「くそっ、間に合ってくれ!」
「エルザ、魔力が持たなくなるぞ!飛ばしすぎだ!」
「それでもだ!何千、何万という命が失われるくらいなら!」
エルザが運転する魔道四輪は猛スピードを出して市街地を走り抜ける。先程ルーシィの推測をさらに聞いてみたら、ララバイが広範囲にわたって死をもたらす可能性があると分かったのだ。正義感の強いエルザは落ち着いてなどいられない。その頃、後ろの座席部分では外の2人とは違った雰囲気に包まれていた。
「そういえばナツとハッピー以外のみんなどんな魔法使うんだっけ?」
「私は血と気を、グレイ兄さんは氷の造形魔法を、エルザ姉さんは…」
「とにかく血のたくさん出る魔法だよ!」
「あながち間違ってませんが、それは幾ら何でも…」
「ヘェ〜、ってナツ!ここで吐かないで!窓から!」
今回初めて組む人が多いルーシィにとってそれぞれの使う魔法を見たことがない。そのことを一緒に戦う以上聞いておこうと考えている。
「そういえばルーシィに何か言おうと思ってたんだけど…なんだったっけ?」
「私が知るわけないでしょ?」
「ナツ兄さん、魔法で少し楽にしますよ」
「お、おお、ありがてぇ」
「色々使えるのね、その気の魔法」
「魔力使いすぎて少しバランスを少し整えるくらいしか今はできませんけどね」
そうこう話しているうちに駅前へとたどり着き、人混みの中を掻き分けてホームへと突き進んでいく。
「済まない、通してくれ」
「迷うなよ」
「すごい人混みね…」
「ナツ兄さん、しっかりしてください」
「おうぷ…」
その人混みを通る間に聞こえて来たのは闇ギルドが駅で暴れていること、駅にいた人々は避難を余儀なくされたこと、商売道具を取れずに逃げざるを得なかったことなど様々だ。
「済まない。中の状況を教えてもらえないか?ギルドのものだ」
「えっ?あんたは一体…ぐふぉあ!」
「使えぬ奴だ。中の状況は?」
「ひっ!?」
中々要領が得られないなか、駅員を半ば脅しながら質問していくが、誰も答えられず、エルザの頭突きの犠牲となっていく。
「あれがエルザの恐ろしさなのね」
「なんとなくわかってきたろ?」
「あとで謝っておかなきゃ…」
もはや聞いていてもしょうがないとホームに向かう階段へと進むと、そこには鎮圧に来た軍の者たちが揃ってやられている風景が広がっていた。
「ギルド全員相手ではやはり無理があったか」
「ヒエェ…」
「あ、アイゼンの連中ならこの先にいる…頼む、奴らを…」
「分かった。皆進むぞ!急げ!」
エルザの号令のもと、潰れかけたナツをルーシィに任せて階段を駆け上がり、全員で
「よう、待ってたぜ、妖精ども」
「貴様が死神エリゴールか!」
「そうとも。お前らが来るまで暇で暇で仕方なかったぜ」
「何が目的なんですか!答え次第では容赦しませんよ!」
小さな体から珍しく怒声をあげ、ギルドのメンバーも聞いたことないほどに声を荒げる。
「ふふふ、そう怒るなや。楽しみはこれからだ。この駅には何があると思う?」
「浮いた!?」
「風の魔法を使ってるんだ!」
「時間切れだ。答えは…こいつだ」
そう言って叩いたのは駅にある構内用の放送スピーカーだ。それを見て何をせんとしているのか察したエルザは驚きを隠せない。
「まさか貴様ら、ララバイをここで流すつもりか!何人死者が出ると思ってる!?」
「さあな。少なくともこの駅には数百、数千という野次馬どもがいる。音量次第ではもっと出るかもなぁ」
「無差別大量殺人をするつもりなの!?」
「それが俺たちが目指す粛清よ。闇を知らずにのうのうと生きる愚民どもや我らを蔑ろにして権利を奪った評議会への罰だ。その為に死神が動くんだよ」
理不尽極まりないその演説を聞かされ、激昂の声を最初にあげたのはルーシィだった。
「そんなことして権利が戻ると思うの!?そんな馬鹿みたいな真似してどうにかなるとは思えないんだけど!」
「俺たちが欲するは最早権利だけでは不十分。その更に先、権力だ。権力を手に入れればいくらでも権利は付いて回る!」
「あんたたちの自業自得でしょ!そんな事のために…!」
「闇を知らん者が吠えるな!カゲ、やれ!」
「残念だったな妖精ども、闇を知らないまま死ぬことになるとはな!」
エリゴールの怒声を聞き、攻撃を仕掛けてきたのはナツと列車の中で一悶着起こしたカゲヤマだった。彼の足元から伸びた影が拳となり、ルーシィに向けて一直線に伸びていく。
「しまった!」
「姉さん!」
エルザやシリルの助ける手が届くより早く、彼女に理不尽なる暴力が振るわれようとしていた。しかし、その影の拳も1人の男の目覚めによって止められることとなる。
「この声は…やっぱりお前かぁ!」
「ナツ!」
「こういう時は頼りになるぜ」
今まで酔いによって潰れていたナツだ。
「テメエ、さっきの!」
「貴様らの愚行は私たちが止めてみせる!」
「こっからは地上戦だ!やってやらぁ!」
意気の上がるナツたちをよそにそれを見ていたエリゴールは不気味な笑みを浮かべていた。そしてシリルは無用な殺しをしようとしている彼らを鋭く睨みつけていた。
「(そうだ、これでいい。こいつらがここに集まったことは逆に好都合。ならば俺は更に先に行くまでよ)」
「(あのララバイ、一年前の獣と同じ気を感じる。なら、お母様の代理として、ここで止めるまで!)」
妖精と死神の戦争がついに幕を開けた。
時々UAを見るのですが、最初に書いた作品が40000超えてて嬉しかったです。ありがとうございます