フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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第9章 冥府の門編
第68の唄 太陽の村


「皆のお陰でどうにか大悪魔(ガルフォス)を討ち果たす事が出来た。皆の協力のおかげよ、感謝する」

「なんのなんの。仲間に協力するのは当たり前じゃ」

「それでも、感謝の意を表したい。ありがとう」

 

ガルフォスや流れる七星(フォーレンスターズ)撃破から数日が経ち、平穏が戻ってきた頃、ギルドではいつも通りのお祭り騒ぎとなっていた。皆の協力があったからこそ果たせた悲願、カノンはギルドの皆に感謝を伝えていた。これからは世界を平穏にするために尽力していくと誓う。

 

「これからどうするの、姉さん」

「そうねぇ……しばらく残って、そのあと仕事場に戻るわ」

「しばらくね。いつか別れる日が来るのね」

「そうねぇ。寂しいけど仕方ないわ」

「だよね、うん。仕方ないか」

「まだ暫くはいるから、ね」

「分かったよ。ま、よろしくね」

 

カノンはユリアの今後の事について思案していた。これからは冥府の神の座を譲り受ける事になる。それはそう遠くない未来のことであり、ギルドにも伝えておかねばならない。

 

「マスター、少し話を」

「ん?どうしたのじゃ?」

「ユリアに関する事で……」

「おお、なんじゃ?」

「しばらくしたら彼女もギルドを一時的に離れることになるかと」

「もしやお主と同じ様に?」

「ええ、神の座を譲り受けることになる」

「やむを得ないのぅ、こればかりは。わかった」

「ありがとう」

 

====

 

「ふぅ、一仕事終わったね」

「盗賊退治も慣れたものね」

「あっ、あそこにいるのって……」

「エルザとウェンディにシャルル?」

「お前達も仕事終わりか?」

「まぁね。無事成功したよ」

 

一仕事終えて帰り道についていたカノン達は偶然にも同じく仕事帰りだったエルザ達に会った。仕事で得た報酬の菓子が多く、二人では食べきれない量だと言う。そこで普段一緒にチームを組むカノン達などと共に食べる事を考えついていた。そこでルーシィの家で分ける事になった。

 

「まだ帰ってないみたいですね」

「それならば中に入って待つとしようか」

「えっ?」

「いつものことよ、ウェンディ。気持ちは分かるけど……」

 

それから一刻ほどが経ち、ようやく家主のルーシィの帰宅となり、事情を説明してお菓子を分ける。

 

「そうなんだ、仕事上手くいったんだね?」

「えっと、まぁ……」

「無論だ」

「なんか反応に差があった様な……」

「そういえばナツ達は?」

「ギルドにも居なかったのか?」

「今日行ったけど、見かけてないわよ」

「バカな、仕事に出て三日も経つんだぞ」

「流石に心配ね」

「見にいってくる?討伐依頼だって聞いてるけど」

「そうだな。二人が苦戦するとは思えぬ」

「よし、行こうか」

 

ナツ達が簡単にこなせるほどのクエストに三日も要している事に違和感を覚え、討伐対象のモンスターの住む森へと駆けつけると、既にそのモンスターは息の根が止められて始末済みだった。

 

「これは……」

「でかいわね。これが討伐対象の」

「もう既に倒してあるみたいね。何があったっていうの?」

「みんな〜、助けて〜」

「ハッピー!無事だったか!」

「何が起こったの?」

「それが……」

 

痩せ細ったハッピーに連れられて少し歩くとそこではいつも見かける光景が広がっていた。

 

「いい加減にしやがれ、クソ炎!」

「それはこっちのセリフだ、この野郎!」

「なんだ、いつもの喧嘩なのね」

「これを三日も続けてるの?」

「ご飯食べたり寝たりはしてるよ」

「あら、かわいらしい喧嘩だこと」

「こらお前達、いい加減止めないか」

「「うるせぇ!」」

「なぁっ!?」

「……ほう。それがお前達の答えか」

「エルザー!?」

「なんでここにー!?」

 

殴られたエルザにこっぴどく叱られ、この日は無事に仕事を終えてギルドに戻ってきた。その翌日、ギルドでは不貞腐れた二人を囲い、二人を諌めたり仲直りを持ちかけたりしていた。

 

「もう2度とこいつとは仕事行かねえ」

「こっちから願い下げだ、馬鹿野郎」

「二人とも仕事の時くらい仲良くやりなさいよ」

「そうだよ、ガキじゃあるまいに」

「おーい、ナツ、グレイ。また二人を指名の仕事じゃ!」

「「またかよ!」」

「そっか、大魔闘演武で人気が出て指名があって、組んでたのね」

「今度こそ仲良く行ってこい!」

 

前回の依頼で仲の悪い二人がタッグを組んでいた理由、それは大魔闘演武で人気となり、魔道士を指名する依頼が増えたからだ。今回も同様に大魔闘演武を見た一人からの依頼だ。

 

「なんでまた組まなきゃなんねぇんだよ」

「それはこっちのセリフだ」

「ぬっ、これは!」

「なんだよ、じっちゃん」

「依頼主は聖十大魔道序列4位、イシュガルの四天王と呼ばれる方々の一人、ウォーロッド・シーケンじゃ」

「聖十が依頼人!?」

「どうしてそんなすごい人が……」

「一体何が?」

 

====

 

「いい天気ですね」

「風も気持ちいいし、いい日差しだもんね」

「仕事じゃなかったらピクニックにもってこいだよ」

「本当ね。あの二人が喧嘩さえしてなければ、だけど」

「てめぇ、俺の肉食っただろぉ!」

「誰が食うか!」

 

ナツとグレイだけでは不安だろうといつものメンバーが集い、今回の大魔道士からの依頼に出向いていた。早速喧嘩を始めた二人を止めながらも長閑な草原を歩く。

 

「そういえばなんでシリル達も?」

「私はチームの一員だから、なんとなく。姉さんは?」

「今回の依頼人、ウォーロッド殿には7年前に木の魔法を教えてもらったのよ。それで久しぶりに挨拶をと思って」

「へぇ。聖十大魔道といえば評議会の定めた大陸で最も優れた魔道士10人だっけ?」

「ああ。マスターやジュラもその一人だ」

「その中でも序列上位4人がイシュガルの四天王と呼ばれてるわ。イシュガルってのはこの大陸の古い呼び名ね」

「そうなんですね」

 

そんなこんなで話し合っていると、目的の家にたどり着いた。聖十大魔道でイシュガルの四天王が一人、ウォーロッドの家だ。

 

「あ、見えてきました」

「あれがイシュガルの四天王、ウォーロッド・シーケンの家か」

「なんか緊張してきた……」

「失礼します。妖精の尻尾の魔道士です」

「ん?おお来てくれたか」

「貴方がウォーロッド様ですね?」

「左様いかにも。(わっし)こそがウォーロッド・シーケンじゃ。冗談だけどね」

「えっ?」

「なんてな、冗談じゃ」

 

このお茶目な一面を持つご老人こそが今回の依頼人であり、カノンに大樹の魔法を教えた師範でもあるウォーロッドである。冗談が好きであり、気さくな雰囲気の持ち主だ。

 

「ウォーロッド殿、お変わりなさそうで何よりです」

「おお、シリル君か。そちらも元気そうで何よりだよ」

「お陰様で、目的も果たして元気にしております」

「そうかそうか、それは何よりじゃ。して、ナツ君とグレイ君はどちらかね?」

「こちらの二人です」

「おお、そうか。早速じゃが話に入ろうか」

 

外のベンチに誘われてお茶を交えながら仕事の話に入る。今回の依頼はとある場所が目的地になる。

 

(わっし)は引退してから砂漠の緑化活動を続けていてな。慈善活動といえば聞こえはいいが趣味の一環でな」

「ウォーロッド殿も昔はギルドに?」

「そう、いいギルドじゃったよ。そんな訳で何年も彼方此方の砂漠を旅しているのだが、この前奇妙な村を見つけてのう」

 

文献によればそこは太陽の村と呼ばれており、永遠に燃える炎を信仰している村だという。その村が何故か分からないが凍りついた状態で見つかったのだ。人も植物も動物も、永遠に燃える炎さえも凍りついていた。

 

「天災なのか人災なのか、村の全てが凍りついていた。何があったのか分からんが、凍りついた村人達は生きておる。なんとしてもその村を救ってほしい。それが(わっし)の依頼じゃ」

「それなら話は早い。俺の魔法で溶かしてやる!」

「それなら俺はいらないだろ?」

「いや、あれはただの氷ではなさそうじゃ。君の力も必要になるだろう、グレイ君」

 

氷の力が使われており、氷の魔法に長けたグレイの知見や技量が必要になり、ナツの炎とグレイの氷によって今回の件は解決されるのではないかと言う。

 

「御言葉ですがウォーロッド様、貴方ほどの魔道士ならばご自分で解決できるのでは?」

「何か勘違いしている様だね。聖十といえども万能ではない、大陸の内外には(ワッシ)以上の魔道士など大勢いる。現に攻撃向きの魔法は多くを知らぬでな」

「しかし……」

「誰にでも得意不得意がある。それを補い支え合うのが仲間、ひいてはギルドというものではないかな?」

「おっしゃる通りです」

「この依頼、引き受けた」

「それで、太陽の村はどちらに?」

「ここから2,000キロ程南じゃ。ここは(わっし)の魔法で移動を手伝おう。それくらいしかしてやれんからな」

「助かります。よろしくお願いします」

 

呪文を唱えると足元から樹木が生え始め、気づけば大樹となって妖精の尻尾のメンバーを運び、勢いよく動き始めた。まるで乗り物の様に動く大樹で、一気に村まで運ばれていく。

 

「すごい!木が生き物みたいに!」

「うおーっ!」

「まるで乗り物ですね」

「流石はウォーロッド殿。謙遜していたけど実力は桁違いね」

 

皆が大樹に乗って空をかける頃、ウォーロッドははるか昔に想いを馳せ、初代マスターのメイビスとの出会いの頃を思い起こしていた。

 

「流れておる、な。あれから百数年……メイビスよ、貴方の意思は引き継がれておりますぞ」

 

====

 

「着いたか」

「うぷっ」

「酔ったの!?」

「ほら、治療するわ」

 

ほんの数刻で村まで辿り着き、酔ったナツの治療をしながら村の様子を見て回る。だが見て回っても村人の気配がない。

 

「おい、街の人ってどこだ?凍ってるって話だが……」

「見当たらないわね」

「ん?おい……これってまさか!」

「でかっ!巨人!?」

「犬も大きいです」

「まさかここまでとは……一体何が?」

「とにかく俺の出番だな。溶けろー!」

「がんばれナツー!」

「ぬぉーっ!」

「ファイト〜!」

「……溶けねえ。どうなってるんだ」

「ただの氷じゃねえな。どこかで感じた魔力の様な……」

 

ナツとグレイが早速溶かしにかかったが、まるでびくともせず、氷の溶ける気配がしない。どうにか溶かす手段を探さねばならない中、上の方から声が聞こえる。

 

「ほう、先客か?」

「何者だ?」

「トレジャーハンターギルド」

風精の迷宮(シルフ・ラビリンス)

「ドゥーン、ドゥーン」

「トレジャーハンターだと?」

 

宝探しを専門とし、得た宝を売買したりして収益を上げる者達、それがトレジャーハンターギルドである。今回はこの村に眠る宝を目当てにしてきた所に遭遇したのだ。

 

「悪いが、ここのお宝は俺たちが貰ってく。邪魔すんなよ?」

「んなもん興味ねぇんだが」

「永遠の炎狙いじゃないだと?」

「じゃあ何故魔道士が超いるんだよ?」

「ここの氷を溶かして村人を助けるためよ」

「それを邪魔って言うんだろーが!」

 

永遠の炎を狙う彼らにとっては村人の目があると宝を狙えない。今凍りついている状態の方が都合が良く、宝を狙いやすいからだ。そこで一刻を争うとばかりに駆け出した。

 

「こうしちゃいられねぇ、魔道士の邪魔を受ける前にお宝いただくぞ!」

「おう!」

「お前らの狙ってる永遠の炎も凍りついてんだがな」

「トレジャーハンターをナメるなよ。この超秘宝・月の雫(ムーン・ドリップ)が有れば氷くらい楽勝だ」

「何ですって?月の雫(ムーン・ドリップ)って液体に出来たの?」

「つーか、あれが有れば村を元通りにできるじゃねえか!」

「それもそうか、追いかけるぞ!」

 

トレジャーハンターと魔道士の盛大なる追いかけっこが繰り広げる中、村に二人の人物が接近を試みていた。

 

「トレジャーハンターに魔道士か。めんどくせえが始末しなくちゃな」

「トレジャーハンターなどどうでも良い、問題は魔道士の方。妖精の尻尾は特にな」

「お?知ってるのか?」

「そなたこそ知らんとは無知な」

「表のことはさっぱりでね」

 

男は表の世界では有名なギルドを知らず裏で働き続けてきた。女はここで復讐を果たすべく、野心を燃やしている。

 

「まぁ良い、こんな早く復讐の機会を得るとは裏も悪くない」

「どうでも良いが仕事だ新入り」

「新入り?妾の事はお嬢と呼ぶが良い」

 

その魔道士はミネルバ、かつて剣咬の虎に在籍していた。今は裏で動いている。果たしてこの二人の目的とは……!

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