フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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お待たせしました。年内にこっちの小説での投稿は終わりです。次は年明けてからになります、多分


第47の唄 作戦

「ようチキ!遅かったじゃねえの!」

「うっさいわね!急に呼び出しくらったからこれでも急いで来たんだよ!?あら、そっちの子達は?」

「アースランドの私とユリアだ。あっちだとあたいはあんたの娘なんだと」

「あらまぁ、奇遇だね。ま、このアホに使われんのは癪だけどおもろいから許す」

「そりゃどうも……ってアホはねえだろ、ばかやろー」

 

お互いに憎まれ口を叩いてはいるものの、本気で嫌がっている訳ではなく、長らくいっしょにいる事によるある意味仲の良さの裏返しである。その証拠に3人とも遠慮する事なく乗せているし、全速力で車を出してくれている。

 

「で、王都だって?あそこ今パーティ状態だから変なことしなきゃ怪しまれないと思うけどね」

「あそこに運ばれたって言うラクリマに用があるんです。よろしかったんですか?私たちを乗せて」

「何言ってんの。あんたは強いもんを心のうちに秘めてる、それを見れば断るのは無粋ってもんさ。私はそこまで鬼じゃない」

「変わらないねぇ、あんたも」

「うっさい。あんたもどっこいどっこいでしょうが!」

 

この車に乗って気づいた事だが、SEプラグ(セルフエナジープラグ)が無い。魔力を体内に持たない人間が大半である以上、ラクリマを使っての運転になる。正直車に関してはこちらの方がかなり進んでいる。くだらない会話から大事な作戦会議まで色々話していると、早いものでもう王都裏の崖まで来ていた。

 

「ほれ、裏側に着いたぜ。巧くやんなさい、成功を祈るわ」

「ありがとう!また会えたらいいね!」

「偉いわねぇ、国王軍の奴とは大違いだ」

「よし、気を引き締めていきましょう。ありがとうございました、お母様(チキさん)

「なんかこそばゆいね。ま、うちの出番は此処までだ、後はそこのポンコツ傭兵を頼んな」

 

軽く手を振りながら帰路に着いたエドチキを見送り、眼下の王都を見やる。かなり広いこの王都を攻略するため、一度視察をすることになり、それに合わせて商人に扮装する。

 

「さて、やるか!」

「商人に扮して潜入ですか。こんな衣装で大丈夫なんですか?」

「似合ってるぜ、まぁバレはしないさ」

「これで裏口から入るの?」

「いや、これは城内偵察のためさ。潜入は別でやるぜ」

 

一旦城内や街をくまなく巡るために搬入を装って地理を把握し、抜け道を探る。作戦は翌日からということになった。

 

「始めるぜい。じゃ、二人とも運搬がてら偵察をよろしく」

 

====

 

「今日の会議はここまでだ。各自緊急事態に備えよ、我が軍の部隊が攻撃を受けたようなのでな」

「はっ!」

「以上だ。備えよ」

 

王宮の一角にある大会議室では、先日のシリルがした攻撃によって警戒態勢が引かれる。そんな中、大きい人型猫のパンサーリリーとユリアだけが会議室に残る。

 

「どうした、パンサーリリー、ユリア」

「陛下に……いえ、失礼しました」

「ならば下がれ」

「失礼しました」

「ユリアはどうした?」

「実は、こちらにシリル元隊長が来ているとか。いかが致しましょうか?」

「ふん、そんな奴に用はない。やれ」

「……承知いたしました」

 

====

 

「さて、見た感じあたいがいた頃と大して変わってねえな。あたいを知ってる人間がいる以上、これがすでに罠なのかもしれんけど」

「やるしかないでしょう。ここまで来たら引き下がれませんので」

「裏門、結構人いたね。これ、外から無理やり行くより内側から行った方がいいかも」

「うーん……そうなると捕縛偽装作戦でもありだな。ただ、誰が捕まるかって話だし、あたいが行ってもねぇ」

「城内を覚えてる限りで構いません、私たちが行ったところ以外の地図をできれば描いてください」

 

そこで懐から紙と筆を取り出し、極力詳細な道まで記入し、二人に示す。道がかなりうねっており、一見しただけではどう動くべきか迷うほどだ。

 

「こんな感じだ。他者他国の侵攻を抑えるためにあえて複雑にしてんのよ」

「これは……遊園地ですか」

「なんか楽しそう」

「これはあたいが抜ける前に出来た城内の兵向けの娯楽施設さ。ま、集めた魔力をここに当ててるって訳よ」

「ふぅ、やりたい放題ね。で、肝心の牢屋は城内の上側か」

「上から侵入かな?」

「いや、あえて二人捕まって城内を回って仕掛けるのが最上作かねぇ?ユリアは錯乱用の暴れ役としてあえて裏門から侵入だな」

「手錠に魔法封じの効果がなければ私とエドラスの私が行きますか?」

「私影に入れるから上手くやれば見つからないよ」

 

おおよそ策は決まった。後は動くのみ。もう1つのチームが動くのを待つばかりだ。

 

「…よし、これで行こう。アースシリル、あんたと私は捕まるにはもってこいの事情がある。あっちも放って置かんでしょ」

「念のため、分身体をこのお札に入れておきます」

「よーし、『じゃじゃ馬大作戦』の開始だね!」

「思いっきり暴れてやんな!」

「もっとマシな作戦名は無かったのかしら」

「気にしたら負けさね。さてと、そろそろ別行動のあっち(エドルーシィ達)もここに来るはずだ、それに合わせて始めようぜ」

 

仲間や町民が成り代わったラクリマを見つけるか、王国を叩く作戦。ついに始動だ。


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