フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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お待たせしました、更新です。
1万字弱程度ですが、読んでもらえたら幸いです


第8章 悪魔との戦
第64話 流星、動く


「くくく、面白い御仁達で」

「厄介な。鏡で同じ魔法を打ち出すとは」

「己の姿それが霧霞のように儚き物なのか、己の内面を映し出すが故にその姿をある意味で眩ませる。それが我が二つ名の由来、霧霞の意味合い」

 

鏡によってあらゆる魔法を反転させる、それによって自信を打ち砕いてきた。だが、確固たる意志を持つ二人にはまるで効果がない。

 

「私は私の道をゆく。覚悟はもう決めている」

「私はまだ確固たるものはないけど。それでもやることは分かってる」

「どうも私の魔法に眩まぬようで。その様な強き者を屈させてこそ、我らが悲願はなる。己が強さが仇となれ、『明鏡』!」

「これは、私達の分身!?」

 

相手を写し取り、自分同士をぶつけさせる。姿形はもちろんのこと、扱う魔法も一緒だ。

 

「私達と似てるが、少し違うわね」

「そりゃあ完全体というわけには参りませんぜ。鏡から出た物とはいえ、同一個体じゃあない。思考も戦い方も差異がありやすからね」

 

数分に及ぶ近接戦や魔法の乱打戦が繰り広げられ、一進一退の絶妙な攻防が続くが、偽のカノンの足を掴み、それを偽のユリアにぶつける。

 

「この程度で止められると……思うな!」

「合わせて、姉さん!『冥府神の一声』!」

「『生命神の一声』!」

「やられましたかい。とはいえ所詮は偽物、時間稼ぎと魔力が上手く削れただけ儲けもんですかね」

「貴方の思い通りになると思わないことね」

 

挟み込むように放たれたブレスにより、偽物は見る影もなく打ち砕かれた。それも読めていたのか、四方八方に鏡が描かれ、次の魔法が準備されている。まるで万華鏡のように。

 

「ならば、次行きますかい。鏡面魔法『万華鏡光弾』!」

「ユリア!光弾は私が防ぐ!」

「分かってるわ、こっちで鏡を曇らせるのね!闇魔法『暗雲』!」

「見えずとも攻める。『大樹の剛拳』!」

「闇を透かし見て連撃を、『冥府神の剛拳』!」

 

次々に放たれる光弾を避けては守り、その隙に闇魔法で鏡を曇らせては破壊していく。時々魔法を当て、少しずつ前進していく。

 

「(どう喝破してくる、この状態で)」

「面白い、我が魔法を抑えるほどの闇。だが、範囲外に行けばこちらのもの!奥義・八咫鏡!」

「がっ!?」

「きゃあ!?」

「受けた傷を鏡の如く返す、それだけのこと」

「(この傷の深さ、相手も消耗しているはず)ユリア、攻めるしかないわよ」

「えっ!?」

「相手はこちらの動きに合わせてくる。ならば、隙を作らなければ反撃しにくくなる」

 

相手も徐々に消耗していることは傷を写して放つ魔法の威力から察せられる。つまり相手も長くはない。攻めるならここだと反撃を許さぬ程の攻勢を仕掛ける。

 

「豊命神として、ここで奴を止める。『豊命神の剛拳』!」

「跳ね返すまで。『反鏡』!」

「もう、やるしかないのね!至近距離からの……『デッドウェイブ』!」

「なっ!?」

「もう1発くらっていけ!『豊命神の剛拳』!」

「急に、勢いつきましたかい……」

「血縛鎖牢!これで魔法も放てまい!」

「『冥府神の大一声』!」

「ごぁぁあっ!」

 

魔法を仕掛ける猶予は与えない。拳を振るい、魔を放ち、じわりじわりと追い込んでいく。お互いの拳が決定打を与えられない中、突如として決着がついた。一瞬見えた未来の映像が、目の前で現実になった。

 

「あれはまさか!」

「自決……」

「はははっ、強がりましたが……これ以上戦っても負けそうな気がしましたんでね……」

「貴方達の目的はどこまで」

「もう、鍵もほぼ解除したんでしょう」

「でしょうね。ただ大詰めなのは分かった。その鍵、数百年前に施した封の鍵でしょう?」

「……ええ、そうでさぁ」

 

未来を見て危険を感じたのか、目的を果たしていたからか、己の未来を悟ったのか自分の魔法で自決を図る。封印の鍵は解除し、まるで満足したかのように。

 

「貴方達の好きにはさせない」

「ご自由に。ただ、これ以上情報をあっしから漏らすつもりはありません」

「貴方……」

「これがせめてもの抗い」

 

それだけ言い残し、ここで力尽きた。門はナツによって壊され、出現した竜や小型のドラゴンは光り輝きながら過去へと戻ってゆく。全てが終わり、運命の日を乗り越えた。

 

「エクリプスの門も壊れた、これで決着はついたか」

「なんか、これで良かったのかな」

「気持ちは分かる。ただ、これからは彼らのような存在が出ないような世の中にせればならない。私の目指す道は、誰もが平和に暮らせる世だ」

「うん……私、先にみんなのところに行ってるよ」

「ええ。良かったの?クローバー」

『久しいな、豊命神。直接会うのはユリアを救ってもらって以来だろうか』

「もうそんなに経つかしら」

『7年じゃ……実はこれをユリアに、我が弟子に手渡してほしい』

「直接渡しても良いじゃない」

 

影より現れたのは冥府神代理でユリアの師であり、父親代わりのクローバーだ。周りの小型を倒して回っていた様で、何かを託しに頃合いを見計らい、現れた。

 

『それも有りなのだが、やはり貴殿から渡した方が良い。それにこれは分身体、もう少しで消える。そろそろ独り立ちを促したい』

「心得た。いつかまた、悪魔の件で」

『その時が来れば遠慮なく申せ、貴殿に力を貸そう』

 

伝えることを伝え、闇に紛れるようにして姿を消した。

 

====

 

時は過ぎてあれから数日。城のホールでは大魔闘演武の打ち上げパーティーと、国を守ったことのお礼として魔導士達が招かれていた。カノンもまた、最初は断ったのだが、姫やギルドの面々に参加を促され、参加していた。

 

「カノン様、パーティにご参加いただけて嬉しいです」

「本当はそのつもりはなかったんだけど、仲間達に押し切られてしまって」

「それでもです。それに……先日のことをお詫び致したく」

「良いの、もうあの事は。あのときは貴女自分で選択した、それで良い」

 

あの時は彼女自身が思う選択をした。己の意志を決めた結果としてドラゴンの襲来を招いたが、彼女も視野の広げ方などで反省していた。

 

「お楽しみくださいね、大魔闘演武の打ち上げを」

「ありがとう。貴女も楽しんでね」

「あ、姉さん!こっちこっち!」

「怪我は大丈夫?」

「平気よ。もう何日も経ってるし、ウェンディ達のお陰でね」

「友達ですからね、助けるのは当然です」

 

ウェンディ達と合流し、祭りの喧騒の中へと混じる。様々なギルドの垣根を越えてお互いに戦いを褒めあったり、酒を酌み交わしたり、友情を深めたりと和気藹々とした雰囲気だ。カノンもまた、最終日に戦ったユリアの友シェリアと友になっていた。

 

「まさか正式にお城に入れるなんてねぇ」

「王主催らしいわ。なんでも打ち上げと国を守った事への感謝なんだそうよ」

「太っ腹ですね〜」

「楽しまなきゃね」

「流石王族主催、豪勢だね」

「上等な物ばかりじゃない」

「カノン様はユリアと姉妹なんですか?」

「血の繋がりはないわよ。まぁ、姉妹同然に過ごしたけどね」

「最終日、やっぱり強かったです」

「ありがとう。貴女もこれからどんどん強くなりそうね、期待してるわよ」

「私とウェンディの友達だからね、絶対強くなるって」

 

笑ったり呆れたりと会場が盛り上がる中、カノンは頼まれごとを果たすべくユリアと会場の隅へと移動する事にした。

 

「ユリア、せっかく楽しんでるところ悪いけど、クローバーからこれを預かってるわ」

「師匠から?」

「数日前にね」

「どれどれ……」

「なんて?」

「いずれ継承の儀を行うって」

「そう、貴女も決まったのね」

「私は実子だからね、神の。だからいずれはと思ってたけど」

 

特段急ぎではないとのことだが、近いうちに儀式を行い、正式な冥府の神を立てる。いつまでも代理なままではいられないのだろう。

 

「あれ、これは」

「何か書いてあったの?」

「姉さんに何かあれば協力しろって。何か知ってる?」

「クローバーめ、分かっていたわね。それはね、流れる七星についてだわ。多分だけど」

「もしかして彼らが」

「動く、間違いないだろうね。この七年間表立って動きがなかったのが不気味なぐらい、だからいずれ直ぐに動くだろうと思うわ」

「そんな、この前一人倒したばかりなのに」

「だからこそよ。人数が7人なら既に半数を失ってる、動かないとは思えない。何かあったら貴女と協力して対処する。よろしくお願いするわね」

「うん、良いよ。私にできる事ならば」

「ありがとう」

 

話を終えて振り返ってみると、剣咬の虎に酔っぱらったカグラ、妖精の尻尾の面々や他のギルドがユキノを巡って一触即発になっていた。どうやら2日目の賭けがどうのでユキノをどのギルドが手にするかで揉めたそうな。

 

「こら!そこまでにしなさい!」

「カノン様……」

「彼女の道は彼女自身で決める。手を差し伸べるのは良いけど、無理強いする事じゃないわ。各々事情はあるかもしれないけども」

「まぁ、確かに」

「それもそうだな」

「これは貴女の決めることよ。貴女の本心に従いなさい」

「はい」

 

結局はカノンの一喝でその場は収まり、ユキノ自身が今後を判断することとなった。大佐が状況を収められず呆然としていたが。

 

「大佐、始めて」

「乱闘を収めていただき助かりました。さて、陛下よりお言葉を頂戴仕る」

「大魔闘演武における数々の戦い、ご苦労であった。大いに楽しむことが出来、感謝する。また、国を総力を上げて守ってくれたこと、誠にかたじけない」

「何をおっしゃる、ワシらはこの国が好きであるが故に戦ったのです」

「俺たちは危機に負けずに戦うさ」

「ありがとう。貴殿らの言葉、身に染みて嬉しく思う」

 

こうして無事に大魔闘演武は幕を閉じた。

 

その頃ジェラールとメルディは行方不明になったウルティアを探していた。時のアークのラストエイジスという魔法による影響だ。1分程時が戻り、それによって未来の映像を見せたのだ。カノンには大して影響を与えなかったが、多くの魔道士の危機を救ったのだ。何故かその魔法を使ってから行方が分からなくなった。そんな折に評議会のドランバルトからある情報を寄せられる。竜を倒すために仮釈放して、戦闘後牢に戻った元六魔将軍のコブラが流れる七星と冥府の門が動くと言っていたそうだ。

 

「まさかこんな事になるとはな」

「カノンにも伝えておこうよ」

「そうだな。危険はすぐそこまできてる」

 

闇は刻一刻と迫っていく。壊れた街を凶風が吹き荒れる。

 

====

 

 

大魔闘演武の打ち上げから数日たった。結局ウルティアは見つからない状態の中、ジェラール達から聞いた情報と共に、カノンはマグノリアに皆と共に戻ってきた。そこには、大魔闘演武優勝を聞きつけた街の住民や近隣の人々が大勢やってきていた。大会を見ていて応援してくれていたのだ。

 

「凄い人ね」

「本当に優勝したんだね。なんか感動してきちゃった」

「カノン様、最終日かっこよかったです!」

「ユリアさん!ジュラ戦痺れました!」

「お、応援、ありがとう……なんか照れるわね」

「うん。こんなに褒められた事ないし」

 

大魔闘演武を見ていた人達からは歓声や拍手、応援でもって迎えられ、ここまで大勢の人から直接褒められた経験のない2人は戸惑うばかりだ。街の入り口からカルディア大聖堂まで伸びる長蛇の人が、口々に声援を飛ばす。つい数ヶ月前までは考えられなかった光景だ。

 

「皆もこれで元気が出るわね」

「ギルダーツとの約束、果たせたんだもんね」

「ええ。ウルティアの事やバラム同盟の他のギルドの事は気になるけど。私はしばらくしたらギルドを離れるわ」

「仕事があるもんね」

「とはいえ、家の方をそのままにしてくれてるみたいだし、数日はそこで出来るけど」

 

少し歩くと、そこには町長が待っており、優勝の景品としてプレゼントがあると言う。彼の指差す方にはかつてのギルドの建物が綺麗に新築されて待っていた。

 

「妖精の尻尾には優勝の証として街からプレゼントを」

「プレゼントだなんてそんな……」

「貴方達は我が街の誇りであります。よって、街の皆で協力し、ギルドを修繕して贈りたいと思います」

「まさかギルドを修繕してくれたなんて」

「元通りじゃねえか!やったぜ!」

「ワシは、ワシは……この街が大好きじゃー!」

 

皆が笑顔で、優勝杯を囲みながら笑っている。街の人も、ギルドのメンバーも、本当に嬉しそうに笑っている。そんな街の活気から外れたところにはゼレフが1人座しており、そこにメイビスが降り立つ。

 

「ここに居たのですね。大魔闘演武を見学していたとは」

「声はほとんど聞こえず、姿は全く見えず。でもなんとなく分かるよ、そこに居るんだねメイビス」

「死に場所を求めているのですか?」

「そうだね。僕の知っている良き人々はもういない、世の中を見て疲れたんだ。世界が僕を否定するなら、僕がこの世界を否定しよう」

「いいえ、世界は肯定するでしょう」

「これは僕からの贈り物、少し時が経ってから贈られる」

「戦争を、起こすのですか?」

「もはや戦争とは言えまい、一方的な殲滅になるだろう」

「滅ぶのは貴方です、妖精の尻尾と神々が貴方を止めます」

「(戦いの時は近いよ、ナツ、カノン)」

 

2人の静かな開戦の火蓋が切られた。世界の命運を分ける大いなる火蓋が。

 

それから更に数日、温泉のできたギルドではカノンが報告書に目を通し、渋い顔をしている。

 

「これは……」

「どうした?眉間にシワを寄せて」

「評議会の方から連絡があったわ。流れる七星がいよいよ動きそうだって」

「なんと!?」

「平和に終わるわけないと思ってたけど、こんな早く……」

 

大魔闘演武後に現れたベリアルを撃破してまだ十日あまり、流れる七星がここに来て動き始めた。この数百年間、大きく動くことはなかったが、いよいよ封印が解ける段階にきたのだろう。

 

「これは悠長に仕事をしている場合ではないのう」

「ギルド連盟には評議会経由で通達して貰ったわ。今回はギルド間抗争には目を瞑るって判断をしてもらったの」

「わかった。ギルド全員で迎え撃つとしよう」

「よろしく頼むわね(たった十日程度で攻めてくるとは)」

 

====

 

「各ギルドには堕天使の討伐に協力してもらい、感謝する」

「なに、貴殿とはかつて共に仕事をした仲。協力は惜しまぬ」

「国を守る戦いに再び参じれるとは、魂が震えるぜ」

「レディの頼みを断る様な真似はしません、メェーン」

 

翌日、急遽集められたギルドの面々総勢20名超。この前の大魔闘演武で戦ったギルドの大半が集まった。

 

「出現場所は2か所と考えられる。場所は輪廻廟、そしてここマグノリア。マグノリア防衛はここに集まったギルドで。輪廻廟には私含めて数人が行く」

「配分が偏ってるな」

「輪廻廟は大勢の入れない場所、それにこの街は広い。それ故に配分は偏るわ」

「なるほど」

 

この街の人々は既に避難しているが、何が起こるか分からない。彼らを守るためにマグノリアに大半の人員を割くことになった。輪廻廟にはごく少数が行くことになる。

 

「エルザ、ユリア、ナツ、ルーシィ、グレイ、ハッピー、ウェンディとシャルルにガジルとリリーで輪廻廟に向かう」

「心得た」

「相手が相手だ、くれぐれも注意して」

 

====

 

「ここが、輪廻廟」

「神聖な場所だな」

「神々やその使いの修行の場、それが輪廻廟。一回に入れる人数がそう多くないから、人数もこの感じになってしまってね」

「ここに何かあるの?」

 

かつてカノンとユリアが修行した輪廻廟。そこはいつもと変わらず鬱蒼とした森の中にある。古文書を引っ張り出し、様々調べてここに封印が施されていることが判明した。

 

「封印の施されている場所がここ、そして沢山の人が住むマグノリア。流れる七星の目的は鍵の解除と大量の血」

「血!?」

「封印をしたのが先々代。血と気の神だから、解除の方法もそれに依ると考えられている」

「扉が封印ごと壊れてる。やはり居たのね」

「我が名はバラキエル、流れる七星の四天王が一人。マグノリアに向かったルシファーに遅れて戦うか」

「予想どおり、マグノリアにも行ってるのね。迎え撃つまで」

 

先客は既に大悪魔の封印を解除し、後はこちらの排除のみと冷酷に告げる。四天王というだけあり、放つ威圧感は他の比ではない。多数を相手にするのにまるで微動だにしない。

 

「封印を解除した、が。貴様らが邪魔をするならここで殺しても良いと、シェムハザルから言われている」

「(シェムハザル……最後の一人か)」

「ふざけたこと言いやがって。俺たちをそう容易く倒せると思うなよ」

「我らの主の手を煩わせるまでもない。かかってこい、人間ども。デッドウェイブ」

 

先手を打ち死霊の波動を放つ。同じ魔法で受け止めつつ、こちらも人数に物を言わせて隙を狙う。前後左右から攻め寄せる攻撃にまるで見向きもしない。

 

「よそ見してんじゃねぇぞコラ!鉄竜剣!」

「火竜の鉄拳!」

「双土壁」

「なっ!?」

「モーションが!?」

「造形魔法の上位、造形呪法。種類が多く、モーションが少ないのが特徴。舞え」

「ぐぁっ!」

「がはっ!」

「土と風を!?」

 

魔法とは違う力の体系、呪法。造形呪法は造形魔法に比べてモーションが少なく、多属性を操るバラキエルは相手の属性に合わせて動いてくる。火や土、風などが乱れ飛び、命を狙うように襲いかかってくる。

 

「我を容易く倒せないだろう」

「一気呵成に攻めるのみ!気功砲!」

「こっちからもどんどん攻めるよ、デッドウェイブ!」

「負けてらんねえ、アイスメイク・フリーズランサー!」

「全て見える……金壁(ゴールド・ウォール)

「金の造形!?もしやこいつが!」

 

かつてカノンとクローバーが相手にした男と同じ金の造形だ。バラキエルが伝えたのか、そのスピードと範囲は広く、圧倒的だ。そこから息をつかせぬように、広範囲の雷撃が飛ぶ。

 

雷刃縫糸(ライトニング)

「今度は雷かよ!」

「アイスメイク・ウォール!」

「ナイス!」

「『氷雪拳(ブリザード・ナックル)』、踊れ」

 

防御壁を容易く砕き、荒ぶる吹雪が辺り一面に容赦なく飛んでいく。ナツのブレスやユリアの炎で対処して難を凌ぐが、じわりじわりと体力を奪っていく。

 

「これでもまだ折れぬか。伊達に演武を優勝をしていないようだ、ゼフォン達同胞を打ち砕くだけはある」

「折れたら終わりだからな。俺たち妖精の尻尾は何があっても折れはしない」

 

何事にも折れぬ強い意志、堅固な魂。それこそが妖精の尻尾の心意気。力で勝る相手とて、負けるつもりはない。剣を抜き、己の出せる全てをぶつけるまで。

 

「天輪・五芒星の剣!」

「天竜の咆哮!」

「サンドバスター!」

「水土壁……ぐっ」

「目ぇ逸らすなっつったろうが。オラァ!」

「好機ぞ、続け!聖樹剣!」

「抜かったか……」

「まだまだぁ!火竜の煌炎!」

「思ったよりやるな、けりをつけるか。『7つの属性よ、輝け。草原を駆け巡り、空を飛び渡れ。海超え砂超え、世界を呑め』」

「ナツ、ガジル、ウェンディ、ユリア、ブレスの用意を!」

「了解!」

「グレイ、ルーシィ!二人も遠距離攻撃を撃って!」

「おうよ!」

「水雷火土金闇氷……『乱刃』!」

「オラァ!」

「止まれぇ!」

 

破壊のかぎりを尽くす暴力的なほどの呪法を前に、こちらも在らんかぎりを尽くして応戦する。滅竜魔道士のブレスに神々の轟く声、星霊の力などが呪法と正面よりぶつかる。大いなる力がぶつかり合い、押し合い、弾ける。神々の祠は力に煽られ、所々にヒビが入り、何人かは弾けた力に怪我を負う。

 

「くそっ」

「なんつぅ威力だよ」

「まさかここまでとは。一度退いてやろう」

「待て!」

「……取り逃すとは」

「こちらの負傷者もいる。負傷者はウェンディに任せて、とりあえず封印の状況を見に行くべきではないか?」

「こちらは任せてください」

「それもそうね。エルザにもここに残ってもらうわ。ユリア、ルーシィ、こっちよ」

「うん」

 

怪我を負わずに済んだ3人で奥の奥まで突き進む。封印のされている場所は中央の間から隠し階段を降りた先にある。

 

「うわっ、こんな場所があるなんて知らなかったわ」

「中央の柱の奥、そこに封印場所があると記されてた」

「私も知らない場所。来るたびに発見があるなぁ」

「前にも言ったけど、ここは一部のものしか知らない場所。それに、建造年も建造者も謎だからね」

「私、来てよかったの?」

「本来ならダメなのかもしれないけど、緊急事態だから」

 

螺旋階段を下ること十数分、光の溢れる不思議な場所が現れた。ツタの絡まり、花の咲く楽園のような幻想的な場所だ。奥には石碑が立ち、一部が崩されており、封印が解けている。

 

「ここよ」

「なんか壊れてる」

「これが、さっき言ってた封印の鍵」

「やはりか。仮修繕はしておくけど、あまり意味をなさないでしょうね」

 

====

 

「なぁ、あいつどう倒すよ?」

「造形呪法なんざ初めて聞いたぞ」

「一度に四人以上の攻撃が必要な気もする。途中のガジルの攻撃から、当たったものね」

「同時造形の限度かもな。リオンですら3つの同時造形でもきついだろうしな」

「奴がどこに行ったか、マグノリアの防衛がどうなのか、対処法も含めて気になる点は多々あるわね」

「一旦戻って体制を立て直すぞ」

 

やれることはやって、一度マグノリアの様子を見に戻ると大勢のけが人と、あたりの建物が所々破壊されている光景だ。どれほどの激戦だったかが伺える。

 

「マスター、こちらは敵を逃してしまったわ。こっちはどういう状況?」

「どうにか倒せたわい。じゃが呪法を使ってきて、怪我人も大勢いる。しばらく動けぬと見た方が良い」

「それにしてもすごい戦闘跡ね」

「召喚魔法じゃったわい。多量の兵を呼び出しておった」

 

残る堕天使は2人、取り逃した方が攻め寄せてくれば、立ち待ち飲み込まれてしまうだろう。そうなっては敗北だ。

 

「不味いわね、取り逃した方が攻め寄せてきたら」

「今日は攻めてこぬだろう。じゃが、明日来るやも知れぬ、動けるメンバーを一人でも多く集めねば」

「回復は私とウェンディ、シェリアで。ポーリュシカさんを呼べれば呼んできて」

 

====

 

「シェムハザル、ルシファーが滅したようだ」

「私達2人を残すのみとなろうとは。バラキエル、貴様にはもう一度出てもらう。今度こそ、奴らを灰燼に帰せ」

「心得ている。しかしこの数百年間で大量の血と、封印の解除をもう成したのでは?」

「完全に復活するにはまだ時間がいる。最後の封印に仮封印をされたせいでどうにも時間が必要だ」

 

とある森の中には2人の堕天使、シェムハザルとバラキエルが顔を合わせている。己が主を復活させる最後の封印の解除などが果たされており、後は時間を合わせるだけとなったからだ。カノンの施した抵抗の封印により二日ほど時期がずれ込んだが、堕天使達にすれば誤差だ。

 

「あの後か、小賢しい。で、復活の目処と場所は」

「マグノリア上空に三日後」

「それまでに決着をつけてこよう」

「しくじったら容赦はせぬ」

「無論だ。我らの同胞の死は無駄にはせぬ」

 

ここまでに7人中5人が犠牲となり、後がない状況だ。悪魔が雪辱を果たして400年以上の悲願を制するか、人と神が再び勝利を刻んで平和を保つか。互いの意地をぶつける日は近い。

 

「貴様の造形呪法に私の冥府の力、合わされば敵も容易い」

「奴らは思った以上に粘る。気をつけることだな。では、またな」

「またがあれば良いな……ユリア、貴様を倒した暁には私が冥府神の継承者となろう。そして、流星は天地を呑むだろう」

 

不敵な笑みを浮かべ、空を見上げる。流星群が観測されるこの夜、遂に動き始める。

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