進行的に少し原作と流れが違いますが、ご容赦を。
「なんか大きな咆哮が……ナツ兄さんでしょうか」
ニルヴァーナ全体を揺るがす獣のような咆哮に何故か勝利を確信する。あのナツだ、負けるはずもないだろう。そう信じて塔に向かっていると、何故かエルザと倒れたジェラール、気絶したミッドナイトに出くわす。
「姉さん!」
「大丈夫か?こちらも今しがた敵を倒したんだ」
「良かったです……」
「塔の方で爆発があったが、何か知ってるか?」
「兄さんたちやジュラさんが向かいましたが……」
「まさかな」
「少し様子を見てきます!」
「おい!まったく……」
居ても立っても居られないとばかりにエルザとの話を切り上げ、全速力で塔まで向かう。すると、そこから出てくるのは六魔に居なかったはずの色白の大男だ。
「ほう、まだ生き残りが居たか。丁度いい」
「貴方は何者です?敵、で間違いなさそうですが」
「これから死ぬってのに……俺はゼロ、このギルドの真のマスターさ。あの坊主、俺のもう1人の人格によくやってくれやがって」
六魔のマスターと名乗る男、ゼロ。後ろをむけば、倒され、傷だらけの仲間たちが眼に映る。間違いない、目の前の男がやったのだ。
「よくもみんなを……」
「テメエもあいつらの仲間ってんなら、ぶっ壊してくれる!」
「『生命神の剛拳』!」
「緩いな。はあっ!」
「ぐっ!」
「まだまだこれからだろうが!『
ジュラの岩鉄壁さえも貫く魔法がすぐさまに追い打ちをかけ、壁に打ち付けられた少女の肩にいとも容易く穴を開けていく。
「(か、肩が射抜かれるなんて。分身を出す前に撃たれるとは……)」
「ははは!まだぶっ壊れてねえだろうが!」
「言ってくれますね。『血縛鎖牢』!」
「何だ、この程度か?ふん!」
痛くも痒くも無いと言わんばかりに片腕をひねれば、神の鎖をも引きちぎってみせる。
「『生命神の一声』!」
「ぐっ……ふむ。俺に傷を付けるたぁ他の連中より骨がありやがるな」
「伊達に修羅場は潜り抜けてないんで」
「ふふふ、フハハハハ!抜かしやがる!『
「同じ手は食いませんよ」
「どうかな?」
ただ岩を貫いて削る怪光線ではなかった。真横を通り過ぎたはずの魔法は下から出てシリルの身体に傷をつけ続ける。しかも変幻自在に曲がりうねって、連打を浴びせてくる。
「ぐっ、うあっ!」
「テメエは確かに他の奴らとは違ぇみてえだがそれもここまでだ!沈め!」
「『ディオ・アモーレ』!」
「なっ!?がっはぁ!」
防戦一方になっていた彼女に油断していたのか、ジュピターと相打ちになった大魔法がかすった程度とは言え、ナツたちを一方的に打ちのめしたゼロを吹き飛ばした。
「一矢……報いましたか」
「何だよ、面白くねえな。ちっ」
だが、あまりにも傷が出来すぎた為に一発を放つのがやっと。魔力の急激な消費と出血により、前のめりに倒れたシリルに興が削がれたのか、目的のために多少の破壊をするのも躊躇われ、またしても王の間に向かうべく去っていってしまう。
「結局俺の破壊衝動に耐えられたやつなどいなかったな。あの『化け猫の宿』も今の俺の前に屈する」
王の間から見下ろす先にはウェンディとシャルルのギルドが肉眼で捉えられる位置にあった。かつてこのニルヴァーナを作り上げた一族の末裔の暮らすギルドだが、ゼロからすれば潰すだけのただの的だ。
「今こそ完全に破壊し尽くしてやる!ニルヴァーナの魔導砲、とくと見よ!発射だ!」
無慈悲なる号令が下され、前方から唸りが響き、ゼロの高笑いとともに撃ち放たれようとしている。
光は闇に屈すると思われた瞬間、砲撃は狙いを外して上に逸れてしまう。有り得ない光景にゼロがイラついた顔を振ってみると、空には撃墜されたはずのクリスティーナがそこにあった。地上に残ったメンバーが応急処置を施し、それぞれの魔法を持ってなんとか浮かせていたのだ。
『みんな、無事かい!?』
「ヒビキか!私とウェンディ、シャルルは無事だ」
『良かった、居るんだね!実はニルヴァーナの破壊方法が分かったんだ。今のはイヴの雪魔法を混ぜた一発なんだけど、これ以上は飛行も迫撃砲も無理なんだ』
「何かあるのか!?なんでも良い!『化け猫の宿』が狙われてる、急いでくれ!」
『それは、今伝える』
ヒビキの魔法、『古文書』を遡ってみたらニルヴァーナに関する情報に行き着いたのだ。そこに記されている限りでは、古代都市を動かして支えている脚の内部にラクリマがあり、そこを同時に破壊することで一気に崩壊を招くことが出来るそうだ。
『脚は全てで8つ!分散して1人一脚に当たって欲しい!』
「ご、ごめんなさい。私、破壊魔法なんて持ってなくて……」
「それなら…」
「ここには2人いる。もう1人私のそばに魔法を扱える奴がいる」
『それなら私にお任せください、メェーン』
念話を通して志願したのはいつの間にかこの都市に入り込んだ一夜だ。彼の持つ
「あとは5人だ!誰か、誰か返信してくれ!」
『それは無理って話だよ。ちょいとハッキングさせてもらって聞いてりゃあ物騒なことを言ってくれてよ』
念話を突然ジャックされ、皆にゼロの声が聞こえてくる。彼が何を言うのか、皆が警戒しながら聞いていると、思わぬ凶報がもたらされる。
『今しがた火竜、星霊使い、氷の造形士、生命と冥府の巫女を倒してきたところでな。更に俺はラクリマの真ん前にいる、人数が揃っても無駄なんだよ!はははははっ!』
「ナツたちを……念話が切れたか」
『不味いね。このままでは人数が居ないよ!』
そう、この作戦に参加している人数から倒された5人とクリスティーナに乗る人数、そして応答した人間から計算した結果、8本ある脚に向かえる人数に足りないことが判明する。だが、ここでやられっぱなしのままじゃないはず、必ず皆の声に応えてくれるはず。祈るように呼びかける。
「ナツ、答えてくれ。お前なら……」
「ユリアちゃん。立って、声を聞かせて」
『グレイ、お前は誇り高きウルの弟子だ。ここで屈するような教え方はされてないはずだ。立て、立つんだ。今こそウルの教えを実践する時だろ』
『私、ルーシィなんて嫌いですわ。でも、今ここで死なれたら嫌みも言えませんわ。だから、早く答えなさいな』
『みんなが期待している。聞こえているよね?』
「ああ、聞こえてる!」
「私は……守るもののため、このままでは死ねない!」
仲間の声が力を分け与えてくれる。ゼロに墜とされた妖精たちは再び立ち上がる。