「うみみ、この子速い!」
「引き剝がされんなよ」
「見えてきました、あそこにラクリマがあります!」
竜鎖砲の繋がった先を目指して借りたレギオンの背に乗って飛ぶと、そこには巨大なラクリマの乗った島が眼に映る。徐々に近づくにつれ、そこで闘うある者たちの姿が見えてくる。滅竜魔道士故に無事だったガジルと、ハッピーたちと同じエクシードながら王国軍に参加しているパンサーリリーだ。
「ガジル兄さん!」
「おう、お前らも来てたか!こいつは俺の獲物だ、譲らねえぞ!」
「お兄ちゃん、足止めよろしく!」
「任せておけ」
「リリー!」
「シリル、なぜ貴様が……」
「あんた今の状況に満足してんのかい!?迷いがあんだろ!ならあたい達を手伝ってくれやしないか!」
「それが出来たらどれほど楽なことか」
そんな言葉にも苦虫を噛み潰したように顔をしかめる事しか出来ない。国の為に戦わねばならない、かと言って故郷をそう易々と捨てられる訳でもない。苦悩が頭を支配する。
「ラクリマのついた島と鎖を切り放そう!」
「少しでも動きを止めておかねえと難しいぜ。爆弾をつける時間をくれ!」
「シリルー!!」
「ナツ兄さん、この島を押し留めてください!レギオン、島をぐるっと一周。焦らずにお願いね」
彼らが島の動きを少しでも抑えている間に、鎖を引き剥がそうと島をぐるっと一周しながら使い切っていない余りの爆弾を仕掛けていく。鎖の食い込んだ部分を含めた島の下部ごと引き離そうと言うのだ。島より下には鬱蒼と生い茂る森しかないがゆえに気兼ねなく行える。
「よし、鎖のある高さは仕掛け切ったよ!」
「エクシード達が手伝ってくれてるけど、エクスタリアにぶつかりそうだよ!」
「行きましょう……兄さん達は速やかに離れて!」
途中でウェンディの説得に耳を傾けてくれたエクシードやその女王も来てくれたのだ。彼らに速やかに離れるように告げ、安全なところに行ってくれたところを確認し、一気に事を進める。
「一世一代の大仕事よ。発破!」
印を結べば、仕掛けた爆弾が彼女の魔力に反応して連鎖的に爆炎を上げていく。作戦は功を奏し、鎖を土台の岩ごと抜き切ってみせた。
「上手くいったね」
「ええ。少しあっちの陸地も削れちゃったかしら?」
「みんなが押してくれてたから少しで済んだね」
「ギヒッ、やるじゃねえかあのガキども」
そこである事に気づく。島が後退していること、そしてその上にあるはずのラクリマが光とともに一瞬にして消え去ってしまっていることだ。その答えを求めて視線を動かしていると、上からそれに応ずる者が現れた。エドジェラールことミストガンだ。
「ミストガン!」
「やっと戻ってきたか、ジェラール。遅すぎだよ」
「待たせて済まなかったな、シリル。皆もありがとう。君たちの力なくば、ラクリマの送り返しは成功しなかったろう。感謝する」
エドシリルにとっての幼友達、そしてこの国の国王の息子でもある彼は、シリルらを送り込んだ後にアニマの残痕から上手くラクリマを元の世界へと送り返す方法を探っていたのだ。これにはエクシードも、アースランドの魔道士も、エドラスの住人さえも入り混じって歓喜の声を上げる。
「王子……」
「済まなかったね、リリー。命の恩人たる君に面倒ごとを任せてしまったみたいだ」
「いえ、私の真の居場所を守れたのです。それで充分でしょう。むしろ陛下を止められなかった俺に責任があります」
かつて傷ついたジェラールを救い堕天扱いとなり、彼を支えるべく王国軍に志願した。しかし、国王の専横に近い政治について改めることができなかった自責の念がある。
「今度こそ、あるべき国を作り上げていく」
「ええ、王子……ガハッ!?」
「リリー!?リリー!」
腹部を魔法弾で撃ち抜かれている。傷が出来、力の入らない彼は徐々に地面へと落ちていく。視線を前へやれば、憎らしげな表情を隠そうともしないエドエルザとその部隊、そしてユリアの倒したはずのエドユリアが到来してきていた。
「まだだ、まだこの程度じゃ終わらない!終わらんぞ、スカーレットォ!」
「ユリア・フェンリス、再び参る!」
「だれかリリーを!」
「任せてください!!」
1人のエクシードにリリー救出を任せ、王国軍の持つ兵器でラクリマに変えられそうになっているエクシードたちを助けるべく、立ち塞がるユリアたちの方を向く。
「シリル、今度は貴女と闘う番だ!」
「それより前にやることがあるからな。ユリア、あんたは後だ!」
「レギオン、縫うようにほかのレギオンたちの間を飛んで。急いでエクシードを狙う奴を撃ち落とすわ!『鉄血御柱』!」
「飛び出て驚けぇ!『
「こいつをくらいな!」
レギオンを乗りこなしながら魔法やあるいはマジックアイテムを駆使して次々に兵器を壊し、敵部隊を叩き落とすが、エルザたちがいるものの2部隊もいるとあって数が多く処理しきれていない。
「纏めて叩き落とす。ユリア!」
「言うと思った!私の魔力を貸すから、一発大きいのを撃って!」
「大いなる爆炎よ、我らの牙となれ!ユニゾン・レイド、『
ユニゾン・レイドの魔法陣が次々に兵士を囲い、爆炎でレギオン諸共撃ち落としていく。難を逃れた者たちも爆風の煽りを受け、不安定な飛行を余儀なくされる。
「やってくれたわね……撃って!」
「レーザー光線!?まずい、下降だ!」
「まだ逃げてるエクシードたちが残ってるというのに……くっ!」
エクシードより目の前の敵を優先的に落とそうと切り替えたエドユリアにより、強制的に防戦をする羽目になり、救出が難しくなる。まるで何かに執着しているかのような狙い方だ。
「ユリア、あんたもしつけえな。昔はそうでもなかったんだけどねぇ?」
「昔は昔、今は今です。貴女を超えて、未来を!」
「……あいつの心をまっすぐにできんのはあたいだけのようだね」
「ようやく戦う気になりましたかシリルさん」
このままではラチがあかない。エドシリルは単騎飛び出し、ユリアの乗るレギオンまでひとっ飛びに舞う。
「終わらせてやるぜ、ユリア。あんたはあたいの妹でありながら、自由を忘れて沈んだ」
「貴女は私の姉でありながら王を裏切り、落ちぶれた」
「例え元の関係に戻れずとも……」
「先に進むのがどちらになろうとも……」
「「恨みっこなしだ!!!」」
エドラスでの2人は最終決戦へと突入した。