フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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遅くなりました。しばらくお待ち頂いたのに、内容は微妙な出来でして、大変申し訳ないです。

こんな調子で次いつかわかりませんが、よろしくどうぞ。


第38の唄 魔獣変化

第38の唄

 

「人間の割に良くやるね」

「お二人は人の可能性を見出せなかった。だから堕天などするのですよ」

「私たちの愛の前に人間どものチンケな感情など些細なものよ。それを理解しなかったのは貴女たちでは?」

 

武による戦とともに舌戦による問答が繰り広げられるが、平行線を辿るだけで交わることはない。

 

「『土人形の舞』!」

「『シャドー・ハンマー』!」

「あの二人、やり始めたか。じゃあ、こっちの相手は君かな?」

「そのようですね。『波動バースト』!」

 

余裕の表情を崩さぬ堕天使に、神の子は攻める。未来を作るためにも。

 

====

 

ニルヴァーナが発動したことであたり一帯の森林にも影響が出始めている。捜索を行うイヴやレンがまず察知したところでは一部の木がニルヴァーナに似た黒い瘴気を放ち、木自体が黒く染まっている。

 

「これは、なんなんだろうね」

「ニルヴァーナってやつの影響か?通信できねえのもそれが原因かもしれないな」

「早く見つけないと……ウェンディちゃんたち、無事だといいけど」

 

ニルヴァーナの影響はここだけではない。グレイと共闘しに行ったリオンとシェリーと離れているジュラと戦うホットアイにもニルヴァーナの本来の力が働いている。

 

「ぐっ、ノォー!」

「何事だ!?ニルヴァーナが出てから様子が……」

「私は、私には金……など必要ないデス!」

「えっ……はぁっ!?」

 

先程までは金のために戦っているなどと述べていた目の前の人間が、急にそれを前言撤回し、厄が落ちたかのような慈悲深い顔をもって愛を語り出した。

 

「私は弟を探すためにこのギルドに入ったデス!ですが、今気づきました!このままでは私は弟に合わせる顔がナイと!世の中には愛、ラブが必要デス!」

「え、ええ?」

「さあ!私たちの手で他の皆さんにも愛を伝えるのデス!」

「(ど、どう対処すれば良いのだ?)」

 

このように様々な現象を引き起こす事態の元凶、ニルヴァーナを巡って今戦闘が繰り広げられる。

 

====

 

「真っ二つにしてやる!」

「やたらめったらに振り回して……くっ!」

 

真横に振り回された大剣をくぐり抜け、体制を低くして好機を伺う。

 

「でぇい!」

「そこ!『気烈胴廻脚(きれつ・どうかいきゃく)』!」

 

大剣を振り上げた所に攻め時が有る。その直感に従って低い姿勢から脚を回し、頭めがけて天を廻る脚を打ち降ろす。空手の技、『回転胴廻蹴(かいてんどうまわしげり)』の応用である。

 

「ぐぇっ!」

「『ブラッド・ランス』!」

「『波斬撃』!」

 

追撃をすれど、頑丈な堕天使はすぐに体制を立て直し、相殺を狙った波攻撃を繰り出す。衝突する両技が煙を上げ、それが晴れると、シリルの脚が顔面を捉えた。

 

「浄化されなさい、『神気烈脚(ボルティック・シュート)』!」

「ぐっ、がはぁっ!」

「終わりです」

「まだだ、まだ終わらせないよ。かぁぁああっ!」

 

隠し球を持ち合わせていたのだ。はだけさせた胸の中央には柘榴石のような水晶がはめられており、それが彼のパワーを引き出していたのだ。それの力を解放した時、人間の姿から悪魔の本来の姿へと変貌する。

 

『これが僕の力だ!』

「まだ隠し玉があったなんて……あの水晶を壊せば……」

『余所見なんて随分と余裕だね。ウヒャア!』

「(速い!)」

『ラリアットォ!』

「ガハッ!」

 

ガードのために纏った神依・腕と胴がまるで意味をなさないような猛スピードとパワーがシリルを襲い、後ろで戦っていたユリアやルーシィを追い抜くくらいの距離を吹き飛ばされる。

 

「(一撃が重すぎる。神依を纏っても痛みがこんな酷いなんて……骨が軋むし、血管が切れてしまったわ)」

 

猛獣のような驚異的な腕力により、十数メートルは飛ばされてしまい、骨は折れかけ、岩にぶつかって血が飛び、痛みで体の動きが鈍くなる。

 

『アヒャヒャ、やっぱり人間は脆いね。まだ序の口のつもりなんだけどな』

「あの、一撃が……ぐっ…」

 

膝をつくシリルにイブリスは飛び、噛み砕かんと大きな口を開く。まともに動くことも叶わないシリルは丸ごと飲み込まれた。

 

「お姉ちゃん!」

「シリル!」

『捕食完了。これで敵はいなくなったも同然だよ』

 

終われば呆気ないとばかりに他の獲物を見渡す。だがその時、急に顔が歪む。身震いが起こり、痙攣を起こし始めた。

 

『お、おごご……』

「神の力を喰らおうなぞ、無謀な真似をしますね。それにそれは我が分身体、途中ですり替えておいたのですよ」

『うが、うがが…ど、どうなってる。確かに食らったはず』

「相殺した時に分身と入れ替わったのです。私の魔力は貴方の体内に残っている、ならば貴方のその水晶、内側から壊してみせましょう」

 

シリルの本体は先ほどまでイブリスのいた場所に立っていた。右手を前に突き出し、詠唱を唱えて拳を握る。死に様を悟った堕天使は、大いに慌て、再び食ってかかろうとする。

 

『や、やめろ!ウガァ!』

「慢心は命を殺す。今度こそ浄化してあげましょう、『血気葬送』!」

『ぐ、ブベラッ!』

 

魔獣の牙が触れようかという時に、その体は水晶ごと木っ端微塵に砕け散った。生命の巫女と言えど、相手に手をかけることがあるのだ。多くの無垢なる命を守るためならば。

 

「輪廻を廻り、今度は綺麗な魂として戻って来なさい」

 

シリル対イブリス。勝者シリル!


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