束ねる組織が4つあり、それをバラム同盟と呼ぶ。その中の一つにたった6人のギルド、『
「俺とルーシィ、ナツとエルザで向かうことになってな」
「あれ?私たちは?」
「無論、一緒に行くことになる。どうも悪魔のごとき者がいるそうだ。2人がその様な者を相手取ったと聞くが」
「堕天使。楽園の塔にいたアイツの仲間だろうね」
「ベリアルの……『
2人を苦しめた堕天使と同等かそれ以上の実力を持つだろう相手だ。そう楽には勝たせてくれない作戦になりそうだ。
「今回2人は地方ギルド連盟からの推薦で行くことになる。出立は明日だ。今日はゆっくり体を休めることとしよう」
「ならばせめて泊まっていってください」
「何から何まですまねえな」
少しでも英気を養っておこうと、この日は何事もなく眠りにつくことになった。
皆が眠りにつく中、シリルは外で星を眺め、まだ起きていたルーシィが隣に腰かけ、問う。
「シリル、まだ寝ないの?」
「なんだか眠れなくて……このお守りを見てると、色々考えちゃうんです」
「どういうこと?」
「産まれた村が原因不明の病に冒され、お父さんとお母さんのおかげで私だけ無事でした。そんな話を聞いて思ったんです、私はその原因と裏にある何かを探さなきゃいけないって」
過去に想いを馳せながら、自分のいた村のことを調べたり闇ギルドと戦ったりといった自分の運命とやらについて誰にも言えなかったことを語る。今のルーシィにならわかるかもしれない、親と子のすれ違い、そして彼ら親の想いとやらに。
「最初は捨てられたんだと思ってました。でも、今なら分かります。私を助け、未来を託したんだと」
「そう、なんだ」
「親の死は無駄にしたくありません。いつかその病の謎を解いてみせるんです」
「重い使命ね。私たちも出来ることがあれば手伝うよ、なんたって仲間なんだから」
「ありがとうございます、姉さん」
そう、ギルドは家族であり、仲間だ。思い悩むことがあれば皆で背負えばいい。やはりギルドは良いものだと改めて認識させられる言葉だった。
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「さて、もうそろそろだろう」
「ま、まだ……つかねえのか」
「しっかりしろよナツ。これから大事な作戦なんだぞ、こんなトコでくたばってる場合か」
集合場所は
「ここが集合場所か」
「結構いい趣味してるわね」
「仮にもマスターだからね」
「うぷ、まだか…」
「もう着いたよナツ」
まだ他のギルドはついていないようで、いつもの5人だけだ。シリルも少し遅れてやって来るようで、今はまだ道中にある。
「お待たせしました、そしてようこそ。我ら『
「僕は『聖夜のイブ』」
「『空夜のレン』だ」
「そして頭脳たる僕は『白夜のヒビキ』」
華麗に登場したトライデントの壮麗な顔ぶれにルーシィは少しときめき、あれよあれよといつの間にか用意されていたキャバクラのような椅子に為すすべもなくエルザ同様座らされる。
「今回の任務、よろしく頼む……」
「うわぁ、やっぱりその笑顔は素敵だよ!」
「あ、ああ……」
「おい、お前にこれ、やるよ。べ、別にお前のためじゃねえから」
「つ、ツンデレ!?」
「何やってんだ、ったく。おい、俺らの姫様に手ェ出さねえでもらおうか!」
同じ仕事をするというのに早速一触即発となりそうな空気が流れ、現れたトライデントをまとめるエルザの彼氏を一方的に名乗る一夜を、彼女が殴り飛ばしたことで、さらに険悪な空気が流れる。しかもそこに現れたリオンら『ラミアスケイル』に間接的に喧嘩を売ることとなり、空気は最悪なまでに凍りつく。しかし、それを止めるものが現れた。ラミアスケイルのリーダーで、聖十大魔導が1人の『岩鉄のジュラ』、そして遅れてやって来たシリルとユリアだ。
「やれやれ、ようやく着いたと思えば。喧嘩はやめなさい、さもないと……全員死にますよ」
「シリル殿の言う通りだ。無駄な争いを仲間内でしてる場合ではないぞ。これから協力して強大なる闇に立ち向かうのだからな」
彼の言葉に皆冷静になり、残るひとギルドの到着を待つばかりとなった。
「さて、もうひとギルドがきたら、話を進めるとしよう。頼めるか、一夜殿」
「勿論ですよ。ああ、それと…最後の『
「へぇ〜。なんかすごい人が来そうだね!」
「そういうことじゃないと思うわよ」
喧々諤々と議論がなされる中、その少女はやってきた。青色の綺麗な髪をなびかせているその少女はシリルより若く、皆を驚かせることとなる。
「ま、間に合った……えっと、遅れてごめんなさい。『
これで4ギルド集結と相成った。果たしてこの出会いが未来を動かす力となり得るのだろうか。これは天のみぞ知る。