フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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どうもです、ぽおくそてえです。前話を出すまで半年かかった割には書き溜めが尽きました……

追記。メモからぺたっと貼り付けた時の仮タイトルがついたままでした。失礼しました(修正しました)


第61の唄 最終戦、開幕

城から追い出されたナツ達は、王国の計画の事、城であった仲間の拿捕の事、洗いざらい全てを皆に伝えた。怒りや悲しみがギルドを包む中、カノンは重苦しい表情をしていた。自分のせいで、もっと早く動いていればこうはならなかったはずだ、そんな自責の念が湧いてくる。

 

「ルーシィとユリア、ユキノが王国軍に囚われた。エクリプス計画に対する証言のためかしらね」

「そうか。現場を見た他の者への口封じも兼ねておるということか。我々が何か不利になる事を話せば、立場を危うくすることも容易いと」

「責任は私にあるわ。まさか、こんな……」

「そう思い詰めるな。じゃが、仲間をこのまま捕まったままにされて折れるほど、ワシらはヤワじゃねえぞ」

 

静かに、されど誰よりも強い意志が込み上げてくる。暫し思考を働かせて、次の一手を老いた脳を働かせて捻り出す。大会で優勝すれば仲間は合法的に戻ってくる。その言葉を念頭に置きながら、他の手立ても合わせて、思い付く最善の手を導き出そうとする。

 

「……これが吉と出るか凶と出るか。メンバー変更を伝える。シリル、お主をナツの代理として大会最終日に出てもらいたい!」

「私が?でも……」

「此度の件、責を感じておるならば名誉挽回の好機としてくれ」

「……名誉挽回のチャンス、ね。分かったわ、私程度の力が少しでも役に立つなら」

「うむ。よし、その裏で救出の為に打って出る。ナツとミラ、ウェンディ、エクシード3人はそちらで動いてもらう」

「了解」

 

優しき国王なら、確かに仲間を返してもらえるかもしれない。だが確証が欲しい。仲間を無傷で手元に戻すには、2つの方法を同時進行で進めねばならない。違法、合法両手を合わせ、何としても仲間を連れ戻す。これが今回の作戦である。

 

「待って、素早い救出には城中の構造を把握した人間が必要なはずよ。クレス、お願い」

「はい!」

「作戦完了後なんかしらの形で信号弾を上げて。もし何かあれば脱出を最優先にしてね」

 

城の中で万が一敵に遭遇しても良い様に脱出経路を考えられる巫女を派遣、確実性を少しでも担保しようという策だ。

 

「最終戦の出場者の方は決まりましたね?その5名は私の方へ……私が必勝へと皆さんを導きましょう」

「任せたわ初代。一番良い作戦を頼む」

「ではまず最初の動き方からです」

 

====

 

「遂にこの日がやってまいりました!大会最終日の競技パート兼バトルパートにして決戦の時!その戦いの名も『大魔闘演舞』!」

「いや、楽()みだね。ここで妖精の尻尾が首位を維持できるか、他のギルドが追い落とすか」

「6位のチームから紹介していきましょう!『四つ首の番犬』改め『四つ首の仔犬』の登場です!最下位で点差もあり苦境に立たされた今、最後にどこまで点数を伸ばしてくるでしょうか!」

 

下から順番にギルドが呼ばれ、上に行くほど歓声が大きくなっていく。そしてやはりと言うべきか、二位のこのギルドが呼ばれた瞬間には先程より大きな歓声が響く。剣咬の虎だ。

 

「さあ第2位は『剣咬の虎』!このまま優勝を逃してしまうのか!?」

「うむ、少()ばかり雰囲気が変わったね。昨日とは何かが違うか」

「みんなカッコいいカボー」

「どこか重い空気が流れていますね」

「何かあったのかね?」

 

実はセイバーでは、ギルドマスターの力による支配に対して、スティング以下複数名による反乱があったばかりだ。スティングを暫定のマスターに据えての登場だ。その最中にスティングの相棒、レクターがミネルバによって人質となり、優勝が引き渡しの条件だと告げられた。雰囲気の変貌はそこに起因している。

 

「最後にご紹介するのは、かつての栄光を取り戻すべく戦うこのギルド!初日のブーイングが嘘の様な大歓声で迎えられます、『妖精の尻尾』!なんとこちらはメンバーを変更してきました!昨日あれほど大活躍したナツがおらず、代わりにカノン様が参戦です!」

「ナツ君はどう()たのだろうね?」

「(昨日のエクリプスから回復しておらなんだか。無理もない、あれだけの魔力を一気に吸い取られては、魔力欠乏症に陥っているやもしれんしな)」

「良いのかスティング?」

「むしろ良かったさ、いたら優勝が遠のく」

 

観客の歓声が最高潮を迎え、空気が振動するほど轟く中、昨日の件以降、カノンは己の実力不足と先見の明の無さを懺悔していた。自分のせいで、皆を巻き込んでしまったと。

 

「私事の責任問題に、皆を巻き込むようで申し訳が立たない。我儘なのは分かってるけど、少しでも皆の力を貸して欲しい」

「言われなくても力は貸すぜ。仲間の命がかかってるからな」

「我々は何があろうと一蓮托生だ。それにお前には楽園の塔での借りがある。それを少しでも返せるなら、むしろ喜んで戦おう」

「どんな時でも家族(仲間)と一緒に戦うって決めてんだよ。お前が今までそうしてきた様に、な」

「強い奴相手に暴れられるんだ、俺はそれで充分だ。違うか?」

「ふふ……あなた達と一緒にいられて、本当に幸せだわ。その力強い言葉のおかげで、悩んでたのが馬鹿みたいに思える」

 

例えどんな事があろうと、仲間を信じて行こう。皆が一人を支え、一人が皆を信じる事がこのギルドの強みだ。改めて皆の魂の輝き、それを感じて少しでも力になろう。カノンはそれを実感し、前を向く。仲間の声援が、この背中を押してくれる。大丈夫だ、皆と一緒ならどんな艱難辛苦も共に乗り越えられる。

 

「頑張れよシリル!出れねぇナツの分までやってやれ!」

「期待してるぞー!みんなー!」

「考えましたね。ナツの代わりに女神カノンの投入を行うとは」

「これも仲間を確実に取り戻すための作戦です。合法的手段はいくばくか有りますが、彼女らを無事に解放してくれる確証が無い以上やむを得ませぬ。それに、シリルの力が今こそ必要です。シリルよ、磨き上げた古来の神々と同じ力、昔より変わらぬ仲間を想うその心、存分に示してくれよ」

 

今なら何でもできそうだ、この声と皆の姿がある限り。前を向いて、神の名に恥じぬ戦をしよう。信頼を力に変えて、優勝しよう。その決意によって神の眼に、今まで以上の力が宿る。

 

「最後のこの競技のルールを説明していきます。これは5人一組で戦い、リーダーを1人決めてもらいます。そのリーダーを倒せば5点が、それ以外のメンバーを倒せば1点ずつ合計点に入り、最終得点で一位を決めます」

「つまりそのギルドを集中狙いして全員倒せば9点入るわけだね?」

「そういうことです。理論上全員を一つのギルドが倒せば45点まで最大入りますので、どのギルドもまだ逆転の目はあります。ただ、誰がリーダーなのかは他のギルドには倒すまではわかりませんので、そこら辺は自ギルドの戦略と他ギルドと当たる際の運が絡んできます」

 

全ギルド総当たり戦での最終決戦だ。つまりここで全てが決まる。エルザ、グレイ、ガジル、ラクサスとカノンは円陣を組み、気合いを入れ直す。旅に出ているギルダーツに託された夢、今この戦いに出場出来ないギルドの皆の悲願、裏で奔走するナツ達の希望、それを全て背負って戦場に立つ。この五人に全てを預ける。

 

「ここで優勝できるかどうかが決まる。ギルドの悲願を果たすため、力を合わせて立ち向かうぞ」

「裏方の火竜(サラマンダー)たちにもいいニュースを聞かせてぇしな。ま、あいつらがしくじらなきゃ良い話だが」

「それでもギルダーツとの約束があるな。この国一番のギルドになるって約束がよ」

「これまでバカにされてきたギルドの名誉と仲間の為か。最高に燃えてくる展開だぜ」

「仲間の皆や観客の前で私たちの復活を見せつけよう。大丈夫、このメンバーなら負けないわ。私は皆を信じる」

「そうだな。目指すは完全勝利、そして総合優勝だ!誰1人欠かずに、最高の結果を!」

「「「「おおっ!」」」」

「さあ、最終種目『大魔闘演武』開幕!」

 

遂に最終日の目玉、バトルと戦略の全面勝負(クライマックス)が幕を開く!それぞれの思惑を胸に各ギルドが動きを見せていく。

 

「遂に始まりました!単独で動く者や2人組(ペア)3人組(スリーマンセル)など様々な形で動いていきます!」

「個の強さや自分と仲間との連携の取りやすさを考えての役割分担だね」

「そのようですね」

 

連携をする者と、単独の強さを活かした戦略を取る中、目立つ者達が観客の度肝を抜いてくる。妖精の尻尾だ。開幕が宣言されたのに一歩も動こうとしない。

 

「おっと、妖精の尻尾、全く動いていません!しかも全員が目を閉じています!」

「何をしとるんじゃ!仲間の命がかかっておるのじゃぞ!」

「その間にも点数はどんどん動く!ラミアがパピーを潰しにかかる!」

「早くしなければ優勝は、仲間は!!」

「だからこそ、冷静にならねば。この四日間の間に敵の動き方は全て私が把握済み、今の所支障はありません。私の考えた策に抜かりはないです。心強い仲間を信じるべきでしょう」

「……初代、何をおっしゃる?」

 

まるでこの状況が掌で読み通りに動いている事が、嬉しいのかと言わんばかりに笑顔を見せ、一転して鋭い眼差しを戦場に送る。

 

「この戦、私の名をもって確実なる勝利をもたらす。これこそが我が戦、それは描く未来の為にあり!今がその時です、『妖精の星』作戦発動!」

「「「「「応っ!」」」」」

「長い沈黙を破って妖精の尻尾が遂に動いたー!!」

「妖精の星作戦、何のことだろう?」

「勝つための作戦なのは分かるけどねえ」

「ここでルーファスがほぼ確実に動いて来ます。魔法が見えたら2秒以内に回避、雷属性なのでラクサスだけ受け止めてください。動揺を誘います」

 

その予言通り、初日に見せた『聖ナル夜ニ』という複数を同時に倒す魔法を放ってきた。作戦通りに事が進む事に、妖精の尻尾の皆はポカンとしているばかりだ。まるで未来が見通せているかのような、その慧眼に驚かされる。

 

「この時点でルーファスは60%以上の確率で接触に動き、30%程の確率で待機します。しかしどちらを取ってもさして影響はありません」

「さっきから何言ってんだ初代は?」

「さぁな?俺にはさっぱりだ」

「それぞれ次の地点へ。エルザはまず北西のジェニーを撃破、移動」

「ふふ、初代のおっしゃった通りだ。末恐ろしいお方だよ」

「げっ、エルザ!?いやぁっ!」

「まずは一人!」

 

作戦は次々に的中する。個々人の動き方を的確に判断し、点数を思いのままにかすめて行く。

 

「ガジルはレンとイヴをブレスで撃破」

「悪いな兄ちゃんども!」

「うわぁっ!」

「お前だけでも逃げろ、ヒビキ!」

「逃げたヒビキを女神が先回りして伏せ、動揺をついて倒してください」

「僕の古文書(アーカイブ)と計算能力を超える者がいると言うのかい!?」

「その通りよ。見事に策にハマったわね」

「こ、ここまで予想通りなのか!」

「ゲームオーバーよ。せい!」

「それぞれ順次移動してください」

 

今まで見せてこなかった初代の新たな一面に、皆訳がわからないと言わんばかりだが、一躍首位に追いついた。もしかしたら、という想いが形になりそうだ。

 

「何と妖精の尻尾、ここに来てぐんぐんと点数を伸ばして首位と再び並んだ!!しかも無駄のない動きだー!」

「すげえ、まだ勝ち目はあるぞ!」

「なんか良く分かんねえけど、作戦通りなのか!?」

「順調すぎるぜー!」

「お、思い出したぞ……初代の異名を!数々の戦場で振るった作戦により、多くの勝利をもたらした。その名も『妖精軍師』メイビス!」

「まさかの一面を見たぜ」

「ただの癒し系じゃなかったのか……」

「これでも一応、うちを作った人だしね。そりゃ何かしら得意なのがあるよ」

「皆さんの次のポイントで強敵との接触や、移動に伴う動きがありそうです」

 

====

 

「始まったみたいですよ。今のうちに急ぎましょう」

「絶対あの2人を取り戻すぞ!」

「もうすぐ城の内部への入り口ね」

「何か作戦は?」

 

城内の牢屋を目指す裏方のナツ達は、なるべく気取られない様に潜入を試みていた。ここで同行していたクレスから提案がなされる。ミラジェーンに王国兵に化けてもらい、ナツとウェンディを捕らえて牢屋に連れ込むフリをするというもの。これで建物内への侵入をしてみる。そこから人気のない道を選びつつ牢屋に近づく作戦だ。

 

「皆さんが観客の目を誤魔化してくれている時間を使います。無駄な時間は、お互いにとって命取りだと思ってください」

「大胆な奴だよ、だからこそ気に入った。その作戦、乗った!」

「では、妖精の星作戦の裏で、『二正面』作戦開始です!」

 

====

 

時は少しばかり遡り、最終日手前の夕方にまで戻る。作戦を思いついた初代の元、動き方の確認に入る。

 

「俺たちはどう動けば良いんだ?」

「まず最初は状況分析のため、不動にて始めます」

「おいおい、負けるんじゃねえのかそれ?」

「心配はご無用です。動きの確認なだけですので、合図を送り次第すぐに直後の行動をとれば、取り返せます」

 

これによって初動を掴む。勢いを見せる事で警戒感を持たせ、動きを鈍らせたり各個撃破を狙いやすい状態を生み出すのだ。

 

「この後は強敵とぶつかる事が予想されます。ガジルさんはローグと、エルザさんはミネルバと、ラクサスさんはオルガと当たるでしょう。問題は剣咬の虎攻略の鍵、ルーファスと最強と名高い聖十のジュラ」

「ルーファスは俺にやらせてくれ」

 

ルーファス撃破を名乗り出たのは初日に苦い思いをしたグレイだ。それに対してメイビスは複雑な表情をする。

 

「一度敗れた相手ですよ?彼の使う魔法との相性はあまり……」

「だからこそだ。借りを返す以上に、名折れのままじゃいらんねぇだけだ」

「それなら、ジュラを倒すのは私とラクサスで行くわ。ユリアの借りは必ず返す」

「初日にユリアさんが苦戦した相手ですが」

「二人で当たれば問題ねぇだろ?シリルの実力は大体把握してる。行けるだろうぜ」

「では、それで行きましょう。時に想いは策を超えていく。貴方達の想いの力、示してください」

 

波乱に満ちた最終日、それを乗り越えるのは果たして想いか、それとも……。

 

====

 

「やっぱりここか。初代の言う通りだぜ」

「おや?君はどこかで。僕の記憶を蘇らせてくれるかな?」

「無理に思い出す必要はねえよ。その前に更に深く忘れらんねぇ記憶に刻み込んでやるからよ……」

 

予想通りにグレイとルーファスが衝突する。それと時を同じくしてラクサスとオルガが相見える。

 

「よう、お前の力、試していいかい?」

「出たな雷の滅神野郎。丁度よかったぜ、俺もお前を倒してみたかったんだよ。俺をガッカリさせんなよ?」

「それはこっちのセリフだ」

 

そしてカノンは神殺しのシェリアと順当に組み合わせが作られていく。シェリアの強襲を受け流し、戦いの火蓋が切って落とされる。

 

「天神の北風(ボレアス)!」

「甘いわ」

「ここで戦う以上は倒すよ!」

「いい気合いね」

 

先に動いたのはカノンだ。先を制し、後隙を与えぬ攻撃を加え、反撃に転ずる暇を作らない。魔力が並大抵ではないからこそできる戦術だ。レーザー砲と気の弾幕で相手の攻撃射程圏内に動かずして入らない方法を取る。

 

「先手必勝。『ディオ・アモーレ』プラス、気功『龍虎相打掌』!」

「(ウェンディやユリアの攻めと威力の格が違うけど……)ここね!」

「ただ待機してた訳じゃないわ。予想通り」

「(罠の魔法陣!?)」

 

たとえ近づかれても、敵の襲撃ポイントが分かっているなら、事前に罠や仕掛けの施しようがある。今発動したものは、センサーに反応して下から攻撃する魔法陣だ。ダメージよりも思考の混乱や動揺が主な狙いで、取りうる選択肢や動きの幅を制限させようとする。

 

「……」

「まだまだ!」

「甘いわね、『鉄山靠・桜』!」

「ぐっ!」

「戦いはまだまだこれからよ」

 

直線上に動くシェリアを迎え撃ち、腕を掴んで背中を使ったクロスカウンターを決め、そのまま肘打ちからの掌底で壁際まで押し戻す。ブレスを吐けば、それに呼応してブレスを出し、体術戦に持ち込んでもこれを悉く返し、少しずつ焦りを募らせる。回復を図るタイミングを見失わせる事で、短期決戦に持ち込もうとする。ジュラ戦がまだ控えていることを考えると当然の判断だ。

 

「まだ、まだやれる!『天叢雲』!」

「ぐっ!?なかなかやるじゃない」

「私だって、一人の魔道士だから!」

 

だがシェリアとて譲れぬものがあるのは同じだ。例え勝てずとも、味方の勝利に繋がる様に、必死に闘うのみだ。その執念に似た意思は、予想を上回り、カノンにダメージを与えている。

 

「まだいけるかも!『天神の舞』!」

「(これ以上は面倒な事になるわ。この子の意思は侮れない)『豊樹』!」

「きゃっ!」

「これでどうだ!」

 

これ以上の長期化は避けねばならない。ウェンディとの一戦で見せたガッツ、そして勢いを見ているからこそ、次の一撃でダウンさせるべく、行動に移った。シェリアに衝撃を与え、動きを止めにかかる。

 

「何これ、痺れて……」

「気功の流れを突いた。立ち直るのに時間がかかるはずよ」

「まだ、希望は……私だって……」

「強かったわ、貴女。だけど私も負けられない!」

 

私は今、一人で戦っているのでは無い。この命は数多の仲間や家族と繋がっているからこそ、その繋がりを失わぬ様に力を振り絞る。その純然たる想いが拳にのって放たれる。

 

「豊命式『桜花夢双』!」

「きゃああっ!」

 

エドラスのシリルが放った紅華を模倣した、血と気が織りなす砲撃が炸裂し、シェリアを破った。撃破による一点が入り、これで暫定的に単独首位に浮上した。

 

「悪いわね、私には退けない理由がある」

「うう……強すぎだよ。なんで、そんなに強くなれるの?」

「仲間と共に紡ぐ唄を、奏でる音色を、未来に繋ぎたい。だから私は強くなれる」

「そっか、だから……頑張ってね」

「ええ」

 

====

 

「大会、始まったのかな?」

「だと思うわ」

「……すみません、私のせいでこの様な」

「だからもう良いって。それよりどうするか考えなきゃね」

 

ルーシィ達は鍵を取り上げられ、ユリアも魔法を封じる手錠を掛けられて脱獄できない様にされている。それでもルーシィは諦められず、どうすれば良いか頭を悩ませている。そんな時に、ユキノは消え入る様な声で、ポツリと話し始める。

 

「あの門、使うべきです」

「どうして?」

「……私には、大好きな姉がいたんです。ドシが多かった私を、いつも庇ってくれた優しい姉が」

 

彼女の姉の名前はソラノ。ユキノと同じく綺麗な白い髪を持ち、持ち前の明るさと優しさで星霊魔道士の素質があったと言う。今はどこにいるか、検討もつかない。過去に何処かへ連れ去られてそれ以来、全く会えていないからだ。

 

「その姉を、子供狩りと称して無理やり連れて行った、ゼレフを信奉する組織がいたんです。もし過去を変えられるなら、姉は……」

「(連れて行かれなかったかもか。でも、あの大臣も言ってたけど、過去を変えると影響が強すぎる。私は……)」

 

彼女の過去には、同情できる。自分も親との不仲があった、変えたい過去もある。でも、それでも前を向いていられるのは、ひとえに変えたくない物があるからなのかもしれない。

 

「私はここを出るよ。あの門を使うにしろ、使わないにしろ、ここに居ても仕方ない」

「でも、抜け出すにしても私とユキノは鍵取られてるし、ユリアは手錠かけられてるじゃない?」

「マスター達が手を打ってないとは思えない。誰かを送り込んでくれてるはず。それに私の力は魔法のみに非ざれば……つぇい!」

 

彼女の生まれつき持ち合わせる神通力があれば、鍵がなくとも手錠ごと破壊してしまえば良い。なんて事ないと言わんばかりに手をブラブラさせ、ドアの柵に手をかける。

 

「神力で壊せばこんなものだよ。さ、後はこの柵だけだね」

「貴女もなかなか強引よね」

「妖精の尻尾の生き方はこうでなきゃ。生きてれば、成せることなんて幾らでも……よいしょ!」

 

この数年、苦しい事もあった。逃げ出したい事も無いとは言い切れない。常に迷い続けたこの7年だったが、決して希望を捨てなかった。だからこそ、仲間と再び冒険が出来た。だから、これからも前を向く。ユリアの顔は、まだ希望を捨てていない。

 

「さ、脱出しよ!」

「そうだよね。うん、私も続くよ」

「……(生きてれば、いつかきっと。私も、まだ)」

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