フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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お待たせしました。最近体調が悪く、書くのに時間がかかってしまいました。

とりあえずゆっくりながらも進めるつもりでいますので、よろしくお願いします


第35の唄 襲来

「子供!?」

「1人で来たのがこんな子供だとは……」

「そんなことなら私もユリアも大して離れてないような」

「ふむ、これで全員揃ったな」

「おい、話進めんのかよ」

 

ウェンディの幼さに驚きを隠せない一行だが、彼女についてきたハッピーに似た喋る猫のシャルルの出現により、尚更騒ぎが広がる。それをジュラが諌めて沈め、ようやく話が進むことになった。

 

「今回の目的地はワース樹海の中に眠る『ニルヴァーナ』の破壊とそれを狙う『六魔将軍(オラシオンセイス)』の討伐およびそれに協力する謎の闇ギルド『流れる七星(フォーレンスターズ)』を撃破すること」

「あの、私戦力にならないと思うんだけど」

「私もです。あの、サポート魔法しか使えなくて、ごめんなさい」

「花のパルファムのように安らかな心で聞きたまえ。討伐といえど、直接戦うのは本来の目的にあらず」

「と、言いますと?何か策が?」

 

弱気なルーシィとウエンディに対して、一夜は自信ありげに応え、シリルの疑問にヒビキが答える。

 

「その通り!僕たち天馬が大陸に誇る爆撃艇『クリスティーナ』があれば、集まった彼らを纏めて砲撃できるんだ!」

「なるほど、つまりはかの連中をその爆撃拠点まで導くか、それ以外の範囲であってもある程度の範囲にまとめる、そういうことかな?」

「さすが聖十、お察しが早くて助かります。僕たちの計画は簡単に言えばそういうことになります」

 

つまり、直接倒そうとしなくても、クリスティーナの砲撃が当たれば良いのだ。実力がなくとも作戦を成功に導ける。今回標的になるのは8人。『六魔将軍』のメンバーはコードネームであり、高速で動けるとされるレーサー、人の心を覗けるエンジェル、滅竜魔道士のコブラ、天眼を持つというホットアイ、情報がほとんどない不気味な男ミッドナイト、そして司令塔のブレインなる男から構成される。『流れる七星』からはカスピエルとイブリスという姉弟で、2人でコンビを組んでいるそうだ。

 

「へへ、簡単で良いじゃねえか!なんなら、俺が先にぶっ倒してきてやるぜ!」

「おいナツ、聞いていたのか!全く……追うぞ」

「あのバカヤローが」

「うえ〜、もう行くの?まだ心の準備が出来てないって」

 

作戦を聞いてもなお、自分の手で倒そうと張り切るナツをフェアリーテイルが追いかける形で先手を取る。それに遅れを取るまいとラミアに所属するグレイの兄弟子リオンとシェリーが追う。皆がそれにつられる形で出撃した。

 

ただ、敵が後ろにもいることを知らず。

 

====

 

「あう…なんかよくわからないで着いてきちゃったけど、私みんなの役に立てるかな?」

「大丈夫!自分なりに頑張るんだよ!」

「強いんだね。ユリアちゃんは」

「えっへん!」

 

年が似通っている2人は早速打ち解けていた。今回の作戦で戦うことに自信のないウェンディを励まし、手を引くユリア。引っ込み思案なウェンディとガンガン進むユリアは性格こそ違えど、仲良くやれそうである。

 

「2人とも、ムリは禁物よ。私たちが頑張るから」

「ウェンディお姉ちゃんは私が守るよ!」

「ふふ、その意気よ。ウェンディも出来る限りで良いから、ムリしないでね」

「あ、ありがとうございます」

 

すると、皆を覆うように影が現れ、先を走っていたナツが急に止まる。空を見上げる彼にグレイがぶつかり、文句を垂れる。

 

「んお?」

「おい、急に止まるなよ!なんだってんだ」

「上見ろよ。アレすげえぞ!」

「おお!あれが……魔道爆撃艇『クリスティーナ』か!」

 

空に現れたその爆撃艇に皆、驚嘆を禁じ得ない。大陸を探してもこれほどの物はそうそうお目にかかれない。青い天馬(ブルーペガサス)が大陸に誇る兵器、クリスティーナのお出ましである。

 

「すごいですね」

「驚いてくれて嬉しいよ。だけど、これからが本領発揮の時かな」

「よし、順調だね。このまま進んで……」

 

事は快調に進んでいるように見えたが、突然爆撃艇が攻撃を受ける。それを呆然と見送ることしかできず、気づけばそれは地に堕ちてしまっていた。

 

「クリスティーナが!」

「敵か?どこにいるんだ?」

「……来たか」

 

墜落したクリスティーナの影から8人が姿をあらわす。『六魔将軍』と『流れる七星』のうちの2人である。先に口を開いたのは弟のイブリスだ。愉快げに細い体躯ながら大きな斬馬刀を振り回す。

 

「どいつもこいつも弱そうだね」

「油断したらダメよイブリス。でもま、強くないのは確かでしょうけど」

「無駄口はそこまでだ、始めるぞ。レーサー、行け」

「オーライ!」

 

レーサーの高速魔法により、先手を譲る羽目になる。歴戦の魔道士をもってしても攻撃がかすりもせず、ジェラールの『流星(ミーティア)』を超える速度を見せる。

 

「くそ、アイスメイク……」

「させないゾ?ジェミニ!」

「ピーリ、ピーリ!」

「なっ!?」

「星霊魔道士!?」

「作戦はすでに把握済みだゾ。それに、ジェミニは心が読めるもの」

 

こちらの動きが分かっているかのように攻め、コブラにも、ホットアイにもかすりもしない。寝ているミッドナイトに至っては魔法が曲がるほどだ。堕天使の二人は頑丈さとコンビネーションがひかり、次から次へとなぎ倒していく。唯一立ち回りをキープできているのはエルザだけだったが、彼女も多数対一では攻め手に欠け、コブラの連れている大蛇『キュベリオス』の毒牙にかかり、倒れる。

 

「邪魔をするからだ……ほう、まさか天空の巫女と冥府の子がいるとはな。後ろの二人を捕らえろ!」

 

誰も動けない状況下、最悪の事態を招いてしまう。レーサーの高速魔法を止められず、ユリアが単独奮起するものの、連合をあっさりと倒した男らには敵わず、ウェンディ、そして巻き込まれるようにハッピーとともに攫われる。

 

「ユリア!!」

「ウェンディ!」

「ハッピー!」

「ふふ、これにて第一段階は終了だ。消え失せろ、『ダークロンド』!」

 

もはや用は済んだ。ブレインは慈悲もなく広範囲魔法を連合の上空から放つ。絶体絶命に思われたが、ここで救世主が現れる。遅れてやってきた岩鉄のジュラだ。

 

「岩鉄壁!」

「た、助かったよ」

「何気にありがとう。庇ってくれたのね」

 

負傷したジュラの迅速な判断と対応に助けられ、敵の追撃は免れたものの、3人を捕らわれた上に逃亡を許してしまう。その上、先ほどの戦闘でエルザがコブラの毒にやられ、身動きが取れない。心を読むエンジェルの奇襲により遅れた上に傷だらけの一夜の鎮痛効果があるパルファムをもってしても彼女の痛みは和らぐ兆しはない。

 

「まさかユリアとウェンディ、ハッピーまでも……私が不甲斐ないばかりに!」

「落ち着いて、冷静さを失ったらダメだよ」

「しかし!エルザ姉さんがやられてて、あちらもいつ何が起こるか!」

「だからこそよ。あの妖精女王を治すならウェンディの能力がうってつけなの」

 

シャルル曰く、ウェンディは天空の滅竜魔道士であり、彼女の言っていたサポートは多岐にわたっており、回復や能力の上昇、解毒や解熱、鎮痛まで可能なのだという。

 

「そうとなれば、今後どうするかは明らかね」

「そうだな。まずはウェンディとユリア、それとハッピーの奪還だ」

「それと、ニルヴァーナなる魔法の在り処の特定、六魔将軍(オラシオンセイス)の各個撃破だ」

 

仲間は取り戻す。皆の決意が一つとなり、真に同盟がなった。敵を倒しにいくもの、目的の物を探しにいくもの、救助に急ぐもの、この場に残るもの。それぞれ目的は違えど、やるべきことは心得ている。

 

「彼らの好きにはさせません」

「舐められた真似されて、引き下がっていられるか!」

「闇の思惑(おもい)、断ち切るのは今しかない。各々、秘めたる力を糧に……進め!」

「「「おおおおっ!」」」

 

重ねる拳は小さな魂を穢れなき高潔な光へと昇華させる。闘争の鐘は鳴れり、いざ出陣。

 

====

 

「おい小娘ども、お前らにはやってもらうことがある。良いな?」

「え?」

「何をさせるつもりなの?」

「レーサー、あのポイントから例のやつ、もってこい」

「了解だ。だが、こんな小娘どもに出来んのか?」

「無論だ。目の前で特別に見せてやろう」

 

ブレインの言う例の人物とは一体何者なのか。賽は投げられた、あとはその目の赴くままに進むのか。それともその目を変えるほどの革命が起こるのか。果たして連合の未来はどっちだ。


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