フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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お久しぶりです、一年半ぶりですかね。
何かとあり、筆が進みませんでしたが何とか書き上げました


第69の唄 村を救う為に

「待てー、待ちやがれー!」

「その月の雫(ムーン・ドリップ)が有れば村を救えるんだ!」

「バカ言うな!これ手に入れるのにどんだけ苦労したと思ってんだ!」

「超悪魔ばっかりの島に出向いて、少ししか手に入らなかったのに!」

「それに巨人達が復活したらドゥーンと怖いだろ!」

 

永遠の炎や村を救える可能性があるなら月の雫(ムーンドリップ)をも使う。村を救うためにはやり方を選んでいる場合ではない。そんな事情の見え隠れする鬼ごっこの最中、エルザとカノンの姿はそこにはなかった。

 

「あれ?エルザと姉さんは?」

「何か手がかりを探すみたいで、村に残ってます」

「巨人達を壊してなきゃ良いけど」

「そうでない事を信じたいわね。まぁ、止めるでしょ」

 

====

 

「やはり気になるな。皆同じ方向を向いて武器を手にしている」

「凍りついてしまう前に何かと戦っていたのかしら?」

「戦うか。何かを誰かから守っていたのかもしれんな」

「守るもの……永遠の炎ね、多分」

 

村人達の大切なもの、すなわち永遠の炎を守っていたのなら、村人の向いているのとは逆の方向にある可能性が高い。ならば話は早い、その方向に向かって走っていく。そこで見つけたのは大きな山だ。

 

「大きいな。この山の上に永遠の炎があるのか」

「とにかく上がるしかなさそうね。急ぎましょうか」

「うむ」

 

しかし意気揚々と走って頂上に辿り着いたものの、そこには何も無く、結局無駄骨となってしまった。この結果には二人とも落胆するばかりだ。

 

「何もない、だと……」

「思い起こせば、永遠の炎も凍ってるって話じゃない」

「そうだったな。それに永遠の炎を溶かそうにも、小瓶に数滴程度しか入ってない月の雫(ムーン・ドリップ)では全く足りないか」

「そういえばそうね。迂闊だったわ」

 

二人して溜息をつき、作戦の練り直しを行おうということになった。しかし少し目を離している隙に状況は一変した。なんとエルザの体が子供の頃に戻ってしまっていたのだ。

 

「エルザ、何でそんなに小さく……」

「な、何だこれは!私が子供に……何故シリルは無事なんだ?」

「分からないわ。誰かの魔法かしら?」

「むぅ、これでは落ち着かないな。うわっ!」

「ねぇ、大丈夫?」

「だ、大丈夫だ。しかし、この小さな体は馴染まないな。剣を呼び出すのにも、いつも以上に時間と労力が必要な様だ」

 

剣一本呼び出すのに数十秒かかり、魔力の消費量も半端なものではない。これでは戦闘もままならない。仕事である以上、何かトラブルがあったら対処するしかないが、このままではそれも難しい。そこに現れたのは、見覚えのある女性だった。

 

妖精女王(ティターニア)も子供となればかたなしよのう」

「ミネルバ!何故ここに?」

「裏としての初任務、とでも申せば良いか」

「裏……闇ギルドに入っているとは」

「エルザ、ここは下がってて。子供のままじゃまともに戦えない」

「しかし!」

「せめて戻るまでは。ミネルバに遅れは取らないつもりよ」

「なめられたものよ。これは大魔闘演武(おまつり)の時とは違う、殺し合いじゃ」

「殺し合いとは不穏な……エルザにかかった魔法、貴女じゃないわね?」

「相棒の退化之法じゃ、裏の力は面白い。何故貴様にかかっていないのかは謎じゃが」

 

裏の人間になり、本格的に頂点を目指す意思を明確にしてきたミネルバ。これもあくまでもその途中の段階であり、ここで終わるつもりはないと言う。そして手段を問わない、相手に弱化(デバフ)をかけてでも倒すときた。

 

「何故闇ギルドに入った」

「妾は最強のギルドを目指す。その為なら手段や居場所は問わぬ」

「堕ちたわね、堕ちる所まで……そんな人には負けられん!」

「なんとでも言え。貴様らに復讐することが妾の目的じゃ」

 

この戦いが己の復讐心を満たすためだと言う。そんな心理を持ち合わせているミネルバには負けられない。先に仕掛けたのはカノンだ。

 

「木法・木龍の術!」

「木でできた龍とは、造形にも長けておるか」

「食らいつけ!」

「この程度で怯むと思うてか!」

「爆破!?」

「空間を司る魔法だ!」

「なるほど」

 

空間に作用する魔法に対し近づいて攻撃し、巻き込まれることを躊躇うミネルバに付け入る隙を生み出す。だが、タダではやられないのが元剣咬の虎(セイバートゥース)最強と謳われたミネルバならではだ。一度突き放し、これでもかという魔法を放つ。

 

「ネエル・ウィルグ・ミオン、デルス・エルカンティアス……」

「この魔法、もしや、大魔闘演武の時の!」

「ャグド・リゴォラ!」

「げほっ……タダではやられないか」

「硬いのう。流れる七星(フォーレン・スターズ)を下した手腕は伊達ではないか」

「闇に堕ちる理由は知らないけど、負けられないからね。木術・木刃の術!」

「木の剣か!?」

「ふふふ、これくらいは造作もない」

「言ってくれる。木法・木獅子の術!」

「ふんぬ!」

「隙あり、天輪・サークルソード!」

「元に戻った!?ドリアーテめ、やられたか!」

「隙あり!」

「くっ!」

 

エルザが元の大人の姿に戻り、2対1という有利な状況になる。つけいる隙はある、こうなったら勝てると信じられる。

 

「闇ギルドに移るとは、魔導士としての誇りを失うかミネルバ」

「説教とは、くだらない(ロ・ホウセト)。ここで殺しても良いのだぞ」

「殺すなど、穏やかじゃないわね」

「神に人間の何がわかる」

「私も神である以前に一人の人間であり、魔道士だった。だから、分かることもあると思ったが……」

 

闇に落ちずとも最強の道は目指せる、何も闇ギルドに入る必要はない。今ならまだ光の方に戻れるのではないか、そんな淡い期待も込めて説得に移るが、受け付けないようだ。そんな中また退化ノ法が作動し、子供の姿に戻ってしまう。

 

「なっ!?また子供に?」

「ドリアーテめ、やられたわけではなさそうじゃ……って何故妾まで!暴走!?」

「なんで私はなんともないのかしら?」

「もしや神の特性か?」

「分からない、分からないけど……今なら貴女を簡単に倒せそうね、ミネルバ?」

「な、何を!」

「……辞めておくわ。ただし!このまま引き下がればって言う条件付きだけど」

「くっ、ナメられたものよ。むっ!?」

「戻った!?何故こうも急に」

 

今度こそミネルバの相方を誰かがやっつけたのか、大人の姿になった。しかし何故こうも暴走したり、不安定なのかはわからない。そんな中、氷がじわりじわりと溶け始めていく。

 

「むっ?これは……」

「ナツ達がやったみたいね」

「このままでは……ここは下がってやろう」

「ミネルバ!」

「いずれ決着をつけてやろう、妾と貴様らの最高の舞台でな」

「闇に染まるな、お前はそんなに弱くない筈だ!」

「闇には染まらぬ、妾が世界を闇に染める」

 

一旦決着はお預けとなり、ミネルバは姿を眩ませた。説得も受け取らないとなれば、力づくでも元に戻ってもらう他ない。

 

「エルザ、とりあえず皆のところに戻ろう。彼女のことはそれからよ」

「うむ。ミネルバ、お前は私が止める」

 

====

 

「皆、無事ね?」

「どうにかなった。悪魔がいたとは思わなかったが……」

「イグニールの破壊しようとしてた悪魔ENDってのも気になる」

「ミネルバの事もマスターに伝えなければ」

 

なにかと気になるフレーズが各自から上がる中、村人達は元に戻った。永遠の炎はアトラスフレイムという竜であり、彼の遺した力のおかげで戻ることが出来たらしい。

 

「わっはっはっ!小さき者に救われてしまったな」

「元に戻れて良かったわね」

「一体何があったのだ?」

「氷の滅悪魔道士の仕業らしいわ」

 

氷の滅悪魔道士がアトラスフレイムを、悪魔だと勘違いして倒しにきたらしい。犯人の勘違いで起こった事件だ。更にグレイから気になる言葉が出てきた。

 

「ドリアーテっつー奴の話じゃ冥府の門が開いたとか言ってたな」

冥府の門(タルタロス)か。バラム同盟の最後の一角ね」

「犯人は冥府の門(タルタロス)の人間みたいだ」

「警戒はしておかねばならないな」

「まぁ、とりあえず仕事完了だ」

 

仕事もひと段落着いた。後は帰って報告と言ったところでこの村に戻ってきた元レイブンのフレアが姿を見せていない。

 

「あれ?フレアは?」

「フレア?あのレイブンの?」

「『元』がつくわ」

「フレアだと!?そこにおるのか!」

「……」

「ねぇ、なんで隠れてるのフレア?」

「私、村を捨てて出て行った。だから……」

 

だから戻ってきても姿を見せられない。一度は村を捨てて出て行った故に申し訳ないという気持ちが、全てを物語る。だが、村人達は決して怒っている訳ではない。

 

「外はどうだった?」

「た、楽しいことも辛い事もいっぱい……」

「それは何処にいても同じだ、生きている限りな。まぁ、しかし何だ……これだけは言っておかんとな。おかえり、我らが娘よ」

「た、ただいま」

 

====

 

「氷の滅悪魔法の使い手、絶対零度のシルバー様、本部への招集命令が出ております」

「墓参りくらいゆっくりさせろや、まったくよ」

「申し訳ありません。しかし、この命令は九鬼門全員に出ています。なにとぞ……」

「わかったわかった、そうびくつくな。俺が喰らうのは悪魔の魂だけだからよ」

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