フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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お久しぶりです。お待たせいたしました


第65の唄 生命と悪魔と堕天と

「ここがマグノリア。まだ立ち直れてはいないか。この際だ、我が手で崩し去るか。金の……ぬっ!」

「好き勝手やらせる訳がなかろう、バラキエル」

「まだ抗うか、カノンとやら」

「無論だ」

 

バラキエルの攻め寄せることが予想できていたため、回復を急ぎ、動ける人員を1人でも多く用意していた。その為、まだ負傷気味だが動ける人員は揃えられた。

 

「たった1日で闘える者を増やしたか」

「こちらには回復手段が数手あるのよ。ここで貴方を止めてみせる、総力でもって」

「ふむ、やってみせろ。雷よ、轟け……雷刃縫糸!」

「(吸呪の札よ、飛べ!)」

「(かき消した?どうやって?)」

「力には智勇や道具で挑む。こういった感じに!」

「(雷の放出と突風ラクリマか!?)」

 

相手の攻撃を吸収し、放出する札の活用に己の力を組み合わせることで、攻める算段を増やすと共に相手の動きを鈍らせる。

 

「至近距離からの弾幕に耐えられるかしら!『弾血乱舞・神式』に『気功砲』!」

「っ!」

「……応えた様子はなし、かしら?」

「少し効いたぞ。我が造形呪法がなくば貫通していた」

「お世辞を」

「これでどうだ?『火扇・紅葉』」

「消火はお任せを」

「ナイス、ジュビア!」

「雷刃縫糸」

「ふん!」

「ありがとう、ラクサス」

「雷は多少受け流せるからな」

 

チームワークでは負けない。防ぐ属性によって前に立つメンバーを入れ替わり立ち替わり変える。炎にはジュビアの魔法で、雷にはラクサスのパワーを活用する。

 

「私達には人の和や知恵がある。一人で戦っているわけではない。それぞれが闘い、互いを思い、全てを足して勝つ」

「くだらん。一人では非力と認めてるようなものではないか」

「私は神とて万能に非ず」

「我が主に勝てるはずがないな、その程度なら」

「あら、それはどうかしら?この街、この国、この大陸を守るため、貴方に勝つ!気功砲!」

「水よ、守れ」

「火竜の……」

「見えていると申しておろうが」

「ぐっ!」

「これでどう!闇分身からの奮迅!」

「雷竜の(あぎと)!」

「白竜のホーリーレイ!」

 

ナツの攻勢に続きラクサスやユリア、剣咬の虎のスティングも加わり、一気呵成に攻め立てる。複数人の攻撃が隙を作り、攻撃が当たりやすくなることが分かった以上、攻め立て続ける。

 

「さまざまな方向から一度に攻めるか……」

「貴方はおそらく、一度に消費できる力に限度がある。オーバーヒートするのを避けながら戦ってる。この前は全力を使い、一時的に力が入らなかったんじゃないかしら?」

「よく気づいたな、たかが一回で」

「造形魔道士は大勢いる。同時に作り出せるモノに限度があると口々に言っていたわ」

「ふん……ならばリミッター解除だ。堕天使の堕天使たる所以、見よや!」

「これがもう一つの姿、堕天使の最終形態。7つの属性を、開放する」

「ならば私も全力で参る。『神依』改め『神威』!そこからの、『気紅双波』!」

「気と血のレーザーか。『雷炎龍虎撃』!」

 

最後の最後にとっておきの姿を見せ、自分の限界を超えて、反撃に打って出るバラキエル。それでも屈せず立ち向かう妖精達の連合軍。お互いがお互いの意地を見せ、お互いに向かって攻めるまで。

 

「冥府神の大一声!」

「氷土の堅壁、風雷の牙よ」

「きゃっ!」

「火竜の咆哮!」

「ぬるい。水氷蛇牙」

「隙あり!気功砲!」

「黒羽一閃!」

「我が金と土の鎧が……」

「まだまだ行くぞ!オラァ!」

「続け、勝てるぞ!」

「まとめて死に追いやってやろう。複数合体造形、乱刃!」

「大気功砲!」

 

防御を捨て、攻撃に移って攻め寄せる攻撃をいなしていく。

 

「相打ちか」

「(このままじゃまずいか?)」

「俺らに技の対処は任せろ。シリル、当てに行け」

「隙は全ギルドで力を合わせて造る」

「皆……任せたわ。いくよ、ユリア!」

「うん!」

 

そんな攻撃による防御の隙を突こうと、皆で攻め寄せてカノンとユリアの攻撃を当てようと皆が前線に出て攻撃に出る。

 

「いくぞグレイ!アイスメイク・タイガー!」

「任せろリオン!氷槍騎兵(フリーズランサー)!」

「炎蛇の牙よ」

「溶かされたか」

「火は任せてください、水流台風(ウォーターサイクロン)!」

「切り裂き、活路を開くは風。烈風扇」

「影竜の咆哮!」

 

だが、バラキエルとて負けてはいない。隙を突こうというならば手数を増やして攻撃を防ぐまで。この攻撃の連続こそが最大の防御と言わんばかりに打ち出していく。

 

「氷水波に雷炎拳、纏めて穿て」

「ブレスを纏めてぶつけるぞ!」

「おう!」

「任せろ」

「ちっ、滅竜魔道士は厄介だ。岩拳」

「崖錐!さぁ、岩を足場に進まれよ!」

「助かるわ、ジュラ!ここまでの道は無駄にはせん。ユリア!合体魔法(ユニゾンレイド)しかない!」

「任せて!」

「合わせろ、二人とも!」

「安心してください、敵の攻撃はしばらく私達で保つので!」

「いくら足掻こうと……っ!(もう限度の時間か。案外保たぬモノだな、この力も)」

合体魔法(ユニゾンレイド)、『双神剣』!」

「(済まないシェムハザル。失敗だ)」

 

最後の最後にとっておきの一発を打ち出し、遂にはバラキエルも耐えかねる。全ては想いを込めている攻撃が相手を上回ったからだ。

 

「人の子が、思ったより強かったか。油断したつもりは無かったが……」

「貴方になくて私達にあった物、それは互いの絆と合わせる力の強さ」

「次はこう上手くいくと思うなよ。シェムハザルは人智を超える、四天王最強の堕天使。彼女の冥府の力は……」

「冥府の……うん、でも私は負けない」

「知っているの?相手のことを」

「私の記憶には少なくともないよ。でも母さんに聞かされたんだ、弟子がかつて堕天したって。死の力は死をもたらす為にあると言って、離れていったそうだよ」

「私たちとは意見が合わなさそうね。力は傷つける面もあるけど、何より守る為にある」

 

====

 

「遂に私一人か。だが……これで良い。封印の解除時間も稼げた、血の量も充分。明日には封印場所とこの世界が繋がる……勝利は揺らぐまい」

 

遂にシェムハザル1人となった流れる七星のメンバー。だが彼女の計画は最早完成間近にまで迫っている。

 

「我が主よ、ついに来たぞ、この時が!」

 

====

 

「大変だ!」

「どうした?」

「空に変な空間が!」

 

仲間の掛け声に釣られて皆が外に出て空を見上げるとそこには空飛ぶ城が浮かび上がっていた。これこそがシェムハザルの望んでいた光景だった。

 

「なんだアレは……」

「教えようか?アレは我が主の封印された空間。今、それが開いた。我が名はシェムハザル、流れる七星最後の者」

「貴方がシェムハザル……」

「遂に悲願がなる。完全に復活するまでの間、私が相手をしよう。それに、ユリアを消せば冥府の神の座は空白となる」

 

シェムハザルはユリアのかつての同門であったが、ユリアの誕生と共に彼女が後継者になり得ない事を感じ取り、裏切り者となってでも何かの座を得ようとしていた。

 

「業火に焼かれよ、獄炎球!」

「火はまかせろ!オラァ!」

「我が炎を喰うとな。面白い。では切り替えて攻めようか。毒螺旋拳!」

「吹き飛ばすまで!地獄の業火(ソウルフレア)!」

「流石に同門でかつての主人が娘なだけあって威力は申し分ないな」

「そりゃどうも!撃ち貫け、怒りの一閃!『神弓ダークネスライン』!」

 

その後も幾千にもわたる攻撃の波が唸る。毒には火を、火には水を、風には弓を持って攻撃が続く。その中、遂に決着がなされる。

 

「ここが、死に場所……申し訳ない……」

「はぁー、疲れたわ」

「宿敵が残ってる、まだまだ先は長いわよ」

「シェムハザル、私と貴女は本来なら手を組めた。貴女が何を思って堕天したか本心は分からないけど、私は貴女とは違う道を歩むよ」

 

遂に決着が着き、流れる七星も全滅となったが、浮遊神殿であり、敵の本城がまだ残っている。

 

「変な浮遊神殿みたいなのは出来てるな」

『人の子よ、我は400年ぶりに帰還した。絶望に慄くか、絶望に抗うか。その底力を我に示せ』

「この声が……」

「ナーガの封印した者」

『これも余興のうち。我が神殿に向かってくるが良い』

「階段?」

「立て直したらすぐに向かうぞ」

「地の利は相手に移る。本来なら引き摺り出すべきなのだろうが、悠長なことは言ってられん」

「俺たちは街の防衛や仲間の治療に専念するよ」

「済まないな。では攻め込むメンバーを決めよう」

「無論私は行くとして、他は?」

「私やいつものチームもそうでしょ?」

 

進むべきメンバーと残るメンバーが協議されている最中に、真上から声がかかる。皆が混乱している中、その者は姿を現した。

 

「お主たちだけではあの者には勝てまい」

「何者だ!?」

「ワシはの……」

「久しぶりね、魔神レイン。人の姿とは珍しい」

「ま、魔神!?」

「自己紹介を途中で止めんでほしいのう。そうじゃ、ワシこそがこの世界に魔法を生み出した者。悪魔共に裁きを与えに来た」

 

大魔神レイン。数百年以上前からずっとこの世界と共に歩んできた者で、この世界に魔法や呪法、魔導士を作り上げるきっかけを作った存在で、普段は世界に与える影響を考え、姿を見せることは滅多にない。

 

「さて、始めようぞ。世紀を超えた宿命の対決へ」


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