フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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前回投稿から恐らく半年振りです、ぽおくそてえです。失踪説が出てもおかしくないくらい期間が空きましたが、何とか戻ってきました。


第60の唄 エクリプス計画

「これで妖精の尻尾が首位だぜ!?」

「剣神の虎も2位降格か。3位も4位も上がってきてるし、逆転圏内だからまだチャンスあるぞ?」

「ぷぷ、今年ばかりはセイバーもダメかもなぁ」

 

4日目を終えて観客達は、点数表の前で盛り上がっている。ナツの勝利によって首位を奪取した妖精の尻尾、それと入れ替わるように負けた剣咬の虎が二位に陥落した。これによって、観客同士で今年の優勝ギルド予想が行われている。妖精の尻尾を応援する声が日増しに高まっており、剣咬の虎は厳しいのではという声もちらほら挙がっている。

 

「いや、まだ分からないダニ。一点差、しかも他のギルドの逆転の芽があるって話をしていたばかりダニ、セイバーも例外じゃないダニ」

「た、確かに。今年は上位が混戦気味だし、セイバーもまだ今日負けただけだしな」

「今回の大会は面白くなりそうだ」

 

====

 

その頃の妖精の尻尾の宿舎に、トロッコで脱落させられたガジルが息絶え絶えで、疲れ切った表情で戻ってきた。

 

「やっとこさ戻ってこれたぜ」

「ガジルおかえり!無事だった?」

「どうにか戻れたが、大変な目に遭ったのは違いねえ。それよりか、火竜(サラマンダー)と娘っ子は俺についてこい、見せたいものがある」

「「えっ??」」

 

ドラゴンスレイヤーの二人に絡む話だとして、半ば強制的に連れて行った。余程の話なのか、急ぐように去っていく。

 

「ふむ……ユリア、悪いけど様子を見に行って欲しい。生憎手が離せなくてな」

「あいよ〜、任せて」

「私の探している物に行き着くかもしれない。魔法は極力使わないで」

「へ?」

 

警戒心を露わにするカノンの様子が只事ではないと感じながら、ユリアは言われた通りに3人の後を追っていく。カノンはその様子を心配で見つめ、何かを憂うように遠くに視線をやった。

 

====

 

「彼女は、あの日と同じ人物なのか?」

 

戻ってきたジェラールが真剣に考え込む様子に、ウルティアとメルディは何事かと怪訝な表情を浮かべる。

 

「ねぇ、何があったのジェラール?」

「戻ってきてからずっと考え事よ」

「シリルから得たエクリプスと思われる建造物の情報、それと先程会ったゼレフと似た魔力を帯びた1人の人間。3日目に取り逃がした人物と似ているが、少し違うような……これは一体どう言うことだ?」

 

大会の影で情報を集めていたジェラールは、この一連の情報に何が隠されているのか。それを必死に結びつけて暴き出そうとするが、一向にまとまらない。

 

「もう一度、全て整理しなければ」

「どういう事なのかな、ウル?」

「さあ、さっぱり」

 

====

 

「おいガジル、俺とウェンディに着いて来いってどう言うことだよ?」

「いいから黙って来い。すぐわかる」

「こんなところが地下にあったんですね?」

「あの試合の最中に偶然見つけてな。まさかこんな事になってるとは思わなかったぜ」

「にしてもなんでルーシィとグレイ、おまけにユリアまでついてきてんだよ?」

「おまけだなんて酷いな、私は姉さんに頼まれたのよ。後の2人は知らないわ」

「私たちは完全に野次馬、かな?」

「馬っていうやつがあるか?」

 

3人の後ろにはカノンに頼まれて着いてきたユリア、興味本位でやってきたルーシィとグレイの姿があった。彼らがやってきたのは、ガジルの乗ってたトロッコの終着点付近、闘技場の地下の先にある洞窟だ。所々に髑髏や骨が置いてあり、不気味な空間だ。

 

「着いたぜ、ここだ」

「なっ!?」

「竜の骨!?」

「ひえっ!」

「おお、すごい数と大きさだね。ねえ、この中に見知った骨はある感じかな?不謹慎かもしれないけど」

「大丈夫だ、それはねえからな。メタリカーナは鉄の竜、その鉄らしい匂いが骨から感じられねぇ」

「こっちもだ、イグニールの猛烈な火の匂いがねぇ」

「グランディーネもここには居ないかな?」

 

そこにあったのは竜と思われる巨大生物の骨の密集地帯で、見渡してみた限りでも何十個もある。これだけの数が風化している辺り、何十年、何百年かは経っていそうで、たかが14年で出来たものではなさそうだ。

 

「……そうだ!ミルキーウェイを使えば何か分かるかも!」

「何それ?新しい魔法?」

「前に修行してた魔法なんです。てっきり攻撃用だと思ってたんですけど……ちょっと離れててください、魔法陣を大きめに書きますので」

「何するんだ?」

「さあ?でも何か出来るんでしょ?」

 

新しい魔法が使えるのではないか、そう言ってウェンディは魔法陣を地面に書き始めた。ポーリュシカから譲り受けた魔法で、攻撃魔法ではなく、探知魔法であるため今まで成功していなかったみたいだ。

 

「よし、これで準備万端。始めますよ……」

「うわ、あちこちが震えてる!」

「何が起きてるの?」

「……すごく、小さい魂が1つ見つかりました」

「っ!確かに小さすぎる、昇天間際ね。感知するのがやっとだよ」

「顕現させます!」

 

1つ、小さな魂を見つけ出し、それを目に見える形に起こす。空気が揺れ、大地が震え、髑髏がカタカタと動き出す。呼び出した魂が遂に現世に現れた。そこに居たのは巨大な竜の魂のビジョンだ。

 

「グオォッ!」

「「「うわぁっ!!」」」

「あーっはっはっ!人間の驚く顔はいつ見ても面白いなぁ!」

「おお、でかい!竜なんて生まれて初めて見たよ!」

「んん?お主だけ違う反応だ、人間にしては珍しい。ワシは翡翠竜と呼ばれたジルコニスだ。問おう、貴様は何者ぞ、小娘」

「私は死の恐怖を司る冥府神ペルスの実子、今は冥府神代理クローバーの巫女ユリア・アマリリスだよ。私は死の恐怖を見つめて体現する者よ」

「そうか、あのペルスとクローバーの。出会ったのは数百年も昔、懐かしい名前だ」

 

翡翠竜ジルコニスと名乗る竜は、少なくとも数百年前を生きたらしく、神々と面識があるらしい。懐かしげに天井を見上げ、そして辺りを見回し始めた。

 

「まぁいい、しかし天竜(グランディーネ)の術だなこれは。誰ぞ、この術を使ったのは?このちんまいのか?美味そうだな」

「おい、ウェンディに近づくなよ!」

「ナツ兄さん、それ魂だけだから浮世の物に触りようがないと思うよ。既に肉体も朽ち、ウェンディの力によって浮世に成り立っているだけの、常世と浮世の狭間の存在なの」

「流石は死に身近なだけある、冗談もある意味通じぬか。しかしまさか冥府神ペルスの所の娘っ子や竜の子と会おうとは、長い年月よな」

「それはどうも」

「ここで何があったの?すごい竜骨の数だけど」

「人間に話す言葉はない」

「オイラは猫だよ?」

「私も純粋な人間かどうか怪しいわ。神と人のハーフ?」

「そうか。ならば話そう」

「うわ、すごいガバガバな論理だね。ま、いいか」

 

人間嫌いなジルコニスだったが、着いてきたハッピーやユリアが人間とは違うと知るや、まるでなんともないと言わんばかりに話し始め、そんなので良いのかとナツ達は訝しんだ。それは数百年前に起こったとされる伝承、竜と人と魔の狂宴『竜王祭』についてだった。

 

「竜はかつて世界の王者だった。人間なぞただの食料に過ぎぬほど、卑小な存在だったのだよ。だが、そのうち人間と共存を図ろうという愚かな考えを持ち合わせる者が出てき始めたのだ。しかも愚策も持ち合わせてな。竜を殺す魔法を人間どもに教えた馬鹿どもがいくつも出た」

「滅竜魔法の、原点……」

「そうだ。それによって共存派は一気に攻勢に出て、優位に立った。我々反対派は途端に数を減らしていったが、ここで奴らに1つ、大きな誤算が生まれる」

「誤算?裏目に出たってこと?」

「うむ……共存派の人間が突如として反乱に近い行動を起こし、共存派反対派問わず竜を殺し、駆逐していったのだ」

「そんな……」

「味方も殺したのかよ」

「その中の一人は竜の血を浴び続けて、次第に皮膚が鱗に代わり、歯が牙になり、そして角と翼が生まれた。奴の力は強大、次第に竜と同じような身体に変わっていった。名を言うのも悍ましく、未だに戦慄と恐怖を覚えるな……その者の奴の名はアクノロギア」

「何!?」

「あいつも元は人間なのか!?」

 

7年前に天狼島を襲撃して、ナツ達を封印に持ち込んだ張本人、アクノロギアが元は人間であり、竜の血肉を喰らい続けた事で竜擬きになった事。滅竜魔法を習得しており、それでこの竜の墓場を築きあげた事。その影で行われた神と悪魔の戦争については、衝撃が走る。

 

「それからというもの、竜は共存派反対派問わず絶滅の一途を辿り、アクノロギアを残して全ての竜が何かしらの理由で姿を消してしまった。神もまたナーガを筆頭とし、時を同じくして大悪魔と戦い、多くが信仰を失ったり、死に追いやられたり、後継者を決められぬまま消えたりして、大半が消えた。今残るのは両手で数えられるほどだろう。それが竜王祭の実態、多くの命の散った過去のあまり語られぬ大戦」

「大惨事じゃない。なんでそんな大きな歴史が語られてないんだろう?」

「最早殆どの者が語ることが出来ないが故、かな?当時を知る人が限られてるから、いつの間にか伝説や御伽噺、架空の話の扱いになってしまったのかも。あるいは自然と口を閉じたかね」

 

カノンが以前戦った流れる七星の結成要因がこの戦争に絡んでおり、しかも天地を分かつ大戦争だったが、今はほとんどが知られていない。事実、ユリアもこの戦争についてはほとんど聞かされていなかった。

 

「これが、こちらの知る全て。ワシは、貴様らに……」

「消えた!?」

「成仏した、みたいね。魂が完全に消えたんじゃないかしら」

「これ以上は話を聞けなさそうですね。ユリアさんの言う通り、成仏しました」

 

話し終えると共に、もう力尽きたのか、役目を果たしたとばかりに消え去ってしまった。残されたのは、暫しの静寂と混乱であった。

 

「おい、滅竜魔法使いすぎると竜になんのか!?」

「それだけは嫌だぞ!」

「ひいいっ」

「まさかアクノロギアが人間だとはねぇ。滅竜魔法が効かないって聞いてたけど、それが理由なのかな?」

「それはあり得んな」

「誰!?」

 

横槍を入れるように割って入ったのは、甲冑に身を包む壮年の男性と、元剣咬の虎の星霊魔道士ユキノだ。

 

「やはり私の推測通りか。今ので全てが一致した。アクノロギアはゼレフ書の悪魔、その存在に近い」

「(デリオラのようものか!?)」

「つまりはゼレフさえ撃てば良い」

「あんた誰よ?」

「フィオーレ王国軍クロッカス駐屯部隊桜花聖騎士団団長を務めている、大佐のアルカディオスだ」

「臨時軍曹のユキノです」

「あれ?なんでユキノがここに?」

「アルカディオス様の想いに共感したからです」

 

彼らは過去の歴史を研究し、この事をある程度は把握していたのだ。10年近くに及ぶ研究の末、ようやくたどり着いたと語っていた。

 

「お前たち、なんか用かよ?」

「まずは今日の試合、流石と申しておこう。あの盛り上がりに国王陛下も大層お喜びだ」

「んなこたぁ聞いてねぇんだよ。何の用だと聞いてんだ!」

「ちょっと、ナツ兄さん!」

「着いて来てくれ、特別にある物をお見せしよう」

「私からもお願いします。未来を大きく変える事ですから」

「着いて行こう、姉さんの探している物の正体が突き止められるかもしれないからさ」

「シリルが?何だろう?」

「なんでも、とてつもない物らしいよ。ゼレフに関係するかもって」

 

不満たらたらなナツを筆頭に渋々と言った具合に、アルカディオス大佐の後を追う。連れてこられたのは城内にある一際大きな部屋だ。そこに鎮座せし大いなる門、それが研究成果を活かした国家最高機密の1つ『エクリプスの門』だ。

 

「ここだ。これこそが我が国家の秘策、『エクリプスの門』だ」

「でかっ!?なんだこれ!」

「これが、姉さんの言ってた……」

「時空を超える門、エクリプス」

「これを用いて不死身になる前の過去のゼレフを討つ。それにより、この世界から闇ギルドやゼレフを信奉する悪の団体、ゼレフ書の悪魔を根絶やしにした世界を作り、生まれ変わらせる。それが我々の目的だ」

「要は過去の分岐点から今を変えるつもりね。ゼレフのいる世界といない世界に」

「平たく言えば、そういうことだ」

 

世界を変え、誰もが幸せになる世界の構築を目指す。それがこの計画の最大の目的であり、一気に悪を根本から無くす。これが正義だとも言っている。

 

「この数年、大魔闘演武を使って密かにこの門に魔力を注ぎ続けていた」

「俺たちや他のギルドを利用してたって言うのか?」

「ある意味ではね。国王陛下はこの事をご存知ではない」

「騙し続けてるわけね?それに、そんなこと成功するとは思えないけど。万が一彼を殺せても、それは違う世界線を辿る。この世界が変わる保証がない。この世界とエドラスのような関係になるかもよ?」

「他に手立てがない以上、今は止むを得んのだよ。豊命神や陛下に伝えていないのは、反対を受ける事が明らかだからね」

「……(何考えてんのよ、全く)」

 

例えユリアの言う通りであっても、平和な世の中が形成されるなら、小さな差異でしかなく、そうなる可能性は低いと断言した。だが、ここで一つ疑問が出る。何故そんな秘密の計画を敢えて外に漏らすような真似をするかだ。

 

「なんで態々俺らにそれを教えんだよ?俺たちがシリルとか王様とか、それこそ評議会に漏らすかもしれねぇだろ?」

「此度の計画への協力を仰ぎたくてね。特に星霊魔道士のルーシィと冥府の巫女ユリアには。2日目には傭兵を雇って、手荒な真似をした事は詫びよう。先を急ぎ過ぎた」

「ウェンディ達を攫ったのは貴方の指示だったのね」

「手違いがあったがね。この門は過去や未来へと飛べる、その性質には時間の流れの異なる神の領域や星霊界の力を部分的に利用している。過去に当時の冥府神や生命神が助力していた理由がそれだと推定される」

 

カノンの言っていた事が、それである。かつて神々は何かを感じ、この門と同じ物で未来へと開いた事例を持ち出してきた。

 

「計画の発動は7月7日、太陽と月の交差する日蝕を狙う」

「私たちのドラゴンの消えた日……」

「ただの偶然か?」

「私はこの計画に賛同し、協力しています。十二の黄金の鍵があれば、過去を清算し、未来を明るく照らしますから」

「ユキノ、貴女……」

「ルーシィ殿、ユリア殿、どうか助力願えないか?」

「そこまでだ、アルカディオス大佐」

 

計画も大詰めの段階で、王国兵が雪崩れ込むようにして遮った。その兵達を率いていたのは国防大臣のダートンだ。計画自体を無期限停止させる為、乗り込んできたのだ。

 

「ダートン大臣、これはどういうことか!」

「貴様こそどういうつもりだ?極秘作戦を部外者に漏らすなど」

「彼女たちは協力者だ、説明の義務がある!貴方はただ反対なだけでしょう!」

「反対するに決まっておるわ、青二才が!歴史を変えるなぞ、あってはならぬ!我々人類の存在はおろか、カノン様や他の神々も殺しかねんのだぞ!影響が多大すぎる!」

 

確かにその通りだ。過去を一つ変えれば、回り回って今を根本から覆しかねない。悪が消えるだけならまだ良いのだが、国は愚か大陸や世界全ての事象を善悪問わず消し去りかねないのだ。歴史への冒涜だと、ダートン大臣は口を大にして唱えた。

 

「アルカディオス大佐を国家反逆罪で捕縛せよ!ユキノ・アグリア及びルーシィ・ハートフィリアも幇助の罪として捕らえよ!ユリア・アマリリスもだ!」

「ダートン、貴様!」

「エクリプスは開かせん」

「ちょっと、離して!」

「あんたら、覚えてなさいよ!」

「テメェら、仲間を離しやがれ!」

「待て!ここで魔法は!」

 

仲間に手出しはさせない、そう怒りを爆発させてナツが魔法を発動させるが、その瞬間、ナツの魔力をエクリプスが吸い込み始めた。そこそこ離れた闘技場の魔道士の魔力を、微々たる量とはいえ集めているのだ。すぐ近くで発動すればあっという間に吸いきってしまう。ダートンはルーシィ達を連行し、ナツ達を城から追い出された。

 

「これは私にとっても本意ではない。出来ればこのような、手荒な真似は避けたかった。君たちに1つ道を示しておく。魔道士好きの陛下に、功績を示せばまだ、仲間を無傷で取り返せるやもしれん」

 

そう言い残し、城の中へと戻っていった。




ホントお待たせして申し訳ないです。
次いつになるかなぁ、って感じです。
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