フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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お待たせしました。今回は滅竜魔導士決戦です。


第59の唄 滅竜の戦

四日目のバトルパートは異例のタッグ戦となり、青い天馬は一夜とエクスタリア出身でこの七年間で青い天馬に入ったニチヤ対四つ首の仔犬のエース、バッカスとロッカー。奥の手として隠されていたウサギの着ぐるみの中身がニチヤであり、まさかの顔がダブル一夜状態に大半の観客から悲鳴が上がり、いつも強い精神力を持ち大抵の事では屈しないエルザを、いとも容易くノックアウトさせるハプニングがあったがパワーアップした一夜の一撃で青い天馬が勝利した。続く第2戦では人魚の踵からカグラとミリアーナの息のあったコンビ対蛇姫の鱗のユウカとグレイの兄弟子リオン。こちらはカグラの猛攻を造形魔法の手数でもってリオンが時間いっぱいまで守り切り、決着が着く前に時間切れで引き分けとなった。そしてついに観客の待ちに待った試合が始まる。妖精の尻尾対剣咬の虎の滅竜魔導士対決だ。

 

「お待たせしました、今日一番の注目!妖精の尻尾ナツとガジル対剣咬の虎スティングとローグ!なんと、全員が滅竜魔導士という面白いカードになりました!」

「行くぞ火竜(サラマンダー)、ギルドをナメられたままにしてちゃあ名折れだぜ」

「ああ。この勝負、必ず勝つぞガジル」

「(ワクワクするよナツさん、俺はずっとこの時を待ってたんだ!あんたと戦う、それが今回の大会での一番の楽しみなんだ!)」

「(ガジル、お前は俺が倒す……)」

「スティング、ローグ、最強のギルドたる者の力を遺憾なく発揮せよ。我らの名をこれ以上汚すなよ」

「思う存分やってやれ。ワシからはもう何も言うまい、この勝負、2人の勝利を信じる」

 

4頭のドラゴンが相見えた瞬間だ。会場は先程の海戦があった為、異様な盛り上がりを見せている。炎、鉄、光に影の四属性のぶつかり合いは大会屈指の注目カードになる。

 

「それでは、試合開始!」

「行くぜぇ」

「ああ」

 

勢いよく飛び出そうとする双竜だったが、先制したのは妖精の尻尾だ。普段はいがみ合っている2人だが、こういう時の連携力は抜群だ。次々に立ち替わり入れ替わり動き、双竜を押していく。

 

「白竜の咆哮!」

「うおっ、レーザーか」

「ハッハー!」

「おっと!」

「隙ありだ、影竜の斬撃!」

「残念だな、鉄竜剣!」

 

鉄竜剣で受け止めた斬撃をはじき返し、そこをナツが合わせてスティングとローグをまとめて火竜の翼撃で吹き飛ばす。まさかの展開に観客も実況も驚くばかりだ。2日目の競技パートで見せた情けない姿と打って変わり、猛攻を仕掛ける。

 

「これは、なんと妖精の尻尾が押しています!剣咬の虎の双竜、予想外に苦戦しているぞー!」

「へへ、こうじゃなきゃ面白くねぇよ。やっぱ強えなナツさん達は」

「ガジル……」

「おまえら、本当に竜を倒したのかよ?」

「倒したんじゃない、殺したんだ。俺たちの手でな」

「親じゃなかったのかよ?」

「あんたには関係ない話だ。見せてやるよ、その力をな。ホワイト・ドライブ!」

「シャドウ・ドライブ」

「あ?なんだあのオーラは?」

「行くぜぇ!」

「なっ!?速っ……っ!」

火竜(サラマンダー)!」

「光と速さと影の執拗さからは逃げられぬ」

 

魔力増幅の力により、今度はスティングとローグがナツとガジルを押す番となる。スピードとパワーの双方が上昇し、先程とは逆の展開になる。これは彼らの必勝パターンであり、自信がある。光と影の竜が持つ絶大な力の一端だ。

 

「俺はあんたを超えるために力をつけてきた!それを示すは今!」

「な、身体が!」

「その白き聖痕は身体の自由を奪う。これで終わりだ!」

「へっ、それはどうかな?」

「ぐぉっ!?なんで動け……っ!聖痕が焼き切られてる!?」

「影は姿を見せず、されども確実に獲物を屠る。これで終わりだ……っ!」

「確実になんだって?俺たちは数々の修羅場をくぐり抜けてきたんだ。そんな妖精の尻尾(俺たち)をナメんなよ!」

「ごはっ!」

 

身体に打ち込んだ聖痕によって勝利を確信したが、その聖痕を焼き切るというナツならではの戦法で見事にカウンターを決め込む。影に入り込み背中から執念深く攻めていたローグも、腕を掴まれ肘打ちを食らわされる。ただでは倒されない、それが妖精の尻尾の強さだ。

 

「へへっ、強えな!だからこそ倒し甲斐がある!滅竜奥義……『ホーリーノヴァ』!」

「これで終わりましたね!必勝技ですよ!」

「フローもそー思う」

「……まだまだダメね、あの程度の力の溜めじゃ。力が技に乗り切ってない」

「なっ!?片手で……うおっ!」

「ガジルっ!」

「いい加減にウザってえ、寝てろ」

「ごはっ!」

「3ヶ月間の修行、それに第二魔法源(セカンド・オリジン)の解放が彼らの力の底上げになっている。そう簡単に倒せはしない」

「うむ、格が違いすぎる」

 

パワーアップして勝ちパターンを使っても倒れぬ相手に、徐々に押されていく。戦いの中でもナツとガジルは強くなり、学び、相手を超えてきた。その心構えが双竜との実力の溝を作り上げていたのだ。しかもパワーを上げてきたのは彼らも同じだから、頑丈さを持ち合わせる彼らは強い。それでもスティングにはレクターと交わした幼い頃の約束がある。竜はおらずとも、ナツという竜の強さを持つ男を倒し、バカにされた彼を救うと。

 

「俺には、友との約束があるんだ。あんたらを倒して、竜を殺した証を皆に示してやるってな!だから負けらんねぇ!」

「なっ!?姿が……」

「これはナツが楽園の塔で見せた、滅竜魔法の使い手が竜に近づいた力の形……」

「『ドラゴンフォース』!?」

 

ドラゴンフォース、それはナツが楽園の塔やニルヴァーナでのマスター・ゼロとの決戦で発動させた滅竜魔法の究極形態。スティングはそれを他の魔力に頼らずに自力で発動できるのだ。

 

「ローグ、悪いけど、ここからは俺1人でやるよ。手を出すなよ」

「分かった。思う存分やってこい」

「終わったな、弱小ギルドよ」

「随分とナメた真似してくれんじゃねえか」

「俺は2人を倒す、それだけの実力があるって思ってくれ。行くぞ!」

「ぐぁっ、速えっ!」

 

竜に最も近づいた力は伊達ではなく、今度こそ一方的な試合展開になっていく。拳を振るえども当たらず、脚を伸ばせども届かずに一人で二人を追い詰めていく。そして次の一撃が凄まじい威力を放つ。

 

「くらえ、『白竜のホーリーブレス』!」

「うああっ!」

「なんと、闘技場の床が抜けました!凄まじい威力です!3人とも下に行きましたが、試合は続行します!映像カメラは続きを写しに行きます」

「くそが、鉄竜剣!」

「火竜の鉄拳!」

「よっと、おらぁ!」

「ここで形勢逆転、スティングが押しています!」

「ナツ、踏ん張れ!」

「ガジルも頑張れ!まだ勝ち目はあるぞ!」

「白き刃で浄化せし!『ホーリーレイ』!」

「ぐぁあああっ!」

「うおおっ!」

「終わりだな……時代は移ろいゆく。この2人の時代が終わったというだけのこと」

「(見てるかレクター、お前との約束をここに果たしたぜ)」

「ナツ……」

「ガジル、お願い。立って……」

「これが第三世代の力かよ……」

 

倒れ臥す竜に時代の流れを感じながらも、なんとか立ってくれと願いながらも、どこかで差を感じて嘆く。この二人をもってしても勝てないのかと。だが、カノンは二人がまだ戦えるとどこかで確信していた。まだ真の力を開放していないと。

 

「ナツ、ガジル、いつまで寝てる気?まだ立てるんでしょ?さもなきゃ……」

「ちょ、ちょっと待て!まだ終わってねえぞシリル!」

「判断が早すぎるぞ!」

「なっ!?何故立てる!?あんな攻撃を受けて」

「いやぁ、確かにすげえよ。あちこち身体が痛えぜ!」

「だがお陰で攻撃の癖はこれで読めたぜ。タイミング、軸足の向き、身体の動かし方、色々とな」

「ああ、例えば攻撃を撃つ時の足は11時方向だ」

「いいや、10時だな。百歩譲って10時半!」

「絶対11時だ!23時でもいいぞ!」

「一周してんじゃねえ!どっちも同じだろうが!」

 

やはりソリが合わない。こういう肝心なところで喧嘩を始めてしまう。グレイは自分がいつもこんな感じのどうでもいい喧嘩をしていたのか、そう思っていたとか。次第にエスカレートする両者だが、堪忍袋の緒を切らしたのか、ナツがガジルをトロッコに無理矢理乗せてレバーを引いたのだ。

 

「あー、うるせぇ!」

「な、何をする火竜(サラマンダー)!もしやこれは……って、うおおっ!?」

「ギヒッ。さっきは良くもナメた真似してくれたな。お返しで今度は俺が1人で相手してやるよ。燃えてくるだろ?」

「1人で十分勝てるってのか?ナメられたもんだな、さっきの力を見てなかったのか!?」

「もう見切ったって言っただろ?それに、ナメた真似をしたのはそっちが先だろうが」

「俺はお前に用はない。ガジルと戦わせろ!」

「だったら俺に勝ってからにしろよ」

 

先程の借りを返してやると言わんばかりの挑発は、スティングとローグを怒らせるには十分効果がある。

 

「くそが、このドラゴンフォースより強い力なんてありゃしない!竜と同じかそれ以上の、この力よりな!俺は、この力で白竜(バイスロギア)を殺したんだ!」

「そうか。でもよ、シリルならこう言うはずだ。殺さずとも、力を示す方法はある。俺は笑われた仲間のためにこの力を使い、強さを示す!」

「ぐぁあっ!」

「影竜の咆哮!」

「火竜の咆哮!」

「うぉあっ!」

 

まるで強い敵と戦えるのが至上の喜びだと言わんばかりに奮戦するナツ。拳を振るい、ブレスを吐き、全ての力でもって2人と相対して押していく。実力の差や強さなどまるで楽しむためのスパイスだと言わんばかりだ。

 

「ちっ、まだだ。こんな所で負ける訳には!」

「俺はまだ立てる。レクターの為にも!」

「へへっ、それでこそだ。来いよ!」

「こうなったら……スティング、あれをやるぞ!」

「ああ!合わせろ!」

「あれは、合体魔法(ユニゾン・レイド)か!?」

「……」

「俺は、あんたを超える!」

「俺はガジルを倒す夢を、叶える!」

 

闇と光の合わさる力、仲間を信じて全てを合わせ、打ち込む一撃。徐々に強まり合わさる光と影を見て、メイビスとカノンは想いを同じくしていた。力だけでは突破できない壁があるだろう、知識だけでは開かぬ扉もあるだろう。しかし、そこに心や想いの力、それ即ち親愛と勇気、そして打ち込む努力の志があれば道は自ずと開かれるだろうと。それを育み大きくしていけば、自分は周りを救う力になり、周りもまた自分を助ける力になる。

合体魔法(ユニゾン・レイド)、双竜の為せる絆の力、聖影竜閃牙。だが、それを上回る想いの力がナツを突き動かしていく。滅竜奥義、紅蓮爆炎刃。それは信念の炎を体現した聖影を超えていく力。ギルドとは信念と揺るがぬ絆を育むべき場所、ナツが放った豪炎はギルドの姿勢を示していた。炎は光と影を飲み込み、全てを喰らい尽くす。

 

「レクター……強すぎるよ、ナツさん。今の俺じゃあ勝てねえ……」

「ナツ・ドラグニル、底が、知れない……」

「こ、これは!?なんと双竜、空から堕ちて地に伏したー!この時点で妖精の尻尾の勝利が確定!なんと1人で2人を倒し首位に躍り出たー!」

「かっかっかー!見たか、俺の実力!」

 

双竜敗れたり。燃ゆる(ほむら)の前に倒れ、屈した。なんとここで妖精の尻尾が剣咬の虎を一点上回り総合首位に躍り出た。2日目にガジルが言っていた一点に泣く事になる。

 

「また、闘おうな!」

「(済まねえレクター。勝てなくてよ)」

「(これが、ナツの強さ。ガジルも同じ程度だというのなら、俺はなんて思い上がった考えを……)」

 

再戦を楽しみにしているナツの実力を体感し、双竜はそれぞれ、自分の実力の無さを実感したのだった。

 

====

 

「くそ、火竜(サラマンダー)め!よくも俺を……」

 

ガジルの行き着いた先は、トロッコの終着点。その時にはすでに試合は終わっており、出口を探すばかりだ。

 

「ここはどこだ?闘技場の地下か?なんか不気味な感じだな……っ、まさかこれは、竜の屍骨!?」

 

その行き着いた先にあったもの、それは竜の終着点、骸を築き上げた墓場そのものだった。その頃、ユキノは王国の城の中にいた。アルカディオスにより引き抜かれ、臨時の軍曹として働いている。ギルドの敗北を聞いたのは夜になってからだ。

 

「そうですか、剣咬の虎は敗れましたか」

「元いたギルドとあって少し残念でしょうけれども」

「いえ、結果は結果ですから。それにしてもアルカディオス様……あ、大佐とお呼びするべきでしょうか?」

「大丈夫ですよ、友人などはディオなどとお呼びですからね。お好きなように」

「そうですか。しかし、彼の夢が理解されないなど。残念なことです」

 

彼女は何か未来を掴もうと王国に手を貸していた。彼女の声は僅かながら憂いを帯びていた。そして時を同じくして、ジェラールはある怪しい魔力を帯びる人物との接触に成功していた。

 

「止まれ。俺も顔を見せる、お前の正体を明かして欲しい」

「……そうね」

「(女の声?)……っ!まさか、そんなことが!」

 

====

 

「7月7日、その日が近づいているのね。竜王祭、かつて母様がおっしゃっていた竜と人と魔の狂宴。ナツ達滅竜魔道士が集まった今年、何事もなければいいが」

 

神の恐れる運命の日がすぐそこの角までやって来ている。果たして人類に明日はあるのだろうか。それは未来のみぞ知る。

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