フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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第70の唄 冥府の門、開く

「わっはっはっ、良くやってくれた!君達に任せて正解だったよ!」

「ご期待に応えられて良かったです」

「まさか冥府の門(タルタロス)が関わってるとは思いませんでしたが」

冥府の門(タルタロス)が……そこは評議会が扱ってくれよう。とにかく仕事はひと段落じゃ、報酬はこれ。それと近くに秘湯があるんじゃ、寄ってきなさい」

「ありがとうございます」

 

ひとまず仕事は終わった。日が沈むのに合わせてやってきたのはウォーロッドが話していた秘湯だ。様々な効能があり、仕事の疲れを取るのには最適だ。カノンとユリアが入っていると、そこにやってきたのはナツとグレイだ。実は混浴である。

 

「あら、二人とも来たのね」

「偶には温泉ってのも悪くないからな」

「混浴みたいだな」

「ルーシィ達知ってるかしら?」

「知らねえんじゃねえか?俺たちもさっき知ったからよ」

 

しばし団欒していると遅れてやってきたのはルーシィ達だ。秘湯の絶景に息を呑むばかりだ。

 

「わぁ、すごい!」

「まさに秘湯ですね」

「見事なものだ」

「仕事終わりの温泉も良いものだね」

「あら、エルザ達も今到着?」

「シリルとユリアも来てたのか。む?」

「混浴なんだと」

「なるほど、そういうことか」

 

エルザはすっかり馴染んでいたが、ルーシィとウェンディは恥ずかしがっていた。そこにやってきたウォーロッドによってようやく混浴である事実を知り、衝撃を受けていた。こんな団欒とした仲間の空気をウォーロッドは楽しんでいた。

 

「ほっほっほっ、仲間とは良いものよな」

「もしや……」

「そう、(わっし)もかつては妖精の尻尾(フェアリーテイル)に居て、メイビスと共にギルドを立ち上げた初期メンバーといった所じゃ」

「なっ!?」

「私達の大先輩なの?」

「どおりでマスターが……」

「君達が(わっし)の家を訪れた時、心の底から若き妖精達に会えて嬉しかった」

 

初代マスター、メイビスの唱えた和の精神。血より濃い魂の繋がりが脈々と受け継がれている。仲間とは言葉だけではなく心、それが体現されている。苦しい時も悲しい時も仲間は近くにいる。

 

「初代の言葉ね。なんだか感慨深いわ」

「それじゃあ、じっちゃんより長生きなのか。ならゼレフ書の悪魔ENDも知ってるのか?」

END(終焉)とな……済まぬが分からん。しかし昼間に冥府の門(タルタロス)と聞いて、思い出したことがある」

 

冥府の門(タルタロス)は正体が一切分からない。ギルドの構成員数、所在地ともに不明。だがしかし時として、集会の目撃情報が上がる事もある。その集会はまるで悪魔崇拝だと。更にはイシュガルの四天王の推察ではあるが、強力なゼレフ書の悪魔を所有しているのではないかと予想される。それこそがゼレフ書の悪魔ENDではないかと。

 

「くっそー、そう簡単には分からねえか。冥府の門(タルタロス)の奴ら、見つけたらとっ捕まえて情報を吐かせるしかねえか、こんな感じにボコボコにしてよ!」

「な、ナツ!」

「おいおい、ナツ……エルザが」

「あ?」

「ほう……」

「……やべっ」

 

====

 

一方その頃ミネルバはギルドに戻ってきた。しかし人っ子一人居らず、床には布の様なものが散乱しており、机や椅子も倒れている。

 

「な、なんじゃこれは……皆、どうしたのじゃ!皆どこに消えて……この布のような物は一体?」

「人じゃ」

「人!?」

「此方の魔は人を強化する。だが、強化に値せぬ者は皆、そのような姿になる」

「何者じゃ」

「此方はキョウカ、冥府の門(タルタロス)九鬼門が一人じゃ」

 

冥府の門の中でも実力者である九鬼門の1人が、ミネルバのギルドメンバーを布のような姿に変えた。その理由は、兵を集めるためだと言う。

 

「集めるべき兵を犠牲にするとはとんだ阿呆のようじゃな!」

「強化に適応できぬ兵は要らぬ。そなたはどうであろうな?」

「何を、やめ……!」

 

====

 

「何、あのミネルバが闇ギルドに?」

「はい」

「闇ギルドで頂点を目指すとかどうとか」

「むぅ、何も闇に落ちずとも良いものを。ミネルバの父は?剣咬の虎(セイバートゥース)の前マスターの」

「会わなかったわ。どこかに行方を眩ませてるとしか……」

「スティングにも、このことは伝えておきます」

 

ギルドでは普段通りの騒ぎの中、ミネルバのことやゼレフ書の悪魔ENDについて話し合われていた。ENDに関して詳しいことは記されてないが、ララバイやデリオラとは比較にならない悪魔らしい。

 

「ゼレフ書の悪魔の中でも格別ってことね」

「そもそもゼレフ書の悪魔とはなんだ?」

「知るかよ」

「ゼレフが生み出した悪魔のことよ。その召喚法を書物にまとめたものがゼレフ書の悪魔よ」

「その中の一つがENDって訳か」

「なんだか不気味な感じだね。ナツのお父さんが倒せなかったって……」

 

END、それは竜達に繋がるかもしれない話だ。一つでも多く情報が欲しいところだが、詳細は不明である。そんな折に駆け込んできたのは、魔法界を揺るがすニュースだった。

 

「大変だー!ビッグニュース!」

「なになに、何事なの?」

「それが、評議会が!」

「落ち着いて。評議会がどうしたの?」

「爆撃されて崩壊したんだ!」

「そんな!?」

「ほら、新聞に書いてあるんだ!」

 

新聞によれば死傷者は100人以上、犯人は生き残った人によれば冥府の門(タルタロス)だと言う。襲撃理由はまだ不明、9人の評議員全員が死亡とある。魔法界史上、類を見ない大規模な事件となった。

 

「酷い話ね。なんでまたこんなことを」

「思い当たる理由がありすぎて、見当がつかないわ」

「どうする?一回訪ねてみる?」

「待ってくれ、シリル」

「フリード、どうしたの!?」

 

フリード達が満身創痍な状態で帰ってきた。息も絶え絶えで、苦しそうな表情を浮かべている。ポーリュシカも呼ばれ、治療にあたった。話によれば冥府の門(タルタロス)の襲撃を受け、ラクサスら5人が魔障粒子にかかったと言う。それは魔道士にとっては命取りな魔力欠乏症や魔障病の原因でもある。

 

「ポーリュシカ、シリル!ラクサス達は無事なんじゃろうな、おお!?」

「最善は尽くしたわ、でも……」

「ギリギリの状態だよ。魔障粒子自体少量でも危険なものだ」

「私達で出来るだけの治療はしたわ。でも、ラクサスが特に酷い状態で、生きてるのが不思議なくらい」

「こんな事、許せないわ」

「じっちゃん、戦争だ!」

「皆同じ気持ちよ。でも相手の行方が分からないわ」

「本部の場所は評議会ですら把握してないんだよ?」

「奴らの次の狙いはおそらく元評議員ね。ヤジマさんを狙ってきたから」

「それなら評議員を引退した者を警護すれば情報が引き出せるかも」

 

しかし元評議員の住所は闇ギルドの襲撃や恨みを晴らす目的の攻撃を避けたりするため、原則非公開だ。手詰まりかと思われたが、ロキが数名の住所を知っていると言う。付き合っている女性の何人かが元評議員の家族だからだ。

 

「よし、ロキの情報から4名の現住所が判明したわ。ここからはチームに分かれて警護に行こう」

「口はかたいと思うが、少しでも情報を引き出すように。他の評議員の住所や狙われる理由などじゃ」

「もしラクサス達を襲った者を見つけたら慎重に血液を取ってきな。ワクチンや血清が作れるかもしれない」

「ラクサス、仲間を守ろうとした貴方の行動に敬意を表するわ。後は任せて」

「私たちは貴方達の仇を取ってくるよ」

 

評議員の無事と情報を確認する為に複数のグループに分かれた内、ルーシィ、ナツ、ウェンディ、ユリアは孫のミケリアと共に暮らすミケロの家を訪ねて事情を説明していた。今では元評議員が冥府の門(タルタロス)に狙われていること。目的は不明で、大変危険な状況であること。そのためこれから警護にあたることなどだ。

 

「そうは言うが、それではまるで私が囮ではないか」

「囮じゃないわよ。どのみち狙われてるんだから」

「何か狙われる理由に思い当たる節は?」

「多すぎて分からんよ。闇ギルドの報復から取引に利用するまで様々考えられる。いや、待てよ。もしやフェイスでは……」

「っ、全員伏せろ!」

 

ナツが叫び、全員その場に伏せた瞬間家の上部が吹き飛び、爆破された。突然の事態に驚きしかない。爆風はナツの腹の中に収まり、怪我人は出ずに事なきを得た。そこに現れたのは1人の男だ。

 

「おろ?思うたより人が大勢おるわ。全員吹き飛んだと思うたんやがな」

「貴方何者?」

「冥府の門の一人じゃないかしら」

「なんや、もう割れとんのかいな。何者や」

「妖精の尻尾だ。始めるか、冥府狩りをよ」

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